2024年5月3日金曜日

岸田首相来仏に関するフランスの報道

  


 日本の岸田首相が来仏されるというニュースを見て、このことについて、フランスでは、どの程度、取り上げられるのだろうと、まず前日にこちらでの報道を探してみました。

 そんなにたくさんではありませんでしたが、トップに出てきた記事は、「日本ではすでに岸田首相の将来が危うくなっているという噂が流れている」というもので、日本の日刊紙各紙が「岸田政権は崖っぷちだ」、「岸田首相はフランス、そしてブラジルとパラグアイへの訪問中に、党を悪い状況から脱却させる方法を「真剣に考える」必要がある」、「岸田氏は低空飛行する飛行機のようなもので、まだ墜落していないが地上を航行している」と書いている言葉を引用しています。

 岸田氏は自由民主党の改革に期待を寄せているが、4月28日日曜日に投票所で行われた時事通信社の世論調査によると、有権者の40%ができるだけ早く党首の交代を望んでおり、首相の支持率は30%以下で低迷していると説明しています。

 また、この仏紙は、日本人の政府に対するこの不信感と不満の理由のひとつに「自由民主党の裏金事件」を挙げ、「これにより、4人以上の大臣が辞任に追い込まれており、85人の自民党議員が関与しており、彼らは募金収入を申告せず、ジャックポットを分け合ったと言われている。このスキャンダルは、特に多くの自由民主党選出議員と文派との関係により、すでに困難に陥っていた党の評判をさらに傷つけている」と書いています。

 そして、さらには、「岸田は生き残れるのか?」と小見出しをつけて、現在、彼は来年9月に自民党総裁としての任期が終了するため、除名席に置かれている。もし彼が党内での立場を強化したいと考えていたとしたら、それは明らかに失敗である。今のところ、彼の政界内のライバルたちはまだ影から出てきていないが、それも時間の問題だと香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストが書いていると記事の一部を引用しています。

 岸田首相が来仏に際して、会談される内容についてならともかく、こんな記事を書かれては、今さら、この人と話してもな・・と思われかねない感じで、微妙な感じです。

 そこでマクロン大統領の日程を見ると当日、13時20分からの昼食を伴う岸田首相との会談の予定が入っているので、エリゼ宮での会談は普通に行われた模様。しかし、このような日本の首相の評判や情報は当然、エリゼ宮も承知しているはず、ただし、マクロン大統領自身もこれまでにたくさんの国民からのバッシングや逆風を乗り越えてきているわけで、風評に振り回される人物ではないものの、彼が内心、岸田首相を政治家として、どのように見ているかは、また別の話です。

 その後、エリゼ宮から、岸田首相と会談した内容が発表されており、冒頭でマクロン大統領がロシア主導の侵略戦争開始以来の日本のウクライナ支援に対して首相に温かく感謝の意を表したと伝えています。

 エリゼ宮が発表している日本との会談内容は、

・フランス軍と日本の自衛隊間の相互運用性を促進することを目的とした相互アクセス協定(円滑化協定(RAA))の締結に向けた公式交渉を開始することにより、日仏間の戦略・防衛協力を強化することに合意

・経済安全保障の強化を現実のものとすることを決定。首相の訪問に合わせて「重要金属分野における協力に関する日仏宣言」が採択され、経済安全保障の強化を現実のものとすることを決定し、「重要金属分野における協力に関する日仏宣言」が採択された。

・また、両国間の強固なパートナーシップの中心となる経済・産業分野、特に民生用原子力、宇宙、航空、イノベーション分野における協力の構築についても議論し、そのため、5月22日から25日までパリで開催されるビバテクノロジーショーでは、日本が注目を集める国となる。

・インド太平洋がいかなる形の強制も受けず、国際法の尊重に基づいた、自由で開かれた包括的な空間であり続けなければならないインド太平洋における協力を強化することに同意

・特に森林保護、エネルギー転換、インフラ、海洋安全保障の分野で、地域諸国の主権を強化することを目的とした協力を発展させることに合意

・G7広島プロセスの継続性と「人工知能」に関するサミットを踏まえ、グローバル・ガバナンスの問題、特に人と地球のためのパリ協定、人工知能(AI)についても議論

・2024年パリオリンピック・パラリンピック競技大会と2025年大阪万博を見据えた人的、文化的、スポーツ交流にも言及

・両国の管轄当局間の協力を強化するために、いくつかの領事事件について意見交換

 この会談のメインはガブリエル・アタル首相と岸田首相の会談がメインであったと思われ、その後、ガブリエル・アタル氏はX(旧Twitter)で日本の首相との会談を友好的にポストしています。

 日本での詳しい報道はよく把握できていませんが、最初に出てきたのは、岸田首相が持って行ったプレゼントが「ドラゴンボール」のキャラクターを題材にした江戸切子のグラスや孫悟空やクリリン、亀仙人のこけしだったという記事が出てきて、会談内容についてはほんの数行で「えっ?そこ?」とちょっとガッカリしました。

 まあ、正直なところ、一般のフランスのメディアはこの前日の記事を除いて、岸田首相の来仏のニュースはほぼスルー。色々と、叩かれる以上に、これほどまでにスルーされる方が寂しい気がします。

 この数日後に中国の習近平主席がフランスに到着したときは、打って変わってその日の夜のトップニュースとして扱われ、その日の夜にはエリゼ宮でディナー、翌々日には、マクロン大統領が幼少時代にバカンスを過ごした場所に招待して、ランチというまるで別格扱い。

 世界情勢における中国の位置づけというものもあるでしょうが、それにしても、あまりの違いに愕然とさせられます。


岸田首相来仏


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2024年5月2日木曜日

15歳の少年の殺人事件 逮捕された少年と母親 

  


 シャトールー(フランス中央部・サントル・ヴァル・ド・ロワール地域圏)で起こった15歳の殺人事件は、未成年の超暴力(ウルトラ ヴァイオレンス)が問題視されている中、殺人事件の被害者、加害者ともに15歳というあまりに若い年齢や、当初は理由がはっきりわからなかったり、ほぼ同時に加害者の母親まで逮捕されたということで、大きな波紋を呼んでいました。

 被害者がアフガニスタン国籍であったことから、イスラム教がらみの事件であるとか、移民政策への非難の声が一斉にあがったりもしていました。

 ところが、次第に、この少年の逮捕・拘留から事情聴取で事実が明らかになりつつあり、そもそもは、この被害者と加害者は、以前からの顔見知りであり、被害者が他の仲間とともにラップバトルを始め、2人はののしり合いになったと言われています。つまり喧嘩が始まったのです。

 加害者の弟の証言によると、「最初に手を出したのは、被害者の方で、相手の顔を殴りつけ、鼻血を出した兄は、感情を爆発させてしまった・・兄は彼から殴られることに耐えられなかったのです」と説明しています。

 殴られて、殴り返すだけなら、まだそこまで致命的な結果にはならなかったかもしれませんが、彼は相手に反撃を加えるために、自宅にナイフを取りに帰り、ナイフを持って彼に襲い掛かり、数か所を刺して、そのまま逃走したのです。

 それなら、なぜ?母親まで逮捕されたのか?ということが謎ですが、これは、ナイフを取りに戻ってきた息子の異常な様子に息子の後を追ってきた母親がこのすでに襲撃された被害者の頬を平手打ちしたところが目撃されていたため、一瞬のうちに起こったこの一連の凶行のどの時点から母親が参加しているかが疑われているともされています。

 いずれにせよ、このナイフによる数か所の反撃の一刺しが被害者n心臓を直撃しており、これが致命傷に繋がったことが解剖の結果からわかっています。

 加害者家族は、アフガニスタン国籍ではあるものの、合法的にフランスに滞在していることがわかっており、政府は過剰な移民叩きにならないように、また、イスラム教問題とはなんら関わりのないことで、そもそもは子どもの喧嘩がエスカレートしたものだと強調しています。

 しかし、今年に入ってからも、もうどれだけ14~15歳くらいの超暴力事件がとりあげられたことか? 殺人事件にまで発展してしまうとなると、単にキレやすい・・などという次元を超えています。

 また、詳細はわかりませんが、この母親もかなり異常といえば、異常で、息子がナイフを取りに家に戻ってきて、ナイフを持って出て行こうとするのに驚いて、慌てて、後を追うまではわかりますが、息子が刺してしまった被害者の子どもに平手打ちをくらわすなど、ちょっと考えられない、理解不能なことです。

 相手の男の子は、刺されて(しかも自分の息子が刺して・・)死にかけているのに・・。

 未成年の超暴力はもちろん問題ですが、こういう母親も絶対におかしいです。この加害者の少年はもちろんのこと、この母親もしっかり追及してもらいたいです。


未成年の超暴力 15歳の殺人事件


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2024年5月1日水曜日

2024年 パリ・バゲットコンクール グランプリ受賞のバゲット ユートピー

  


 ここ数年は、パリ市が開催するパリ・バゲットコンクールでグランプリを受賞したバゲットは一度は必ず食べてみることにしています。

 今年もそのパリ最高のバゲットを買いに行ってきました!

 今年は、173本のバゲット(それぞれ異なるパン職人の作品)の中から栄誉ある2024年のパリバゲットコンクールのグランプリに輝いたのは、パリ11区の「ユートピー」というパン屋さんザビエル・ネトリさんでした。

 審査は無作為に選ばれた6人のパリ市民だけでなく、食品業界の専門家やパリ市の選挙で選ばれた役人などで構成される厳しいものです。

 パリ11区にあるそのお店は、ここ数年行ってみたグランプリを受賞したお店の中でも、一段と小さいお店で、わりと近くに由緒ありそうな、ちょっと小洒落て立派なお店があるにもかかわらず、あっちじゃなくて、こっち?と思ってしまいそうな、そんなところが逆に公正に審査されているのかな?という印象を受ける感じです。

 まだ、このグランプリが発表されてから1週間くらいしか経っていないので、混雑しているだろうな・・と思い、パン屋さんが一番空いていそうな時間帯(15時頃)に行ってみたのですが、やはり、少し行列ができていました。

 とにかく、例年のグランプリ受賞のお店に比べてかなり小さめなお店ですが、入って右側には、お店の心意気が感じられるちょっと他のお店では見かけないような、ちょっとこちらにも心を奪われてしまいそうなケーキも並んでいます。




 しかし、グランプリ受賞直後ということで、お客さんの大半はバゲットトラディショナルを買いに来ている人で、ほとんどの人が2本、3本と買っていきます。

 グランプリ効果のお客さんを見込んでのことだと思いますが、ひっきりなしにバゲットを焼いている様子で、「トラディション2本ください!」というと、ホカホカのバゲットを手渡してくれました。たぶん、行列のおかげでしばらくはいつもホカホカのバゲットを買うことができるのだと思います。

 このバゲットトラディション1本1ユーロ20セントです。

 やはり、熱いうちに食べなくちゃ!と、ちょっとお行儀は悪いですが、さっそく歩きながら、バゲットをちぎるとふわぁ~と広がる小麦の良い香り・・。正直、一瞬、「えっ?去年のバゲットの方が美味しかったかも?」と思ったのですが、いやいや、落ち着いて味わってみれば、甲乙つけがたい、さすがになかなかなクオリティーです。

 少し塩味が効いている感じで、今回のバゲットの感動ポイントは、バゲットの焼け目というか、茶色い部分の香ばしさと味わい・・この部分が抜群に美味しいです!



 いつもなら、私は一人なので、せいぜいバゲット1本なのですが(半分だけにすることもある)、グランプリバゲットに関しては、2本買ってしまいます。2本買ったところで2ユーロ40セント。さすが、フランスの国民食です。

 これだけお手軽な値段で確実に美味しいものは、そうそうあるものではありません。

 というわけで、せっかくゲットした美味しいバゲットには、家に美味しいバターが待っているのですが・・せっかくならばと、帰りに通りかかったイタリア食材店でイタリアのパルマ産の生ハムを買ってきました。単純な私はもうあったかいバゲットをかかえてそれだけでもうウキウキしてきます。

 今夜はこのバゲットと生ハムと・・などと考えながら、予めカロリー消費しようと少し歩いて帰ってきました。

 レピュブリック広場からも近く、徒歩圏内ですが、最寄りの駅は、⑤、⑨番線の Oberkampf駅で、この駅からなら徒歩1分ほどです。

 このグランプリ受賞者には、賞金4,000ユーロが授与され、1年間のエリゼ宮(大統領官邸)の公式サプライヤーを務めることになります。

 このインフレ、もしかして、賞金は値上げになってる?と思いましたが、去年と一緒でした。

 たった1ユーロ20セントで味わえる今年、パリで一番美味しいバゲット!もしも、パリを訪れることがあったらば、お手軽に楽しめる特上のグルメです!


☆Boulangerie Utopie 20 Rue Jean-Pierre Timbaud 75011 Paris  月曜休


2024年 パリ・バゲットコンクール グランプリ受賞のバゲット


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2024年4月30日火曜日

約2年ぶりに行ってみたモンマルトル サクレクール寺院

  


 エッフェル塔とかサクレクール寺院など、いわゆるパリの観光地っぽい感じの場所は、観光で来ていたら、行ってみたい場所に挙げられるかもしれませんが、我が家からは交通の便がイマイチということもあり、滅多に行くことはありません。シャンゼリゼやノートルダムなどは、近くに買い物に出かけたりもするので、まだ、そのついでに寄ってみたりすることもあるのですが・・。

 東京に生まれ育って30年近く住んでいましたが、東京タワーに行ったのは、1度だけでしたが、それと似たようなものかもしれません。もっともパリは東京ほど広くはないので、行こうと思えば、そこまで遠いわけでもありません。

 実際、娘が小さい頃は、サクレクール寺院のことを空が近く感じられることもあるのか?「神さまのおうち」と呼んでいて、なぜかサクレクール寺院が大好きで、また丘の上にあるために娘の有り余る体力を消耗させるために、わりと頻繁に出かけたものでした。

 最近は、天気の悪い日も多く、お天気の日には眺めのよい場所を散歩してみるのも悪くないし、ここ数年で色々な場所が変わっているパリの街の様子を知っておくのもいいかと気楽な気持ちででかけたのです。

 最近は、メトロも工事やトラブルが多いので、予め行く先への交通手段をチェックしたところ、サクレクール寺院と入れると、最寄り駅がどうしても②番線の Anvers 駅しか出てこなくて、⑫番線の Abbesses 駅は出てこなかったので、あまり深く考えずに⑫番線は動いていないのか・・と②番線の駅に向かったのです。


 ところが、たしかに最寄り駅として②番線の Anvers 駅は間違いないのですが、まあ駅の上にぐるぐる回って上がっていく階段の長いこと長いこと・・飽きないようにとの心遣いからか階段の壁面にはモンマルトルらしくパリの景色の絵が描かれたりしていているのですが、なんせ長い・・息切れして途中で休みながら上がっていく人も大勢いて、私もその一人で足はガクガク・・。ただし、出口によっては、ここまでの階段ではない場所もあります。



 念のため、一番、近いのは、⑫番線の Abbesses 駅です。

 モンマルトルに来たのは2年ぶりくらいで、サクレクール寺院の前の大階段は、パリオリンピックのロゴカラーにペイントされていました。

 さんざん駅の階段をのぼってきたので、もうサクレクール寺院前の階段をのぼる元気はなく、横から動いているケーブルカーで上に上がりました。このケーブルカーはNavigoやパリのメトロのチケットで乗ることができます。

 サクレクール寺院の下、丘からパリの街を見渡せるスペースには、相変わらずのミサンガや特に柵に記念につけていくためのハート型の南京錠などの押し売りがウロウロしています。しかし、私がとても買いそうもないように見えるのか? 誰も話しかけてきません。買うつもりは全くないけれど、これをいくらで売っているのかな?と思って、「これいくらですか?」と聞いてみたら、「5ユーロ」というので、「ああ、じゃあいりません・・」と言って断ると、「いくらなら買うのか?」と食い下がってくるので、「ごめんなさい、値段が知りたかっただけなので・・」というと、あっさり離れていきました。


売りつけられた南京錠が柵にギッシリ・・これもちょっとどうかなと思う


 こうして、あらためて眺めるとこの手の押し売りの多いこと多いこと・・その日、一番多かったのは、この南京錠売りでしたが、その他、小さなエッフェル塔の置物やキーホルダー、サクレクール寺院の裏手にある絵描きさんがたくさんいるスペースの入口などでも、似顔絵描きのおじさんが客引きをしていたり、横顔を切り絵のように器用に作っていくおじさんも優しそうな親子連れなどを引き留め、勝手に切り絵を始めようとしていたり・・きっと、気弱な人は断りづらいんだろうな・・ちょっと怖いかもな・・などと思ってしまいました。

 サクレクール寺院は少し行列ができていましたが、それはセキュリティーを通るための行列で、セキュリティーといっても大したものでもなく、警備のおじさんが一人立っていて、荷物をばっと開けて見せればあっという間に終わるのでスイスイ進みます。



 パリの街を一望できる高台で、しかもサクレクール寺院という歴史的な壮大な美しい聖堂を見ることもできて、聖堂の裏手には、昔のパリの趣のある街並みを歩くこともあり、レストランなどもたくさんあり、やはりなかなか良い場所です。

 しかし、正直、押し売りやいかがわしい感じの人も少なくないので、注意は必要です。



 聖堂裏手の絵描きさんが固まっているスペースの周りにあるレストランなどは、いかにも観光客相手のお店な感じがしないでもありませんが、観光客相手にぼったくりのような値段なのかな?と思いきや、メニューを見るかぎり、そこまで法外な価格設定ではないようでした。


 丘の上には、大き目のトゥクトゥクのような電車のカタチをした連結自動車がいて、丘の上からメトロの駅を通って丘を一周して(途中、メトロの駅で途中下車可能)戻ってくるらしく、一人10ユーロということでした。

 駅の反対側を下っていくとパリなのにワイン用のブドウ畑などもあって、ほのぼのとした感じの場所もあり、また、けっこうおもしろいお店がたくさんあるので、一日、ゆっくり時間をかけて歩いてみるのも楽しいかもしれません。


 しかし、パリの街を一望できる場所だけあって、足だけで上って行こうとするとけっこうな健脚が必用で、そういえば、以前は、この丘が娘のエネルギー発散に一躍買ってくれていたことを思い出します。

 得意気に階段を走って上って行っては満足気な顔をしてこちらに手を振り、私がのぼっていくのを待ちきれなくなると、また私のもとへ戻ってきては、また得意気に駆け上って何往復もして楽しんでいた娘です。考えてみれば、娘が小さい頃はノートルダム大聖堂よりもサクレクールの方が来ていたかもしれません。

 そんなことを思い出してみると、私にとってもなかなか想い出深いサクレクール寺院です。


パリ モンマルトル サクレクール寺院


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2024年4月29日月曜日

オルセー美術館 文化財破壊未遂で2名逮捕・拘留

  


 オルセー美術館で「文化財破壊未遂」で2名が逮捕・拘留されたというので、今度は、どの絵が被害を被ったのかと思ったら、入口で捕まったとのこと。

 彼らは、「Riposte alimentaire」(リポスト・アリマンテール)(フードレスポンス運動)という環境活動団体の名前の入ったTシャツを着ており、接着剤と粘性のある白っぽい混合物である白い液体を所持しており、これにより、なんらかの文化財に損害を与えようとしていたと見られています。

 この環境活動団体(旧ラスト・リノベーション)は、1月に「モナ・リザ」にスープを掛け(防弾ガラスによって保護された)、2月にはリヨン美術館に展示されているクロード・モネの絵画「ル・プランタン」にスープを投げつけ、ここ数カ月で有名になっています。

 現在のところ、なにしろ未遂で終わっているために、確実な犯行の確認はとれていないようですが、パリ14区の警察署が操作を委託されています。

 2月に、他の2人の活動家がリヨン美術館に展示されているクロード・モネの絵画「ル・プランタン」にスープを投げつけたときは、「私たちが反応しなければ、この春だけが残るだろう」、「もし春がなくなったら、未来のアーティストは何を描くだろうか?」とオンラインに投稿した動画で彼らの主張を訴えていました。

 私には、この手の運動?というか文化財の破壊行為に何の意味があるのか?全く理解ができないのですが、リポスト・アリマンテールは、自らを「気候的および社会的レベルで社会に根本的な変化をもたらすことを目的としたフランスの市民抵抗運動」であると主張しています。

 彼らは「私たちは芸術を愛しています」と言いつつも、「しかし、私たちの将来の芸術家たちは、焼け落ちた地球上には描くものが何も残らないでしょう」というのが抗議運動に芸術作品を選んでいる理由のようです。

 今回逮捕された2人は「過去の文化財破壊行為ですでに知られている」人物だったそうですが、それにしても舐められたものだとも思います。

 パリでは、美術館等に入る際には、荷物チェックがされるのがふつうですが、そこに堂々とこのような不審な荷物を持ち込み、しかもこの環境団体の名前のプリントされたTシャツを着て入ろうとするとは・・。

 よほどチェックが甘いと思われていたのか、それとも、この環境団体の名前がそれほど知られていない?と思っていたのか? 少なくも、今年に入ってからだけでもモナリザやモネの絵画への抗議運動でそれなりに名前を馳せている・・その団体名の入ったTシャツを堂々と着て入ろうとするとは・・美術館の警備の対象になっているとは思わなかったのだろうか?と思うのです。

 それにしても、文化財に溢れているパリの街で、これから一層、警戒は厳しくなるのだろうな・・と思わずにはいられません。


オルセー美術館 文化財破壊未遂


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2024年4月28日日曜日

農民たちの悲痛な叫びに対する政府の14の回答 

  



 高速道路を封鎖し、パリの街中まで農業用のトラクターなどが行進した農民たちの怒りが噴出した大規模なデモから2ヶ月が経ち、政府は、農民たちへの回答として、14項目の農業保護計画に関する措置を発表しました。

 世界で起こっている戦争がインフレを加速させ、また地球温暖化による干ばつや洪水などの天候不順や、環境保護のための規制や、健康を守るための厳しい農薬基準等、がんじがらめに苦しめられている農民たちの怒りが爆発したのです。

 また、フランスの農産物生産に課せられている厳しい規制が外国からの輸入品には、ほとんどスルーされている状態であったり、また、ウクライナを支援するためにウクライナからの農産物の関税を一時的に免税にしたりしているために、価格破壊が起こり、フランスの農産物は買い叩かれなければならない異常な事態が起こっていることなど、この農民の暴動がなければ、一般には知り得ないことが公になりました。

 さすがに自国の農業生産者がここまで痛めつけられる結果になっていることに、多くのフランス人も「これはなにかがおかしい・・」と農民たちの気持ちを理解していた気がします。

 2月に行われた国際農業見本市の場は、デモのトラクターが会場前に勢ぞろいする異例の雰囲気になり、開催初日にマクロン大統領が予定していた話し合いの場に環境保護団体や大量流通団体まで参加させようとした(丸め込もうとしたと受けとられた)ことから、さらに彼らの怒りは爆発し、この国際農業見本市があわやさらなる大暴動の火種になるところでした。

 この話し合いを拒否し、一旦は、扉を閉じてしまった農民たちの代表の集まる場にマクロン大統領は、勇敢にも一人で立ち向かい、吊るし上げを食うようなカタチになった緊迫した場面もありました。しかし、マクロン大統領は、その日、朝から晩まで一日中を国際農業見本市の会場で過ごし、色々な立場の人々と話すことに費やし、また、最後には、3週間以内に全ての関係者を集めて、情報を収集し、農業保護計画を立てることを約束しました。

 その約束の結果の一部が今回のこの回答だと思われます。

 彼らの回答によれば、2026年からの農民所得対策の実施と、農業年金の計算方法の変更、Bpifranceに対し最大1億ユーロの新たな融資、最大7万5000ユーロの現金融資、そして困難に陥った農場への20万ユーロの融資の設定、税金の控除、気候変動(霜、洪水、干ばつなど)で最も大きな被害を受けている農家を支援するために5000万ユーロの割り当て、気候災害や健康災害が発生した場合に、未建築物件に対する固定資産税の減免率を引き上げる計画、100ヶ所の農業用水貯留または灌漑プロジェクトを加速させ、「2024年末までに完了」させることなどを発表しています。

 これには、彼らが要求していた海外の輸入品への規制などが入っておらず、農民たちは、まだまだ充分ではない!・・まだまだ矛を収めるつもりはない!と頑張っていますが、少なくとも、彼らの訴えにより、多くのことが変わろうとしていることに違いはありません。

 働いても働いても苦しくなるばかり・・こんな社会ではやってられない!そう感じるところは、日本にもたくさんあると思います。フランスのデモは、文化だと誇らしく言うフランス人は少なくありません。あまりに日常化しているデモやストライキに辟易とする部分もなくはありませんが、こうしたことをきっかけに政府や社会が時代に応じるカタチで変わっていくことは、必用なことなのかもしれません。

 日本には、あまり大がかりなデモやストライキなどの文化が根付いていないうえに、社会の不具合を指摘して、問題視していくマスコミなどの報道機関があまり機能していない印象で、どうにかして、変えていかなければいけないことが変わっていかない・・社会的なうねりとして変えていくことができていない気がしています。

 今回の農業に対する改革も農民たちの強い訴えがなければ、あり得なかった話です。


フランスの農業保護計画


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2024年4月27日土曜日

パリオリンピック開会式1週間前からの通行止めとメトロ・RER 17駅閉鎖

 



 オリンピックの期間中は、かなり厄介なことになるだろうな・・予想はしていたものの、少しずつ具体的なプランが発表され始めて、けっこうウンザリしています。

 パリ警視庁は、「2024年オリンピック開会式 安全保証セキュリティ システム」として、オリンピック前後の通行止め、駅の閉鎖などを発表しました。

 オーステルリッツ橋からイエナ橋までの 6 キロ以上のセーヌ川の上をボートでパレードし、トロカデロでグランドフィナーレセレモニーを行うという前代未聞のオリンピック開会式は、その警備も前代未聞のようで、その1週間前から、この開会式の行われる予定の中心部には、赤とグレーの境界線が設定され、一般市民も思うように動けなくなります。

 このあたりを通行するためには、デジタルパスを事前に用意する必要があります。

 歩行者と自転車は、デジタルパス、チケット、または式典へのアクセスを許可するアクセス許可を持っていることを条件として、このエリアへのアクセスが許可されますが、グレーのゾーンには一般車両(特別なケースを除いて)は通行ができなくなります。

 特に開会式当日 7月26日午後1時からは、治安部隊と緊急サービス以外は通行止めになります。

 また、7月18日から、このグレーのエリア内にあるメトロの駅は閉鎖され、これらの境界線を横切るバス路線は迂回路線を通ることになります。

 最も厄介なのはメトロで、1週間前から17駅が閉鎖されます。駅によっては、期間がもっと、長くなるため、注意が必要です。

<7月18日から開会式まで閉鎖される駅>

・Tuileries ①

・Concorde ①,⑧,⑫

・Champs-Elysées Clémenceau ①,⑬

・Alma Marceau ⑨ 

・Iéna ⑨

・Trocadéro ⑥,⑨

・Passy ⑥

・Quai de la Rapée ⑤

・Cité ④

・Javel ⑩

・Musées d'Orsay(RER C)

・Champ de Mars Tour Eiffel(RER C)

・ Pont de l'Alma(RER C)

・⑦号線の Châtelet (⑪号線を含む), Pont Marie, Pont Neuf, et Sully Morlandの区間は乗客を乗せずに通過します。

 また、Champs-Elysées Clémenceau ①,⑬駅、は、7月1日~9月21日まで閉鎖、アーバンスポーツイベントが開催されるコンコルド広場、Concorde ①,⑧駅、Tuileries ①は6月17日~9月21日まで閉鎖、Concorde ⑫は5月17日~9月21日まで閉鎖されます。

 もっとも、このあたりは、駅と駅の区間が短くて、これらの駅が閉鎖されても歩いて別の駅に行くこともできるので、まるで動きがとれなくなるわけではありません。ただし、以前、ラグビーワールドカップの時にコンコルド広場にラグビーヴィラージュができていた時に、試合によっては、周囲に近寄ることができないこともあったので(歩行者にも交通規制が敷かれていて、ものすごい迂回させられました)、そういうことがないとも限りません。

 また、トラムについても以下が閉鎖予定です。

・Porte d'Issy (T2) 、Porte de Versailles (T2, T3a)は、7月25日~8月11日、8月29日~9月7日

・Colette Besson(T3b)は7月27日~8月10日、8月29日~9月8日

 まあ、主な閉鎖駅に関しては、オリンピック開会式の前の1週間のことで、しかも、限られた地域(とはいっても、セーヌ川を沿ってパリを分断する感じ)ですが、とはいえ、今は机上のプランですが、実際にその期間になれば、ここに人が溢れかえった状態になっているわけで、最近、パリ市内を移動していても、ここも、ここも人で溢れかえるのか・・と想像するだけでゾッとしています。

 しかし、ここまでやるのだから、絶対に成功してほしいと思っています。セーヌ川の上で94 隻の船で 10,500 人の選手がパレードするなんて誰が考えたのか? これはテレビで見るしかないだろうし、綿密にカット割りなども美しく構成されているだろうし、成功したら、本当に素晴らしいし、楽しみでもあります。

 

パリオリンピック1週間前から閉鎖されるメトロの駅


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