高速道路を封鎖し、パリの街中まで農業用のトラクターなどが行進した農民たちの怒りが噴出した大規模なデモから2ヶ月が経ち、政府は、農民たちへの回答として、14項目の農業保護計画に関する措置を発表しました。
世界で起こっている戦争がインフレを加速させ、また地球温暖化による干ばつや洪水などの天候不順や、環境保護のための規制や、健康を守るための厳しい農薬基準等、がんじがらめに苦しめられている農民たちの怒りが爆発したのです。
また、フランスの農産物生産に課せられている厳しい規制が外国からの輸入品には、ほとんどスルーされている状態であったり、また、ウクライナを支援するためにウクライナからの農産物の関税を一時的に免税にしたりしているために、価格破壊が起こり、フランスの農産物は買い叩かれなければならない異常な事態が起こっていることなど、この農民の暴動がなければ、一般には知り得ないことが公になりました。
さすがに自国の農業生産者がここまで痛めつけられる結果になっていることに、多くのフランス人も「これはなにかがおかしい・・」と農民たちの気持ちを理解していた気がします。
2月に行われた国際農業見本市の場は、デモのトラクターが会場前に勢ぞろいする異例の雰囲気になり、開催初日にマクロン大統領が予定していた話し合いの場に環境保護団体や大量流通団体まで参加させようとした(丸め込もうとしたと受けとられた)ことから、さらに彼らの怒りは爆発し、この国際農業見本市があわやさらなる大暴動の火種になるところでした。
この話し合いを拒否し、一旦は、扉を閉じてしまった農民たちの代表の集まる場にマクロン大統領は、勇敢にも一人で立ち向かい、吊るし上げを食うようなカタチになった緊迫した場面もありました。しかし、マクロン大統領は、その日、朝から晩まで一日中を国際農業見本市の会場で過ごし、色々な立場の人々と話すことに費やし、また、最後には、3週間以内に全ての関係者を集めて、情報を収集し、農業保護計画を立てることを約束しました。
その約束の結果の一部が今回のこの回答だと思われます。
彼らの回答によれば、2026年からの農民所得対策の実施と、農業年金の計算方法の変更、Bpifranceに対し最大1億ユーロの新たな融資、最大7万5000ユーロの現金融資、そして困難に陥った農場への20万ユーロの融資の設定、税金の控除、気候変動(霜、洪水、干ばつなど)で最も大きな被害を受けている農家を支援するために5000万ユーロの割り当て、気候災害や健康災害が発生した場合に、未建築物件に対する固定資産税の減免率を引き上げる計画、100ヶ所の農業用水貯留または灌漑プロジェクトを加速させ、「2024年末までに完了」させることなどを発表しています。
これには、彼らが要求していた海外の輸入品への規制などが入っておらず、農民たちは、まだまだ充分ではない!・・まだまだ矛を収めるつもりはない!と頑張っていますが、少なくとも、彼らの訴えにより、多くのことが変わろうとしていることに違いはありません。
働いても働いても苦しくなるばかり・・こんな社会ではやってられない!そう感じるところは、日本にもたくさんあると思います。フランスのデモは、文化だと誇らしく言うフランス人は少なくありません。あまりに日常化しているデモやストライキに辟易とする部分もなくはありませんが、こうしたことをきっかけに政府や社会が時代に応じるカタチで変わっていくことは、必用なことなのかもしれません。
日本には、あまり大がかりなデモやストライキなどの文化が根付いていないうえに、社会の不具合を指摘して、問題視していくマスコミなどの報道機関があまり機能していない印象で、どうにかして、変えていかなければいけないことが変わっていかない・・社会的なうねりとして変えていくことができていない気がしています。
今回の農業に対する改革も農民たちの強い訴えがなければ、あり得なかった話です。
フランスの農業保護計画
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