2024年1月7日日曜日

アラン・ドロンの人生終盤の泥沼劇

   


 昨年から、アランドロンの家族間のゴタゴタ劇が報道されていましたが、気の毒なことにその騒ぎは、おさまっておらず、さらにヒートアップしているようです。

 現在、88歳のアランドロンは、どう考えても幸せそうではありません。

 2019年に彼の長年の映画界への功績を讃えてカンヌ国際映画祭で名誉パルムドール賞が贈られたその壇上で、彼は「これが自分が公に出る最後になる」といったような発言をしていましたが、恐らく彼は自分の体調の変化から感じていた率直な心情であったと思われます。

 彼はそれから約2ヶ月後に脳卒中を発症し、以後、療養の日々が続いています。

 アランドロンは、長年、彼の仕事のスタッフでもあり、また友人関係から徐々に恋愛関係に発展したといわれている日本人女性をパートナーとして選んで暮らしており、特に病に倒れてからは、彼女が彼の身の回りの世話、介護を全て行っていたようです。

 しかし、昨年になって、長男を中心とした彼の子供たちがこの女性を彼らを父親から切り離そうとしていると、「モラルハラスメント」で告訴、彼女を追い出してしまいました。

 この時点ですでに、おかしな話・・日常は寄り付かずに、介護は全て彼女に押し付けておいて、気に入らないことがあれば、家族で話し合えばいいことだし、なんといってもアランドロン自身が一喝すれば、済むことなのに、なぜ、告訴までして、長男がメディアにまで登場して、マスコミに公表する必要があるのか? 告訴状を受け取った検察も迷惑な話だろうな・・くらいに思っていました。

 しかし、あれから、またしばらくたって、今年に入ってから、今度は、長男が長女に対して、「父親がスイスで行った認知機能の検査の結果が著しく悪化していたことを妹が隠していた」と、妹を告訴するつもりであると告白。

 どう考えても、この長男、一応、俳優でもあるため、マスコミ慣れしているのか?やたらとインタビューに答えたりして、テレビにまで登場しますが、どう考えても一家をひっかきまわしている「困ったちゃん」です。

 また、この家族の事情をメディアの雑誌やテレビの取材を受けて、ペラペラと話していることに、アランドロン自身が激怒して、今度は彼が長男を名誉棄損で告訴するつもりがあると彼の弁護士が発表しています。

 アランドロンは、彼がこのような息子が展開するメディアに対して妹を攻撃したり、自分の老いを強調して世間に公表することに耐えられないと言っています。

 彼には正式に認知している子供は3人いますが、一番関係が近いのは、娘であり、彼の遺産も彼女が50%、息子2人には、25%ずつに分配する証書がすでに作成されているそうです。

 アラン・ドロンは、「アヌーシュカ(娘)とは異なり、息子アンソニー(長男)については、一度も彼のことを心から信頼したことはなく、今でも彼とはほとんど会ってはいない・・」、「彼は再び自分の名前を利用して、自分に不利な本を出版して知名度を上げようとしている・・」、さらに、「私を放っておいて、私の娘も放っておいてほしい」とも語っています。

 すると、今度は、この長男、父親の認知症を理由に「現在、検察が彼を司法的保護下に置くことを検討している」とし、検察官が署名した書類をインスタグラムに公開。この書類には「アラン・ドロンの医学的専門検査の結論によると、彼の識別能力は完全に廃止されたため、私は彼を司法の保護下に置く手続きを開始することを検討している」とあります。

 なぜ?この長男は、ここまで父親の名誉を傷つけるようなことを公表するのか? アランドロンの認知機能の低下がどの程度なのかは、具体的にはわかりませんが、あまりに思いやりがなく、哀しいことです。

 アランドロンは、最初の妻と結婚するときに、自分の人生にはどうしても自分の子供が必用だと語っていたと言われており、家族や子供への思いはことさら強かったと思われます。しかし、この子供たち(とはいっても異母兄弟)と自分をめぐるいざこざには、あまりにむごいことです。

 輝かしい功績を積んできた偉大なスターであった彼の人生の最終ページは、どう考えても幸せそうではないのです。富も名声も手にしても幸せとは限らない、むしろ、富と名声があったからこその今のこの事態なのかもしれません。


アラン・ドロン


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2024年1月6日土曜日

警察官6人が電磁パルス銃使用で30歳の男性死亡 電磁パルス銃ってなんだ?

  


 モンフェルメイユ(セーヌ・サン・ドニ イル・ド・フランス地域圏)の真夜中過ぎの食料品店で30歳の男性が従業員を襲おうとしていたところ、18人の警察官が出動し、尋問を行おうとしたところ、この男性が反抗して警察官の手に嚙みついたり、顔を殴ったりして暴れ、極度の興奮状態にあり、アルコールの過剰摂取に加え、薬物を摂取していると判断した警察官は、電磁パルス銃を使用して逮捕に踏み切りました。

 電磁パルス銃を使用したのは、18人の警察官のうち6人で、10発以上だったと言います。そもそもは、興奮状態にある男性を落ち着かせるために、男性に一時的ショックを与え、自由を奪うために、一般的な銃ではなく、電磁パルス銃を使用したと見られていますが、なんと、この男性、その後、パリ市内の病院に入院したものの死亡してしまいました。

 私にとって、電磁パルス銃とは、あまり聞きなれないもので、「なにそれ?、そんなものパリ近郊の警察官が持っているの?」とちょっと恐ろしい気もしましたが、この電磁パルス銃とは、別名テーザー銃とも呼ばれるスタンガンのようなものなようです。

 そもそも、この電磁パルス銃は、逃亡を図ろうとしたり、好戦的であったり、潜在的な脅威を持つ人物と対峙する際に一般的な拳銃のような殺傷能力の高い武器に代わるものとして開発されたもので、非致死性兵器と呼ばれていましたが、実際には、重症を負ったり、死亡した例が起こったために、その後、低致死性兵器に分類されているようです。

 今回の事件でも、目的は、あくまでも、局所的な激痛と一時的に筋肉を麻痺させ、その間に暴れる男性を逮捕することが目的だったと思われますが、結果的にこの男性は、死亡してしまったわけです。

 ただ、今回の電磁パルス銃は、6人の警察官により、約10発射たれており、そこまで必要であったのか?は疑問なところでもあり、また、この男性がアルコールによる酩酊状態であったうえに、薬物を使用していた状態でこの電磁パルス銃を受けたことが影響していたとも考えられます。

 いずれにしても、そもそもの事件を起こした本人が死亡してしまったことで、検察は、公権力を有する人物に対する故意の損害、反乱、暴力行為と、公権力を有する人物による暴力行為に関する2件についての捜査を開始しています。

 この男性は、以前から、薬物犯罪、暴力、窃盗、侵入、誘拐、犯罪歴があることが知られていた、いわば札付きの人物だったと言われてはいますが、それが電磁パルス銃で寄ってたかって結果的には撃ち殺してしまうというのも、なんだかな~?と思います。

 このような警察官による被疑者への発砲事件による死亡事件?が起こるたびに思うのですが、死刑制度のないフランスですが、死刑はなくても、現場で警察官が被疑者を殺してしまうって、どうなのかな?と、少々、矛盾を感じるうえに、あまりに多すぎないか?こういう事件・・とも思います。

 パリには色々な種類の警察官がいて、地域の警察官や国家警察、憲兵隊、特殊部隊など、どれがどれだか、よくわからないのですが、気を付けてみてみれば、それぞれ、持っている武器は違い、いわゆる拳銃から、ライフルのような銃身の長いものを担いでいるのを見かけたりすると、思わず、これ?ホンモノだよな・・などと思ったりもするのですが、この電磁パルス銃なるものも持っている場合もあるのだ・・と、いずれにしても、その武器の種類の多さだけでも空恐ろしい気がすると同時に、こういうものを携帯している必要がある治安の悪さがやっぱり一番怖いな・・と思うのでした。


電磁パルス銃 スタンガン テーザー銃


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2024年1月5日金曜日

マクロン大統領と岸田総理の年頭会見

  


 各国首脳が年始にあたって、演説や会見を行うことは、フランスでも日本でも同じですが、その方法は、かなり異なる印象です。

 私は、日本人ですが、フランスに住んでいるので、どうしてもマクロン大統領と岸田総理を比べてしまうのですが、今年の総理の会見は、日本人としては、どうにも、聞くにも、見るにも耐えないとしかいいようがない気持ちになりました。

 マクロン大統領の年頭会見は、年頭ではなく、大晦日の夜に一年を振り返りながら、新たな一年について語るという感じでしたが、意味合いは同じこと。しかも、会見というカタチではなく、一方的な演説のようなもので、エリゼ宮からの配信です。これは、毎年、同じです。

 まあ、どちらの国もどれほどの人が注目しているのかはわかりませんが、時間的には、双方ともに12分程度で同じではありますが、岸田総理はかなりゆっくり話しておられるので内容的には、少ないような気がします。もっとも、岸田総理の場合は、会見であるために、その後、記者からの質問に答えているので、少し補填されているので、一概には、判断できません。

 フランスでも国民がどの程度、この年末年始の大統領の演説を聞いているのかはわかりませんが、少なくとも、テレビのニュース番組などでは、このマクロン大統領の発言は一言一句といっていいくらい、考察され、これはどういう意味を持ち、どうなっていくのか?などという討論などが行われます。

 今年の日本は、元旦から起こった大震災のために、かなりイレギュラーなものとなったとはいえ、相変わらず、原稿をチラ見しながら、語る様子は、毎度のことながら情けない限りで、そもそも、最初に総理が登場したときに、スーツではなく、作業着のような姿で現れたので、これは、震災の話が中心になるのか?と思わないでもなかったのですが、総理が作業着が必用なような作業をするはずもなく、これは、単なる震災対応アピールの装いに過ぎないことは明白で、しかも、震災については、お悔やみやお見舞いなども含めて、冒頭1分ほどで、震災については他に会見も行われているという理由で、政治への信頼回復や憲法改正などについての話が中心になっていました。

 「装う」というのは、その場に応じた服装を身に着けるという意味と同時に、「ふりをする」という意味もあり、まさに、総理の装いは、震災対応やってますアピールに感じられて、空々しい印象の方が強い気がしてしまいました。

 やはり、国民が政治への信頼を失っているということは、ご自覚なさっているようですが、もしも、信頼を本気で回復したいのなら、今は、震災対応について、全力投球をするべきで、今、国民がしてほしいことは、今の瓦礫の下にいるかもしれない人や避難所で困難な生活をしている人にどうやって政府が救いの手を差し延べようとしているのかを説明し、国民全体が連帯して、この危機を乗り越えていこうと強く引っ張っていくリーダーとして、ぐんぐん進んでいく姿を見せてくれることの方がよっぽど信頼回復に繋がるのではないか?と思ってしまいます。

 作業着を着ただけでは、全然、伝わらないし、それこそ装っているようにしか見えません。

 マクロン大統領も、震災から数時間後には、お見舞いの言葉とともに、物的、人的支援を申し出ていましたが、フランスだけでなく、G7各国、中国、台湾など数十国からの支援の申し入れを受けているにもかかわらず、「態勢構築の作業や現地の状況を鑑みて、人的・物的支援は現時点で一律に受け入れていない」とのことで、何よりも、今、一時も早くに支援が必用なものを、上手く整理して、できるだけ支援を受け入れることができるように調整していくべきなのに、せっかくの申し入れを断ってしまうなど、信じられないことです。

 時間が経てば絶つほど、生存の可能性が薄れていってしまうというのに、いちいち、時間がかかり、「迅速に取り組む」などと言いながら、立派なのは言葉、口先だけ。

 総理は会見の中で、「世界が日本の安全と外交力の発揮を求めている」とおっしゃっていましたが、大震災というこの危機的状況の中で、総理がどのような対応をとっているかも注目されているわけで、それを作業着だけを着て、「国民の政治への信頼を回復する」と言いながら、海外からの支援をストップしているというのは、どうにも納得のいかない話で、これらも含めて、海外からの日本の外交力が欠如しているという烙印を押されかねないことです。

 一番、見るに堪えなかったのは、地震にまつわる原発問題について、記者からの激しい質問が投げかけられたところで、無理矢理、時間がないという理由で、無回答のまま、薄笑いを浮かべながら逃げるように立ち去ってしまったことで、「こんなこと、フランスだったら、あり得ない!」と、やっぱり思ってしまうのでした。

 この最後の質問を投げかけた記者の叫びのような「総理、聞く力はどこへ行ったのですか?」という言葉をスルーしてしまうなど、本気で国民の信頼を取り戻そうとしている態度には、どうしても見えないのです。


岸田総理年頭会見


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2024年1月4日木曜日

パリの美術館 軒並み過去最高来場者数記録

  


 パンデミックのために、一時はほぼ観光客が来なくなり、また、ロックダウンや感染対策のために、閉館になっていたパリの美術館も、すっかり活気を取り戻し、2023年は、概ね、どこの美術館も少なくとも前年を大きく上回る来場者を記録しています。

 なかでも、オルセー美術館は、年間来場者数390万人という歴史的記録を樹立しています。オルセー美術館の来場者数激増に大きく貢献したのは、「ゴッホ展」の開催で、この特設展は、高く評価されていました。

 また、オランジュリー美術館も120万人の来場者を記録しています。

 そして、なんといっても、パリで一番は、ルーブル美術館で、1日あたりの来場者数が3万人といわれ、こちらは桁違い、そもそも美術館自体の大きさも桁違いに大きいので、一度に入れる人数も全然違うので、簡単に比較することはできませんが、こちらは、年間来場者数が390万人と、過去最高記録とまではなりませんでしたが、前年比で14%増になっています。

 しかし、これらの美術館の来場者数の増加は、アメリカやヨーロッパからの観光客が大半を占め、依然として、アジア人観光客(日本、中国、韓国など)は戻ってきておらず、アジア人来場者は、ルーブル美術館来場者の 2.5%に過ぎないと言われています。

 かつては、日本人を含めたアジア人がかなりの割合を占めていたので、大きな変化です。

 パンデミック前にも、すでに日本人の観光客は、かなり減少傾向にありました。

 それまでは、大手旅行代理店のツアーで観光バスで大人数で押し寄せていた団体旅行客がいつのまにか姿を消しました。考えてみれば、以前は、パリの中心部には、観光バスがあちこちに停まっているのをみかけたし、ルーブル美術館の地下駐車場などには、ちょっとギョッとするほどの観光バスが常に停まっていたのです。

 それが、パンデミックを機にパッタリと止まり、それ以降も日本は長いこと感染対策が厳しかったこともあり、日本人が海外に出づらくなったうえに、戦争のために、ヨーロッパに来るには、一段と長い時間がかかるようになり、また、航空運賃も大幅に値上がりしたために、ますます日本人観光客の足は遠のいてしまいました。

 私が友人たちに、「パリにおいでよ!」などと誘っても、ただでさえ、休暇がとりにくい日本で、以前以上に往復移動の時間がかかるようになり、そのうえ、大幅な値上がりとなれば、足は遠のくのも当然かもしれません。

 パリには、大小併せて、約130以上の美術館があると言われていますが、うちの夫は、子どもを美術館に連れていくのが趣味という感じ?で、娘などは、一時、もう美術館には、食傷気味で、子どもの頃は、「また、ミュゼー???」と嘆く声をよく聞いた気がします。また、学校の美術の授業などで、ルーブル美術館に行ったりもしています。

 今から考えれば、我が夫にしては、なかなか上等な趣味で、あとから考えれば、つくづく贅沢な話だったと思いますが、身体を動かすことの方が楽しかった娘にとっては、厳しい修行だったかもしれません。

 しかし、小さい頃のそんな体験が役立ったのか、夫が亡くなった後でも、親戚や友人がパリに来てくれた時などで、私が仕事で休めなかった日などは、一緒に美術館に行って、案内をしてくれたりもしていました。

 娘も他人を案内したりして以来、一時、再び、美術館熱が高まって、やたらと美術館に行きたがり、しばらく、お休みのたびに、美術館巡りをしたこともありました。

 ルーブル美術館は、とにかく広いので、なかなか重い腰があがりませんが、それこそ、一度、パンデミックでしばらく閉館していて、やっと開館したばかりの頃、そして、まだ外国人観光客がパリに来ていなかった頃に、多くの人に、「行くなら今しかないよ!」と言われて、入場者よりも学芸員(美術館で働いている人)の方が多いような時期に行ったことがあり、ミロのヴィーナスを一人で鑑賞するという贅沢な体験もしました。

 しかし、後にも先にも、あんなことは二度とないだろうし、あってもらっても困ります。

 実際に、パリに観光に来る友人などは、ルーブルは広すぎて、時間もかかるし、大変なので、一応、外からだけ眺めるだけで、せいぜい、オルセーか、オランジュリーくらいにしておこうという人も多いです。

 今年は、いよいよオリンピックの年。オリンピック開催期間中も、パリの美術館は、通常どおりに、観光客は受け入れる予定にしているということです。


パリの美術館


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2024年1月3日水曜日

羽田空港での航空機衝突炎上事故にフランス BEA(民間航空安全調査分析局)が調査員派遣

 


 新年早々、2夜連続、フランスの夜のトップニュースに日本の話題が上がるなど、どうにも、やるせない気持ちになります。

 ふだんは、なんといっても、日本は遠い国で、ニュースに取り上げられることはあっても、トップニュース扱いということは滅多にないことなのです。

 前日の石川県能登半島での大地震でさえ、かなり衝撃的な取り扱いでしたが、翌日の羽田空港での民間航空機と海上保安庁の航空機の衝突による炎上はまさに炎が上がる・・✈が燃える映像は衝撃的で、民間航空機の乗客が事故直後に機内で撮影した映像も流され、機内の様子まで報道されていました。

 さすがに日本人、パニック状態でありながらも、客室乗務員の機内での支持は適切かつ的確で、暴れ出すような乗客も見えずに凄いな・・と思いました。

 飛行機は、ちょうど着陸するかしないかのタイミングだったとのことで、本来ならば、飛行機が着陸して、一応、ホッとするタイミングです。民間航空機の乗客は、全員、緊急脱出スライドから飛行機を脱出したとのこと。これがフランス人ばかり乗っている飛行機だったら、パニックの起こし方も桁違いに大変な騒ぎになっているだろうな・・などと想像したりもしました。

 消防隊がかけつけたものの、乗客全員が避難した後にあっという間に飛行機全体が焼けてしまったということなので、余計に冷静、迅速な避難で多くの命が救われたことを思うと、乗客の人々は、ほんとうに生きた気持ちがしなかっただろうと思います。

 飛行機に乗るたびに、酸素マスクの使い方や避難方法などがCAさんによって説明されますが、正直、私はロクに聞いたことがなかったのですが、やっぱりちゃんと聞いておくべきなんだな・・と思ったりもしました。

 衝突した海上保安庁の飛行機は、被災した石川県に数千人分の食料品や生活必需品などの救援物資を届けるところだったということで、余計にやるせない気持ちです。

 この事故に際して、フランスのBEA(民間航空安全調査分析局)(le Bureau d'enquêtes et d'analyses pour la sécurité de l'aviation civile)の専門家チームの調査員が派遣され、3日には日本に到着するという話を聞いて、なるほど、昨日の大地震に際して、マクロン大統領が被災した日本へのお見舞いと救助・援助を申し出ていたので、その一部が早々に実現するのか・・と、一瞬、思ったのですが、これは、飛行機事故の調査のためのもののようです。

 というのも、この事故機となった日本航空が使用していた飛行機エアバスA350-900型機は、フランスのトゥールーズで製造されたもので、そのために、BEA(民間航空安全調査分析局)の出動となったようです。

 このBEAは、通常はフランスで発生した重大な民間航空事故などについて、状況を解明し、原因と要因を特定するために、独自に安全調査を実施している機関なのですが、フランスで製造または設計された航空機に対して海外で事故が発生した場合に、国際規則で定められた条件の下で外国の対応機関が実施する調査にも貢献しています。

 調査の結果、セキュリティに関する推奨事項を伴うレポートを発行し、航空の安全性を向上させることを目的としているそうです。

 実際、この事故の原因等は、現段階では発表されていませんが、この年明け早々の災害に次ぐ、大事故、よもや、対応如何によっては、さらなる犠牲者も生まれかねなかった大惨事になるところだったことを思うと、大事故に接して妙な話ですが、日本の航空会社の方が信頼できるかも?とも思った事件でした。


羽田空港 航空機衝突炎上事故 フランスBEA民間航空安全調査分析局


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2024年1月2日火曜日

フランスでも石川県での地震は夜のニュースのトップ記事

 


 こちらは、のんびりと元旦の一日を過ごしていて、友人たちに「あけましておめでとう」のメッセージを送ったりしていたら、日本の友人たちから、「石川県ですごい地震があって、大変らしい・・怖い・・」というようなメッセージが返ってきて、初めて、日本で大地震があったことを知りました。

 それから、しばらく、ネットのニュースを見たりして、津波の様子やニュースで、「すぐに逃げてください!家や財産よりも命が大切です!」などと、テレビで呼び掛けているのを見て、ほんとに怖いな・・地震って忘れた頃にやってくる・・しかし、しかも元旦なんて、あんまりだ・・と思っていました。

 パリにいると、地震というものはないために、地震というものを忘れがちになっているのですが、フランス人などには、体験がないために他の国の地震などの災害と比較して客観的に見るので、また違った見方をするようです。

 これだけ大きな地震ならば、フランスでも報道されるのだろうな・・と思っていたら、夜8時からのニュースでは、トップニュースとして石川県のニュースが扱われていました。

 地震での被害の様子、駅やコマーシャルセンターの中、一般の家の中、津波が押し寄せる海、地割れを起こしている場所などの映像が次々と流され、被害状況を伝えていました。

 それだけで終わりかと思っていたら、現在、日本当局の発表によると、死亡者は4人だけで(翌日の発表では55人、その後は増え続けているけれど・・)、なぜ、これほどの被害にもかかわらず、日本は最小限の被害に抑えられるのか?という解説もしていました。

 それによると、日本人は常日頃から、地震などの災害に対する訓練を欠かさずにしていて、学校などで行われる避難訓練で机の下に避難したり、落ち着いて行動する訓練をしており、緊急連絡先に問い合わせができたり、緊急避難先などを徹底しており、また、大きな建築物なども耐震構造になっているために日本は、このような大災害にもかかわらず、最低限の犠牲者に抑えることができるのだと解説していました。

 ニュースでは、日本駐在のフランス人などからの話を聞いていて、「日本人は、災害に慣れている・・自分よりもこどもたち(現地の学校に通っている)の方がよっぽど落ち着いて、適格な行動をしていた・・自分はただただ怖かった・・」などと語っていて、さもありなん・・日々の訓練や災害教育って大切なんだな・・と思いました。

 ちょっと日本が褒められたみたいで嬉しかったです。

 しかし、一方では、今回の震源地と言われている石川県志賀町には、原子力発電所があり、現在は、原子力発電所の敷地内に活断層があるという議論が続いていたために、稼働していなかったとのことで、大事にはならずに済みましたが、この原子力発電所を稼働させろと経団連がせっついていたとのことで、もし、これが経団連や政府の圧力により稼働していたら・・と思うと恐ろしい話です。そんな危うさが日本には、あります。

 地震などの自然災害は、戦争などとは違って、大自然が相手の予測も反撃もできない大変なことで、こういった大地震が忘れた頃にやってくる・・また、いつ、どこにやってくるのかもわからない災害を抱えている日本は、その国民性にも影響しているんだろうな・・とも思ったりもします。

 フランスでは、どちらかといえば、災害より人災が多く、それでも最近は、異常気象のためか? しょっちゅう、洪水という自然災害が増加しています。ここ数年で特に多くなってきた災害とはいえ、洪水を避けるとまではいかないまでも被害を少なくできるような防御策とか、対応策はないんだろうか?と思ってしまいます。

 パリのセーヌ川でさえも、毎年のように洪水とまではいかなくても、川の水位が上がり過ぎて、バトームーシュなどの遊覧船などの船が橋の下を通過できなくなる・・なんて話は、ずっと前からよく聞く話です。

 フランスも災害を回避、軽減する方法、日本から学んでほしいけど、日本もフランスから学んでほしいことはたくさんあります。


石川県能登半島地震


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2024年1月1日月曜日

2023年のフランスを振り返る

  


 毎年、恒例の大晦日の大統領の演説を聞きながら、そういえば、2023年も色々なことがあったな~と思い出しています。個人的には、どんどん時の経つのが早く感じられる中、この一年もまた、あっという間に経ってしまった気がするのですが、思い返してみると、大きな出来事がたくさんあったんだな・・とあらためて思い出されるのです。

 ここ数年は、パンデミックがあったり、突如、戦争が始まったり、世界的にも動乱のときとも言えるのですが、この一年は、フランス国内だけでも、なかなか激しいできごとが起こった年でもありました。

 マクロン大統領は、この年末の演説の中で、イスラエルやウクライナでの戦争にふれつつ、この大きな暴動が続いた一年を「フランスは間違いなく、最も多くの決断を下し、最も多くの変革を実行した西側諸国の一つだ!」と述べました。

 なるほど、たしかに事実ですが、上手い言い方です。

 たしかに、年明けからの暴動は、年金改革というか、定年延長、今では懐かしささえ感じる憲法49条3項についての少々、強引な推し進め方に反対のデモから暴動がおこりました。

 これは、あちこちで起こる暴動とともに、今までには例を見なかったゴミ収集業者のストライキという荒業のために、街中にゴミの山ができて、ゴミが溜まるだけでなく、そのゴミがあちこちで燃やされるという無残なものとなりました。

 また、夏頃には、検問を拒否した未成年の少年を警察官が射殺してしまったことによる公権力の暴走行為への抗議の暴動がエスカレートし、それがSNSにより拡散されるだけでなく、スナップチャットなどの機能を使って、いわばゲーム感覚のように競い合って行われる異常事態に発展し、見境なしに、夜中に店舗が襲われて、強奪行為が続出したり、一方では、市町村の議員の自宅が狙われたり、ついには、昼日中にもコマーシャルセンターに押し入って来たりと、私もすんでのところで巻き込まれそうになるという危うい思いもしました。

 そして、年末には、かねてから、予告されていた移民法の改正が採択され、不法移民をより厳しく取り締まるようになりました。

 マクロン大統領は、激動の一年を、国民には、不人気であること(特に年金改革)は、理解しているが、これらの決定は、未来のフランスのために絶対に必要なことであると確信していると述べています。

 これらは、将来の世代に対する私たちの義務であり、フランスは国のために行動する人々の側にたゆまぬ寄り添いを約束すると力強く語っています。

 2024年はオリンピック・パラリンピックが私たちの美しい国、フランスで開催され、12月には、パリ・ノートルダム大聖堂の公開が再開されます。

 こうして、マクロン大統領が年末の演説をするのも7回目ですが、こうして、いつもどおりフランスを誇らしい国として堂々と語る様子を見るにつけ、どうしても、日本の政治家と比べてしまいます。

 フランスの大統領って、つくづく大変だろうな・・と思います。受け入れがたいことがあれば、野党はもちろんのこと、国民も黙っておらずに、すぐにデモ、ストライキ、暴動へと発展します。

 マスコミへの回答にしても、日本の政治家のような「現段階での説明は差し控えさせていただきます・・」なんていう言い訳は絶対に通りません。国民だってそんな回答は納得しません。納得しないどころか、そんなこと言った時点で、政治家の資格はないと烙印を押されると思います。

 フランス人は、子どもでさえも、政治についての話をするくらい(家庭での大人の話題の影響だと思いますが)、政治への関心が高いのです。これはとても大切なことです。

 政治家の活動や発言に、国民が無関心ではないのです。だから、すぐにデモが起こったり、それがエスカレートして暴動が起こったりもするのですが、日本の政治家の現在の状況を見ているとそれさえも、大暴れするフランス社会の方が健全な気がしてくる一年でした。


2023年のフランス


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