週明けにTF1(フランス国営放送TV)で放送された独占インタビューの中で、マクロン大統領がこの5年間で中産階級を対象に総額20億ユーロの減税を実施すると発表しました。
「一生懸命働き、子供たちをしっかり育てたいと思っている人々、そして今日、生活費の上昇と賃金動向のために、家計をやりくりするのに苦労している中産階級を対象に対して、少しでも豊かな生活を送れるように減税政策を検討する」というものです。
また、「人々の生活を少しでも楽にするために取る措置は、「減税」が賢明な方法であり、それは、購買力を促進するための価格の値下げやクーポンの配布ではない」という文言も付け加えています。
これに伴い、月収1,500ユーロ~2,500ユーロの人々が減税対象になると見込まれていますが、本来ならば、喜ばしいニュースのはずが、かなり反発の声も上がっています。
大反発を受けている年金改革を決定したマクロン大統領が一見、美味しそうな話で国民の機嫌を取ろうとしている・・これには、決して国に損にはならないトリックが隠れている・・おまえなんか、もう信用できない・・もう騙されてたまるか・・そんな声が溢れているです。
たしかに、年金問題では、このままでは年金制度が破綻するから、2年余計に働けと言っておいて、減税など、ちょっとおかしな話のような気もします。
これを聞いていて、たしかに減税はありがたい話ながら、これは所得税に対してのもので、消費税などが減税されるわけではありません。物価の上昇を止めずに商品の価格が上昇し続ければ、結果的には国が入る消費税などの収入は増加し続けることになります。
また、この話は、中産階級対象と言っているのも、一見、困っている人々を対象に手を差し伸べているようにも見えますが、実際のところ、彼らは高額納税者ではなく、そもそも減税といっても、国にとっては、大きな痛手でもないのです。
これは、なんだかスーパーマーケットで「アンチインフレ」などと、銘打って対象商品は半年間値上げしないなどと、値上げしない商品を選んでアピールしているやり方に似ているかもしれないと思うのです。
アンチインフレ商品に選ばれているのは、もともと、値上がりしたところで大した金額にならない商品ばかりが選ばれていて、そりゃ~値上げしないでいてくれるのはありがたいけど、これらの商品が値上がりしたところで、大した金額にはならないのに、こんなもので恩着せがましくされるのもなんだかな~・・という感じがしたのです。
消費税に関しては、その商品によって税率が違いますが、「購買力をあげるための価格の値下げはしない」と言っているのですから、減税された分は、言い方はちょっと悪いのですが、結局はまき上げられることになっているという見方が強いのです。
普段、日用品などの買い物をしている時には、内税のために、あまり消費税に対してはピンときていないのですが、たとえば、ここのところ急上昇している電気代などでは、請求書にもともとの消費電力に基づいた電気料金プラスTVA(消費税)の内訳が記載されていて、税金は15%程度で、これを乗せられた金額が請求されています。
価格が上昇している電気料金など、15%が上乗せされると、結構、インパクトがあり、逆に、こんなに税金払ってるんだ・・とちょっとウッときたりもします。考えてみれば、世の中には、消費税以外の税金はいくらでもあって、最近は、日本からの荷物の受け取りにまで税金を取られるようになりました。
どちらにせよ、少しでも減税してくれることはありがたいことには違いないはずなのに、こんなにも懐疑的な声があがることの方がちょっと驚きで、国民へのご機嫌とりのつもりが、やはり、こんなに信用されてないんだ・・と思わせられた今回の減税措置の発表でした。
また、この減税の発表をなぜ?総額20億ユーロ、中産階級対象というざっくりとした発表の仕方にしたのか? なぜ、インタビュー形式にしたのか?なんだか、最近、やることなすこと、全て裏目に出ている感じのマクロン大統領。
現在の状況で彼の発言することが懐疑的に受け取られるのは必須にもかかわらず、せっかく減税するならば、もっと明確にどんなに人々の助けになるのかを示さなければ、逆効果になりかねないことを想像できなかったのは、やはり国民の気持ちを理解していない国民とはけはなれた存在の宇宙人のようだと言われてしまうのもわからないでもありません。
フランス中産階級減税
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