2021年11月21日日曜日

古き良きパリを体感できる庶民派フレンチレストラン シャルティエ BOUILLON CHARTIER Grands Boulvards

   


 パリの外食は高いです。パリにいる時は、外食の値段を日本円に換算しようものなら、バカバカしくて、本当に嫌になるので、しないようにしていますが、逆に日本に行って、外食の値段をユーロに換算して考えると、たちまち目が輝いてしまいます。

 日本でもそれなりに高級なレストランならば、これまたなかなかなお値段ではありますが、一般的に言って、日本での外食は、恐ろしく安くて、嬉しくはあるものの、これでどうやってやっていけるの?とそれはそれで、このしわ寄せが必ずどこかに行っている(正当な対価が支払われていない部分がある)ところが、現代の日本の別の問題の一面であるような気もします。

 例えば、パリでランチを食べようと思えば、安くて15ユーロ程度(約2,000円程度)は、余裕でかかります。パリでまずまずのフレンチを食べようと思ったら、なかなかな値段なわけです。

 そんな中、パリのこのシャルティエ(Chartier)というレストランは、なかなか庶民的なお値段で、凝ったメニューではありませんが、ごくごく一般的なフレンチを楽しめるお店で、前菜、メイン、サイドメニュー、デザートなどが細かく注文でき、ちょい飲みしようと思ったら、サイドメニューを数品頼んで後は飲む(飲むことばかり考えている)ようなこともできます。

  

この日、前菜に頼んだロゼットとセルリレムーラード

 お値段もとてもお手頃で、テリーヌ3.5€、キャロットラペ(人参サラダ)1€、セルリレムーラード(セロリアック・セルリラブ根セロリのサラダ)2.7€、フライドポテト2.5€、ニシンのフィレのオイル漬け3.8€、エスカルゴ(12個)14.8€、などなど、ごくごく一般的にどこの家庭でも食べているようなものでありながら、本格的な味を楽しめます。

 ビール・カクテル類も3.5€前後、ワインもハーフボトルで6〜10€程度です。

 メインはお魚のメニューは少ないですが、お肉料理はステーキからローストチキン、鴨のコンフィ、シュークルート(アルザスの名物料理でキャベツなどの野菜と肉類を煮合わせたもの)、豚足料理、ビーフブルギニヨン(牛肉の煮込み料理)などなど、ガッツリと食べることができます。(こちらも6.5€から11€程度)

シャルティエのメニューのサイト


             スズキのグリルとビーフブルギニヨン



 そして、何よりもこのお店が楽しいのは、1896年創業という歴史ある店内の作りで、入り口の回転扉から一歩、足を踏み入れると、当時にタイムスリップしたような、まるで映画のセットかと思ってしまうような当時と同じ雰囲気の空間が楽しめることです。
  


お店の入り口は回転扉 もちろん手動

 白いシャツと黒いベストに身を包んだウェイター(女性も少数ですがいます)がお出迎え、席に案内してくれます。テーブルには、白い紙のテーブルクロスが敷かれ、席に着くと、メニューとグラスとパンが運ばれてきます。

 メニューは一応、日替わりとなっていて、日によって多少、違いますが、レギュラーの人気メニューはほぼ不動です。このお店の面白いところは、オーダーをその紙のテーブルクロスにボールペンで書いていくことで、自分が何を注文しているのか、確認することができます。(もっとも、字が汚いので、解読不能な場合も多い)合理的といえば、合理的なこのシステム、パリでは他のお店では見たことがありません。

  

オーダーは紙のテーブルクロスに手書き

 フランスのレストランでは、パンは水のような扱いなので、頼めばもっと持ってきてくれますが、まあほぼ充分過ぎる量なので、パンのおかわりをしたことはありません。

 天井の高い広いお店で一部、一階席を見渡せる2階席部分もありますが、大変な人気店のため、食事時には、お店の前に行列ができ、常時、行列用の赤い太いロープが用意されています。

   

行列前提で、並ぶためのロープが常設されている

 大混雑していて、かなりざわざわした感じながら、閉塞感がないのは、この広いホールのような高い天井のせいかもしれません。

 地元のパリジャン・パリジェンヌはもちろんのこと、ヨーロッパからの観光客にも人気のお店のようで、先日、行った時はドイツ人のご夫婦と相席でした。

 気取らずに、どこか大衆食堂のようでありながら、しかし、どこか格調高い雰囲気もある古き良きパリの空間がそこだけ現代に残っているようなそんな気分を料理と共に味わうことができます。

トイレの前の駅のような看板

 パリにいらした際には、星付きの高級レストランも良いですが、こんな感じのレトロな雰囲気を味わえる庶民派レストランも地元の民の雰囲気が味わえて楽しいです。


レストラン シャルティエ パリ


⭐️BOUILLON CHARTIER Grands Boulvards

   7 Rue du Faubourg Montmartre 75009 Paris 

   11:00~23:00(月〜金)、11:00~00:00(土・日)

 メトロ8・9号線 Grandes Boulvardsから徒歩1分



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2021年11月20日土曜日

海外在住邦人の日本での国民年金の支払いと受給について

   


 海外に長く住んでいると、別に仲違いしたわけではなくとも、自然と連絡しそびれたりしているうちに、友人と音信不通になることはよくあることで、そんな音信が途絶えていた学生時代の友人から、ひょっこりと連絡をもらって、ほぼ10年ぶりくらいに話をしました。

 その間、お互いの私生活にはそれぞれ色々なことがあって、意図的ではなかったにせよ、彼女と連絡をとらなくなったのには、その間、彼女にも私にも色々なことが起こっていたことがわかったのですが、それでも、その間の隙間を飛び越えて、昔の二人の感覚があという間に蘇ったのが嬉しくて、時差があることも忘れて話し込んでしまいました。

 私も海外に出て長くなりますが、もともと最初に海外に出ていたのは彼女の方で、私が海外に出ることになったことは、彼女の影響がないとは言えません。その後、彼女は日本に戻って生活していますが、相変わらず、彼女のユニークさは変わることはありませんでした。

 そんな彼女が紆余曲折を経て、現在は日本で年金事務所に勤務しているので、さらにビックリ! しかもその事務所が移転のために私の実家のすぐ近くに引っ越すとかで、またまた奇妙な縁というか繋がりに驚いたりもしたのでした。

 日本の年金については、気にかかってはいたものの、どうせ、年金の受給などは大した金額にはならないであろうし、まだまだ先のこと、色々と調べたところで、どんどん条件は変わるし、今から考えても仕方がないし・・と放りっぱなしにしていたので、これはよい機会だと、年金について彼女に少し教えてもらったのです。

 私は日本でも結構な期間、日本の企業で働いていたこともあったので、その会社を辞めた時点で厚生年金から国民年金に切り替えて、本格的に海外生活を始めるにあたって、当時、今までの分が掛け捨てになってしまうのはもったいないから、続けて払っておいた方がよいと母が強く言うので、「まあ、それもそうだな・・」と深く考えもせずに日本での住民票を抜いたにもかかわらず、国民年金は自動引き落としにして、払い続けてきました。

 当時は国民年金の支払いは義務化されてはいなかったと思いますが今では20歳以上の日本に住んでいる国民にとって、国民年金(あるいは厚生年金)の支払いは国民の義務だとかで、支払わない人には、催告状・督促状・呼び出し状などの取り立てが行われ、しまいには強制徴収として、国税局預かりになるのだとか・・。

 支払いができない場合は、免除申請(4分の1〜4分の4、全額免除)を申請することもできるそうです。

 私のような海外在住者に対しては、住民票を抜いている限り、国民年金の支払い義務はないのですが、受給するためには最低でも10年以上の加入期間が必要なので、中途半端に日本で国民(厚生)年金を支払っていた経緯のある場合はそれを無駄にしたくないならば、海外任意加入の手続きをして、少なくとも10年に達するまでは支払う必要があるようです。

 それでも、私が国民年金を自動引き落としにして海外に出た頃は、年間10万円前後(1年間分一括払いだと若干割引になる)だったので、なんとなくそんなつもりで放ったらかしていたら、気がついたら、それがいつの間にか20万円近くになっていてギョッとしましたが、これまで長々としはらってきたことを考えると今さら引くに引けない感じで、まあ父が年金で生活しているのだし(現在は亡くなっていますが)、父のためにその一部を払っていると思うことにしようと思って払い続けてきました。

 国民年金は現在1ヶ月16,610円、1年分一括払いだと少しお得に、2年一括払いだとさらにお得になるそうです。国民年金の支払いは60歳の誕生日の1ヶ月前に終了。しかし、受給できるのは65歳以降、ただし、厚生年金に加入していた期間がある人に関しては、その比例報酬部分は前倒しに63歳から受給が可能な場合もあります。(生まれた年によって少しずつズレるそうです)

 しかし、日本の会社からの海外駐在員なら別ですが、普通、一般的には海外で生活していて、たとえ働いていても収入があるのは海外で、日本での収入がないのが普通ですから、収入がない中、日本での年金を支払い続けるのはなかなか厳しいことでもあります。

 ただし、日本と社会保障協定を結んでいる国(ドイツ、イギリス、アメリカ、ベルギー、フランス、カナダ、オーストラリア、オランダ、チェコ、スペイン、アイルランド、ブラジル、スイス、ハンガリー、インド、ルクセンブルグ、フィリピン、スロバキア、中国など)との間には、年金の計算を相互どちらか選んで加算してもらうことができるそうなので、それはそれで別の手続きが必要になるそうです。

 国民年金に限って言えば、20歳から60歳までの満了期間を支払って1年間の支給額は78万円。月々6万5千円が受給できます。現在の国民年金の支払い金額で換算すると480ヶ月として7,972,800円支払うことになります。合計すると相当な金額です。

 私が今まで支払ってきた金額を計算したことはありませんが、これは、国民年金を継続しておいた方がよかったのか? 10年で受給資格を満たしていたならば、もっと早くに辞めて、その分は貯金しておいた方がよかったのかな?などとちらっと思うこともありますが、これまであまり真剣に考えてこなかったので、私の場合、時すでに遅しです。

 海外在住者の場合は移住先の国との関わり等もあるようなので、一時帰国した際は一度、確認してみるとよいかもしれません。厚生年金、国民年金ともに個人個人は「基礎年金番号」というもので管理されているそうです。現在のところ、マイナンバーでの確認には必要書類がさらに倍増するとかで、この「基礎年金番号」をまず確認することが必要なようです。

 ひょんなことから、急に年金のことが気になり始めた私ですが、いくら先のこととはいえ、知っていれば、それなりに対処することもできたのでは・・と今になって思います。

 フランス人が、しばしば年金問題でデモやストライキをおこしたりするのを「まったく仕方ない人たちだな・・」などと横目に見てきましたが、実際のところ、私はこれまで自分の年金問題については、ほぼ考えることもなく、ただ漠然と過ごしてきてしまいましたが、友人からの話で急に「いやいや・・私も放置しておいてはいけない!」と遅ればせながら、思い始めた次第です。

 次回、日本に帰国した際には、一度、年金事務所に行って、色々と詳しい手続きを聞いてこようと思っています。

 また日本はこの年金の問題もどう考えてももらう人と払う人のバランスが悪すぎで、半ば諦めている人も少なくないのかもしれませんが、少々、話が飛躍しますが、やはり、海外からでも選挙には投票に行かなければ・・などとも思うのです。そういえば、在外選挙人登録をしたのに、まだ、通知が来ていません。

 

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2021年11月19日金曜日

ボジョレー・ヌーボーは、あまり注目されなくなった・・

   



 私が日本に住んでいた頃は、もう20年以上も前のことになりますが、ボジョレー・ヌーボー解禁の日は、メディアでも大きく取り上げられ、なかなかのお祭り騒ぎでした。

 フランスに来たばかりの頃は、それでも、フランスでもボジョレーは一応、フランスでも解禁日には、職場で買ってきてみんなで飲み比べをしたりもしたり、スーパーマーケットなどでも特別なコーナーが大きく設けられていたりしたので、今よりはもう少し、盛り上がりを見せていたような気がします。

 それが、年々、スーパーマーケットなどでも扱われ方が小さく、雑になり、また、あまり人が群がるようなこともなくなったのには、少々、寂しい気がしています。

 昨日、「そういえば、今日はボジョレー解禁日だった!」と思い出して、近所のスーパーマーケットを覗いてみると、寂しい限りのボジョレーコーナー、しかも周囲に興味のありそうな人もおらずにひっそりと5〜6種類のボジョレーが積み上げられていました。

 昨年もすでにずいぶんとボジョレーも衰退したな・・という感がありましたが、今年はますますその感が強くなった印象です。そうでなくとも、最近ではフランスの若者のワイン離れが伝えられ、ビールやウォッカ、モヒートなどのカクテルや、逆にウィスキーなどの人気が高まり、スーパーマーケットにあった大きなワインカーブが縮小され、代わりにビール売り場が拡大して、ビールも多くの種類がおかれるようになりました。

 それでも、フランス料理には欠かせないワインは、やはりフランスでは大きな位置を占めていることに、かわりがないのですが、もともとあまり長い期間の保存が効かない(最大6ヶ月保管可能)若いボジョレーは季節限定であるがゆえにその時だけ、一瞬、注目されるだけのもの、たまにボジョレーを手にとっている人も年齢層が比較的高めで「今年のボジョレーを味見してみよう」といった感じのまさに年中行事を変更することのない人々といった印象です。

 昨年から続くパンデミックはさらにこのボジョレー解禁のお祭り行事から、一層、人を遠ざけているのかもしれません。

 今年は、春先にワイン畑に霜が降りたりした気候もワインに大きな影響を与えたと言われていますが、このボジョレー地方も少なからずその影響を受けており、メーカー側は今年のボジョレーは、「アルコール分が少なめで、より軽く、よりフルーティーで飲みやすい」と、「物は言いようだ・・」と思われるような宣伝の仕方をしています。

 1980年代に、この特別に早くに解禁日を迎えることを利用して、盛り上げる商業戦略にのったボジョレー・ヌーボーは、本来のブラックガメイ種の葡萄の本来の風味を際立たせる、より自然で伝統的なプロセスから、アルコールの少ない控えめな飲み物から、赤い果実の香りを引き出すことを目的として、イチゴやラズベリーやスミレの味を際立たせるために人工酵母の使用、発酵前の浸軟(ワインの着色と風味付け)、補糖(砂糖を加えてアルコールレベルを上げるプロセス)する製造方法が体系的になりつつあり、本来の風味とは異なったものとなってしまっている可能性があります。

 それでもフランスワインの中での一定の割合でのマーケットになっているボジョレー・ヌーボーは、フランスだけでなく、海外でも110カ国以上で4000万本以上のボトルが販売されており、その生産の40%は海外に輸出されています。

  

ボジョレーヌーボーの輸出先

 中でも日本はその4分の1を占める世界で最も大きなボジョレー・ヌーボーのマーケットになっています。

 時差の関係で、この11月の第3木曜日をフランスよりも早く迎える日本は、その解禁のタイミングを上手く盛り上げて、このボジョレー・ヌーボーをより広く販売することに成功したのです。

 今年のボジョレーの葡萄の収穫は9月の中旬に始まり、2週間程度で終了、もともとボジョレー・ヌーボーは、製造過程に4日間しかかからないという製造プロセスであるために、価格も安く、フランスでは4.5ユーロ(約580円)から7ユーロ(約900円)程度で売られています。

 値段は安くても、ワインならば、一年中を通して、それほど高価なものでなくても、そこそこのクォリティーのものが楽しめるフランスで、わざわざボジョレーでなくとも良い・・そこまで感動しない・・というのが私の正直な印象です。

 それでも、おススメのボジョレーが掲載されていましたので、ご紹介しておきます。

 一般的に売られている物よりは少しお値段は高めではありますが、ワイン通でボジョレーを楽しもうとなさる方には、元来のボジョレーの味と風味を楽しめるものかもしれません。


○Frédéric Berne - Beaujolais Nouveau Gamay Noir 2021(フレデリック・ベルン-ボージョレヌーボーガメイノワール2021)・Prix conseillé : 11€

○Château de Lavernette - Le Jeune 2021・Prix départ au caveau : 9,50€

○Domaine Jean-Gilles Chasselay - Beaujolais Nouveau «Cuvée Classique» 2021・Prix départ cave : 9€

○Kévin Descombes - Cuvée Kéké 2021・Prix : 12€

○Domaine des Terres Dorées - L’Ancien 2021 ・Prix : 9€ la bouteille de 75 cl et 42€ le BIB de 3L


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2021年11月18日木曜日

フランスは本格的に第5波に乗り始めた!

   



 現在、周囲のヨーロッパの感染拡大の急増が顕著な中、フランスの感染状況は増加傾向にあるとはいえ、比較的、安定している状況に見えていました。

 フランスでの1日の新規感染者数が1万人を突破したのが、11月3日(10,050人)、そして、その2週間後の11月17日には、あっという間にその2倍の2万人を突破(20,294人)してしまいました。

 いくら他のヨーロッパの国よりはワクチン接種率があがっているとはいえ、依然として4人に1人はワクチン接種をしていない状態。感染者数が増加すれば、感染のリスクが増加するのは当然のことです。

 ヘルスパスのシステムが導入されたことで、フランスのワクチン接種率は急激に上昇し、感染のリスクが高いレストランやカフェ、娯楽施設、文化施設、人の集まる場所はワクチン接種済みであるか、検査陰性証明書がある人のみがアクセスできる空間になることで、ある程度、守られた状況になってきたことで、これまではフランスの感染拡大はある程度、抑えられてきました。

 他のヨーロッパの国々は急増する感染状態に対応措置として、急遽、部分的なロックダウンやワクチン接種をしていない人に対してのみ、ロックダウンをしたり、フランスのヘルスパスに似通った措置を取り始めているのを見て、フランスは、もうとっくにそのような措置はしてきている・・フランスは大丈夫だろう・・というか、これ以上、どうしろというのだ?と正直、思ってきました。

 しかし、初期にワクチン接種をした人々のワクチンの効力は落ち始め、そもそも一度もワクチンをしていない人も国民の4分の1程度はいる中、政府は高齢者から3回目のワクチン接種を進める方針を打ち出しましたが、どうやら、あまりのんびり構えてもいられない状況になってきてしまったようです。

 現在、フランスでコロナウィルスのために入院している患者数は7,663人、一週間で22%も増加しています。

 そして、何よりもこの1日の新規感染者数も実際の数字とはかけ離れている可能性もあります。というのも、10月15日からコロナウィルスの検査が有料化になって以来、この検査数が少なくとも45%は減少しているという事実があります。

 これは、それまでは、ヘルスパスを72時間以内の陰性証明書で乗り切ってきた人々をワクチン接種に向かわせるため(もちろん財政的な問題もあったでしょうが・・)という政府の思惑があってのことだったと思いますが、現実には、仕方なくそれでワクチン接種をした人々もいるとはいえ、多くの人々が検査をしなくなり、結果、陽性の人がそれに気付かずに野に放たれてしまったとも言えます。

 有料になったコロナ検査は、場所によっても異なりますが、PCR検査の場合は約43.89ユーロ、抗原検査の場合、22.02ユーロから45.11ユーロです。これをこまめに検査し続けることはなかなか困難なことで、検査数が減少するのも無理はなく、政府の思惑とは反対の意味で、感染を再拡大させてしまう要因の一つになってしまったとも考えられます。

 コロナウィルス感染が拡大し始めた頃は、とにかく検査・隔離が最重要案件であったにも関わらず、ワクチン接種にばかり焦点が行き過ぎて、この肝心な検査と隔離がないがしろにされてきてしまったかもしれません。

 コロナウィルスが絶滅するか、ワクチン接種がさらに拡大しない限り、この検査と隔離は常に続けていかなければならない問題なのです。

 とにかくワクチン接種を!ソーシャルディスタンスを!マスクを!とひたすら叫んでいる今のフランス政府に欠けていることは、再び検査を拡大し、感染してしまった人を見つけ出し、隔離することです。

 またヘルスパスに慣れきってしまっている状況のフランスではそのヘルスパスのチェック自体も緩くなってきてしまっていることもあります。

 あと1ヶ月ほどするとフランス人にとって、バカンスの次の一大イベントであるノエルの季節がやってきます。クリスマスマーケットや家族での集まりなど、感染拡大とともにノエルがぶち壊しになってしまうのか?と案ずる声が上がり始めています。

 フランスでもワクチン未接種者のみのロックダウンという方法もないことはありませんが、政府のやり方が気に入らないとワクチン接種を拒否している人もいる中で、この人々に対してさらなる締め付けは、来年に、大統領選挙を控えている現在、政府にとっても躊躇われることでもあるのでしょう。

 私は、さらに感染が拡大していってしまう前に、検査を再び無料化し、検査を拡大し陽性者が隔離状態に留め置かれる状態に戻すことが、とりあえず、現在のフランスがこの第5波を少しでも小さくできる方法ではないかと思っているのです。


フランス第5波突入


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2021年11月17日水曜日

ご近所との常識の違いに戸惑う出来事

 

狭いコントロールルームに詰め込まれていた荷物


 私たちの住まいは、パリのあまり大きくないアパートで、1フロアに2世帯が住んでいます。ですから、同じ階のお隣の世帯と共有?のスペースはエレベーター前の小さなスペースと電気や水道のメーターなどのコントロール機器が入っている小さな小部屋(コントロールルーム)のような場所が共有といえば、共有のスペースになっています。

 先日、午後の時間にアパートの呼び鈴が鳴ったので、不審に思って(普通、外からの来客は、まず地上階にあるドアフォンを鳴らして、それに応えてから、まず地上階にあるドアの鍵を解除して、それから上がってくるので、いきなり玄関のベルを鳴らされることはほとんどありません)、ドアの覗き窓から外を見ると、アパートの管理人さんの女性でした。

 彼女はアパートの見回り中に我が家の階にある小さなコントロールルームの中にたくさんの荷物が山積みになっているのを見つけて、私をその部屋に連れていき、「これ、おたくのですか?」と聞きに来たのです。

 その部屋には、ドアはあるものの、鍵はありません。しかし、そんな電気系統の機器などが入っている場所は日頃は用がなく、私は工事の人が来た時などに、案内する程度で、ほとんど入ったことはありませんでした。

 通りかかった時に、時々、そのドアがきっちり閉まっていないことがわりと頻繁にあるので、「閉まっていないということは誰かが開けたに違いない・・誰だろう?」とちょっと気味が悪いな・・と思いつつも、わざわざドアを開けて中を確認することもなく、ドアをきっちり閉め直すだけで、なんとなく過ごしてきたのです。

 ところが、管理人さんに言われて、その部屋を覗きに行くと、そこには、山積みにされた荷物が・・それはもちろん、私のものではありません。正直、唖然としました。

 隣の家は留守で、確認がとれずに、「ここに物を置くのは禁止なのよね・・」と言いながら、彼女はアパートの大元の管理会社に連絡し、荷物は撤去することに・・。彼女が一人で撤去するには、大きすぎる子供用にしては、なかなか大きな赤い車まで・・。

 彼女は方々に連絡をとりながら隣人の携帯ナンバーを手に入れると、隣人に電話。幸い隣人は電話に応答、すぐにその荷物は隣人のものであることが判明しました。

 さらに知らない人の荷物よりはマシだとしても、自分勝手に共有の場をまるで自分の場所のように使う隣人の正体が垣間みれてしまったことに、言いようのない嫌悪感。

 管理人と話している隣人の電話の声は私にも聞こえるほどの大きな声で、「それは、私の友人が今日引き取りに来る荷物だから・・」と言っている彼女が言い訳をしている声が聞こえます。

 管理人さんは、「これが最後よ!ここに物を置くのは禁止なの!明日、また見にきて、またあったら容赦なく廃棄するから・・」ときつく言う彼女と「はいはい、わかってる!わかってる!」の会話は、いかにも注意し慣れている人と注意され慣れている人という感じ。

 これでは、できの悪い学生と先生の会話のようだ・・と思いながら、「管理人さんには、こんな仕事もあるのだ・・」とちょっと気の毒になりました。

 私が、「時々、ドアがちゃんと閉まっていないことがあったから、ちょっと気にはなっていたんだけど、中を開けてみることはしなかったから・・まさか、こんな荷物が入れられて、知らない人が出入りしていたなんて・・と言ったら、「これは、ここの階だけじゃなくて、上の階もそうなのよ・・」と・・。

 時々、その扉が開けられていた形跡があったことは、一度や二度ではないことから、彼女の言っていることは嘘であることは明白です。

 公私の区別がつかない、どうにも常識的な感覚が違うということは、やはり要注意であることに違いありません。

 先日もアパート内の二重に鍵がかかる自転車置き場で盗難事件が起こったばかり、なんだかいつの間にか、近辺も物騒になってきました。

 私はご近所とはなるたけ穏便に過ごしていたいので、よほどのことがない限り、つかず離れずで親しくなり過ぎないようにしていますが、今の隣人が隣に越してきてからは、顔を合わせれば挨拶はするものの、ほぼ話をしたことはありません。

 何より、一番、隣人を警戒しているのは猫のポニョで、それまで前の隣人が住んでいた時には、まるで自分の別宅のようにベランダをつたってポニョ一人で隣の家と我が家とを行き来していたのに、現在の隣人が引っ越してきて以来、同じ隣の家に全く行かないどころか、ポニョはベランダにさえ出なくなってしまっていたのでした。

 動物の感とでも言うのでしょうか? ポニョが警戒することで、たまに顔を合わせた時の立ち振る舞いや服装の感じ、時々、聞こえてくるベランダや廊下での大声での電話の声などなどもあり、私自身も警戒はしていました。

 これでさらに嫌な印象は強まってしまいました。

  

夜になって家の前に積み上げられていた荷物


 夜になって、荷物が撤去されたかどうか確認に行こうとドアを開けると、隣人の家の前にはその小部屋の中にあったものが積み上げられていました。小部屋の中がダメだと言われたからと言って、家の前なら良いというものでもありません。

 せめて、家の中に荷物を入れるくらいの配慮が、できないのだろうか? 規則を守らないということに何の負い目も躊躇いも感じていない隣人に、あまりの常識の違いにさらにうんざりさせられたのでした。

 しかし、どこへ引っ越そうとも、場所は選べても、隣人は選べないのです。


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2021年11月16日火曜日

フランス国旗の色が変えられた理由

   


 青、白、赤のトリコロールカラーはフランスのシンボルでもあり、当然、フランスの国旗もこのトリコロールカラーで彩られています。

 祝祭日はもちろんのこと、このトリコロールの国旗は、パリの街中でもよく見かけるもので、あまり多くの派手な色合いが使われていないパリのシックな街並みや歴史ある建築物には上手く調和し、またアクセントとして映える国旗でもあります。

 マクロン大統領をはじめとする政治家が国民に向けて演説をする際などには、必ずこの国旗が側に掲げられています。

 そのフランス国旗の色が実は1年前から変えられていたことが、今、フランスでは話題になっています。

 マクロン大統領はこの色の変更を公表しなかったことから、ほとんどの人が気付かずに1年以上も過ごしてきたのです。

 1年前まで使われていたフランス国旗の色は1976年に、当時の大統領ヴァレリー・ジスカール・デスタン大統領によって、それまで使われていたブルーと赤よりもより明るいブルーと赤に変更されたもので、マクロン大統領は、昨年の7月14日(パリ祭・革命記念日)から、以前に使われていたダークブルーの青に戻しました。

  

現在、公式に使われているフランス国旗

 現在トリコロールに使われている青は、フランス海軍で使用されている青であり、1794年の条約で選択されたものです。

 この色の変化は非常に僅かなものですが、フランス革命のシンボルと再接続するものであると説明する者もいます。

 マクロン大統領の真意はわかりませんが、この僅かな色の変更は、マクロン大統領が舞台美術家のArnaud Jolens(アルノー・ジョレンス)の助言に基づいて決定したと言われています。

 現在では、エリゼ宮をはじめとする国会、内務省などの国の公式の建物に掲げられているものは、このダークブルーを使用した国旗に変えられています。公式発表も何もなかったことから、多くの人が気付かなかったこともあり、フランス中の国旗がこの色に変えられているわけではありません。

 この国旗の色の変更の一番の理由は、フランス国旗が現在、多くのシーンにおいて、ヨーロッパの旗と共にかかげられるため、そのヨーロッパの旗(同じくブルー(明るいブルー))と並んだ時によりひきたち、映える色にするためであったといわれています。

 パリ祭のパレードをはじめ、フランス国家が行うセレモニーは大変、美しいものであることが多いのですが、これらのいくつもの場面を彩るフランス国旗がいかに映えるかを考慮している、ことにヨーロッパの旗のブルーとのより美しい調和を考慮しているあたり、なかなかの演出ではないかと驚かされたのです。

 日本の国旗の日の丸の赤は変わっていませんか?


フランス国旗の色変更


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2021年11月15日月曜日

フランス・ベルギー他15ヶ国からのワクチン未接種者の入国に陰性証明書提示義務化

  


 現在のヨーロッパの感染拡大に接し、フランスはベルギーをはじめとした約15ヶ国からのワクチン未接種者のフランス入国の際にPCR検査または抗原検査で陰性の証明書の提示を求めることを発表しました。

 ベルギーやヨーロッパの多くの国で感染状況が急速に悪化するにつれて、フランスは自国を守るためにこの新しい措置を講じることを決定しました。

 11月13日以降、ワクチン未接種者がフランスに入国するために24時間以内のPCR検査または抗原検査で陰性でなければなりません。要はヘルスパスがフランス入国の際にも必要になるようなものですが、ヘルスパスの場合は72時間以内の検査陰性の証明書であったものが、24時間に短縮されているので、かなりギリギリのタイミングでの検査が必要なため、少々厄介でもあります。

 これはベルギーの他、ドイツ、オーストリア、ブルガリア、エストニア、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、ラトビア、リトアニア、オランダ、チェコ共和国、ルーマニア、クロアチア、スロベニア、スロバキアからの入国の際に課せられることになります。

 これは、ほぼ、先日、欧州疾病予防管理センター(ECDC)が発表した非常に危険であると指定した欧州連合の中の10ヶ国に数カ国が追加されているものです。

 昨年末にイギリスで変異種が発見された際に、この変異種の流入を恐れて、この発表の翌日には、イギリスからの入国を完全にストップした時、多くの流通が止まり、国境付近にトラックが立ち往生する大混乱が起こったことがありました。

 それはちょうど、ノエルのタイミングでもあり、多くのトラックの運転手さんたちが家族と過ごすはずのノエルをトラックの中で過ごすという悲惨な状態にも陥りました。

 今回は、その際の混乱も踏まえて、例外措置を設け、トラックの運転手などの輸送・運搬に関わる仕事に携わる人々、フロンティアワーカー、居住地の周囲30㎞半径の境界内での24時間未満の陸路による旅行、12歳未満の子供に関しては除外されることになっています。

 そもそも常日頃は国境がありながら、国境ではないような、パスポートのチェックも何もなしに気が付いたら、違う国に入国していた・・車などで移動中は携帯のメッセージに、「ようこそベルギーへ!」とか、「ようこそスペインへ!」などというメッセージが入ったりして、ああ、ここはもうフランスではないんだと気付くなどということが多いヨーロッパでは、このチェック、管理だけでも大変な作業であると思われます。

 空路での入国ならば、空港でのチェックは比較的容易であると思いますが、電車での移動は、駅?あるいは列車内でのチェックでしょうか? 最も困難なのは、車での移動、入国に対するチェックがどのように行われるのか?大変な人員が必要となります。

 幸いにも現在は、トゥーサン(ハロウィン)のバカンスも終わって、比較的、旅行者も少ない時期、この措置が長く続くようであれば、次のノエルのバカンスまでになんとか、この入国制限への対策の配置や準備にかからなければなりません。

 しかし、そもそも入国する側からしてみれば、昨年末と違って、ワクチン接種さえしていれば、問題はない話、日本入国の際のような大変な書類を揃えなければならないわけでもありません。

 この陰性証明書提示義務がどの程度の効果をあげることができるのかわかりませんが、野放しにするのもどうかと思うので、一般の旅行者に対しては必要なことかもしれません。

 もっとも、旅行者の場合、フランスに入国したところで、ワクチン未接種の場合は、検査の陰性証明書がなければ、レストランやカフェに行くことも、美術館や映画館、娯楽施設に行くこともできないので、やはりどちらにしてもPCR検査や抗原検査は必要なのです。


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