ヘルスパスの適用から一気にワクチン接種率が上昇したフランス。このおかげで、現在、感染状況も落ち着きを見せ、日常生活を取り戻しつつも安定した状況を保っています。
しかし、1日の新規感染者数は5,000人前後から下がることはなく、引き続きウィルスが確実に存在し続けていることを示しています。そんなフランスの次なる課題は、2回目のワクチン接種から6ヶ月経過すると、その効果が減少することが多くの専門家の研究で明らかにされている今、3回目のワクチン接種をどのように浸透させていくかにあるようです。
現在のところ、フランスでは、9月から、2回目のワクチン接種が終了して6ヶ月以上経過した65歳以上の人(特に80歳以上を優先)、重症化のリスクの高い人(腎不全、糖尿病、肥満、癌患者、心不全、高血圧、慢性肝疾患、脳卒中、重度の免疫不全などの病歴のある人)に対しては、3回目のワクチン接種が推奨され、すでに開始されています。
今後、2回のワクチン接種後6ヶ月後に急激に効果が減少し始めると言われている現象がどの程度、感染状況、また、感染悪化の状況に影響してくるかは未知の部分であるために、3回目のワクチン接種をどうやって拡大していくか、また、どの程度、必要性があるかを国民に納得させていくのは容易なことではありません。
先日、労働相のエリザベット・ボルネがインタビューを受け、「最近の研究ではコロナウィルスに対する免疫がワクチン2回目の投与から6ヶ月後に低下することが示されています。」「したがって、3回目の投与を行うことは絶対に必要です。」と述べています。
また、この必要性に伴い、「3回目のワクチン接種を拒否した場合は、それ以前のヘルスパスの撤回を検討している」「これは現段階では決定事項ではないものの、あくまでもフランス国民を保護するための重要な検討事項」と述べています。
「今日、私たちが幸いにも恩恵を受けているワクチンによる保護を継続させることは必要不可欠である」としています。
「ヘルスパス」の起用の発表も、かなり衝撃的で、強硬的なもので、当初は少なからず反発もありましたが、結果が伴ってきたために、今では国民の大半はこの「ヘルスパス」を受け入れています。
それが「3回目のワクチン接種をしなければ、これまでのヘルスパスが無効になる」というのもまた、なかなか強硬な手段で反発を生みそうな気もします。
しかし、これまでヘルスパスによって、ある程度、保護された空間であった場所が、6ヶ月以上経過したワクチンの効果が薄れてきている人も同じ空間にいるということは、ヘルスパスの意味をなさなくなってしまうことになります。
ヘルスパスの起用は国民をワクチン接種に追い立てる目的とともに、人の集う空間を少しでも保護された場所に保ち、相互に人々を保護する役割も果たしてきたのです。それが6ヶ月以上経過し、ワクチンによる保護が薄れてきた人が混ざってしまうのでは、ヘルスパスの意味がなくなってしまうのです。
結局、ヘルスパスにより、国民を保護し続けることを考えれば、少々、残酷な気もしますが、6ヶ月以降経過したヘルスパスは無効とするというのは至極、真っ当なことなのかもしれません。
数度にわたるロックダウン(完全ロックダウンからレストランや店舗の営業停止、外出行動範囲、時間制限など)やヘルスパス、医療従事者のワクチン接種義務化など、フランスはこれまで、感染対策に関しては、かなり強硬な手段を取り続けてきました。
しかし、フランスは、かなり強硬な手段を取らなければ、統制の取れない国であることは、これまでの感染の経緯を見ても明らかで、彼らは危機管理能力、衛生観念、感染対策の基本的な能力が極めて低い上に、ある程度の個人個人の良識に頼ることが可能な日本と違って、自主的な自粛などはあり得ない話で、強硬的な規則がなければ、感染を抑えることは不可能なのです。
2回のワクチン接種率が上昇したことを喜んでばかりはおられず、今度は、このワクチン接種の効力が薄れ始めていく対応をしていかなければならないのです。これを放置すれば、また、ふりだしに戻り、さらなる混乱が生じます。
依然として、コロナウィルス対応は綱渡り状態です。
ようやく落ち着き始めたと思ったら、今度は3回目のワクチン接種問題とそれに伴うヘルスパス問題。コロナウィルスが完全に終息するか、さらに長期に効力が持続するワクチンができない限り、永遠にこれが続くと思うとうんざりしますが、これも致し方ありません。
私は2回目のワクチン接種が終了したのが、6月の初めだったので、このままでいくと、3回目のワクチン接種は12月になりそうです。
3回目のワクチン接種 ヘルスパス無効
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