2023年10月7日土曜日

真実の追及よりも行儀よくルールを守ることが大事な一部の日本のジャーナリストに絶句した

  


 事実は小説よりも奇なりというけれど、それにしても小説としても、あまりにもシナリオがお粗末だという印象の今回のジャニーズ事務所の記者会見の騒動。

 この性加害問題が公に騒がれるようになってから、なんとなく、遠く離れた地からでも報道を眺めていて、直近の記者会見を見て、一番、気持ち悪いと思ったのは、会見が紛糾してきた時点で、副社長に就任した男性が、「どうか、落ち着いてください。この会見は多くの子供たちも見ています。ルールを守る大人の姿を見せていきましょう」というようなことを言いだしたときに、会場から拍手が起こったことです。

 そもそも、この子供への性加害問題についての会見を子供に見せる親がいるかどうかさえ、大いに疑問でもあるうえに、自分たちが勝手に決めたルールに従わないことを非難するのは、お門違い。

 会場に集まっているのは、今回の問題を追及するジャーナリストの集まりのはずなのに、その集団の中から、この問題そのものよりも、ルールを守るということを優先させ、拍手が起こるとは、もうため息しか出ない感じでした。

 この場面を見て、私は思わず、「うわっ!日本人!」と思ったのです。

 とかく、お行儀が良いこと、ルールを守ることが尊ばれる日本という社会は、たしかに、規律正しく、日本人の美徳である一面でもあります。

 しかし、時には、声を荒げることも必要だし、抗議することが必用な場面もたくさんあります。追及されるべきジャニーズ事務所側が設定しているルールにさえ、おとなしく従おうとして、しかも、それを諭すように説教されると、途端にいい子ちゃんになって、拍手まで起こるなど、もうつける薬もない感じがします。

 この後に、NG記者リストなるものが発覚し、以前のように、ジャニーズ事務所が記者媒体をコントロールしていたとなれば、この一部の記者たちの行儀のよさ?は、もう目も当てられません。

 今回のジャニーズ問題だけでなく、政治に関しても、日本人には話し合う、議論し合うということが極端に劣っていて、それを避けて通ろうとし、一方が抑圧的な態度になり、一般大衆が文句を言いながらも、強い権力を持つ者に行儀よく従う・・しかも、騙されていることにさえ気が付かずに・・という場面は、いくらでも存在しています。

 この期に及んで、まだ、以前と同じように、世間をコントロールしようとしているジャニーズ事務所にも、今回の性加害問題の深刻さの本質をまるで理解しているとは感じられず、終息ばかりを急ぎ、問題に本当の意味で向き合っていないことが感じられるうえ、それを受け取る一般大衆にも、この犯罪の重大さをまだまだ甘く受け止めているような気がしてなりません。

 この問題に関して、海外的に見たら、絶対アウトだから・・などとよく言われていますが、逆に言えば、なぜ?日本では絶対アウトじゃないのかが不思議でならないし、日本の認識が甘いということに他なりません。

 私もフランスでの生活に多分に毒されている部分があると思いますが、言うべきことは、行儀が悪くても、声を荒げても、言わなければならない時はあると思っています。特にその使命を担うジャーナリストは、正義を叫び続けてもらいたいと思っています。

 皮肉なことに、会見のたびに、ジャニーズ事務所が生き延びられないことを証明していくような結果になっていますが、そもそも、選ばれた新社長は、誰かが影で操るのに都合の良い人物であったというだけで、経営の能力があるわけでもなく、それどころか、特殊な権力のもとに守られて生き続けてきた一般社会を知らない人物。

 ジャニーズという名前や存在を消し去るなどと言っていますが、この分では、予想以上に早く、その日が訪れるかもしれません。

 それにしても、こんな場面を見ていると、日本人の教育には、議論するという教育を強化することが、絶対的に必要ではないか?と思うのです。

 そんなことを声をあげすぎる傾向のあるフランスにいると、特に強く感じるのです。


ジャニーズ事務所記者会見


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2023年10月6日金曜日

パリの日本文化会館は想像以上に立派だった・・

  


 前々から、パリに「日本文化会館」というものがあるのは、知っていたけれど、今まで一度も訪れる機会はありませんでした。

 時々、誰かの講演会とか、イベントごとがあったり、現在は、こんな映画の上映会をしています!というような広告を見かけることはあっても、なんとなく、あまり、普段、足をのばす地域でもなかったり、なんとなく、億劫で、一度も行ったことがなかったのです。

 先日、フランス人の知人と話していて、一度くらい行ってみたら?などと、フランス人から薦められて、「じゃあ、ちょっと覗いてみるか・・」と、半分はしぶしぶ出かけてみたのです。

 メトロの駅からも近く、場所は、エッフェル塔の近くで、パリらしい景色が広がるなかなかな好立地。

 日本文化会館の建物は、パリらしい感じの建物(いわゆる旧建)ではありませんが、近代的でなかなか立派な建物で、しかも、けっこうな大きさです。

 入口にはセキュリティチェックがあり、荷物をチェックされます。全体的にゆったりとスペースがとってあり、地上階には、日本の物産品店のようなお店があります。

 もっと、おざなりな感じのものしかおいていないかと思いきや、ちょっと、そこらの日本食材店ではおいていないような高級そうなお醤油やお味噌やお酒、こんなのあるんだ?と思うようなお菓子や、なぜかパン粉までありました。



 お皿や丼、お茶碗からお箸、箸置きなどの食器類なども小洒落た感じのもので、和紙のマスキングテープなどもなかなかセンスがよい品揃え・・意外にも、買い物できそうなものも揃っていて(失礼!)、日本人にも、また、日本のものが好きなフランス人にとっても、悪くない感じです。



 同じ地上階の反対側に赤文字で「虎」の文字が見えたので、和菓子の虎屋さんが入っているのかと思ったら、うどんの「国虎屋」さんでした。(うどんはないけど、おにぎりなどが売っています)

 私が訪れた日は、夕方から日本酒の試飲会のようなものがあるということでしたが、来週には生け花のイベントがあるとのこと。

 そして、上階には、図書館があり、これがなかなか充実していて、多くの本の中には、マンガなどもけっこう揃っていて(日本語のものとフランス語訳のものとが混ざっている)、オーディオスペースでは、たくさんの映画のDVDが揃っていて、無料で視聴できるようになっていて、また、webスペースでは自分のパソコンを持ち込み、勉強、作業ができるようになっています。



 パリの中にありながらも日本らしい空間で、整然としていて、清潔で、安心な感じのスペースで、ところどころには、日本以上に日本らしい小物などがおかれていて、日本人としては、なかなか心地よい場所です。




 また、ロケーションがよいために、上階に上がると、建物の中からは、パリらしい光景が見渡せて、なかなか大きなエッフェル塔がその景色に入ってくるところも嬉しいです。

 わざわざ旅行者が訪れる場所ではないかもしれませんが、在仏の日本人にとっては、結構、活用できる場所かもしれません。


パリ日本文化会館

101 bis Quai Jacques Chirac 75015 Paris


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2023年10月5日木曜日

海外生活をしていると年齢の自覚が希薄になるかもしれない

  


 それなりに年齢を重ねてきて、特に子供の年齢などを考えれば、着実に歳をとっているにもかかわらず、どうしても私には、自分の年齢の自覚が希薄な気がしています。

 最近になって、いつの間にか、体力が低下してきて、以前のようなつもりで動いていると、決まって、後になってから、疲れがどっと出たり、体調を崩したりすることで、ようやく、自分の年齢を自覚させられることになるのですが、よく言えば気持ちが若いと言えないこともありませんが、年齢に対する自己認識が甘く、自覚が足りないということになります。

 そもそも、海外で生活していると、どうしても日本人は実年齢よりも若く見られるということもあるし、服装などに関しても、おそらく、日本人のような周囲からの目というものも違って、けっこうな年齢の人がかなり華やかな洋服やアクセサリーをしていたりするのもふつうなので、私もそんな中にいると、歳をとったからといって、特に服装が変わったりということもなく、唯一、気を配っているとしたら、人に不快感を与えないようにしようということぐらいでしょうか?

 つまり、客観的に自分がどう見えているのかをあまり意識していないというか、自分が心地よく感じる服装をしているのですが、そんな無自覚な私でも、時々、自分でもビックリするのが、全く知らない、けっこうなおじさんの外見の人を見て、実はその人の年齢が自分よりも、ずっと若かったりするのを耳にすると、「え??もしかして、この人、私よりも年下??・・ということは、私って、もしかしたら、すごい年齢なのかも・・?」などと気が付いて、愕然とさせられることがあります。

 それでも、男女問わずに、知らない人から声をかけられることも多いし、こんなおばさんになっても、男性は、女性を女性として扱ってくれる感じがあるので、なんとなく、自分の年齢を自覚しにくいというのは、言い訳でしょうか?

 いずれにしても、何もせずにいたら、体力は衰える一方で、体力を維持していくだけでも努力が必要で、その努力でさえも、頑張り過ぎると逆に体調を崩すという情けない状態。今週は3キロは泳いだ!などと自己満足に浸っていると、途端に体調を崩して、しばらく、動けなくなるという、まさに1歩進んで2歩下がる感じ。

 私は、若い頃に、わりと、スポーツをよくしていた方で、昔は、「体力だけは自信があります!」などと言っていたのに、その自信もなくしつつあります。

 「日本に住んでいたら、私はどんな生活をしているのだろうか?」とか、「私はどんな感じだったんだろうか?」などと、考えても仕方ないようなことを時には思ったりするのですが、そんな私に娘からはキツい一言。

 「ママは日本だったら、まだまだ若者・・日本なら、ママよりも年上の人がいっぱいだよ!」と。たしかに・・日本に行くと高齢者ばっかりだもんな・・と思います。


年齢の自覚


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2023年10月4日水曜日

日本のユニクロの折り込みチラシはちょっと衝撃的だった・・

  


 フランスにユニクロができてから、もう15年近くなります。もちろん、私がフランスに来る前から、ユニクロのことは知っていましたが、当時、ユニクロは、そこまでメジャーな存在でもなく、どちらかというと、私は株式の方で記憶に残っているくらいで、当時、ユニクロの会社(ファーストリテイリング)は、店頭公開株で、「これって、ユニクロの会社なんだって!」と会社で聞き及んだ覚えがあるくらいで、妙な記憶の残り方でした。

 もちろん、その存在は知っていても、日本に住んでいた頃はユニクロで買い物をしたことはなく、その後、ヒートテックなどが登場したりした後に、日本に帰国時に買いものに行ったりしたこともありました。

 そのうち、パリにもあちこちにユニクロが増え始め、ユニクロの商品もほぼ、パリで調達できるようになったため、日本に行った際にユニクロを覗いてみることもなくなっていました。

 国が違うのですから、商品構成が違うことは、わかっていましたが、昨日、たまたまTwitter(X)で流れてきたユニクロの広告(今週の折り込みチラシ)というのを見かけて、ハッキリ言って、かなり衝撃的でした。思わず、「うそ!これユニクロ?」と目を大きく見開いてしまったほどです。


 今や、日本では、折り込み広告というものが、どのくらい拡散されているのかわかりませんが、まあ、折り込み広告というものだから、このようなレイアウトになるのかもしれませんが、これでは、まるでスーパーマーケットの折り込み広告と大して変わらないイメージで、パリにあるユニクロのイメージとは、あまりにかけ離れています。

 チラシそのものに関しては、パリでも昔は、ポストに放り込まれていたものも、ペーパーレスで、今や、ほぼ姿を消しています。

 チラシをよくよく見てみれば、商品構成もかなり違うこともあるし、金額もわかりやすく、だいたい安いし、種類も多く、思わず、欲しくなってしまいそうなものもあるのですが、このユニクロのイメージがあまりにパリとは違うことにかなりビックリしたのです。

 パリでは、お店はかなり整然としていて、おしゃれで、そこまで高級品扱いではありませんが、かなり、シンプルでベーシックな商品にしては、ちょっとお高め・・だけど、確実に高品質・・というイメージを持たれている感じで、この日本の折り込みチラシのイメージとはかけ離れています。

 ユニクロの広告は、雑誌などにも載っているし、駅などで見かけることもありますが、まるで、違うメーカーのものみたいなイメージです。

 これは、ユニクロの戦略なのでしょうが、これだけフランスでも存在感を増したということは、フランスでのアピールの仕方は、大成功だったと思われます。

 どっちがどうというわけではありませんが、国によって、こんなにアピールの仕方を変えているユニクロに、あらためて、おそるべし・・と思ったのでした。


ユニクロ 折り込みチラシ ユニクロフランス


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2023年10月3日火曜日

同族経営企業に共通すること

  


 日本では、性加害問題で大揺れのジャニーズ事務所問題が大騒動になっているようで、YouTubeを見ていたりしても、やたらとジャニーズ関係の動画が上がってきて、なんとなく、様子をうかがっているような感じです。

 私は特にジャニーズのファンでもないし、そんなに興味があったわけではなかったのですが、数年前?のSMAP解散騒動の時にも、彼らの解散が発表された時に、たまたま私は日本にいて、夜、テレビを見ていた時に、「SMAP解散!」という速報がテロップで入って、「すごい!こんなに速報で流れることなんだ・・」と驚いたので、なんとなくmその後も印象に残りました。

 日本を離れて長くなり、日本のテレビもあまり見なくなる中、娘が日本語に親しめるようにと、日本の家族が日本のテレビ番組、ドラマやバラエティ番組などを録画して送ってくれていて、特にリクエストしたわけでもないのに、その中にはいつも、SmapSmapという番組が入っていたため、Smapのことは知っていたのです。

 時々、目にしていた騒動を見つつ、同族経営という点で私が一時、務めていた会社と似ている点があり、メリーさんって、あいつにそっくり!と思ったり、能力のない家族に不相応な地位をごり押しで与えるために、邪魔になる、本来ならばとてもやり手の切れ者を理不尽なケチをつけて、ヒステリックに感情的に人を攻撃したりするところが、そっくりだと思ったのです。

 また、周囲からは多少、歪んでいるとも思われるきらいがあるほどの強い家族愛が見られるところも同じでした。

 ジャニーズ事務所の問題は、性加害というそれ以上に絶対的に許されない行為が問題の中心ではあるものの、それが、公にならずに長期間続けられ、マスコミも口を閉ざすことに家族ぐるみで加担していたという、さらに深刻な話ですが、同族経営の弊害というものには、共通するところがあるものだ・・と、私は自分の体験から、つくづく思ったのです。

 ジャニーズ事務所とは、規模が違いますが、家族の誰かが事業に成功し始めた時、これは、人間の心情としてはあり得ることかとも思うのですが、往々にして、そのオーナーは家族を巻き込みたがり、家族だから信頼できるというのもわからないでもないのですが、ずるずると割り込んでくる家族たちは、当然のことながら?能力が伴わない場合が多く、また、能力がないにもかかわらず、結構な要職に就くため、周囲の者はとてもやりにくくて、大変な迷惑を被ることになるのです。

 なぜか、事業をある程度成功させていたオーナーも、それだけの力量と手腕を持ちながら、家族のこととなるとひいき目になり、目が曇り、悪い結果はすべて、周囲の人々のせいだということになり、当然、周囲にはモヤモヤが蓄積し、やるべきことをやらないその家族が大きな足かせになり、会社の発展を悉く遮る結果となるのです。

 家族のこととなると、ヒステリックに庇おうとして、どんな損害が出たとしても、もう感情を抑えることができずに興奮し、大損害をも厭わなくなるところもメリーさんと似ていると思った点でした。(実際にジャニーズ事務所はやり手の社員を追い出し、SMAPという大変な大きな収入源を失うことになりました)

 そこまでゴリ押しして、家族を後継者に据えたとて、能力のない者に大きな所帯を率いることができないことくらい、どうしてわからなかったのか?と思いますが、今回の騒動の成り行きを見るにつけ、性加害が公に問題となり、どうにも隠しようがない状態にまでなった時、対処の仕方で、もう少し、マシな展開があったのではないか?と思うものの、どうにも対応は最悪で、これでもかというぐらいの後継者の能力のなさを見せつけられ、同族経営が最悪の事態を招いたような感があります。

 もっと早い段階で、能力のある人に経営を任せて、株だけ握って遊んで暮らしていれば、傷は浅くて済んだろうに・・、私が関わった同族会社は、他の犯罪に関与していたわけでもなく、また年齢も関係していると思いますが、そこまで悪い事態になる前に会社を売却して、家族揃って、身を引いたので、会社が崩壊するようなことはありませんでしたが、なんとなく、このジャニーズ問題を見るたびに、私は、以前、会社にいたあのオーナー家族たちのことを思い出すのです。


同族経営 ジャニーズ


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2023年10月2日月曜日

健康志向がバゲットの味を変える! バゲットの塩分量制限

  


 WHO(世界保健機構)は、健康のために1日あたりの塩分摂取量は、5g以内に控えることを推奨しており、これにより、血圧を下げ、心血管疾患、脳卒中、心筋梗塞のリスクを下げる効果が期待できるとしています。

 しかし、現状、フランス人の一般的な塩分摂取量は、これを約2~3g超えていると言われています。

 そこで、注目されたのが、フランス人の主食とも言えるバゲットの塩分量で、フランス パン・パティスリー全国連盟は、すでに2022年の段階で、それまでバゲット100gあたり1.7gであった塩分量を1.5gにすると発表していましたが、2023年10月から、この1.5gからさらに下げて、1.3gにすることを発表しています。

 このバゲットの塩分制限については、フランス パン・パティスリー全国連盟と農業省が関わっているもので、本来ならば、厚生省あたりが関わっていそうなところを、農業省というところが生産者側の立場自らが動いている感じがします。

 また、公式にこれらの塩分量を定めるあたり、無形文化遺産として登録されているフランスのバゲットというものをフランスに正しく継承していこうとしている姿勢も感じられます。

 100gあたり0.2gの差が、バゲットの味にどの程度影響するものか?両方を同時に試したことがないので、わかりませんが、たしかにフランス人のバゲット消費量は、侮れないものがあり、フランスでは、年間100億本のバゲットが消費されていると言われており、これは、1秒あたり320本に相当するそうです。なので、少しずつの積み重ねを考える場合、きっと、少なくない塩分摂取量低減につながるのかもしれません。

 つまり、バゲットは、フランス人の1日あたりの塩分摂取量の20%が占められていると言われており、この分の塩分を下げることは、かなり確実な塩分摂取量の低減に繋がることになるというわけです。

 とはいえ、このことで、バゲットの味に変化があらわれることは必須で、減塩による味の低下を補うために、酵母に加えて活性サワー種や酵母エキスなどの代替物を取り入れるなどの工夫を加えていくと見られています。

 そこまで厳密なバゲットの味の変化をフランス人がどの程度、感じ取ることができるのかどうかはわかりませんが、知らず知らずのうちに減塩できていたら、それは、ありがたいことかもしれません。

 しかし、バゲット以上に気になるのは、フランス人の食卓に上ることが多い、ハム・サラミ・ソーセージ・パテ・テリーヌなどのいわゆるシャルキュトリーと呼ばれる食肉加工品。

 これらの食品の塩分は、ちょっと知るのも怖いほどの塩分が含まれていることは間違いなく、塩分摂取量を低減するためには、こっちを何とかする方が大幅に削減できそうな気もしないではありません。

 だいたい、一般的なフランス料理を思い浮かべるに、脂肪分の塊のようなバターやチーズ、生クリームたっぷりのフランス料理に使われるソース類など、決して身体によいイメージはなく、フランス料理で体調を整えるのは、大変な話ではないか?と思わないでもありません。

 しかし、実際には、フランス人は、結構、長寿で、逆にこれだけ、あんまり身体によくないと思われる食品を食べ続けているにもかかわらず、寿命が結構長いのには、この塩分云々以外に何か理由があるのではないか?と思ったりすることもあるくらいです。



バゲット塩分量制限


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2023年10月1日日曜日

インフレと食餌制限と商品価格の感覚の麻痺

  


 今年に入って、具体的に症状が何かあるわけではないのですが、たまたま、かかりつけのお医者さんに、「あなたは、ここ数年、心臓専門医の診察を受けていないから、そろそろ行っておいた方がいいわよ・・」と言われて、心臓専門医にかかる時に持参するために、今年の初め頃に受けた血液検査から、心臓だけでなく、肝臓にも問題があるかもしれないなどと言われて、肝臓の検査まで受けるハメになり、結果、現在のところ、深刻な状態ではないとはいえ、アルコールや糖分は控えるようにと言われて、食餌療法というほどではないにせよ、少々、食事には気を付けるようになりました。

 若い頃は、身体にいい食べ物・・などと言われると、それだけで、なんだかマズそうな気分になる、あまのじゃくな私でしたが、年齢を重ね、実際に、身体に異常が見られ始めたりすれば、気弱にもなり、少々、食べ物には気を付けるようになったのです。

 アルコールに関しては、若い頃から、もう酒瓶を見るだけでワクワクするほどのお酒好きで、ふつうの人の一生分の消費量をとうに上回っている量を消費してきたと思うのですが、どういうわけか、昨年末頃から、全くお酒が飲みたくなくなり、「飲みたいと思わないんだから、無理して飲むこともないな・・」と思って、全然、飲んでいないのですが、「この私がお酒を飲みたくないなんて、私、死ぬんじゃないかな?」と、ちょっと不気味でもあったのです。

 そんなわけで、「肝臓に異常があったから、飲みたくなくなっていたのか・・身体はうまくできてるもんだ・・」と妙に納得したりもしました。

 しかし、お酒を飲まなくなった代わりに、甘いものが食べたくなり、若い頃は見向きもしなかったスイーツ類をやたらと食べるようになり、ワインを買いだめするかわりに、家には、なんらかのスイーツがストックされるようになっていたのです。

 それを「糖分は控えなさい」などと言われて、全く、ゼロにしてしまうのも、あまりに寂しいので、スーパーマーケットで買えるような袋菓子のようなスイーツは一切、買わないことにして、たまに、特別に食べてみたいと思う特別なお店のものなら、まあ良しとしようとすることにしたのです。

 結果、お値段は、ケーキやタルト1個の値段が平均17ユーロとか、ヴィエノワズリーでさえも、1個5ユーロから10ユーロあたりという驚異的な価格で、まあ、それなりの有名どころのパティスリーなどでも、ケーキ1個10ユーロは当たり前の感じで、一度にそんなにたくさん買うわけではないにせよ、かなりのお値段で、値段的にも制限せざるを得ないような感じなのですが、同時に、だんだん、その値段にも麻痺してきてしまいました。

 ある日、あれ?こんな場所にブーランジェリーがあったっけ?と思って入ったお店で並んでいたケーキを覗いてみたところ、お値段が、半分どころか、3分の一くらいのお値段で、あれあれ?ケーキって、一体、いくらくらいのものだったんだっけ? と少なからず、自分でも動揺し、わけがわからなくなってしまいました。

 つまり、私の生活は、非常に偏っていて、日常の買い物は必要最低限のもので、特に夏の間などは、ベランダで野菜を育てて自分で作る質素な食事をし、ごくごく、たまに常識を超えた値段の贅沢なスイーツなどを食べてみるという奇妙なもので、インフレを感じつつも、もう物の値段がわからなくなりかけている奇妙な状態なのです。

 止まらないインフレで、スーパーマーケットに行って、「何でも高くなったなぁ~」と思うことにも慣れてしまっている今、「値上がりしている分だけ、消費を控えればいい・・」などと気安く考えていたのですが、そんな単純なことさえ、商品価格の感覚が麻痺してきていて、わけがわからなくなっているということは、さらに始末に負えないことになってしまっているということなのです。


インフレ 商品価格の感覚麻痺


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