2025年3月16日日曜日

偽物を買うことはもはやタブーではなくなっているフランスの若者

  


 ハイブランドの偽造品の売買は、違法行為で売る側も買う側も罰せられます。にもかかわらず、2022年から2023年にかけて、この類のフランスで押収されたブランド物の偽造衣料品やアクセサリーなどの数は倍増しています。

 EUIPO(欧州連合知的財産庁)の調査によると、15歳から24歳のフランス人の29%が故意に偽造品を購入していると言います。2019年の同様の調査では、14%でした。この数字だけでも倍増していることは明らかですが、私などにはこの2019年の14%という数字ですらもすでに驚きです。

 29%といえば、もはやほぼ3人に1人という割合で、もはや彼ら(彼女たち)は、それが偽造品だということを隠しもせず、偽造品だということは重々承知のうえで、購入し、偽造品が流行しているような、もはや偽造品はタブーではなくなっているくらい浸透しているということなのです。

 私も若い頃、一時期はちょろっと麻疹のようにブランド物にかぶれかけたことはあったけれど、徐々に興味を失い、むしろ、フランスに来てからは、敢えてブランド物は身につけないようになったくらいです。何よりも安全を考えてのことです。

 考えてみれば、最近、メトロやバス、トラムの中などで、男女問わず、若者がブランド物を身に着けているのを見かけるようになりました。グッチのキャップやポシェットを身に着けている若い男の子などは、特によく見かける気がしますが、絶対にホンモノではないだろうな・・と思いつつ、それでも(偽物でも)ほしいんだな・・?と眺めていました。

 現在は、若い男の子の間で主に白やグレーのディオールのスニーカーが大流行しているそうです。(偽物ですが・・)

 だいたい、まともな人はパリ市内のメトロなどで、これ見よがしに本物のブランド品は持ち歩きません。危ないですから・・。

 以前は、このような偽造品は露天商が売りさばいている様子を見かけたものですが、それが現在は、SNSでお手軽にネットショッピング、特に中国のサイトを通して、簡単に手に入れることができるそうで、Telegram、Snapchat、TikTok のアカウントから注文するだけで、数日以内にパッケージが届くようです。

 この偽造品を扱うサイトを運営している中国を拠点としているフランス人は、「当社はルイ・ヴィトンとディオールの上客だ」と言い、実際に本物を購入してその製品を特殊な機械を使って、重さ、織り方、模様、色を決め、工場に発注して偽造品を作って販売します。

 中国を拠点とするのは、労働力の問題で彼らには、月給制で給料を支払いますが、彼らは月29日間労働なのだそうです。

 製品の発送は中国からになるため、税関にひっかかることもあるとはいえ、税関も全てをチェックすることは不可能なため、時々、損失は出るとしても、その分は充分カバーできるほど売れているので問題ないと話しているといいます。

 偽造品がまかり通れば、本家本元のハイブランドの方も迷惑極まりない話ですが、そもそも「偽物がタブーではない」という観念自体が破滅的というか、彼らは一体、何に価値を求めているのか? 偽物なんてみっともない!偽物を持つくらいだったら、ノーブランドで良いではないか?と思う私はもう古いんでしょうか?

 しかし、数年前から、確実に変化してきているフランスのファッション業界、モードの世界、極端に高価なハイブランドか、サイトでも簡単に変えるお手軽・格安モードのブランド以外は、軒並み経営不振で倒産続き、このサイトで簡単に変える格安・お手軽モードの中に偽造ハイブランド品の躍進があったとは・・驚きです。



ハイブランド偽造品


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2025年3月15日土曜日

日本から戻って以来、フランスの食べ物に食指が動かない・・

  


 日本に一時帰国して来仏した後、最初に近所のスーパーマーケットなどに行った時の絶望感といったら、ちょっとはかりしれません。

 逆に日本に行った時などは、別に高級スーパーマーケットというわけではなくとも、もうワクワク感が止まらず、もう端から端まで、全てが愛おしく、しかし、日本に到着したばかりの段階では、「落ち着け!落ち着け!まだまだ日本滞在は長いんだから、今から買い込んでも、一度には食べられないし、ましてや持って帰るものは、ギリギリに買った方が賞味期限が少しでも先になる・・」などと気持ちを落ち着かせるように自分に言い聞かせるほどです。

 以前は、それを娘と二人でやっていたのですが、今では日本で生活している娘は、すっかり日本のスーパーマーケットは日常のものになり、全く興奮しないどころか、落ち着いたもので、私はそんなことを少々寂しく感じつつも、それでも私は一人で興奮しつつ、日本のスーパーマーケットや食料品店を見て回るのです。

 山ほどの食糧品を抱えて、フランスに帰ってきて、それらは、あっという間に冷蔵庫や食料貯蔵庫におさまってしまうのですが、しばらくは、「まだまだあるある・・」となんとなく、満ち足りた日々を過ごせるのです。

 しかし、いくらたくさんの食料品を持ち帰ったとはいえ、野菜や肉、卵などの生鮮食料品は、持ってきているわけではないので、仕方なく近所のスーパーマーケットに買いものに行くのですが、毎度のことながら、「あ~~またこの世界に戻ってきてしまった・・」と絶望感が溢れてくるのです。まあ、毎回のことなので、やっぱり・・と言う程度のことなのですが・・。

 今は、特別にフランスでの生活には、それなりに満足しているし、フランスの方が心地よいと思う部分も少なからずあるのですが、この日本から帰ってきて、最初の食料品の買い物の時に感じる絶望感は毎度、おなじみの感情です。

 しばらくすれば、またそれに慣れてきて、あっちで美味しいものがあれば飛んでいき、また、こっちで美味しいものがあれば飛んでいく!という生活に戻るのですが、今のところ、まだまだエンジンがかかりません。

 約3週間の日本滞在で、3ヶ月分くらいの食べ物を食べたと思うので、しばらくは、食べなくてもいいくらいなので、ちょうどいいかもしれませんが、今まで勇んで行っていたブーランジェリーやレストラン等、今のところは、全く行く気になりません。

 先日、美味しいサンドイッチのお店があるという情報を得たので、出かけたついでに寄ってみようかな?と思っていたのですが、最初の目的地の用事が済んだ時点で、「さて、次はサンドイッチ屋さん・・」と思ったところで、なんだかめんどくさくなって(いつもなら、食べ物に関して、めんどくさくなるなんてあり得ないのです)、行ってみたいけど、あんまり食べたくないしな・・また今度にしよう・・と結局、サンドイッチ屋さんには、行きませんでした。

 軽め?のサンドイッチですら、こんな感じ、日本に行くまえには、通りかかれば、必ず覗いていたブーランジェリーなどにも、まるで魅力を感じなくなっています。

 まるで別に好きな人ができて、これまでの彼にはすっかり冷めてしまった感じ・・日本から帰ってきたら行こうと思っていたレストランにも、まるで行く気になれません。

 食べ物に対して、ここまで気持ちが盛り上がらないなんて、久しぶりのことで、ここで、ショック療法として、どこか、飛びぬけて美味しそうなものを探すか?自然と復活するのを待つか? そんなくだらないことを、しかし、食べることが何より大好きな私にとっては、重大事なことを、ここ数日、考えているのです。


フランスの食品


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2025年3月14日金曜日

少し早めのパスポートの更新手続き

 


 私にとっての海外生活の必需品は滞在許可証とパスポートですが、そのパスポートが今年は、私はちょうど書き換えのタイミングでした。しかし、正直なところ、まだもう少し猶予がありました。

 ただ、そのパスポートの更新手続きが、4月からこれまでよりも時間がかかるようになり、少なくとも3週間はかかる(これまでは、1週間でできたのに・・)とのことで、この「少なくとも3週間」というのが、なんとなく不安で3月のうちに更新手続きをしてしまうことにしたのです。

 使わないときは、余裕で数ヶ月も使わないこともあるパスポートなのですが、私の中では、常に何かあったら、日本に帰れる状態であることは保っておきたい安心のひとつです。

 これまでに、母や父が倒れたとか、亡くなったとかいうときにも、急にチケットをとって、翌日の便で帰るとかいうことは、何度かありました。パスポートさえあれば、チケットさえとれば、パリからは毎日、直行便が飛んでいるので、いつでも帰ることができます。

 逆にパスポートが切れた状態だった場合は、いくらファーストクラスのチケットを取ったとしても、出国することも入国することもできません。

 パスポートの申請中は、その時点で持っているパスポートが失効していなければ、使用することはできます(出国することができる)が、ただ、パスポートを申請中に前のパスポートが失効してしまった場合、まだ新しいパスポートを受け取れていない場合はどうなってしまうんだろう? しかも、少なくとも3週間はかかるとか言われて・・。

 余裕をもって申請すればよいだけの話なのですが、なんだか、そのあたりの感じでイラつくのが嫌で、少々、失効期限までには、時間があったのですが、さっさと1週間で作ってくれるうちに更新手続きをしてしまったのです。

 まあ、4月からはどうせ、更新手数料も値上げされるだろうし、ちょっともったいなかったかもしれないけれど、捨てることになってしまった期間分よりも安心料を選んでしまいました。

 考えてみれば、日本の運転免許証などは、更新手続きのタイミングきっかりに日本に帰国できるとは限らなかったため、これまでも、少々早めでも更新手続きをしてしまってきたので、期間ギリギリで更新手続きをしたことはほとんどありません。

 このパスポートの更新手続きについては、これまで各大使館で行っていたものをセキュリティを高めたパスポートにするために日本でしか発行しなくなるためだと言われていますが、この新しいパスポートの発行が始まれば、また色々な不都合から、色々改正されることはあるかもしれませんが、近々には無理だろうと思ったまでです。

 今回の更新手続きには、107ユーロを支払いましたが、ちなみに4月以降はいくらになるのですか?と尋ねてみたのですが、まだ発表になっていないとのことでした。

 パスポートの手続きは滞在許可証の更新に比べれば、全然、ハードルは低く、ストレスも少ないのですが、とりあえず、パスポートに関しては、これから10年は安心で、次の更新手続きは、4年後の日本の運転免許証の更新手続きです。ヤレヤレ、当分、は安心して暮らせます。


パスポート更新手続き


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2025年3月13日木曜日

マクロン大統領が34ヵ国を招集して行った非公開の会合

  


 エリゼ宮によると、マクロン大統領は、パリで34ヵ国の参謀長、欧州連合とNATOの代表、ウクライナ代表らを招待し、ロシアとの和平協定が成立した場合にウクライナにとって強固で永続的な平和が実現できるよう、信頼できる安全保障を定義するために、概念から計画へと移行するための非公開の会合を行いました。

 これは、ウクライナがロシアとの一時停戦を受け入れ、米国がウクライナへの援助停止の解除を発表したことを受けた、ほぼ同時のタイミングで行われています。

 ウクライナの停戦受け入れに対して、ロシアは現段階では明確な回答は発表はしていないものの、次はロシア次第・・という段になって、なにやら、プーチン大統領が軍服で会議に参加している様子がテレビで盛んに流されているので、言明はしていないまでも、それが回答の序章ではないかという気はしています。

 しかしながら、あらゆる可能性に対応できる準備を具体的に進めていかなければならない欧州諸国にとって、ウクライナ、そしてヨーロッパの安全は自分たちの手で守る姿勢と体制を築かなければならないことは、必須、また、この停戦の具体的な交渉から欧州が排除されないように、この会合によって、少しでも確固とした姿勢を守り続ける欧州以外の国々も巻き込んでその連帯を強固なものにする必要があるという考えが見えます。

 この非公開の会合には、なんらかの形でこの安全保障に貢献する用意のある国、英国やトルコなどの欧州連合各国、およびNATO加盟国、その他、オーストラリア、ニュージーランド、日本なども含まれています。

 また、停戦が成立した場合にウクライナでの戦闘が再開することを防ぐ具体的な方法として「ウクライナの非武装化の拒否」に加えて、「欧州軍をウクライナに派遣する」という提案も検討されています。

 停戦した場合とはいえ、「欧州軍がウクライナに派遣される」ということは、欧州がさらに積極的かつ深く、この問題に実践的に関わることになり、さらにそこにロシアの再侵攻があった場合、欧州全体との全面戦争にもなりかねず、このことは、停戦という決断からロシアを遠ざけることになりかねませんが、欧州の側からしたら、安全保障の面からは、譲れない部分なのかもしれません。

 この問題については、欧州はまさに地政学的にも、捨て置くわけにはいかない大問題であるとともに、そもそもは、この軍事的侵略行為そのものがまかり通るものであってはならないという根本的な理念としてある国がこのパリでの非公開の会合に集結しているものと思われます。

 この問題については、核抑止力を持つ欧州の代表としての立場を推し進めているマクロン大統領ですが、フランス国内、右派などからは、「恐怖を弄んでいる」などと批判の声もあがっています。

 

34ヵ国パリ非公開会合


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2025年3月12日水曜日

娘がスキーで大ケガしたらしい・・

  


 忙しく仕事をしつつも、忙しく遊びまわっている娘ですが、私が日本滞在中も私とも旅行しつつ、途中、私の旅行中などは、友人とスキーに行ったりして、一体、彼女には、休日に身体を休めようとか、そういうことは必要ないのだろうか?と思っていました。

 それでも、私が日本に到着したときも、空港まで車で迎えに来てくれたし、帰りも早朝にもかかわらず、車で送ってくれて、本当にフル回転してるんだ・・さすが若い・・と感心しつつも、たまには、少しはゆっくりする時間も少しはあった方がいいんじゃないの?とも思っていました。

 私がフランスに戻ってからも、春になるのを惜しむように、また、スキーに行くという話は、聞いていたので、前々回のスキーでは、携帯電話をなくしかけたり(結局、びっくりすることに、一応、届け出をしていたら、見つかったという日本ならではのミラクル)したので、スキーに行くというのに、「足折らないようにね・・」とかではなく、「携帯失くさないようにね!」などと、冗談半分に電話で話していました。

 それが、週末に電話がかかってきて、なんとスキーで怪我したとのこと、骨は折れていないみたいだけど、現在、ギブスに松葉杖の生活、「来週にもお医者さんに行くけど、どうやら、じん帯損傷、もしかしたら、じん帯が切れているかも・・」とのこと。

 彼女がスキーを始めたのは、小学生の頃だったので、スキー歴はもう長く、けっこう滑れるようなので(私自身はスキーやスケートなどの滑る系のものは苦手なのでやりません)、まさか怪我するなんて、思ってもみませんでした。

 実際にその場にいたわけではないし、彼女の様子を見ていないので、あまりピンと来ないのですが、検査の結果、やはり、じん帯が切れていて、恐らく手術になるだろうとのこと。通常は、週3日くらいは出勤しているようなのですが、基本的に彼女の仕事はリモートワークでもできる仕事がほとんどなので、仕事はそのまま続けられるとのことですが、どうにも離れている身としては、心配なものです。

 幸いにも隣に従姉妹がいてくれているので、本当に困ったときには、助けてくれているようなので、まだ心丈夫ですが、じん帯切断で手術?などと言うと、母としては、心穏やかではなく、思わず、「帰ろうか?」と聞いてみたのですが、「ぜんぜん、そんな必要ないから・・ママは自分の予約してある検査にちゃんと行きなさい!」と。

 まあ、帰ったところで、大して役に立ちそうもないし、かえって足手まといになりかねない気もしないではありません。

 とりあえず、命に別状があるわけでもないとは思いつつも、やっぱり心配してしまう情けない母なのです。

 通常は、散歩するといっても驚異的な速さで歩く娘。ギブスをはめた足では、さすがに速くは歩けず、なんだかおじいさんになった気分(なぜ?おばあさんではなく、おじいさんの気分になるかは不明)とかで景色が違って見えるとのこと。

 彼女が今、生活している私の実家は、両親の住んでいた家で、ボロいながらも、家の中は、母が最初に介護が必用になった際に(介護保険ができたての頃だったためか、やけに景気よくしっかりしたものをつけてもらっている)家中に階段からお風呂場に至るまで、手すりをつけてもらった家で、そんな手すりが今、彼女の助けになってくれているとのこと。

 まさか、自分たちがいなくなった後に孫が一人でその家に住むようになるとは、両親も夢にも思わなかっただろうし、そのうえ、家中につけられた手すりが彼女の手助けになっているとも、全く考えていなかったと思います。

 しかし、なんとなく、両親が娘を守ってくれて、支えとなってくれているような、そんな気にさえなるのです。

 娘には、「少しはゆっくりしなさいってことだね・・」と言っていますが、やっぱり何かあった時に、離れていて、そばにいられないことは、辛いですね。


スキーでじん帯切断


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2025年3月11日火曜日

10年間で86%増加したフランスの公共交通機関内での性的暴力

  


 私がフランスに住むようになってから、もう20年以上というか、四半世紀近く経ってしまったので、ちょっと今の状況とは違うのかもしれませんが、当初、私は、フランスの電車やメトロには、日本のような痴漢はいないのだな・・と思っていたくらいでした。

 当初は、私たちは、パリ郊外に住んでいたので、郊外線を利用していて、今よりもずっと電車に乗っている時間が長かった(とはいえ、正味30分から40分程度)こともあってだったのだと思いますが、夫が服装などに対して、とにかく厳しくて、絶対に華美な服装や持ち物を持たないようにとか、少しでも挑発的に見えるような服装などは、絶対にしてはいけないと口うるさいほどだったので、心配性なのはわかっても、少々うるさいなぁ~と思っていました。

 夫は東京に住んでいたこともあったので、東京で生まれ育って、通勤していた私に対して、東京のようなつもりでいたら、絶対に危ない!という気持ちがあったのでしょう。

 私は、夫の言うように、比較的おとなしい服装で、だいたいまだ子どもが小さいこともあって、スケジュール的にもキツキツだったので、独身の時のように自分がおしゃれをするという時間もなかったのですが、おかげ様で、通勤のための車内はたいてい座って行けていたので、読書をしたり、手紙を書いたりと、それなりに有意義な時間を過ごしており、危ない目に遭ったことは一度もありませんでした。

 今から考えれば、パリ市内のメトロなども今よりもずっと空いていたような気がするし、フランスには、日本のような痴漢はいないんだな・・きっとフランスだったら、簡単な痴漢などの段階ではすまずに、もっと酷い事態に発展してしまうのかもしれないな・・などと勝手に思っていました。

 ところが最近、公共交通機関における性的暴力がここ10年間で86%も増加し、その半数がイル・ド・フランスで発生しているという報道がされており、ビックリしました。

 この性的暴力というのは、いわゆる痴漢行為というのが具体的にどのような行為であるかについては、記されていないものの、39%が性的虐待や性差別的虐待、19%がセクハラ、13%がわいせつ行為、6%が強姦または強姦未遂の被害を受けていると説明しています。しかし、このあたりの境界線がよくわかりません。

 Miprof(女性保護のための省庁間ミッション監視団)の発表によれば、2024年に報告された公共交通機関内での性的暴力の被害者は3,374人ということではありますが、この数字は、法執行機関により記録された件数であり、実際の数字は、恐らくそれを大きく上回るものであると推測されます。

 RATP(パリ交通公団)の調査によれば、調査対象となった女性の70%がなんらかの性的暴行被害に遭った経験があると答えています。

 また、被害者の3分の2(75%)が30代未満の女性であり、36%が未成年であるそうです。

 他の報告では、フランスはすでにフランスはこの現象についての警戒し、公共交通機関における性的嫌がらせに対処するための国家計画として、電話による警告サービス、啓発キャンペーン、職員の研修、迷惑な乗客への取り締まりなど、2014年に政府によって導入されていましたが、この現状を見れば、この国家計画は充分ではないようです。

 このプランの中にあるヘルプライン(3117および31117)やプラットフォーム上のコールポイントについても、実際に存在はしているものの、利用したことがある女性はわずか12%ということで、さらなる周知の必用と実際に被害に遭ったときに、利用しやすいものであるのか?という面もあるのではないか?と思われます。

 しかし、いずれにしても、10年間で86%増というのは、ちょっと驚くべき数字。私などは、幸いにも被害に遭ったこともなければ、被害に遭っている女性を見かけたこともないのですが、今、娘が若い女性に成長していることを考えると、この現状は見逃せない、見過ごしてほしくないと思っています。

 ただ、フランスらしいと思ったのは、この公共交通機関内での性的暴行事件の増加について、その暴行そのものに加えて、「女性がこのために、時間や行先を変更しなければならない事態に陥ることは、女性が自由に移動、旅行する権利を奪われているということ」という言い方もしていることで、フランスらしいと感じると同時に、なんか少し「ん?」と思ってしまうところもありました。

 フランス、特にイル・ド・フランス地域、パリの公共交通機関は、他にもスリやひったくりなど、他にも危険がいっぱいで、あらためて、日本の治安の良さはあたりまえのものではないのだな・・と思うのでした。


フランス公共交通機関内の性的暴力


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2025年3月10日月曜日

残された時間は長くないことを自覚して悔いなく、より楽しく生きる 


 私は常日頃から、テレビは夜のニュースを数時間しか見ないのですが、ここのところ、フランスでは、ニュースといえば、戦争に関連する報道がとても多く、見ているだけで滅入ってくる感じです。

 これは3年前のウクライナに対するロシアの攻撃が始まった頃と同じ感じで、当時は、それこそ、今、この時代によもや、こんなにドンドンパチパチ、ドッカ~ンと言った感じの戦争が始まるなどと夢にも思わなかったので、とにかくショッキングでした。

 あれから、早や3年も経ち、もはや恒久化しつつあるような感じで、報道も減っていたのが、アメリカの政権が変わって以来、世界的なチカラ関係が崩れつつある感じで、再び、緊張が高まっているせいか、フランスのテレビでは、また、以前よりも露骨に兵器を製造している映像や、実際の戦場の様子などが容赦なく流れてくるので、この現実を無視はできないと思いつつも、反面、ちょっと、いたたまれない気持ちで、ついついテレビは消したくなります。

 戦争とは直接的には関係はないながらも、自分の年齢や体調的な面などを考えると、最近は、残された時間は思っていたよりも長くはないことを自覚して生きるべきだと思うようになっています。

 日本に帰国した際にも、行きたいと思っている場所には、期間限定のために、少々、体力的にスケジュールが少々キツいと思いつつも、できる限り行くようにしたり、食べたいものは全て食べて、大げさですが、明日死んでも後悔しない1日を過ごそうと思っていました。

 フランスに帰ってくれば、期間限定ではないので、そこまで貪欲ではありませんが、やっぱり自分のやりたいことを最優先して後悔のない日を過ごそうと思っています。子育てをしていた頃は、何よりも自分のことよりも子どもが最優先だったので、それが終わった今は、自分が楽しむ時間を精一杯楽しもうと、そんな風に思っています。

 それで、また、明日がくれば、明日もそのように過ごせたら、そんな日が少しでも長く続けば、ラッキーです。もうある程度以上の年齢になった現在では、あまり先のことを考えるよりも、できるだけ近い未来のことに照準をあてている方が幸せな気がします。

 そして、やりたいことを楽しんでいるときには、しっかり自分が楽しんでいるということを自分で自覚して、同じことをより楽しみ、周囲の人にもそれをできるだけ伝えるということで、喜びはより強くなります。

 自分が楽しんでいることを自分にしっかり自覚させるということは、単純なことだけど、けっこう大切なことであると、最近、とみに思うようになっています。

 せっかく楽しんでいることをなんとなく過ごしてしまってはもったいない・・しっかりと自分に刻みつけておきたい・・そんな気持ちです。

 しかし、実のところ、日本から帰ってきて以来、どっと疲れが出ているのか、はたまた時差ボケなのか? 風邪をひいたとか、そういうわけではないのに、とにかく、ちょっと出かければ、どっと疲れて、身の置き場がないくらいだるくなって、しまいには、気分まで悪くなってきて、横にならずにはいられないほど、ぐったりしてしまう感じ・・今のところの目標は、体調を整えること。

 すでに、日本行きのために延期してある1日入院しての検査が控えているので、その前に、別にお医者さんに行くことは控え、一晩、寝るたびに明日こそは、もう少し回復しているかも・・と期待している毎日です。

 なにをするにしても、まずは、健康第一です。

 季節の変わり目で、一日一日、日が長くなってきて、気持ちも明るくなってきます。

 当面の私の目標は、少しでも体調を回復し、やりたいことを思う存分できる体力をつけることです。


悔いなく生きる


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