
仏乳製品大手ラクタリスが2024年末からフランスでの牛乳の年間回収量を全体のほぼ9%にあたる約4億5000万リットル削減すると発表し、酪農業界に激震が走り、農業大臣はラクタリスに対し「我が国の食料生産資本を守る」よう呼びかけ、全国牛乳生産者連盟(FNPL)のヨハン・バーベ会長を緊急に迎え、同部門への支援を確約しています。 ラクタリスは、仏大手乳製品の会社で乳製品業界世界市場シェア第一位に君臨するフランスの乳製品トップの会社です。世界51ヵ国に270ヵ所の生産拠点を展開し、従業員数は8万5000人。150ヵ国で製品を販売している大企業でありながら、同族経営の非上場企業のうえ、社名は製品には表示されていないため、一般消費者の間での認知度は比較的低い会社です。これは目立つことを意図的に避けてきた創業家の方針で、ラクタリス本体は、目立たずとも確実に業績を伸ばし、拡大してきた、なかなか、したたかな企業です。 実際には、プレジデント(バターやチーズ、クリームなどなど)、ラクテル(ミルク)、ブリデルを始め、スーパーマーケットの乳製品コーナー(フランスはどこもこのコーナーがとんでもなく広いスペース)の多くのスペースは、このラクタリスの製品で占められています。 非上場ということは、よく言えば会社の方針を貫きやすいということでもあり(よく言えば)、この企業の規模が拡大していくにつれて、その分、その外との摩擦がここのところ目立ってきている気がします。 2017年から2019年にかけて同社が製造した粉ミルクにサルモネラ菌汚染が発生したことを機に、同社の経営の不透明性についても追及を受けたり、また、2022年には、加重脱税のロンダリング容疑で国家金融検察庁の予備捜査の対象ともなっている。 そして2024年に入ってからは、(もうそのあとに色々なことがあったので、なんだかずいぶん昔のことのような気もしますが・・)農民たちの大規模なデモが起こり、地方から押し寄せた農民たちが、高速道路やパリ、ランジス市場への道をトラクターで封鎖したり、パリで行われた国際農業見本市で、トラクターを勢ぞろいさせてデモを起こしたり、マクロン大統領と農民たちがほぼ一日をかけて大激論を戦わせたりしたことがありました。 その口火を切ったのは、このラクタリスと酪農家の間の下限価格設定問題と言われており、ラクタリスと酪農家の間の争いであったとも言われています。 ところが、今回、ここに至っては、下限価格設定どころか、ラクタリスが買い取る牛乳の量を大幅に減らすというのですから、ラクタリスに依存している酪農家にとっては、さらに深刻な話になります。 ラクタリスは、フランスで販売される乳製品の50%、輸出用に販売される乳製品の20%、および、バター、粉乳などの乳加工製品の30%のシェアを抱えており、同社は、その一部が加工され輸出される予定の約30%の牛乳余剰によってその決定を正当化して説明しています。ラクタリスにとっては、この輸出部門を費用がかかり不採算な事業であると考えており、牛乳の価値をあげ、フランスの消費者向け製品に再び集中したいとしています。 今や世界51ヵ国に270ヵ所の生産拠点を抱える企業にとって、原料をフランスから輸出する必要はなく、現地で仕入れた方が合理的であるということです。 ラクタリスは、この厳しい決定の影響を和らげるために、グループは量の削減が「2024年から2030年までの間で段階的に行われるようにする」として、譲歩しています。 この削減の第...