今回は、日本にある家のことで、急遽、一時帰国することになり、その家は、父が亡くなった後に相続した段階で、私と弟の共同名義にしたために、家に関わる大きな案件については、私と弟との二人が揃っていなければならず、姉弟ともども海外生活を送っている我が家は、二人が日程を合わせなければなりませんでした。
日本に到着するまでにも、色々と打ち合わせたり、決めたりしなければならないことも多く、いまだかつてないほど、ほぼ毎日のように弟とはLINEやメールで連絡をとりあったり、意見をかわしたりしてきたので、姉弟で色々と話せるよい機会だったと思います。
弟は、日本の企業で働いているので、日本には仕事も兼ねて帰国することが多いのですが、今回は、100%プライベートということで、かといって、私のようにその間に旅行の計画をたてたりはしていなかったようなので、比較的、日本滞在中は自由に動ける感じでした。
なので、肝心の要件に臨む前に、姉弟で顔を突き合わせて、色々と段取りをしておく方がよいと思い、家で一緒にゆっくり食事しながら話そうと母が昔、よく作ってくれたお料理などを久しぶりに作ったりして、弟を迎え、弟もリラックスした感じで昼間から飲みながら、食べながら、途中で叔母が顔を出したり、娘が加わったりしながら、延々と楽しい時間を過ごしました。
夕方になった頃、そこそこ酔っ払い始めた弟が今日は、「泊まっていってもいい?」と言い出し、「もちろん!ここは、あなたの家でもあるんだから・・」と言いつつ、弟は、いよいよ本腰を入れて飲み始めてしばらく経った頃でした。
弟の携帯に突然、電話着信が・・バカンス中のことでもあり、最初は彼も無視していたのですが、あまりに執拗に鳴り続けるので、電話に出るとそれは彼の勤務先のシンガポールからで、彼の部下である日本人スタッフの女性が仕事先のマニラで急に脳出血をおこして、病院に運ばれて意識不明とのこと。
シンガポールならばともかく、場所はマニラ。マニラでも一番よい病院に運んだとのことでしたが、かなり状況は厳しそうだということで、一瞬で酔いも覚めるような出来事でした。
病人に同行していた他のスタッフはかなり動揺していて、パニック状態。彼は部下にとにかく、「費用は全部会社が負担するから、落ち着いて、できる限りのことをひとつひとつやっていくように、そして、彼女の家族に即刻、連絡をとるように」と指示していました。
しばらくすると、また、彼には連絡が入り、「手術するには、家族の同意が必要で、現在の病院の状況だと早くて手術は2日後くらいであろうと・・また家族は、鹿児島にいて、誰もパスポートすらもっていない・・」と。
この倒れた彼女、とても有能な方のようでバリバリの叩き上げのキャリアウーマンとのことで、39歳独身とのこと。本人の意識はないので、そのご家族と連絡をとりながらのことを進め、翌日には、なんとか手術に漕ぎ着けたのですが、結局、それも上手く行かずにその翌日には、亡くなってしまったそうです。
今回、日本に帰国して以来、明らかに急に老化が進んだように見える叔父や叔母の様子を見たり聞いたりするなか、あっけなく突然、まだまだ将来もあるはずの若い命が突然、絶たれてしまうこともあるのだと、なんだか他人事ながら、呆然とする思いでした。
私としたら、いつ、それが弟であってもおかしくないような、人の寿命はいわゆる歳の順ではないのだとなかなか身につまされる思いでした。
その間に家の要件は無事片付き、私は、予定していた旅行などに行っていたりしましたが、弟の方は、今回の帰国は仕事は関係のない帰国だったにもかかわらず、現地で荼毘にふされた彼女の遺骨が東京に届くと、部下とともに彼女の遺骨を届けに彼女の実家のある九州へ。
たまたま同時期に九州の温泉でのんびり過ごしていた私とは、あまりの違いで気の毒になりました。一緒に同行した彼の部下は、涙ながらに遺族に遺骨を渡しつつ、ことの経過を説明したとかで、どんなにか辛い思いをしただろうと思います。
私の夫も病気で突然、職場で倒れてから、病院に運ばれて数日後に亡くなり、母も病を患っていたとはいえ、発作をおこしてから、10日ほどで亡くなり、どちらも平均寿命には及ばない早逝だったと思いますが、今回の話はまさかの30代ということで、つくづく人の寿命は決して歳の順ではないのだということをあらためて思い知らされました。
結局、彼女は倒れてから、一度も意識を取り戻すことなく亡くなってしまったようで、何の前触れもなく、何の言葉も残さず、ある日、突然にいなくなってしまいました。
歳若いうちは、死は身近には感じづらいものですが、やはり、日々、死は隣り合わせにあるもので、日頃から私も死については、考えておこうとあらためて思ったのでした。
人間の寿命
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