私には、6歳年上の従姉妹がいて、子供の頃はそれこそ隣に住んでいながら、あくまでも同い年の従姉妹のお姉ちゃんという少し離れた存在でした。もっとも考えてみれば、子供の頃の6歳の年の差は大きく、子供の私からみれば、彼女の存在は、実際の年齢以上に年の開きを感じていて、ずっと、すごく大人だと思っていました。
私が小学生の頃には、彼女は中学生、高校生だったのですから、そのくらいの年頃の子供にとっては、やっぱり別世界です。
彼女は、イギリスに留学していた時期もあり、わりと海外にも抵抗なしに出かける人なので、彼女と少しだけ、行き来をするようになったのは、私がフランスに来て10年以上経ってからのことです。
彼女がお友達とパリに来たときに家に寄ってくれたり、私が日本に帰ったときには、美味しいものを届けてくれたり、家に呼んでごちそうしてくれたり・・現在は、日本の家はそんなに近くないのですが、ことさら食べ物に関して、何かにつけてお世話になることの多い従姉妹です。
彼女は、結婚していますが、日本でDINKS(Double Income No Kids)という言葉が日本に出回り始めた頃のまさにDINKS夫婦。彼女は長年にわたり会社を経営しているし、ご主人は、歯医者さんで子供はいません。
それなりの高収入ではあるとは思いますが、彼女たちのお金の使い方は、いわゆる銭ゲバ成金的なお金持ちのような生活をしているわけではなく、その収入の多くを「食と旅」に費やしている私からみれば、理想的な生活をしています。
日本に住んでいながら、一食も無駄な食事をとらないという姿勢は尊敬すべきものであり、それなりにお金だけでなく手間暇もかかっていると思います。コンビニのお弁当やカップラーメンなどで食事をすませることはせず、毎日、美味しい食材で作ったお弁当を持参しています。
少しまとまった休みがとれるタイミングには、かなり前もって旅行の予定が入っていて、その土地で美味しいものを見つけると、その土地の頑固なお肉屋さんやお魚屋さんと仲良くなるまで通い詰めて東京まで送ってもらったりもしています。
私はその全てを把握しているわけではありませんが、食いしん坊の家系の中でも彼女夫婦はダントツで群を抜いた存在、その味覚に関しては、私も娘も絶対的な信頼を置いています。
今回の私の九州旅行はそもそもが日本への一時帰国自体をかなり急に決めたものでもあり、その間の旅行については、もともとの用件が住みそうな頃合いを見計らって、娘と二人だけで決めたものでした。
それが、日本に到着したあとに、私がこの日からはちょっと九州に行くんだ・・と話したら、なんと、その期間に少々、日にちはズレるものの、似たような地域を彼女たち夫婦が旅行する計画になっていて、じゃあ、この日に予定が合うようだったら、一緒に食事しようということになり、彼女たちおススメの美味しい鶏料理のお店で食事することになったのでした。
これまで日本に帰国した際に親戚のおじさんや他の従姉妹たちも含めて一緒に旅行したことは何回かあったのですが、こんなに偶然に日本の他の都市で居合わせて食事をするなどということは、初めてのことで、なんだかとても新鮮でした。
彼女は今回以外にも私がここに旅行するとかいうと、必ずその土地の美味しいものや美味しいお店を教えてくれて、それが絶対に間違いなく、とびきり美味しいのです。
今回は彼女たち夫婦とのランチということで、そこで何を注文すべきかの指南を受けながら、食事ができるのですから、こんなに嬉しいことはありません。
そこは、しゃもの専門店で、もともとそんなに豊富なメニューがあるというわけではないのですが、そのしゃもの美味しさを活かした、ただしゃもをシンプルにジンギスカンのような鍋で焼き、塩で食べるというものなのですが、これがまあ、同じ鶏肉と分類するのがおこがましいほどの絶品。
それなりに人気店のようで、行列ができた時のためにお店の入り口には、名前を記入しておく台まで用意されていて、人気のほどがうかがえます。
ただ、地元の人や知る人ぞ知るという感じのお店であろうことは、その立地条件からもわかります。まさにこんなところにこんな店が・・という感じです。
また、彼女たちは、メニューには載っておらず、注文を取りに来た店員さんでさえも知らなかったようなモツを注文してくれたあたりはさすがの常連。う〜んとうなったり、ひゃ〜っ!美味しい!と感激したりして、美味しく楽しいひとときを過ごしたのでした。
食後には、少し離れたところに美味しいソフトクリームのお店があるとデザートにジャージー牛乳の食べ応えのあるソフトクリームを食べながら、もう止まらないおしゃべりの時間を過ごしました。
その間にも、話題の中心は食べ物のこと、こんなものが美味しいとか、これを買っていくといいとか・・そんな話です。こんな場所においても彼女はすでに買い集めている果物やお菓子などを持ってきてくれていました。
子供の頃はずっと年上のお姉さんという感じだったのですが、考えてみれば、結局のところ、現在においても面倒見のいいお姉さんです。
また、彼女のご主人も飄々としたよい人で、もう従姉妹の夫さんという本来ならば少しとっつきにくい関係でもありえるところ、まったく垣根が感じられず(一方的なことかもしれませんが)、とっても温かい人です。
彼女たちのすごいところは、しっかりと自分の本業をこなしつつも、仕事オンリーではなく、自分達の楽しみを夫婦でしっかりと持っていて、それに専心して、もはや美味しいものに関してはプロなみの知識を蓄えつつ、楽しんで生活していることです。
そろそろ引退を考えはじめてもよさそうな年齢ではあるとは思うのですが、この食と旅に徹した生活を送るためには、働かなくちゃ・・とか冗談のように話しています。
私の場合は、もうずいぶん前に夫を亡くしてしまったので、夫婦でそのような生活を送ることはできませんが、そんな生活をずっとずっと続けている彼女たちを本当に理想的な夫婦だと見ています。
ちょっと残念なのは、彼女たちには子供がいないことで、もしも彼女たちに子供がいたら、すごく良い子に育っていただろうに・・とも思います。彼女たちの食の信者と化している娘はなんなら養女にしてほしいくらい・・と冗談のように言っています。
昨今、周囲を見ていると、夫婦の在り方や生き方、特に引退後の生活など色々と思うところはありますが、彼女たちを見ている限り、老後もとても楽しそうだ・・と思えるのです。
夫婦の余暇
<関連記事>
「親戚付き合いは、必ずしもみんながしているわけではないらしい・・」
0 コメント:
コメントを投稿