2022年12月29日木曜日

日本人のパスポート保有率の低下に思うこと

 


 つい最近の外務省の発表によると、日本人のパスポート保有率が大幅に減少して20%を割り、19.1%にまで減少したというニュースを聞いて、かなり驚いています。

 前年比58.4%減・19年比88.2%減という大幅な減少は、間違いなくパンデミックでの渡航制限で、世界的にもかなり最近まで日本の水際対策が厳しく、気軽に海外旅行ができない状況であったことによるとは思いますが、そうこうしている間に今度は、航空運賃が爆上がりして、とても海外旅行などしていられなくなってしまったことがさらに追い打ちをかけたようで、海外旅行はますます、遠のいてしまったのかと思います。

 わざわざ海外に行かなくても、日本国内でもたくさん美しい場所はあるし、国内旅行(日本)もいいじゃんいいじゃん!とも思いますが・・。

 私は、長いこと海外生活なので、パスポートなしの生活は考えられず、海外で生まれた娘にいたっては、出生届を出すのとほぼ同時にパスポートの申請をしたので、生まれてこの方パスポートを持っていなかった期間がほとんどないくらいで、我が家にとっては、パスポートはかなり身近な存在です。

 特に子供の場合は、パスポートの期限が5年間と短いので、二十歳になるまでに4冊のパスポート、成人してようやく10年のパスポートになりました。

 最近、世界の情勢は不安定で、いつどこで、どんなことが起こるかわからない状況で、海外に住んでいると、少なくとも私の場合は、フランスにいた方がいいのか、日本にいた方がいいのかと考えることも増えました。

 少し前にロシアで部分的動員令が発令された時に、動員を逃れて国外に脱出しようとした人々の中で、パスポートがなくて断念した人も多かったという話を聞いて、今やパスポートは単に旅行だけでなく、もはや緊急時に国外に避難しなければならない時のためということもあり得ないことではない時代なのだとも思いました。

 日本はロシアとは違いますが、いつ何が起こるかわからないという意味では、日本とて、100%安心な国であるわけでもありません。そんなときのためにもパスポートは常に用意しておくことは、必要なことなのではないか?とも思っています。

 かなり昔に母がどこかにセカンドハウスを探していた頃に、祖父まで動員して、土地探しをしていた時に、戦争体験のあった祖父が、「まさかの時の疎開場所としてもいいかもしれない・・」などと言っていたことがあり、その時は、「なに言ってるの?そんなこと・・おじいちゃまは変なこと言うんだから・・」と笑っていた私ですが、今の時代に置き換えてみると、「そういう場所があったらいいかもしれない・・いや、彼の言っていたことは、ぜんぜん、おかしくなかった・・」とぼんやりとでも思うのは、今の時代が実に不安定で何が起こってもおかしくないようなそんな時代に突入しているということだと思います。

 フランスは、パスポートはなくてもIDカードがあればEU圏内の移動ができるので、必ずしも日本とは同じではありませんが、少なくとも日本は島国で、外国に出るには、パスポートなしということはあり得ません。(ヨーロッパなどの場合は知らないうちに国境を越えていたなんていうこともある)

 現実的には、命からがら海外にまで避難するということは、あまり想像がつきませんが、とりあえず、すぐに使う予定はなくとも、とりあえずパスポートを持っていた方がいいような気がするのです。備えあれば憂いなし・・です。

 日本のパスポートは世界最強のパスポートとも言われている優良パスポートですが、こんなに持っている人が少ないなんて、残念なことです。日本は何かと内向きな国と言われますが、とりあえず旅行でもいいから、実際に自分の身を海外に置いてみるということも、少なからず、違った目で日本を眺めるうえでも貴重な体験です。

 聞いている話と実際に自分の目で見るというのは、大違いです。

 海外も行きなれていないと、いざというときに、一時的にでも、海外に避難するのも難しいかもしれません。

 実際には、日本からフランスへは避難するにしては遠すぎるかもしれませんが、日本にいる家族が私の今のフランスの住まいをまさかの時の避難場所にしうることがあるかもしれないなどとまで、最近の私は考えてしまうこともあるのです。

 海外にいるときは、「パスポートは命の次に大事」などと言われ、実際に海外で生活しつづけている私にとって、パスポートがない状態というのは想像もつかなくなっていますが、日本に住む日本人は、大多数の人がパスポートを持っていないということが逆に不思議な気もしてしまうのです。

 もっとも、高齢者の割合が多い日本だと、もう海外旅行は無理・・という人も多いだろうし、高齢化もこのパスポート保有率の低下の一因なのかもしれません。


日本人のパスポート保有率


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2022年12月28日水曜日

中国での感染拡大の一因と見られているオミクロンBF.7 中国をどこまで警戒すべきか?

  


 パンデミック開始以来、「ゼロコロナ対策」として厳しい規制措置をとっていた中国では、12月初旬に強い反発のデモなどが起こったことから、規制措置を緩和し始めていました。ところが、この緩和措置とともに、中国では、再び感染が急激に増加しており、この感染急増の原因の一つとして、オミクロンの新しい変異種 BF.7が感染の大半を占めていることを挙げています。

 オミクロン BF.7は、5月中旬にベルギーで発見されたことを皮切りに、その後、インド、フランス、米国、英国、ドイツ、デンマークでの感染が確認されており、今月初めに北京での感染の主流になったことがわかっています。

 BF.7の症状は他のオミクロン変異種と似ており、主に上気道を侵し、発熱、咳、喉の痛み、鼻水、疲労感に加えて、嘔吐や下痢などの症状も報告されています。

 このオミクロン BF.7ゲノムのスパイクタンパク質変異は、中和抗体を回避する能力を備えているために感染力が強く、懸念されるところではありますが、重症化に対しては、ワクチンは有効であると言われています。

 しかし、この中国の感染急増は、なにせ人数が多いだけに、世界的にも少なからず影響を及ぼすであろうとも見られており、また、このタイミングで中国政府は規制緩和を機に感染者数や死亡者数の発表を停止してしまったことが、またこの感染拡大の状況把握を複雑にしています。

 もともと中国政府の感染者数の発表などは、フランスでは信憑性に欠けるものとして、あまりあてにはしていない感じもありますが、ファイナンシャル・タイムズ紙などによると、12月に入ってからの20日間で中国では2億5000万人がコロナウィルスに感染した(1日あたり1240万人)と報道しています。

 このような具体的な数字を中国政府が公表しないこと決めたのも疑問なうえに、中国当局は12月26日に、1月8日から中国到着時の強制検疫を終了することを発表しています。つまり、中国人の海外渡航が本格的に再開されることになります。

 しかし、フランスでは、中国では感染が急拡大して、死亡者も多く出ていて、遺体の処理が間に合わずに、霊柩車が長い列を作っていたり、棺が山積みにされているような映像が流されていて、中国の感染拡大がかなり深刻なものとして扱われているので、このオミクロン BF.7の危険性を感じずには、いられません。

 また、実際に感染力は強くても、重症化はワクチンで回避できる可能性が高く、また同じ変異種がすでにヨーロッパにも到達しているにもかかわらず、現在のところ、ヨーロッパでは、さほど重症化の数字が跳ね上がっていないのは、中国で行っているワクチン接種の種類が異なることや、回数も十分ないことが原因ではないかという見方もあるようです。

 しかし、ゼロコロナ対策はともかくのこと、この感染症が世界規模のパンデミックとなっている以上、その現状を公表せずに鎖国の扉を開けようとしているのは、納得がいかないことです。この感染症が世界的に広がってしまったパンデミックになってしまった以上、諸外国とも情報を共有しながら対策をとっていかなければならないことは、これまでの経緯を見ても明らかなことです。

 そもそも、最初の感染拡大を隠蔽したために、世界規模に拡大してしまったパンデミックです。同じ過ちを繰り返してほしくないと切に思うところです。


オミクロン BF.7  中国感染急増


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2022年12月27日火曜日

年末にかけて、今度は医者のストライキ一週間

  


 考えてみれば、年がら年中ストライキをやっているフランス。今年に入って覚えているだけでも、夏のバカンス時の空港や航空会社のストライキ。エネルギー危機が叫ばれる中のガソリン供給会社、RATP(パリ交通公団)、SNCF(フランス国鉄)などなど、一つがおさまると、また別がストライキともぐらたたきのように、必ずどこかがストライキをやっている感じがします。

 そして、一年の年末の締めくくりは、お医者さんたちが一週間のストライキをするようです。

 ガソリンや公共交通機関のように、皆が毎日毎日、お医者さんにかかっているわけではないので、社会全体を揺るがすようなストライキになるとは思えないものの、現在、コロナウィルスはまだ蔓延中なのに加えて、細気管支炎やインフルエンザなどの3大ウィルスが同時に流行しているといわれている中、お医者さんのストライキは、まさかの事態には、大変、困ったことになると、少々不安になります。

 特に小さい子供や高齢者を抱える家族にとっては、より一層、心もとないことに違いありません。ストライキをする権利というものは、誰にもあるのだということはわかりますが、お医者さんに至っては、時には命にかかわることも起こりかねないだけに、少々、複雑な思いもあります。

 今回のストライキでは、リベラル派の開業医が中心となって行うもので、フランス医療連盟は、現行の基本診察料25ユーロ(約1,400円)を50ユーロに倍増することや、労働条件改善を求めています。

 いきなり倍増という要求には、驚きますが、たしかに診察料が20ユーロから25ユーロまでに上がるまでは、なんだか少しずつでも、「えっ??また値上げ?」と思った記憶があるのですが、それもけっこう昔の話で、そういえば、25ユーロになってからは、かなり値上げしないままだった気もします。

 我が家は比較的、医者にはよくかかる方であったのは、私が仕事を休めなかったためで、なんとしてでも娘に病気になられては困るし、私としても病気になるわけにはいかなかったので、ちょっとでも体調が芳しくないと思えば、早め早めに先手を打ってお医者さんにかかる感じで、また、フランスでの子供の予防接種などについても、必要な予防接種やタイミングなど私はわからなかったので、すべてかかりつけのお医者さんに相談していました。

 フランスでは、医療費(診察料や薬など)は、国民健康保険でかなりカバーしてくれるうえに、多くの人がその国民健康保険ではカバーしない分をカバーしてくれる保険(ミューチュエル)に入っているため、結局は全額カバーされるために、私などは、医者にかからずに薬を買うよりも、医者にかかってちゃんと診てもらって、薬を処方してもらう方が合理的なので、診察料が高いとか安いとか、あまり考えずに医者にかかっていたので、診察料について、あまり考えたことはありませんでした。

 しかし、現在、医者になりたい若者が減り、医者不足が叫ばれる中、専門医などはまた別かもしれませんが、一般の開業医などの場合は、考えてみれば、医者になるための勉強がかなり大変なわりには、超高給というわけでもなく、優秀な学生にとって、金銭的には、あまり魅力的な職業ではないかもしれません。

 特にパンデミックを機に、医療体制には、様々な問題が浮き彫りになってきていますが、一般の開業医もまた、社会全体の医療制度とともに見直さなければいけない時が来ているのかもしれません。

 今回の医療費値上げ要求をはじめとするストライキを呼び掛けている医者たちは、「明日のための医師団」と銘打って、運動を起こしていますが、この改革が確実に医者が不足すると見られているそう遠くない未来のために、医師という職業が少しでも魅力的な職業で、尊重される職業であるべきだとしています。

 これらの要求のための動きは今回の年末の一週間のストライキだけでなく、1月5日の大規模なデモも予定されています。


開業医ストライキ 明日のための医師団


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2022年12月26日月曜日

日本からの小包受け取りに課税されるモヤモヤ・・

 

無事に届いた年末年始の私のおタカラ


 数日前の朝、郵便局(La Poste-Colissimo)から、「あなた宛ての荷物が届いています」というメールが来ていて、正直、この手の詐欺メールや詐欺メッセージが多いので、荷物を受け取る予定もなかったし、下手にメッセージをいじって、どこかをクリックしたりすると面倒なことになる・・と思い、その手のメールは無視することにしているので、そのまま放置していました。

 その日は、出かける予定があったので、午前中のうちにバタバタと仕事を済ませてから、そのまま外出してしまいました。

 ところが、出先で日本にいる親友からメールが入っていることに気が付いて、メールを読んでみると、「娘ちゃんに頼んで一緒に荷物を送ってもらったので、楽しみにしていてください!」とあり、その時、初めてあの郵便局からのメールはホンモノだったんだ!と気が付きました。

 まったく、その手のメールやメッセージでホンモノだったことは初めてで、多くの詐欺メールのおかげで、肝心なメールまでも信用しなくなっていることに、なんかやるせないような気持ちになりました。

 しかし、ホンモノの荷物となれば・・と思い、郵便局からのメールを開くと、「配達済」となっていて、「家に帰ったら、日本からの荷物が届いているんだ!」とその日は、なんだか、ちょっとわくわくした気持ちで家に帰りました。

 しかし、実際に家に帰ってみても、荷物は届いていません。こちらの荷物の配送で、実際には、配達されていないのに、配送済とされて荷物が届かないことは、そんなに珍しいことでもなく、家にいても不在通知を入れられたり、ロクなことはありません。

 タイミングとしては、12月の年末、しかもノエルの前後ともなれば、一番荷物が盗難に遭う可能性も高い季節。せっかく久しぶりの日本からの荷物とウキウキしていたのに、いっぺんに絶望的な気持ちになりました。

 一応、荷物を送ってくれた娘に連絡してみると、「多分、ママのメールアドレスは書いてないはずなのに・・」などと言うので、余計に気味悪く懐疑的な気持ちになりましたが、まぁ、この段階でジタバタしても仕方ないし、今日は1日待ってみて、届かなければ、明日、郵便局に行ってみると言って、電話を切りました。

 娘や親友が送ってくれるのは、100%日本の食べ物に違いなく、ノエルだなんだといっても、何よりも日本食の方が私にとっては魅力的で悔しい限りで、だいたい、今までどれだけの荷物の盗難に遭ったことか!と過去の悔しい記憶を遡っていました。

 しかし、夕方遅い時間になって、荷物はひょっこり届きました。ところが、配達の人は、「荷物の受け取りには税金を支払ってください」というのです。一定の金額以上の海外からの配送品に税金がかかるようになったことは知っていたのですが、それがどういう基準で徴収されるのか? よくわからないものの、17ユーロと言われて、言われるままに17ユーロを支払いました。

 カードは使えないということだったので、現金か小切手と言われて、現金をあまり使わない私は久しぶりに小切手を引っ張り出してきて、小切手で支払いました。

 とりあえずは、もう届かないかもしれないと思っていた荷物が無事に?届いただけでも良しとしなければならないのでしょうが、この税金の17ユーロが一体、高いのか安いのか?どうやって、計算されているのかは全くわかりません。

 以前は個人的な小包を受け取るのに税金など取られなかったので、郵便料金の他に荷物を受け取るだけのために税金をはらわなければならないのは、納得いかないし、そのうえ、その金額の算定方法も説明されていないので、どうにもモヤモヤしてしまいます。

 小切手には、「La Poste」(郵便局)と書いてくださいと言われたので、そのまま書きましたが、あとから、これは、本当は、税関に対して支払うものではなかったか?と思ったりもして、なおさらモヤモヤします。

 荷物を送る際に書かれた明細表によると、中身は合計8,000円となっており、ユーロ換算すると57ユーロ程度で、57ユーロの商品を受け取るための税金17ユーロというと、何パーセントの税金??と思い、海外からの配送品についての税関のサイトをざっと見たところ、品物によっても税率が違ううえに、食料品についての記載はありません。

 まぁひとつだけ、この税金を支払うことでメリットがあるとすれば、この税金を配達員が徴収しなければならないとしたら、荷物の盗難は減るかもしれないということです。

 でも、また否定的に考えれば、本当は支払いの必要のない荷物に対しても、税金だと偽り徴収されてしまうこともあるのではないか?と思ってしまいます。

 税金として決められているなら、払わなければならないとは思いますが、せめて、その金額がどのように設定されているのか、記載してもらいたいものです。詐欺も多いのですから・・。まったく、基本的に信用しておらず、すべてに対して疑ってかかるこの姿勢。

 我ながらうんざりしますが、ボーっとしてもいられません。

 どちらにしても、日本に荷物を送ったり、受け取ったりするということも、ますます厄介になりました。

 しかし、フランスでは手に入らない日本の食べ物はお宝には違いなく、この年末年始、娘や親友のおかげでごきげんに暮らせる私なのでありました。


海外からの配送品への課税


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2022年12月25日日曜日

パリ10区クルド文化センター襲撃テロに抗議するデモの暴徒化 車が燃えるクリスマスイブ

  


 クリスマスイブというのに、まことに物騒なことで、前日にパリで起こったクルド文化センターでクルド人を標的にして襲撃する発砲事件に抗議するデモが暴徒化し、デモ隊と警察の応酬で車は横転し、車とともにゴミ箱、バイクなどに火がつけられ、催涙ガスが街に充満する地獄絵図のような事態に陥りました。

 なんか、ここ最近、このようなのは見ていなかった気がするので、久しぶりな感じがしました。

 そもそもの事件の発端は、前日に起きたクルド人を狙った銃乱射事件がきっかけで、少なくとも3人が死亡、多数の負傷者が出た事件がきっかけで、この事件直後にもデモは起こり、そのうえ、翌日のデモまでもが予告されていました。

 その場で逮捕された容疑者は、人種差別的襲撃などの暴力行為で過去数度にわたり逮捕歴のあるいわば札付きの69歳の白人男性で、この手の犯罪にしては、高齢であることに驚かされますが、インタビューに答えていたこの男性の父親は90歳過ぎで、「息子は狂人だ!未だに手を焼かされる・・」と69歳の不良息子に90過ぎても悩まされているというちょっとウッとくる感じもありました。


 昨年の12月にもパリ・ベルシー公園にあった亡命者のキャンプをサーベルで襲い、テントを破って2人を負傷させたという事件を起こしています。昨年末に司法捜査が開始され、容疑者は、最近、釈放されたばかりであったということで、なぜ、このような危険人物が釈放されてしいまうのかは、非常に恐ろしいことと言わざるを得ませんし、犠牲者にとっては、取り返しのつかないことです。

 前日の襲撃事件後、マクロン大統領も「フランスのクルド人を標的とした悪質な攻撃」と強烈に非難。

 目撃者によると、犯人とされる男はクルド文化センターに侵入して銃撃し、その後、美容院に駆け込み、美容院の通報により逮捕されたようですが、事件現場は突然、通りでの7~8発の銃声にパニック状態に陥り、地面に倒れる人、血を流しながら逃げる人、近所の商店やレストランなども客を非難させて、シャッターを閉めて震えあがりました。

 ルモンド紙の情報によると、死亡した犠牲者は3人のクルド人武装勢力であり、フランスのクルド民主評議会も、声明で「卑劣なテロ攻撃」だと非難しています。「我々は、この卑劣な攻撃を糾弾するために、デモを行う」と事件当日にもすでに大きな抗議運動が開始されていました。

 デモといっても、その形態はさまざまで、今回の事件翌日のデモは数千人規模に膨れ上がり、さらにエスカレートしてしまった、かなり暴力的なデモでデモ隊と警察の攻防戦となり、車が転がされて燃やされ、ゴミ箱やバイクなどにも火がつけられ、催涙ガスがもくもくとする、まことに物騒な事件に発展してしいまいました。まさにクリスマスイブ当日としては、ふさわしくない悲しい光景です。


 このデモの破壊行為のために、11人が逮捕、31人の警察官が負傷という、まさに事件がさらなる事件を引き起こすこととなりました。

 ところが、この大規模なデモが起こった当日の夕刻には、検察庁は容疑者の拘束を解くと発表し、容疑者は直ちに警察の精神科病棟に入院しました。「被疑者を診察した医師が、当該者の健康状態は身柄拘束の措置になじまないと述べています」と検察は発表していますが、拘束がなじむかなじまないかは別として、このような危険人物が解き放たれるのは、あり得ないこと。

 現在のところ、精神科に入院中とのことですが、ここで決して曖昧になってもらっては困ります。


パリ クルド人襲撃 クリスマスイブのデモ


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2022年12月24日土曜日

ノエル直前のパリのスーパーマーケット やっぱりノエルの食事はケチらない

 


 ノエル間近のスーパーマーケットに行って、世間の人々のノエルの食料調達事情を見てきました。今年のフランス人のノエルの平均予算は568ユーロなどと言われ、プレゼントは節約するけど、食事をケチることはしないという調査どおり、皆、想像以上の買いっぷりで、あの調査は本当なんだなと思いました。

 しかし、最近、なんとなくしょぼい感じだったスーパーマーケットが久ぶりに活気づいている感じで、「やっぱり、こうじゃなくっちゃ!」と嬉しい気持ちでした。

 毎年のことですが、ノエル前のスーパーマーケットというのは、いつにない華やかさがあって、ノエルならではの食材が並ぶのも楽しいタイミングでもあります。

 ノエルのディナーを華やかに飾るのは、いくつかの定番アイテムがあります。

 この時期のスーパーマーケットの商品のラインナップを見ると、フランス人がどんなふうにノエルのディナーを演出していくのかがわかる気がします。



 まずは、華やかさを演出するお花はどんな行事でも同じですが、お店を入るとまず、お花のブーケなどが並び、その次に山積みのチョコレートが目に入ります。どんな時でもこのお花とチョコレートは、必ず目にするものです。


 そして、シャンパンですが、これは、思ったほどの量ではありませんでした。

 


 次にノエルといえば、登場するのがフォアグラ、キャビア、スモークサーモンの類ですが、キャビアは一段と値段が高いこともあり、仰々しくケースに入っていて、それほど必須アイテムというほど、みんなが買っている印象はありませんが、一応、必ず登場しています。

キャビアちっちゃな一瓶 約1,800円∻5,500円程度

 フォアグラは、少し前から姿を現し始めていましたが、今年は、値段がかなり上がっている印象で、こんなに高かったっけ??と、ちょっとびっくりしていたのですが、直前になって行ってみると、けっこうな値段にもかかわらず、少しは割引になっていることもあるのか、かなり売れている様子で、スカスカになっている棚もあって、やはり、フォアグラだけは削れない・・と考える人が多いのかもしれないし、ノエルの食費は削らないと言われていたのを目の当たりにした気がしました。





 どれも、値引きはしているものの、なかなかなお値段ですが、中には、「ウソ!安!」というものをみつけて、よく見ると、50%フォアグラで鶏のレバー、豚の油や卵が混ざっているという、フォアグラもどきで、これは、ほとんど売れていない感じでした。ノエルのディナーは適当にごまかさないようです。

 


 そして、フランス人といえば、チーズですが、これまたびっくり!チーズの棚はガラガラ・・ほぼ空っぽと言ってもいいくらい・・

 


  その場で切ってもらうチーズ売り場は長蛇の列

 


 そして、これもノエルの時期になると必ず登場するシャポン(去勢鶏)は、今やかなりクラッシックな存在にもなりつつある感じもしますが、丸鶏や七面鳥とともに、けっこう雑な感じで並んでいます。

 

地鶏と七面鳥 約5,000円程度


 そして、それ以外のジビエに混ざって、最近、仲間入りしているのは、和牛ですが、それに加えて、鴨肉も必ず


シャポン約4,000円


イノシシ、ダチョウ、鹿、馬など


鴨肉 約1,400円






 それから、ノエルといえば、日常は圧倒的に肉食な彼らが、手を出すクルスタセと呼ばれるエビ・カニなどの甲殻類、貝、生牡蠣です。これまた、日ごろからスーパーマーケットではろくなものがない魚コーナーには、オマールや伊勢海老、ラングスティーヌなどが堂々と並び、飛ぶように売れていきます。

 魚介類は、肉類に比べると、やはりノエルの時期にも若干、割高な感じもします。


活きオマール海老 1尾50€(約7,000円)

 牡蠣は最近の若者にはあまり好まれないという話も聞くせいか、年々、牡蠣のコーナーは縮小している気もしますが、普通、殻付きで産地、サイズ、種類などにわかれて、箱詰めされたものを買ってきて、家で殻を開けます。

 今年は気候変動の影響で牡蠣の生産にも影響があったと言われていますが、今年は、こちらは、そんなに飛ぶように売れているという印象はありませんでした。

 


価格はたいてい1ケース(12~24個入り)の値段


 そして、これらの食材をアペリティフから、メインへと、華やかに演出していくのに、最近、その中の一品に加わりつつあるのは、お寿司でもあります。これは、もうすでに日常的に売っているものではありますが、パーティーなどのテーブルを華やかに彩るには、巻きずしなどは、ひと役買うこともあるらしく、ノエルとなれば、お寿司売り場も一段とアクセルがかかっている感じで、おどろくことに割りばしや小さなお醤油(甘いお醤油と甘くないお醤油)が売っているのにもびっくりさせられました。

 そして、ノエルといえば、クリスマスケーキ、フランスではブッシュと呼ばれる丸太型のロールケーキをデコレーションしたようなものが主流です。

 あまりお料理をしない人でもお菓子は自分で焼くという人も多いので、自分で作る人もいるのでしょうが、スーパーマーケットならば、そんなに高価なものではありません。

 


ブッシュは約1,500円~2,000円程度


 今回は、写真はできるだけ、価格がわかるように、値段も入れて撮るようにしたので、インフレで少し値上がりしているフランスの一般庶民?の食卓の値段がわかっていただけるのではないかと思います。
 この中のどれか一つを選ぶのではなく、家族の人数に合わせて、これらのものを中心に組み合わせていくので、まぁなかなかな買い物になります。

 普通、家族で集まると、クリスマスイブ、クリスマス当日と、24日の夜から、食べ始め、夜まで宴は続き、また、翌日のお昼から夜までと延々と食べ続け、仕事に出ても、ノエルの名残でなんとなく、つまんだり飲んだりということが続き、そして、また大晦日、元旦とフランス人の宴は続きます。

 これよりももっと食材にこだわる人は、それぞれ専門店などに出向いて、高級品を集めるのでしょうが、一般的なフランス人の食卓は、おそらく、スーパーマーケットで仕入れるノエルの食材がスタンダードなのだろうと思います。

 それでも、買い物に来ている人は、勢いよく買い物し、「あれ?インフレどこ行っちゃった?」と思ってしまうほど、買いっぷりがいいし、買い物に来ている人々もどこかウキウキしている感じが伝わってきて、やっぱり、こんなご時世だからこそ、こういう行事って大切なのかもしれないな・・と思った次第です。


フランス人のノエルの食卓


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2022年12月23日金曜日

日本の教師とフランスの教師

  


 フランスで日本の学校の先生の過労死についての報道されていて、なるほど、フランス人から見たら、日本の学校の先生の驚異的な忙しさと負担の多さは驚愕すべきことなのだろうと思いました。

 私自身は、ほぼすべての教育を日本の学校で受けてきたので、先生というものは、こんなもんなんだろうな・・という感じがあったので、逆にフランスに来て、娘をフランスの現地校に通わせていて、逆に「え??フランスの学校ってそうなの?」とびっくりすることは、多々ありました。

 今回、フランスで報道されている内容は、「日本の学校の先生の仕事は夜中まで終わらない・・」という説明から始まり、授業だけでなく、課外活動の指導などまでしなければならない・・」と説明しています。

Japon : le ras-le-bol des enseignants, victimes de surmenage #AFP pic.twitter.com/DzGZbrry7F

— Agence France-Presse (@afpfr) December 22, 2022 >

 私が娘をフランスの学校に通わせて、驚いたのは、まさにその逆の驚きで、フランスの学校は、日本人からするとびっくりするほど分業制で、先生は授業を担当し、勉強を教えるのが仕事で、例えば昼食の時間はキャンティーンに子供たちが移動して、食事の指導?監督をする先生は別にいるので、子供たちにも給食当番のようなものもありません。また、部活のような課外授業のようなものもありませんし、学校の掃除は掃除の仕事をしている人がやることなので、掃除当番のようなものもありません。

 一般の授業が終わった後に、宿題などをするエチュードという時間がありますが、それは、生徒も希望者だけで、先生はまた別の先生が担当します。

 だいたい、入学式とか、始業式、終業式、卒業式などのセレモニーもありませんし、日常は、父兄も校内には、気軽には入ることはできませんし、いわゆる日本のPTAのようなものもありませんでした。

 以前、娘が小学生の頃に授業中に気分が悪くなった子供がいて、子供が申し出たら、先生が「私はあなたの医者じゃない・・」と言ったとかで、さすがにこれは、保護者たちが学校に苦情を申し立てたようですが、そんなことを言う教師がでてくるほど、全くの分業体制をとっているのです。

 学校外で起こったことに対しては、基本的に学校は関知しないというのが基本的な姿勢で、よほどの深刻な問題が起こらない限り、学校の先生が解決に走るようなこともありません。つまり、フランスでは、金八先生はあり得ないことなのです。

 そのうえ、公立の場合は学校でも、堂々とストライキをするので、日本のような教師の過労死などという問題がおこれば、教職員組合をはじめ、社会がそんなことは許されないと大問題になると思われます。

 日本の先生のように授業以外にも関わりを持ってくれる体制は温かみがあって、よいところも多いにあるとは思いますが、しかし、その実、考えてみれば教師の負担というものは、大変なもので、もう少し分担したらよいのではないか?とフランスの学校を見ていると思います。

 逆に自分たちの学校を自分たちできれいにする掃除当番のようなものは、あってもいいことではないのかとも思って、娘を日本の小学校に夏の短い期間、行かせてもらったときは、お客さん扱いしないで、そういうこともやらせてくださいと先生にお願いしたくらいです。

 要は、教師の仕事を分業制にするには、そのための予算がないということや、そのような体制に変える原動力もないのかもしれませんが、子供の将来を担う教師というのは、日本にとっても大切な存在。子供の将来を考えても、もう少し、なんとかするべきではないか?と思うのです。

 そんなフランスでも学校の先生は不足しています。

 我が家の娘は、学生時代に私立校のエチュードの先生のアルバイトをしていて、話を聞いていて、なかなか厳しい先生だな・・と思ったものの、わりと向いているんじゃないかな?と思って、先生になったら?と言ったことがあったのですが、「有意義な仕事だとは思うけど、あまりにお給料が安くて、とてもできない・・」と言っていました。

 フランスでの教師不足は、何よりも給料が安いのが原因なようです。

 しかし、今回、フランスでも取り上げられている日本の先生の過労死問題、日本人の私でもびっくりするのですから、フランス人が聞いたら、狂気の沙汰と思うに違いありません。


日本の教師の過労死 フランスの教師


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