サッカーのヨーロッパチャンピオンリーグの決勝戦、レアル・マドリード対リバプールの試合が先週末にパリ北部郊外サン・ドニのスタッド・ド・フランスで行われました。
結果は1対0でレアル・マドリードが勝ち、史上最多14回目の優勝を飾りました。
しかし、フランスでは、決勝戦にフランスが残っていなかったこともあるとは思いますが、試合以上に試合開始までの会場での大混乱の模様について、欧州の周囲の国(特にイギリスとスペイン)で、この大混乱へのフランスの警察の対応が「行き過ぎ、やりすぎ、完全に管理不足、大スキャンダルであると報じられている」と問題視されていることをに注目が集まっています。
ヨーロッパでのサッカーの試合、しかもチャンピオンリーグの決勝戦といえば、それに集まってくるサポーターたちの熱狂ぶりは、身の危険を感じることもあるほどのイベントで、前日には、在仏日本大使館から、「ヨーロッパチャンピオンリーグの決勝戦がスタッド・ド・フランスで行われるため、熱狂的なサポーターによる破壊行為や衝突を避けるため、多数の警察が出動する予定になっており、思わぬ騒動が発生する恐れがあるので、今週末、特に夜間の外出の際には十分に注意してください」とお知らせが来ていました。
以前、私が、ロンドンにいた頃に一時、障害者施設でスタージュをさせていただいていたことがあり、その中にいた悲しいほどハンサムなイギリス人の青年が半身不随で車椅子生活、まともに話もできない状態で、施設の方に事情をうかがったところ、サッカーの試合を見に行って、熱狂するサポーターの暴力でこのようになってしまったという話を聞いて以来、ますますヨーロッパでのサッカーの試合には、警戒感を強めるようになりました。
一面では、あんなに熱狂できることが羨ましいような気もするのですが、とてもあの爆発的な熱狂ぶりには、ついていけません。ヨーロッパの人々が全て同じではありませんが、どうにも熱量の違いを思い知らされます。
今回のスタッド・ド・フランスでの騒動は、多くの警察が警戒する中、何千人ものイギリス人サポーターがチケットを持たずに、あるいは偽チケットで入場しようとしたことから起こったもので、これらの観客をチェックするために入場ゲートを一旦、閉じたところ、一部のサポーターがボルダリングのように壁をよじのぼって侵入しようとしたりする騒ぎになったのを機に、警察は催涙ガスまで使用して、かなり強硬なやり方で騒動を沈静化しようとした模様で、パリ警察は、スタジアムへの無謀な侵入者は「難なく」退散させたと、むしろ得意気に発表したものの、その場にいたチケットを持っていたにもかかわらず入場できなかったサポーターの怒りは大変なもので、また、その場の模様を撮影していた人も大勢で、映像はSNS上でもあっという間に拡散され、このパリ警察の強引な対処法やスタジアムの管理問題を恥ずべき光景、恐ろしい・・衝撃的だと非難しています。
フランスでは、頻繁におこるデモやデモが暴徒化した場合に催涙ガスや放水車などが出動するのは、もはや珍しくない光景ですが、これらをサッカーの観戦のために集まった人に同じ対応をするのは、妥当であったのかどうか、いくら相手が興奮状態であったとしてもチカラで押しのけようとするのは、やり過ぎの気もします。
リバプールのサポーター組合は、この大会を運営するUEFAに対して、ファンの安全をないがしろにしたと述べ、フランス警察が「無差別」に催涙ガスを使用したことを「強引」だと非難する声明を発表し、翌日には、イギリスの文化・スポーツ長官が「何が悪かったのか、なぜそうなったのか、公式な調査を開始するようUEFAに要請する事態にまで発展しています。
しかし、一方では、勝者スペインサッカー界の重鎮であるアルフレッド・レラーノ氏は、リバプールと「チケットを持たない野蛮人の大群」を糾弾し、「スタジアムのゲートでスキャンダルを起こし、大惨事につながる可能性が十分にあった」と厳しい意見を述べています。
フランスの報道の一部では、なんとこの日のチケット2万枚分が偽チケット、あるいはチケットなしで入場していたとも言われており(スタッド・ド・フランスの収容人数は8万人)、このチケットについても大きな問題があったとも言われています。
この日の夜、パリ警察は、このスタジアムで105人を逮捕、39人が身柄を拘束しています。楽しんで観戦するはずのサッカーの試合でこの騒ぎには、閉口してしまいます。
何より私が驚いたのは、自分自身がこのような催涙ガスが使われるような騒動になっている映像を見ても、あまり驚いていない自分自身で、「あっ・・また・・」という感じで、フランスの日常の物騒な光景を見慣れてしまっていることです。
サッカーヨーロッパチャンピオンリーグ決勝戦 スタッドドフランス
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