先日、サン・ドニのオリンピック選手村のあたりを見に行って、「ほんとに、これがサン・ドニ???」と思うほど、きれいなビルやきれいな街に仕上がっていてビックリしたばかりでした。
しかし、一方では、現在は、ほぼほぼオリンピック関係者が占領しているうえに、ものすごい警戒で、この人たちがいなくなって、本来の住民が戻ってきたら、どうなるのだろうか?と懸念のようなものも同時に抱いていました。
このオリンピックが始まってから、たまに駅のホームなどで「LE PARC DES JEUX」(オリンピックパーク)の広告が出ていて、なんか、屋外の緑の中の絵がなんか魅力的な感じで、オリンピック開催中、一度は行ってみたいな・・と思っていました。
広告のイメージと「オリンピックパーク」という名前とで、「オリンピックパーク」=「オリンピック公園」、そして、その先はさらに私の勝手なイメージだったのですが、私にとってのオリンピック公園は、「駒沢公園」で、小さい頃から、「昔、ここでオリンピックが行われたのよ・・」などと言われながら、よくサイクリングコースに行ったり、プールに行ったりしていた馴染み深いものでした。
今回のオリンピックパークも私にとっては、なんとなく、駒沢公園のフランスバージョンみたいな気分ででかけたのです。
しかし、実際には、公園自体は、駒沢公園などより、ずっと広い森の中にある一部のスペースで、大きなステージができていたり、みんなでオリンピックを観戦できる巨大スクリーンが設置されていたり、エレベーターで登れる展望台ができていたり、実際のオリンピック競技を体験できるような施設がいくつもできていて、オープンエアの心地よい空間ではありましたが、あまりアクセスが良い場所でもないためか?そこまで混雑もせず、それほど賑わっている感じではありませんでした。
ふだん、全く行かない地域のため、GoogleMapを頼りに出かけたのですが、駅からもけっこう歩くうえ、また、公園内も森の中にあるため、かなり歩きます。
旅行などに行ったときに、ホテルなどを写真で見て予約した時に、実際に行ってみると、「あの写真、上手く撮ったもんだな・・」と思うような感じで、残念ながら、「オリンピックパーク」は、正直、期待外れでしたし、もちろん、駒沢公園を勝手にイメージした私は、「そりゃそうだわな・・」と帰途についたのでした。
さて、帰ろうと思って、再びGoogleMapを開くと、いくつかの帰り道の提案が出てきたのですが、来たとおりの道を帰るのでは、つまらないし・・時間もあまり変わらないので、別の道(方法)で帰ろうと、別の駅までバスで出て帰る道を選択したのでした。
バス停でバスを待っている人が数人いたのですが、その家族らしき人たちの服装を見て、一瞬、「ん??」と思ったものの、まあ、パリには色々な国の色々な人がいるしなぁ~、ああいう色の服、どこで買うんだろう?」などと思いながら、それよりも、「暑いな~早くバス来ないかな~?」とのんきに構えていて、少ししてやってきたバスに乗ったのでした。
バスは私が乗ったときには、そこまで混んでいたわけではありませんでしたが、停留所を過ぎるたびに、少しずつ人が増えてきて、「ん??」と気が付いたときには、もうフランス人なんて、一人もいなさそうな感じでちょっとギョッとしました。もうそのバスの中だけ見たら、誰もここがフランスだとは信じられないだろうな・・と思いました。
そして、「これが本当のサン・ドニなんだ・・」と実感したのでした。私自身も移民という立場なので、フランス人じゃないとか、移民は・・とか言えないことは重々、承知していますし、パリ市内にも移民はたくさんいるので、移民自体には驚いたりはしないのです。
しかし、それにしても、そこは、ちょっといたたまれない空間で、ついこの間見た、オリンピック村のサン・ドニと、このサン・ドニ・・どちらが本当のサン・ドニかと言えば、きっとこっちが本当のサン・ドニなのだ・・と一人でバスの中でぐるぐると考えていました。
いわゆる富裕層とは真逆の人々だけの空間で、また渋滞していて、なかなか進まないバスが通る道すがらには、「えっ?これ何時代の車両?」と思うような車両を使ったトラムが走っていて、あまりのパリ市内との違いに愕然としたのでした。
奇しくもオリンピックのおかげで・・。
日常、私は、パリ市内でさえも、自分の好きな場所に行きがちで、なかなかディープな感じの場所があることも知っているし(用事もないので行きませんが・・)、それにしても、そういうタイプ?の人が多めだな・・と思うことはあっても、ほぼほぼ、そのような移民しかいない感じの場所に来たのは、四半世紀もパリにいて、初めてのことでした。
パリ市からは少し外れているとはいえ、そこまで遠くはない場所がこんなこととは・・むしろ、そう遠くないところが余計に残酷というか、衝撃的で、格差社会問題どころではなく、余計に闇が深い気もして、いつも事件報道などで、なにかと言えば出てくる「サン・ドニ」という場所は、これだったんだ・・と思いました。
昼間だし、公共交通機関の中だし、特に危険な思いをしたわけでもないのですが、もはやパリではないどころか、フランスでもない・・そんな場所がパリからそんなに遠くもない場所にあって、その「サン・ドニ」という同じ町の中でさえ、天と地の差もある感じになっていることが、とてもショッキングだったのです。
いつのまにか、パリから消えているあれだけいたのにどこへ行ったのか?と思っていた露天商もここにはいました。警察はいても、見逃している・・そこはいつものパリと一緒ですが、現在のパリとはまるで違います。まるで違う国のようです。
聞くと見るとは大違いと言いますが、まさにそんな感じで、オリンピックパークのおかげで、そんなディープな本当の「サン・ドニ」の生の姿を見ることになったのです。
サン・ドニのオリンピックパーク
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