パリ13区にある児童養護施設で8歳の少年が罰として頭髪を剃られ、その様子を同施設の職員が撮影し、その映像をSNS(What’s App)のグループチャットで共有され、少年を嘲笑の対象として弄んでいた・・という事件で、パリ検察庁の少年検察局は、「権力者による15歳未満の未成年者への故意の暴力」の容疑で捜査を開始しています。
いくつもの問題を孕んでいるこの事件は、今年2月に起こっていた事件です。
まず、「罰として坊主頭にする」などということがフランスでもあるのか?と私は単純に驚いたのですが、これが児童養護施設内で8歳の少年一人に対して起こったことで、しかも、それを動画撮影して、職員のグループチャットで共有し、少年を嘲笑するという行為に、呆れかえりました。
この事件は児童養護施設内の一室で起こっています。8歳の少年は一人上半身裸で両腕を抱え込むようにして椅子にすわっています。動画の1つでは、バリカンを手にした施設の擁護員が子どもの後ろに立っており、少年の頭の半分がすでに剃られています。撮影している擁護員は少年に向かって「二枚舌!」とののしっており、その光景を目にした他の子どもが「アラジンみたい!」と言っており、少年の頭を剃っている女性は、「すごくかっこいいわ!」と満足気にカメラに向けて語っています。
今の時代、特に児童養護施設のような場所において、罰として坊主頭にするということもアウトだと思いますが、それを撮影してグループチャットに投稿して嘲笑するというのは、ある種の公開処刑のような残酷な行為。
その後、数ヶ月間、少年は坊主頭のまま帽子をかぶって学校に通うことになるのですが、教師も授業中でも帽子をかぶることを許可していたというのですが、クラスメイトからからかわれ、いじめられるようになりました。
事態を知った少年の母親は説明を求めましたが、当初は、美容師がミスをして、カットを均一にしようとしただけだと説明を受けていました。
母親が真実を知ったのは9月末、この動画を発見したときのことで、この彼の頭を剃った施設の擁護員は、彼の頭を罰として剃ったと告白し、また、この剃髪に関しては、彼の両親もグループホームの責任者も誰も同意しておらず、彼女一人の判断で行われたことであることが判明していますが、少なくとも、この映像が撮影されていることから、彼女一人だけで行われたことではないことは、明白です。
この少年は児童裁判所の命令により、この施設で生活しているということですが、施設の他の職員によれば、「この少年は愛情を渇望している子ども」ということで、親から離れて生活することを余儀なくされているだけでも、厳しい状況であるうえに、施設内でもこのような扱いを受けていることに言葉がありません。
それでも、この少年はこんな事件があったにもかかわらず、施設での生活に安らぎを感じていると話しているというのですから、もうなんといっていいのやら、わかりません。
本来、児童を擁護し、保護する立場にある施設の職員がたった8歳の少年を辱めているということは、大変な問題です。
少年の頭を剃った擁護員はその後、病気休暇を取り、独自に調査をしていた母親に電話して、「起こったことは母親の責任ではないこと、これは一連の不幸な出来事であり、ビデオに写っているものは、実際の出来事を反映していないこと」を説明していたそうですが、到底、納得のいくものではありません。
事件が表面化したのは、母親がパリ市に対して苦情を申し立てたことから始まりました。
この事件が最初に私の目にとまったのは、そもそも「坊主頭」=罰という、昭和の時代を彷彿とさせるようなことが今の時代にもあるのか?しかもフランスで・・と思ったことがきっかけでしたが、それが児童養護施設での出来事ということで、問題の本質がもっと根深く、たちの悪いものとして、浮き彫りになってきたのです。
今の時代、坊主頭は坊主頭になるということだけでなく、それを撮影して拡散するというさらに陰湿で悪質なものになっているということが、痛ましい気がしてなりません。
パリ養護施設 坊主頭の罰
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