トランプ大統領は、厳格なテクノロジー規制とオンライン偽情報対策に尽力する欧州の要人5名をこの規制に対する制裁措置として、米国のビザ発給を拒否することを発表しています。
このうちフランス人のティエリー・ブルトン氏は、欧州デジタルサービス指令の立案者でもあり、2019年から2024年まで欧州域内市場担当委員を務め、特にデジタルおよび産業問題に関する幅広い責任を負った人物です。
中でも、彼は、オンライン上のヘイトスピーチや偽情報に対抗するため、テクノロジープラットフォームに規制を課す欧州デジタルサービス法(DSA)の立案者として、広く知られている人物です。
しかし、米国はこれ(DSA)を表現の自由の侵害であり、オンラインプラットフォームに追加的なコストをもたらすものと見ています。
欧州への制裁措置ともいえる今回のティエリー・ブルトン氏へのビザ発給拒否は、EUが言イーロンマスク氏が所有するソーシャルネットワーク「X」に対して1億2,000万ユーロの罰金を科した直後に行われています。
アメリカ側は、この罰金に対し、「外国政府による全てのアメリカのテクノロジープラットフォームとアメリカ国民への攻撃」と評しています。
トランプ大統領は最近、発表した国家安全保障戦略の中で、ヨーロッパの文明の侵食を指摘しており、政治的自由と主権を損なう欧州機関を指摘しています。
米国務長官は、今年5月の段階で、米国人を検閲しているとされている外国人に対するビザ制限を発表しています。
ヨーロッパからの渡航者は一般的に米国への渡航にビザを必用としませんが、電子渡航認証システム(ESTA)の取得が必用です。なので、事実上(実際に)は、このESTAの段階で撥ねられるということです。
つまり、今回の件が前例とするならば、「コンテンツやモデレーションやファクトチェックへの過去の関与は、アメリカの表現の自由を守る」という名目でビザ発給拒否の根拠となりうるということになります。
これに対し、フランス側も黙ってはいません。
まず、当のティエリー・ブルトン氏は、X上で反論。「念のためお伝えしておきますが、民主的に選出した欧州議会の90%と27加盟国は、デジタル権利に関する欧州法であるDSA(デジタル権利法)を全会一致で承認しました」と強調。
また、「ヨーロッパの人々は自由であり主権を有しており、自らのデジタル空間を規定するルールを他者に押し付けられることはできない」と述べています。
そして、マクロン大統領も「欧州連合(EU)のデジタル空間に適用されるルールは欧州の外で決定されることを意図したものではない」と今回の米国の制裁措置の背後にある脅迫を非難しています。
マクロン大統領は声高に「欧州は引き続き、デジタル主権と規制の自主性を守り続ける!」と断固としてこの制裁措置に屈しない姿勢を示しています。
欧州と米国のこのデジタル規制に関する闘いは、まだまだ続きそうです。
日本はどうしているんでしょう?
欧州デジタルサービス法(DSA)
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