2024年7月28日日曜日

フランスにとってのオリンピック開会式セレモニーの意味

 


 4時間以上にも及ぶ2024年パリオリンピックの開会式セレモニーは、悪天候の中にもかかわらず、大きなトラブルに見舞われることもなく、無事、終了しました。

 マクロン大統領は、翌日、会見で、このイベント前から警備にあたった人々、ボランティアをはじめ、2024年パリオリンピックの成功に貢献したすべての人、特に大会の安全を確保した人たちに感謝したいと述べました。

 また、X(旧Twitter)には「誰もが不可能だと言った・・しかし、私たちはやり遂げた!それは集団の力、国家の投資、そして私たちを守ってくださる皆さんの並外れた動員のおかげです。ありがとう!」とポストしています。


 彼は今回の開会式セレモニー開催のための異例の動員に対して国の感謝の意を表明しているのです。

 まさに今回の警備のための動員は、まさに「異例」の動員で、日常から他の都市に比べて格段に警察が多いパリでさえも、こんなに連日、大所帯の警備隊を目にする日々は(特に最後の1週間)あり得ないことで、日々、パリの住民は減っていき、終いには、「ここ、警察官の方が多くない?」と思う場所もあるくらいでした。

 そもそもバカンス命のフランス人にとって、バカンスに行かずに夏の間も仕事をしろ、オリンピックのために働け!というだけでも大の難題であったのに、なんといっても、このセーヌ川上をパレードするという警備上、この上ない難題をかかえて、一体、どうするのだろうか?それこそ、「誰もが不可能だ」と思ったはずです。

 しかも、世界情勢も不安定でフランス国内でさえも決して安定した政情ではなく、ましてや、6㎞にわたる川岸、水を挟んで両岸を1週間まえから閉鎖して、テロの可能性のあるものを排除し、海外からの動員も受けながら、警備を続け、その間にオリンピックのための仮設会場やセレモニーのためのセーヌ川沿いのデコレーションや観客席まで作り上げたのですから、これは日常のフランスを知っている身からしたら、本当に快挙です。

 だいたい、工期というものがあってないような日常のフランスにもかかわらず、これをなんとか間に合わせただけでも驚きのことです。

 セレモニーのパフォーマンスに関しては、賛否両論、色々あるようですが、それですら、大胆といえば、大胆、かなりやり過ぎというか、極端なパフォーマンスはありましたが、論争が起こることを恐れずにやってしまう、むしろ、論争を歓迎するというか、堂々と受けて立とうとしているところがそれぞれの演出などをしたアーティストにはある気もします。

 敢えて、誰にでも受け入れられそうな無難なものには仕上げずに、このなんでもありな感じを敢えて出していくのがフランスでもあり、また一方では、同時にものすごく保守的な部分ももっているのがフランスなのだと思っています。

 特に、フランス(マクロン大統領)にとっては、この「セーヌ川沿いのパレード」からの開会式という「誰もが不可能だと言ったことをフランスがやり遂げた!」という部分の方が重要なことで、特に集団的な努力を強調することで、レジリエンス(不利な、困難な状況の中で対応する力)を示し、オリンピックを国民の団結を強化できる象徴的なプロジェクトとして見据えており、この大会のプラスの効果(成功体験)が国中に広がることを願っていました。

 同時にこの規模のイベントを組織するフランスの能力を強調しているとも言えます。

 とはいえ、現段階では、最もリスクがあると言われた開会式が一応、テロなどの標的にはならずに終了したというだけで、まだまだオリンピックはこれからです。

 もっとも、この開会式の成功が「国が総力を併せて団結すれば不可能を可能にできる!」と必ずしもそう簡単に国民は思わないことも明白なことで、このあたりが、マクロン大統領が国民と嚙み合わないところでもあります。


パリオリンピック開会式セレモニー


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