2024年7月24日水曜日

環境活動家ポール・ワトソン逮捕で注目される日本の人質司法

  


 今週初めのグリーンランドでの環境活動家ポール・ワトソンの逮捕はフランスで憤りと支持の波を同時に引き起こしています。この男性の環境活動家としての歴史は長く、1977年シーシェパード保護協会(主に反捕鯨)を設立して以来、様々なアクションを起こし、過去にも、数回、数か国で逮捕されています。

 彼のアクションはよく言えば、なかなかパンチがあるもので、捕鯨やアザラシ捕獲などの妨害行為や漁船乗り込みを始め、この反捕鯨を訴えるために、フランス人女優ブリジット・バルドーをカナダ北部の流氷に連れて行き、アザラシの赤ちゃん狩りを非難するアピールを行ったりと広報活動にも長けています。

 しかし、その行動はなかなか強引で時に破壊的、暴力的でもあったりしていることから、1979年には、カナダのセントローレンス湾で1000頭のアザラシの屠殺を阻止した際に暴力をふるったとして逮捕、1983年、ポール・ワトソンと彼のチームはシー・シェパード2号でニューファンドランド州セント・ジョンズ港を封鎖。

 10 年後、シーシェパードはクリーブランド・アモリー号を購入し、ニューファンドランド島のグランドバンクからキューバとスペインのトロール船を捕獲。

 その度に逮捕され、裁判が行われ、懲役刑などが課されていますが、結果的には、裁判所側が告訴を棄却したりしています。

 その後、1997年には、オランダで再び逮捕。ノルウェーは捕鯨船ニブレナ号沈没の罪で同氏の身柄引き渡しを要求し、彼は120日間拘留されましたが、オランダの裁判所が彼の引き渡しに反対したため最終的に釈放。

 彼の環境活動家としての活動には、その都度、賛否両論の嵐が起こってきましたが、2000 年、タイム誌は彼を 20 世紀の最も優れた環境擁護者 50 人の中に「エコロジーの英雄」として選出しています。

 彼の訴えによれば、「動物を殺そうとしている人の装備を破壊するのは、非暴力行為だ」そうです。

 しかし、2012年コスタリカのサメ漁船に対する航行妨害容疑のためにドイツで再び逮捕されますが、保釈中に彼を強く支援する者と出会い、逃亡していました。

 そして、彼は2024年7月21日にグリーンランドで逮捕、コスタリカはこの訴えをすでに放棄していますが、日本は調査捕鯨を妨害した容疑で海上保安庁から国際刑事警察機構(ICPO)を通じて国際手配中でした。

 俗にいうインターポールの赤通知が出されていたわけです。

 2016年の段階で、ポール・ワトソンは日本の国際手配について、「日本は違法捕鯨活動で国際司法裁判所から非難されているにもかかわらず、私を国際刑事警察機構のレッドリストに載せる経済的・政治的権力を持っている」と逆に日本の国際手配を非難しています。

 日本での彼の調査捕鯨妨害というものがどのようなことであったのかは、わかりませんが、彼については賛否両論がある中、グリーンランドが彼を日本に引き渡すかどうかが注目されています。

 捕鯨問題といえば、日本が矢面に挙げられることが多い気がしますが、今回はこの捕鯨問題云々以前に、日本の司法制度と刑務所制度は人権NGOによって非常に定期的に非難されており、2023年5月に発表されたヒューマン・ライツ・ウォッチの報告書は、日本の「人質司法」制度は、容疑者から適正な手続きと公正な裁判を受ける権利を奪っていると指摘されています。

 ポール・ワトソンは8月15日まで拘留されますが、グリーンランドはデンマーク自治領であるため、デンマーク法務省が日本に引き渡すかどうか決定します。マクロン大統領は、彼の引き渡しを阻止するために状況を注意深く監視し、デンマーク当局に介入しているとエリゼ宮が発表しています。

 つまり、この環境活動家の逮捕と同時に日本の人質司法制度が痛烈に非難されているという状況でもあるのです。


環境活動家 ポール・ワトソン 日本の人質司法


<関連記事>

「カルロスゴーン会見に見るフランス人流の自己主張の仕方」

「フランス税務当局、カルロス・ゴーンに追徴課税金と財産差し押さえ」

「フランス司法当局 カルロス・ゴーンに国際逮捕状発行」

「フランスの報道機関が指摘する安倍元総理と統一教会についての日本での報道と警察と政府、報道機関の歪み」

「日光でのフランス人女性行方不明事件について」



 

0 コメント: