2月2日に行政裁判所に提出された報告書によると、パリ北駅は、「構造上の問題の巣窟」であり、「人命に対する大きなリスク」があることが指摘されています。
パリ北駅はヨーロッパ最大の駅だそうで、大きな駅だからこそ、危険があれば、リスクも大きく、見逃せない問題です。
「パリ北駅が危ない!」とかいうので、私はまたてっきり治安上の問題かと思っていましたが、駅の構造上の問題なのだそうです。
この報告書は、駅の建設に関する数々の問題について警告しているもので、現在のパリ北駅に特に倒壊と火災の観点から3つの大きな危険があることを指摘しており、乗客とSNCF(フランス国鉄)職員の安全を脅かすものです。
1つ目は、「チェーン崩壊の危険性」で、もし列車が駅に入るときに転倒した場合、33番線と34番線の間のコンクリートの支柱はレールに近すぎて事故に耐えることができないと指摘しており、これはすでに弱っている構造に加え、拡張が考慮されていないという重大な建設上の欠陥があると言っているのです。
具体的には、列車事故のリスクは駅全体が一般市民の上に崩れ落ちることに繋がると指摘しているもので、これが連鎖反応を起こし、バス停留所からRER中2階も崩壊させることになるとのことで、ピーク時のパリ北駅の交通量は3万人を超えるため、大惨事に繋がりかねないというのです。
すでに、このような事故は実際に他の場所でも発生していることで、昨年11月にカルカッソンヌ駅で貨物列車が脱線し、400メートルもの線路がすっ飛ばされて大惨事となっています。
また、駅敷地内のSNCFの建築物に倒壊の危険性があることも指摘しています。これはこの建築物の壁面で、重さ3~4トンのプレハブコンクリート部材が、留め具の広範囲な腐食のため建物から外れてしまっており、いつ落下してもおかしくない状態であるとのこと。
この指摘箇所は駅の2番線、ユーロスター専用線路にも近く、実際に事故が起これば被害は計り知れません。
2021年夏に鉄道グループは暫定的な安全対策を行ったものの、それはあくまで暫定的なものにとどまり、追加的かつ決定的な工事は行われていません。
この報告書を作成した専門家はこれらのリスクに加えて、地表の地盤が突然崩壊する危険性も指摘しています。
2017年の段階で線路に35ミリ~60ミリの沈下が確認されており、常に電車の振動にさらされている場所の地盤は常にこれを悪化させる要因を抱えており、地盤が突然崩壊する危険性があることを指摘しています。
最後にこの報告書が指摘している3つ目の大きな脅威は火災のリスクで、2階部分の床が「人の安全に必要な防火安定性・防火度」を有していないものがあるというものです。
これもまた、悪化した状況がさらに状況を悪化させているという悪循環で、火災が起こった場合に、すぐ下のSNCF事務所に床が落ち、その床が1階にある駅の売店に倒れ込むというものです。
もともとこの報告書はパリ北駅の近代化を引き受ける役割を担っていたStatioNord社から受けた専門家が作成したもので、この北駅近代化のプロジェクトは2021年にSNCFが放棄して以来、宙に浮いたものが報告書が提出されたことで、現在、両社の間で再び紛争の火種となっています。
SNCF(フランス国鉄)はこの報告書に対し、「不正確で偏ったレポートであり、悪意がある報告である」と意義を唱え、「法廷の場で真実を再確立することを保証する」と弁明しており、「お客様とスタッフの安全を完璧に確保するために必要な措置は当然とっている」としています。
現在、パリオリンピックに向けてなのか、どうにも工事が多く、メトロの駅なども夜間閉鎖、あるいは、週末閉鎖などが多く、別にそんなに手を加えなくてもいいのに・・とも思うのですが、こんなに危険がある場所ならば、そちらを優先した方がよいのでは・・と思ってしまいます。
ましてや、オリンピックのためならば、オリンピックのメインスタジアムは、パリ北部、ここで、何か事故が起これば、世界中に失態を晒すことになりかねないのでは・・と疑心暗鬼になってしまいます。
私はあまり北駅を利用することはないのですが、パリ北駅はユーロスターの発着駅でもあり、ロンドンに行ったりする場合はここからです。しかし、ユーロスターに乗って、ロンドンに行って帰ってくると、近代的できれいなロンドンのユーロスターの駅とパリ北駅に戻ってきたときのギャップがあまりに激しく、誇り高いフランス人が恥ずかしくないのだろうか・・と思っていました。
さすがに倒壊の危険まであるなどとは思ってもみませんでしたが、逆にあちこちをいじっているのに、なぜ、そんな状態の駅を放置し続けるのかは疑問です。
パリ北駅 崩壊の危険性
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