2022年8月29日月曜日

海外在住と日本の家族 独り残された父

 

  


 海外に在住することを決めた段階では、私の場合はあまり詳しく後先を考えていませんでした。別に海外に永住すると心に決めていたわけでもないし、もしも私がもう少し思慮深い人間で、後のことまで色々と心づもりをして考えていたら、海外に移住することなどできなかったかもしれません。

 しかし、私だけでなく、周囲の家族を含めての、すべての人々の先のことなど想像がつかないことでした。

 だからといって、海外に移住したことを後悔しているわけではありませんが、最も困ったことの一つは、日本にいる両親が歳をとっていって、健康を害する場面に直面したときだったような気がします。

 娘が生まれて、私がフランスで就職して約1年後、バカンスが取れるようになってからは、娘を連れて毎年のように日本の両親に会いに行っていましたが、本当に一緒に買い物に行ったり、山荘に行ったりと、楽しいばかりの日本への帰国は、最初の数年だけでした。

 その後は母の心臓病が悪化して、急に入院したと聞いて、慌てて日本に帰国して、退院してから母が家で過ごしやすいように実家での母の生活環境を整えたり、介護保険の申請に行ったり、それから先、母は数年、なんとか家で寝たり起きたりの生活を続けていましたが、普段、何もできないからと日本に行った時には、家の家事から何から全て私が請け負いながら、娘を日本の小学校に体験入学をさせてもらったりとまるでバカンスとは思えない忙しい時間でした。

 しかし、今から思い起こすに、それでさえ、母が生きていてくれた頃はそれはそれで、かけがえのない楽しい時間でした。

 母は、結局、69歳で亡くなり、1人残された父は当時72歳でした。父は子供の頃から、ずっと同じところに住んでいたこともあり、今さら自分が他の場所で暮らすということなど微塵も考えていなかった様子だったし、当時から、私も弟も海外在住だったため、父と同居するということは、考えていませんでした。

 72歳にして初めて一人暮らしをすることになった父は、そこまで心配される持病があるわけではなく、少しずつ時間をかけて、独りの生活を築いて行ったようです。幸いにも父の兄弟家族が同じ敷地内の別の家に住んでいたことも、彼にとっては何よりも心強いことだったと思います。

 それから、10年くらいは、碁会に通ったり、ネットに挑戦して株式投資をしたり、友人と旅行に行ったりと、父にこんなに親しくしていただける友人がいたのか?とびっくりするほど、それなりに楽しく暮らしていたようです。

 その間、私の方は、フランスで夫が急に亡くなるということもあったりして、しばらく、日本には行けない期間が数年ありました。

 途中、東日本大震災で日本が大変なことになっていると言う時には、もしも、日本が危険なら、フランスに来たら・・と父に話したことがありましたが、当時、アメリカにいた弟も同じことを父に話していたようで、父は、長期間、家を空けることはできないからと私たちには、断っていましたが、周囲には、アメリカからもフランスからも避難してくれば?と言ってくれていると嬉しそうに話していたそうです。

 当時、父はすでに引退していて、長期間、家を空けられないというのも、私には、よく意味がわかりませんでしたが、後々になって考えるに父にとって、住み慣れた家への執着というものはかなり大きなものであったことをしみじみと思わせられました。

 以前、親をフランスに呼び寄せたという知人がいましたが、しばらくフランスで一緒に生活したものの、結局、日本で介護施設に入れることになったようです。

 日本で生まれ育ったはずの自分の子供が2人とも海外生活を送っているというのは、そうそうあることではないことなのかもしれませんが、我が家の場合は、まさに日本には、父が独り残ったことになりました。

 フランスにいる日本人の友人などでも、たいていは、他の日本にいる兄弟がいて、彼らが親のことは、彼らに任せているという人が多いのですが、先日も久しぶりに日本に帰国した友人が、久しぶりに母親に会ったら、かなり、危うい感じになっていて、愕然としたと話していました。

 しかし、独りになって、歳をとればとるほど、家や住まいを変えるというのは大変なことで、住み慣れた家、地域とともに、友人や親戚なども全てひっくるめた住まいということなわけで、息子や娘がいるからといって、それらを全て捨てて、海外へ・・とは、なかなか思い切れないのもわかります。

 父は英語は堪能で、弟が住むアメリカには、一度、遊びに出かけたことがあったのですが、フランスは言葉の問題もあったのか、父にとってはハードルが高かったようで、結局、一度もフランスに来ることはありませんでした。

 いよいよ、父も身体が弱ってきた頃には、父からは、特に私に対して、具体的に何か言ってくることはありませんでしたが、周囲の親戚などからは、年老いた親を放ったらかしにしておくのか!!などと、お叱りを頂いたりもして、自分たち(私たち姉弟)は身動きがとれず、弟が父に介護施設に入るように説得したりしたものの、父はなかなか受け入れず、「ここで野垂れ死んでもいいからどこへも行きたくない!」と言い張っていましたが、最後の最後には、体調が回復するまでという約束で施設に入りました。

 当時、私はちょうど娘の大学受験前で、今さら日本へ本帰国するということは考えられず、また、一人親の家庭で、裁判所の監督下にあった我が家は娘が18歳になるまでは、娘を一人にして家を空けるということは絶対にできなかったので、そうそう簡単に動くということもできなかったのです。

 あれが数年ずれていたら、私は日本に帰国していたと思うのですが、当時は私には、他の選択肢はありませんでした。幸い弟は、子供の将来を優先すべきだと理解してくれていたので、助かりましたが、私は私で、色々重なる時には重なるものだ・・と、ちょっと参っていました。

 父が亡くなって、もう数年経ちますが、今、私の周囲では、たとえ親子ともに、日本に住んでいても、親の介護問題に頭を悩ませている人が多く、大変だな・・と思うと同時に、両親ともにいなくなってしまっている私にとっては、ちょっと羨ましかったりもするのです。

 しかし、両親がいなくなってしまえば、今度は自分の番で、私など、元気なうちは、願わくば、フランスと日本と半々くらいで暮らしたいなどと思ってはいるものの、パンデミックや戦争、航空運賃の爆上がりなど、そうそう簡単には、日本には行けない状況になり、ほとほと、予定どおりには、人生うまくは行かないものだ・・とつくづく思っています。

 とかく、人生は思い通りには行きませんが、その時にできることを自分で選択していく積み重ね・・それでも、家族の問題は、海外在住者にとっては、特に大きなハードルでもあるのです。


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2022年8月28日日曜日

エアフランスのロストバゲージは45日経っても戻らない上に90日後には捜索も打ち切り

  


 今年の夏のバカンスシーズンの始まりのシャルル・ド・ゴール空港は、航空会社や空港職員や消防隊員のストライキのためにフライトキャンセルや空港のシステムダウンも重なって大混乱となりました。

 特に、飛行機に搭載されないまま出発した人の荷物がシャルル・ド・ゴール空港に置き去りにされ、この期間に出たロストバゲージは3万5千個と言われており、山積みにされたまま放置されているスーツケースに当事者ではない私でさえも、ゾッとしたくらいでした。

 シャルル・ド・ゴール空港での出来事のため、当然、一番、被害の多かったのはエアフランスのフライトに関するロストバゲージが大部分だったようで、当初はエアフランスは、「1週間以内には、荷物を届ける」と発表していたものの、その後、長い間、そのスーツケースの山がなくならなかったという話も聞いていました。

 それは容易に想像がついた話で、その後もバカンスシーズンで毎日、1,000機以上の離発着便の荷物の処理だけでも人員が足りない中、フランス人が残業してまで、このロストバゲージを積極的に片付けていくとは、とうてい思えませんでした。

 そして、そろそろ、夏のバカンスも終わりという今の時期になって、まだ、空港に残されているスーツケースが800個以上あることを聞いて、唖然と言う気持ちと、やっぱり・・という気持ちと、それでも、ずいぶん減っていたんだ・・という気持ちが混在しています。

 いくら、長々とバカンスを取るフランス人とはいえ、もうそろそろ2ヶ月近くも経てば、さすがにロストバゲージの持ち主はバカンスから戻っているのに、それでも、まだ自分の荷物を受け取れないというのは、どう考えても異常です。

 フランスの法律では、ロストバゲージから21日後には、航空会社が無くなった荷物に対する補償金が支払われることになっていますが、これはなくなった荷物に対する補償金のみで、バカンスを台無しにされた慰謝料は含まれていません。

 私は、これまでにロストバゲージの被害に遭ったのは、1度きりで、しかも、完全に荷物が無くなったわけではなく、「なにも荷物は同じ飛行機で届けるとは言っていない」とばかりに、「届けるんだからいいでしょ!」という感じで、当然のように到着の翌日に荷物は滞在先のホテルに届けられましたが、それだけでも、当時の私は憤慨し、一晩、着替えも何もなく、不便な夜を過ごしたことに腹をたてていましたが、今回のシャルル・ド・ゴール空港のロストバゲージは、ちょっと桁違いの被害です。

 しかも、それに加えて、エアフランスは、90日後には、荷物の捜索も打ち切るのだそうで、その無責任さに目を丸くしています。

 エアフランスは、パンデミック前には、パリから日本への直行便が1日2便は出ていたこともあり、利用することも結構、多かったし、機内サービスやCAの対応も妙に媚びた感じがなく、スパークリングワインではなく、必ずシャンパンがあるのも嬉しかったりして、決して嫌いではなかったのですが、何回か続けて、ストライキのために勝手に予約便を変更されて、急に自分の予定も変更せざるを得なくなって、慌てたりしたこともあって以来、もうこんなのは懲り懲りだ・・と、できれば避けるようにしてきました。

 今回のようなロストバゲージの話を聞いてしまったら、ただでさえ、できれば避けたいと思っていたエアフランスは、絶対、嫌だ!と思ってしまいます。

 旅行のために持って行ったスーツケースが旅行中には届かずに帰ってきてから受け取るというのも、かなり腹立たしく、虚しいものだと思いますが、それでもさらに長期間、戻ってこないどころか、90日経ったら、もう探してももらえないなど、なぜ、こんな無責任な対応が黙認されるのか、腹立たしいのを通り越して、不思議です。


エアフランス ロストバゲージ 90日後は捜索停止


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2022年8月27日土曜日

フランス 教育革新基金に5億ユーロ投入

  


 私がフランスで仕事を始めたのは、娘が1歳になるかならないかの頃で、初めての子育て、しかも、まだフランスに来て1年も経たないフランスのこともよく知らない状況で、周囲には、子育ての先輩が結構いて、色々と忠告をしてくれました。

 まあ、同じフランスでの子育てといっても、それぞれ、家族構成や生活環境は違い、全てを参考にできたわけではありませんでしたが、私にとっては、大きく2つのことを心に留めていました。

 そのうちの一つは、「放っておいたら、日本語はできなくなってしまうから、心して日本語教育には取り組まなければいけない」ということと、「学校は小学校から中学、できたら高校までは、私立に入れた方が良い」ということでした。

 日本語教育については、別にも書いているので、ここでは省くことにしますが、保育園、幼稚園と経て、少しずつ、フランスでの生活の中で、周囲の様子なども見えてきて、外で目にする子供の様子などを見ていて、これは、下に引きずられたら、大変なことになってしまうだろう・・とやはり子供の学校については、真剣に取り組まなければならないと思うようになりました。

 大人でも同じですが、フランスは上と下の差が激しく、クズは限りなくクズで、クズの予備軍は、残念ながら、子供の時から始まっていることを周囲のゴロつきのような子供たちを見ていて思うようになりました。

 私たちにとっては、引越しのタイミングと重なり、娘の小学校の入学の申し込みをした時には、すでに遅く、娘の入学希望はウェイティングリストに乗せられることになりましたが、たまたま最後のタイミングで娘が良い成績表をもらってきたので、それを希望の学校に送ったところ、学校から面接の連絡が来て、結局、小学校入学時には、娘は私立の学校に通えることになりました。

 それからは、私は、ほぼ、学校についての心配はしておらず、せっかく入れた学校・・追い出されないようにね・・くらいで、その他は、日本の学校とは異なる様々なシステムに「フランスの学校というのは、こんな感じなんだ・・すごいな・・」などと感心させられることも度々ありました。

 私は、娘の通っていた学校にとても満足していたので、その学校に入るまで、公立の学校に行かせて、クズの仲間入りをしたら大変・・などと思っていたことはすっかり忘れて、「フランスの教育はなかなか素晴らしいのに、世間一般を見回すと結果は、これってなぜだろうか?」などと不思議に思っていたくらいでした。

 しかし、後から思うに、娘を通わせていた学校は、世間一般の学校とは、全然、違う学校だったわけで、やはり、周囲の子育ての先輩方に言われていた「小学校からは私立へ行かせた方がいい」という忠告は、まことに有難いものであったと感謝しています。

 どうにか、娘が無事に成長してくれたのも、大きくは、この学校のおかげでした。

 現在の厳しい世の中にハッキリと現実をつきつけたマクロン大統領が、教育についても提言を始め、「私たちの教育システムは、上手く機能していない・・」と指摘し、教育を革新するいくつかのテーマを示し、これにかかる予算「教育革新基金」を5億ユーロを提供することを発表しました。

 やはり、一般的なレベルのフランスの教育には、問題があることを彼は見過ごしてはいなかったのです。

 幼稚園では、子どもの発達への配慮を強化。小学校では、引き続き基礎的な学習を重視し、スポーツの日常的な練習を一般化。5年生からは、週1回の半日授業「アベニール」を導入し、生徒が「多くの職業、特に技術、手作業、関係性のある職業を発見」できる機会を設けます。

 高校については、コアカリキュラムにおける数学の強化を挙げています。ここのところ、フランスの子供の数学の学力低下が語られることもしばしばあり、例えば、ウクライナから避難してきている子供たちがフランスの学校に通うと、フランス語については問題があるのは当然としても、ウクライナの子供たちの数学のは、フランスの学校の1年近く先のレベルだった・・などという話を聞いたりもしました。

 マクロン大統領は、非常に現実的で現実をはっきりと述べるので、嫌われるところもありますが、特に教育に関しては、この下を救いあげる努力、教育に力を入れようとしていることが伺えます。

 フランスはれっきとした格差社会で、なかなかこの差を埋めるのは、容易ではありませんが、少しでも社会の底辺にいる人々に機会を与えるチャンスを設けようとしているのがわかります。

 教育は、すぐに成果が出るものではありませんが、少なくとも将来を担う子供たちの教育についても、他の政策同様、あるいは、それ以上に注力しようとしてくれている社会には、好感をもつことができます。

 また、教師といえば、低賃金のために優秀な人材が集まらないこともあり、教師の賃金についても、2,000ユーロ(net)以下でキャリアをスタートすることはない、また既存の教員については、10%の賃上げを約束しています。

 フランスにいるとはいえ、日本人ゆえ、ついつい比べてしまう日本ですが、現在の教育事情については、よくわかりませんが、少なくとも、子供の教育についての話題が日本の政治家からあまり上がらないことは、とても残念に思っています。


フランス 教育革新基金5億ユーロ


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2022年8月26日金曜日

「私たちは豊かさの終焉の時を生きている」マクロン大統領閣僚理事会での厳しめのスピーチ

  


 マクロン大統領が閣僚理事会を開催し、その冒頭で行ったスピーチが衝撃を与えています。

 マクロン大統領は、世界を襲っている「一連の危機」を振り返りながら、国際関係の非常に厳しいパノラマを描写しながら、非常にインパクトの強いメッセージを発信しました。

 閣僚理事会の席上ゆえ、一応は出席している閣僚に向けての発言ではあるものの、報道カメラが入っている以上、それは、少なからず国民に向けてのメッセージでもあり、同時に国民の不安を煽るものでもありました。

 「私たちは豊かさの終焉、不安のない生活の終焉、先行きの見える生活の終焉を経験しており、コストのかからない流動性の終焉を経験している。水のように、ある素材や技術の希少性が再び登場する。私たちは、今、決して自暴自棄にならずに行動を起こさなければならない」そして「私たちは気楽な時代の終わりを生きているのであって、我々の自由というシステムには犠牲が必要かもしれない」とフランス人の反感を最も煽るようなことも、あえて付け加えています。

 「この大きな変化に直面し、国民は大きな不安を抱えて反応するかもしれません。このような困難に直面したとき、私たちには待つという選択肢はありません。志を持って国を興し、守るべきものを守り、必要とする人を守らなければなりません。」

 「私は真剣さと信頼性を期待します」「このような不安や課題に直面すると、時に何でもかんでも約束したり言ったりしがちです。世界では、人々が望んでいることを言うのが魅力的に見えるかもしれません。彼らが聞きたいことが効果的で役に立つこともあります。」

 「しかし、我々はまず、それが有用で、効果的で、公正であるかどうか、あるいは彼らを説得しに行く必要があるかどうかを自問自答することによって、理由をつけなければならない」。 これは、閣僚向けの注意喚起で、「不用意なことを言うな。容易に約束をするな。」ということです。そして最後に、「私は多くの合議制を期待している」と、締めくくりました。

 これは、この混乱の時期に起こりうる政府の不協和音を回避するための発言とも受け取ることができます。

 また、このマクロン大統領のスピーチを補うように、政府のスポークスマンであるオリヴィエヴェラン氏が「秋には政府が施策のパッケージを提示する」ことを説明しています。

 しかし、このマクロン大統領のメッセージは、何よりも戦争や地球温暖化のための干ばつ被害などから起こるエネルギー危機やインフレなどに直面して、9月の新年度の始まりとともに当然、起こるであろうデモに対しての先制パンチのようなものであったような気がしています。

 げんきんなもので、フランスでは、その大小にかかわらず、年間を通して、毎週のように、土曜日にはデモが行われていますが、7月、8月の夏のバカンスシーズンには、しっかりみんながバカンスをとって、デモも行わないのが普通です。(昨年は、アンチワクチン、アンチヘルスパスのデモがありましたが・・これは例外的な場合・・)

 今年も夏の間には、目立ったデモはほとんど行われていません。

 バカンスも終わって、さあ、これから、仕事!という時になると、デモも再開するのです。

 今年は、この混乱の世、特にデモは激しいものになるのは必須のところ、マクロン大統領は、このデモを迎え撃ちする、わざと強めのメッセージを国民に直接という形でなく、閣僚理事会という場を通して発表したのは、それなりの作戦であったような気がしています。

 人はこのような混乱の時、明らかに今よりも世の中が悪化すると思われる中でも、どこかに希望的観測を抱くもの、しかし、さらに悪化して「こんなはずじゃなかった・・」と怒りが爆発します。たとえ、このようにハッキリといわれることは、ショッキングでも、マクロン大統領は、「現実を直視し、受け入れるところは受け入れて対応していくためのカンフル剤が必要である」と考えたのではないか?と思っています。


マクロン大統領 豊かさの終焉


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2022年8月25日木曜日

フランス発の航空運賃 1年間で 43.5%上昇

  


 フランス民間航空局(DGAC)によると、2022年7月、フランス発の航空運賃の上昇率は、1年前と比較して、すべての目的地を合わせて43.5%に達しました。

 1年前と言われても、1年前の7月といえば、フランスでは、まだまだワクチン接種が思うように進んでいかないためにヘルスパス(ワクチンパスポート)の起用が発表された頃で、ヘルスパスがないと、食事にも旅行にも行けないことになり、皆、慌ててワクチン接種に走り、バカンス先でもワクチン接種をできるようになっていました。

 1年前のそんな時期でも、フランス人は、負けじとバカンスに出かけていましたが、それでも、やはり、普段は海外に出かける人も国内旅行、あるいは、近隣のヨーロッパ諸国に切り替える人が多く、また、外からの観光客もちらほらとは見えたものの、観光業界(特に航空業界)は通常モードには戻っていませんでした。

 私自身もまだまだ、長距離の移動は怖くて、バカンスに行くつもりもなかったため、航空運賃などをチェックすることもしていませんでした。感染が怖かったこともありますが、せっかく旅行に行ってまで、やれ検査だ隔離だなどという煩わしさはごめんこうむりたかったこともありました。

 パンデミックが始まって以来、来年には、元に戻るかな?と毎年のように思いながら、もう2年以上、次はウクライナでの戦争が始まり、日本行きなどの飛行機はキャンセルが続いたと思ったら、今度は迂回便のための長距離フライトと燃料費高騰のためのチケット爆上がり。

 普通なら、経由便ならば、時間がかかる代わりに、少々、お値段は安くなるところが、今までよりもずっと時間がかかるにも関わらず、値段はずっと高くなっているのですから、納得いきません。

 そして、それは、日本行きに限ったことではなく、フランス発の航空運賃全般にわたる値上げ(まあ当然ではあるけど・・)、しかも1年で40%以上も値上げしているなど、狂気の沙汰です。それでも、みんなインフレ、インフレ・・と騒ぎ立てているわりには、フランス人はバカンスには出かけるところを見ると、みんなお金あるんだな・・と感心したりもします。

 2022年の夏は、観光業は、ほぼ通常どおりまでに回復しているとのことで、ユーロコントロールの調査によると、フランスの空港では、1日に約4,200便が運航され、これはパンデミック以前の数字の90%の数字にまでのぼっているということです。

 一般的に「航空券の価格は需要と供給によって決まる」と言われていますが、需要は、ほぼ戻りつつあるとはいえ、これにプラスして、燃料費の高騰の問題があります。

 2021年半ばには、燃料がコストの15%を占めていたのに対し、2022年上半期には29%を占めていると言います。このコストに入れられる分と燃油サーチャージとして追加に乗せられる金額をどう設定しているのかは疑問なのですが、JALは、10月から、燃油サーチャージがまた値上げになり、北米、中東、オセアニア、ヨーロッパ線は燃油サーチャージだけで114,400円に値上げするとのニュースを見て、ちょっともうため息も出ない感じです。

 日本は最近、外国人観光客の入国制限を緩和するという発表があったというので、これでフランス人も日本に旅行ができるようになるんだ!!と期待したら、なんのことはない、大した緩和ではなく、依然として個人旅行客は認めないという意味のわからない緩和。しかも、もうすぐ夏休みも終わりというタイミング。これでは、日本へ行く外国人観光客は戻りません。

 パンデミック前の日本行きの飛行機(パリ⇄羽田便)などは、9割型フランス人で埋められていたのに、これらの人々が行けないということは、「航空券の価格は需要と供給によって決まる」のならば、日本行きの航空券の値段は、まだまだ下がらないということで、これに燃油価格の高騰分を加算すれば、雪だるま式に高くなるわけです。

 しかし、パンデミックから戦争と続き、失われていく時間は長くなるばかり、夏のバカンスシーズンが終わったら、もう日本行きは諦めて、近場のヨーロッパの中でどこかへ行こうと思っていたら、欧州域内路線では54.5%値上げしているとのことで、ちょっと萎えてしまいました。

 そして、また、フランス民間航空局(DGAC)が、「航空券は、冬から来年にかけて5〜10%値上げする」と追い討ちをかけるような発表。

 航空運賃が少しでも下がるのを待つか、失われていく時間を少しでも早く取り戻すか? 悩ましいところです。



航空運賃値上げ


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2022年8月24日水曜日

救急車が電動キックボードに乗ったティーンエイジャー2人を轢き殺す陰惨な事故

  


 この間は、消防士の森林火災放火事件があったと思ったら、今度は救急車がティーンエイジャー2人を轢き殺すと言う事件が起きて、驚愕しています。

 消火活動にあたるはずの消防士が放火し、怪我人や病人を助けるために駆けつける救急車が人を轢き殺してしまうのですから、本末転倒このうえない話です。

 月曜日の午後6時半頃、リヨン2区を電動キックボードでバスと二輪車、スクーター専用レーン(一般車道の横のレーン)を走行中だった15歳の少女と17歳の少年が後から猛スピードでやってきた救急車に跳ね飛ばされて死亡しました。

 目撃者によると、2人は数メートルも跳ね飛ばされたと言われており、そのスピードがどれほどのものであったか、この事故が故意によるものではないにせよ、視界のきかない場所でもなく、前方に人がいることがわかれば、人が数メートルも飛ばされるスピードのまま走り続けたというのは、合点がいきません。

 救急車の運転手はアルコール反応はないものの薬物反応についての検査結果はまだ出ていません。

 しかし、リヨン検察庁の発表によると、この救急車の運転手(36歳)は、過去に28件の交通違反の前科の記録が残っており、2019年に一度、運転免許が失効になっており、保険に加入していないことや、免許証で認められている以上のカテゴリーの車を運転していることも、警察に知られていた、なかなかの注意人物であることがわかっており、2020年3月に再交付された8点の点数は2点しか残っていない仮免許で運転していたことが発覚しています。

 このような人物が一般車両を運転することさえも、恐ろしい話なのに、ましてや、他の車より優先的に運転することが許される救急車の運転手という立場で運転していたことは、彼の雇用についても問題があったと思わざるを得ません。

 救急車に撥ねられた2人のうち、1人(15歳の女の子)はほぼ即死、もう1人(17歳の男の子)は、蘇生措置がとられたものの、すぐに死亡しました。

 衝突した運転手は同乗者とともに、ショック状態で入院したものの、すぐに回復、直後に警察に身柄を拘束されました。

 リヨン検察庁は過失致死罪の捜査を開始し、ローヌ公安局に委託しています。

 新年度が始まる寸前の、まだまだ若く健康なティーンエイジャーの命があっという間に失われてしまったこの事件、どうしてもお母さん目線になってしまうのですが、この子たちのご両親、ご家族にしたら、まさに青天の霹靂、信じられない出来事で、悔やむにも悔やみきれない事故であったであろうと思います。

 亡くなってしまった2人は、一般車道を走っていたわけもなく、専用レーンを走っていたのだし、この運転手に全面的に非があったのはもちろんですが、このような人物を救急車の運転手として雇用していた側の責任も深く問われるべきだと思います。

 他人事のようですが、このような事故の話を聞くにつけ、子供が無事に育って大人になるということは、奇跡的なことなんだと思ってしまいます。


救急車死亡事故 電動キックボード


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2022年8月23日火曜日

日本の国税庁キャンペーン「サケビバ」にはフランス人も唖然

  


 最近、日本のびっくりするようなニュースをフランスのテレビで知ることが増えた気がします。

 つい、先日、フランスのテレビのニュースで日本の「サケビバ」の話を報道していて、かなり、驚きました。

 このキャンペーンは、20歳から39歳の若者に向けて、酒類業界の活性化や問題解決に対するプラン、特に若年層の需要に向けた新たなサービスやプロモーションなどを募るもので、国税庁のサイトを見ると、これに応募して、なんかいいことあるのかな?と見ると、参加費無料とあるだけで、何もメリットはなさそうです。アイデアを募集しておいて、参加費無料とは、なんたる上から目線!

 この「サケビバ」に関して、フランスでは、「日本では、パンデミックの影響などで若者の酒類の消費量が停滞し、税収が大幅に減少したために、これを回復させるために、「サケビバ」なるキャンペーンを始めた・・経済が低迷し、約10兆ユーロの財政赤字を抱える国情」「経済規模の2倍もの公的債務を抱える日本では、新しい収入があれば何でもいいのだ」などと言われています。

 もしも、これが酒造メーカーがキャンペーンを張るというのならば、別に驚くこともなく、ニュースにもならなかったと思いますが、これが日本の国税庁が主催というのだから驚きなのです。

 フランスでは、テレビや映画館などのメディアでは、アルコール飲料のコマーシャルは禁止、また、スポーツの協賛も国により、禁止されています。街でポスターなどにも、必ず「アルコールの過剰摂取は、健康を害する恐れがあります」というような内容を併記することが義務付けられています。

 つまり、国民の健康のために、アルコール摂取量の削減を奨励しているのです。まあ、そうは言っても、アルコールは適度に・・という程度という話ではあります。

 それを守って、アルコールをほどほどにしておく人ばかりではない国とはいえ、「税収増」を目的として、国がアルコール摂取を若者に推奨するというのは、よく言えば「すごく奇妙」、はっきり言えば、「日本は税収増化のためなら、国民の健康は考えない国」なのです。

 これは、フランス人に指摘されるまでもなく、どう考えても狂ってるとしか思えないことで、このようなキャンペーンを国税庁が主催するといのも、あまりに露骨です。

 ただでさえ、高齢者向きに作られている日本社会、このうえ、若者に一般的には健康を害すると言われているアルコールを奨励するという、国民の健康よりも税収を優先する恐怖の政治。

 まったく、どこまで節度なく、無自覚にやらかしてくれるのかと、ウンザリさせられます。

 だいたい、日本の人口比率を考えれば、若者は少数派、たしかにパンデミックの影響で、いわゆる日本の「ノミニュケーション」のようなものが減り、それ自体も必要だったのか?という疑問が若者の間で広がったかもしれません。

 しかし、もともと、ノミニュケーション大好き・全盛期の世代が高齢化して、アルコール消費量が減ったのも大きいと思います。

 いかにしても、国として、税収増を考えるならば、普通なら、別の方法を模索するのが当然のこと、もしくは、酒類業界に対して売上増加を促すくらいならば、まだしも、こともあろうか臆面もなく、国税庁が主催して、このようなキャンペーンを張るなど、日本政府は、どこまで世界の認識からズレているのかと本当に恥ずかしい思いです。

 そして、どこまで若者を虐げるのかと腹立たしい思いです。

 フランスでも若者のワイン離れや、最近の若い子はあまり飲まなくなった・・などと言われていますが、アルコールを奨励することは依然としてあり得ないことなのです。


サケビバ 国税庁


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