「開催予定がもうすぐそこまで迫っているのに、これほど、盛り上がらないオリンピックがあるだろうか? 日本国民の80%以上がオリンピック開催に反対している」とフランスでは、報道しています。
これは、最近、朝日新聞が社説として取り上げた、菅義偉首相が国民の声を無視してオリンピックを開催しようとしていると批判した記事で取り上げられた世論調査を元にした内容です。
この朝日新聞が行った世論調査によると、43%が中止を、40%がさらに延期されることを望んていることが明らかになっているとし、合計83%がひとまず今年のオリンピック中止を望んでいるという報道になっているのだと思います。
また、共同通信の発表している世論調査から、87.7%の日本国民がオリンピックによるウィルスの流入を恐れていること、71.5%が政府のオリンピック対応の衛生対策に不満を持っていることも伝えています。
また、この朝日新聞の社説が国際オリンピック委員会(IOC)のジョン・コーツ副委員長の「東京が非常事態宣言を発していたとしてもオリンピックは開催される」という発言に対してもIOCの利己的な性質を批判についても触れています。
つい2週間ほど前にも、フランスでは、これまでほとんど報道されていなかった東京オリンピックについて、「国民の半数以上が反対している。東京オリンピックの主催者は、地元の観客の有無の決定を6月まで延期した。これは、7月23日から開催されるこれらのオリンピックの準備に伴う不確実性のさらなる象徴である。」と報道されていたばかりでした。
半数以上が反対・・よりもさらに、今回の「80%以上が反対」=10人のうち8人が反対という報道は、なかなかインパクトがある内容で、それに加えて、世界ランキングトップのテニス選手・ジョコビッチやナダルなどが、東京オリンピックに出場するかどうかについては、現在の段階では、まだ保留している旨を併せて伝えています。
とはいえ、東京オリンピックに反対しているというわけでもなく、開催については、不確実だということを伝えているのみです。とても客観的です。
正直なところ、一般のフランス国民は、日本の状況について、それほど承知しているわけでもなく、興味があるわけでもなく、「やるなら行くけど、本当にやるのかな?」という程度のものです。
しかし、国民の80%が反対しているのに、政府がこれを無視して、「オリンピックは安心、安全に開催できる」と繰り返すのみで、国民を説得する姿勢もなく、オリンピックを強行するという事態は、フランスではあり得ないことです。
フランス政府は、そんなに国民に阿るか?というくらい、国民感情を常に意識し、政府の考えを必死に説明し、国民を説得しようとする姿勢が基本です。そうでなければ、すぐにデモや暴動が始まります。
だからと言って、今の日本の状況をフランスに置き換えて考えるということも、あまりありません。いつか、私は、「日本人は黙って我慢するからバカだ!」と職場の同僚のフランス人に言われたことがありましたが、今のオリンピックを巡る状況に、フランス人は、そんな風に思っているのかもしれません。
どちらにせよ、日本を好意的に思っている人が増えたとはいえ、フランスにとって、やはり、日本は遠い国、我関せずの人が大多数です。
今は、フランスは、ワクチン接種拡大と、ロックダウン解除で半年以上ぶりの日常を取り戻し始めたばかり、パリの街を歩いていても、ロックダウン解除直後のいささか高揚した感じも薄れ始め、極めて元どおりの生活を穏やかに楽しみ始めています。
フランスでは、5月30日から全仏オープンテニス(ローランギャロス)が開催される予定です。(ちなみにフランスの現在の1日の新規感染者数は、13,000人、集中治療室患者数3,206人です。)
また、一方では、インド変異種がイギリスから入ってくることを警戒して、イギリスとの往来にも制限がかかり始めています。
そんな状況の中で、世界中から人が集まるオリンピック後の日本の状況については、検証してはいません。
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