これまで、フランスでは、東京オリンピックに関する報道は、あまりなされてきませんでした。正直、フランスは、ここのところ、感染状況がようやく減少傾向に向かい、ワクチン接種に最大の焦点を合わせ、ロックダウン解除を段階的に手探りでおそるおそる進めている状態とはいえ、とても他国で行われるオリンピックがニュースに上る余裕はありませんでした。
しかし、ここに来て、いくつかのフランスメディアは、オリンピック開催予定である7月23日まで、あと10週間程度となった東京オリンピックに関するニュースを取り上げ始めました。
それは、オリンピック開催がどのように行われるか?とか、オリンピック開催の可否であるとか、そういった内容ではなく、「オリンピック開催に際して、日本の医師組合が政府に対して、このパンデミックの状況の中で、安全にオリンピック開催は、不可能であると声明を発表していることや、ここ数ヶ月間に行われた世論調査によると、国民の半数以上がオリンピック開催に反対、あるいは、延期を希望しているにも関わらず、主催者側は、オリンピックを安全に開催できることを国民に対して説得しようとしている。」といった、日本がオリンピックをめぐって動揺している状況であることを伝えています。
フランスの報道では、「日本は、他の多くの国よりもコロナウイルスの影響が比較的少ない状態を保ち続けてきたが、現在、ウイルス感染の第4の波に直面しており、今年の1月には、死者1万人を突破し、首都を含む多くの地域が非常事態にある。」
「医療制度は再び圧迫した状況にさらされており、医師らは、人員不足であると言っている。過去数日間、日本の県のいくつかの知事は、彼らが病気の選手に病院のベッドを割り当てないことを示している。大会開始前に日本でトレーニングするチームの計画はキャンセルされた。」と不安定な日本の状況を知らせています。
また、ル・モンド紙(仏・大手新聞)では、「東京オリンピックの主催者は、地元の観客の有無の決定を6月まで延期した。これは、7月23日から開催されるこれらのオリンピックの準備に伴う不確実性のさらなる象徴である。」
「尾身茂 医療顧問が、「感染状況」と「圧倒的な病院システム」を考えると、「オリンピックについて話し合う時が来た」「世界中から東京に到着するウイルスの新しい亜種の多くの形態によって表される危険を否定することはできない」と述べている逼迫した状況にもかかわらず、主催者はオリンピックが先に進むことができると主張し続けている。」
「問題は、安全なゲームをどのように組織するかだ」と、オリンピック組織委員会の橋本聖子会長は語り、「大会が観客でいっぱいになるのはおそらく「非常に難しい」だろうと彼女は認めた。 「私たちの目標は常に完全なサイトを持つことですが、ウイルスと戦うために必要な対策を考慮して、医療サービスに過負荷をかけてはならない」と言っている。」
「拡大し続ける感染に逼迫した医療体制と多くの生活制限下に置かれた現在の日本の状況は、本来ならば、オリンピック開催真近の世界的な祭典のお祭り騒ぎの雰囲気とはかけ離れた状態である。」と報道しています。
医療関係者を始めとする多くの日本国民が延期またはキャンセルを望んでいる中、それでも強行しようとしているオリンピックの主催者と日本国民の世論の不均衡を伝えているのです。
これをフランスに置き換えて考えた場合、国民の半数以上が反対している状況でオリンピックを強行開催することは、おそらく不可能だと思います。それこそ大きなデモや暴動が起こります。政府もおそらく、それを見越して、たとえオリンピックを開催するとしても、具体的な対策を示して、国民を説得しようと努めるはずです。
フランスが報道しているのは、オリンピックそのものについてではなく、煮え切らない日本政府の、いつまでもはっきりと決断できない、国民を説得できないままに強行しようとしている日本政府の実態なのです。
この日本国民の大半が反対している・・という海外での報道の広がりを日本はどう受け止めるのでしょうか?
<関連記事>
「ワクチンが驚くほど進んでいないのにオリンピックを開催する日本 オリンピックは「やった者勝ち?行った者勝ち?」」