2022年9月26日月曜日

パリのクラック(ドラッグ)常用者の溜まり場からの立ち退き要求デモ

  


 週末はいつも、なんらかのデモが行われていることが多いパリで、今回のデモは、クラック(コカインを含んだ違法薬物)の常用者の野営地の立ち退きを要求するデモが行われていました。約500人のデモ隊が、パンタンとオーベルヴィリエ(セーヌ・サン・ドニ県・パリ近郊)の通りを行進し、警察当局にクラック使用者の避難と保護を求めて、1年以上も放置されたまま泥沼化している事態を非難しました。

 クラックは特にここ数年で、爆発的にフランス国内で拡大しているコカインの一種(中毒性が高く、喫煙可能なコカインの派生物)で、比較的安価に出回っていることから、貧乏人のドラッグなどとも呼ばれています。

 パリ北部(19区近辺)のスターリングラードの広場は、いつの間にか、このクラックの聖地?のような状態に陥り、このクラックの売買や常習者の溜まり場のようになり、スターリンクラックなど皮肉な呼び名をつけられたりしていました。

 このスターリンクラックを解体させるかに見えた、この19区の溜まり場から、このクラック常用者が強制的に移動させられた先は、さほど遠くない、歩いて移動できるほどの距離のところ。

 結局のところ、問題になる場所を移動させただけで、根本的な解決には、全くなっておらず、移動先のこの近郊地域では、300人から400人の薬物中毒者が暴力を振るい、売春を行い、治安を乱し、地域の商店が衰退し、公道は荒廃し、治安は悪化し、住民が不安な状態に陥っている状態を招いています。

 このクラック常用者の野営地の強制移動に関しては、一時、我が家の近所が彼らの移転先に選ばれそうになったことがあり、突然のパリ警視庁からの一方的な決定の発表に地域の住民が猛烈に怒って、反発しはじめ、市議会も大騒ぎで署名運動などが始まり、私も「え〜〜どうなっちゃうの??」と不安になりましたが、どういうわけだか、案外、あっさりと市議会とパリ警視庁の話し合いで解決し、我が家の近所への移転の話はあっという間に立ち消えになりました。

 そんなわけで、私にとっても、なんだか今ひとつ、人ごとのような気がしなくなった、このクラック問題ですが、結局、あちこちの候補地をたらい回しになった結果、結局、すでに多くの社会的困難を抱える労働者階級の貧しい人々の居住区におしつけられることになっていたのです。

 今回のデモは前回、移転先をおしつけられた地域の人々がおこしているデモで、まことに最もな訴えで、パリ警察庁も「これまで取られてきた措置は十分ではなかった」ことを認め、このクラック常用者の溜まり場を決定的に解体することを目的に、クラック・コカインの売買と消費に対抗するための行動計画をすすめることを確約しました。

 「人権の国フランスが、どうしてヨーロッパ最大の麻薬現場を放置しているのか?」とデモ参加者が訴えているとおり、このフランスのドラッグ問題は長く続いている深刻な問題です。

 単にドラッグ中毒患者を退去させるだけでなく、彼らには治療が必要ですが、彼らを食い物にしている売人のグループは彼らを逃すことを許さないのです。売人と警察のいたちごっこです。またこの密売人はドラッグだけでなく、銃などの密売にも手を広げているということで、思わぬ発砲事件にまで発展したりもします。

 パリ警察は8月に入ってから24人の密売人を逮捕し、5つのクラック「キッチン」(製造所)が解体され、警視庁の計画はすでに成果を上げ始めていると発表していますが、この警視庁と麻薬の密売人のいたちごっこは、とりあえず、溜まり場の中毒患者を専門施設等に保護して、隔離するなどしなければ、永遠に場所を変えて続くことになります。

 よく、フランスのクズは限りなくクズだ・・などと言われますが、まさに、このドラッグにハマって野営地で生活する人々などは、まさに最底辺の人々。フランスは弱い人に優しい国だと思いますが、このドラッグ中毒の人に対しては、現状では、救いの手を差し伸べてはくれていないようです。

 違法薬物に関しては、販売人に対しては厳しいものの、常用者に対しては、緩いというか冷たいフランスの対応・・しかし、たまごが先かにわとりが先か?のような問答にもなりそうですが、売る人だけでなく、買って使う人も絶たなければ、解決はしないのです。


パリ クラック デモ


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2022年9月25日日曜日

日本の外国人観光客入国制限解除について

   


 日本の岸田文雄首相はニューヨーク証券取引所で、「10月11日から日本は国境管理を緩和し、再びビザなし渡航と個人旅行を可能にする」と発表しました。たしか、今年の5月の日本への入国制限緩和を発表したのも海外でのことで、G7のためにヨーロッパを訪問中、ロンドンのシティでの講演でのことでした。

 わざわざ、海外訪問中にこれを発表するというのは、世界に向けての発信力を意識してのことなのでしょうか? しかし、前回の発表はほんとうに肩透かしをくった感じの内容でした。

 というのも、5月の段階では、「G7(主要7カ国)並みに円滑な入国がとなるようにさらに緩和していく」「日本は今後とも世界に対してオープンだ」「みなさん日本にお越しください。最大限のおもてなしをします。」と宣言したにもかかわらず、実際には、全くG7並みの円滑な入国どころではなく、外国人に対しては、グループ(団体)での旅行のみという外国人からしたら、意味のわからない制限付き、個人旅行の場合は、ビザの申請が必要という状態で、日本へ行くという人の話は、ほとんど耳にすることはなくなっていました。

 フランス人からしたら、バカンスに行きながら、旅行会社の見張り付きなどということは、考えられないことで、この規制緩和を楽しみにしていた人も、「グループ旅行なんて、ありえない・・だったら、日本へは行かない・・」というフランス人の話も聞こえてきていました。

 パンデミック前の2019年には、日本は約3,190万人という過去最高の外国人観光客の受け入れと、それに匹敵する経済効果(同年は4兆8000億円)を記録し、フランス人にとってもアジアで最も人気のある旅行先の一つになりました。

 世界第3位の基軸通貨である日本円は、悪い方向に進み、1年間でドルに対して30%以上価値が下がり、日本は、停滞している景気回復のためにも、この円安がメリットになる外国人観光客の入国制限解除によって、財政的な恩恵に預かることができるかもしれません。

 しかし、フランスの業界専門家は、日本の観光業界が復活するには、まだまだ時間がかかるという見方をしています。日本でのパンデミック前の国際観光客による経済的スピンオフのほとんどは、大量の中国人観光客が、日本の電気製品や化粧品を持ち帰るために多額のお金を落としたためで、中国国内ではコロナウィルス対策の大幅な規制が続いているため、当面は日本への大量渡航は見込めません。

 フランス(欧州)からの観光客に関しても、30%円安になろうとも、それ以上に航空運賃が大幅に値上がりしているうえに、バカンスシーズンはすでに終わっているという間の抜けたタイミングです。

 それに加えて、一応、フランスからの入国は、ブースター接種をしていれば(3回のワクチン接種の証明書があれば)検査は免除ということになっていますが、フランスで最も多くの人がブースター接種を受けたのは、昨年の12月から1月にかけてのことで、ほとんどの人がワクチン接種の有効期間が下がっている状態に加えて、フランスでは、気温の低下とともに第8波が始まろうとしている感染者が再び拡大しているタイミングです。

 それでも、気にせずバカンスにはでかけるフランス人ではありますが、これまで、ひたすら厳しいことを言って、外国人の入国制限をしてきた日本にとって、なんとも微妙なタイミングでの観光客の入国制限解除です。

 とはいえ、フランスをはじめとして、ヨーロッパのほとんどの国では、とっくに入国制限など、ほとんどないも同然の状態なので、日本もこれで5月の段階で岸田首相が宣言していたG7並みの円滑な入国を受け入れてくれることになりますが、どうにもやっていることに一貫性が感じられずに、今まで、何をしたかったのか?と、首を傾げたくなります。

 しかも燃料サーチャージがさらに値上げされた10月というタイミング。感染が持ち込まれることを過剰に心配しなくても、ヨーロッパからの観光客が簡単に復活することはないでしょう。


外国人観光客入国制限解除 


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2022年9月24日土曜日

娘がコロナウィルスに感染しました

  


 朝、起きると、とりあえず、携帯をチェックするのが朝一番の日課です。まあ、そんなに急用はないのですが、なんとなく一応、チェックしてからおもむろに、少しずつ目が覚めていくのを待っている感じです。

 娘が日本で就職してから、日本にいる娘とは、時々、連絡はとっていますが、そんなに毎日のようにではないので、朝、携帯のメッセージに娘から連絡が入っているのを見て、「へっ?なんだろう?朝から・・」(朝からと言っても、日本時間では朝ではないけど・・)と思ってメッセージをあけると、なんだか携帯のスクショ画面が送られて来ていて、すぐには読めずに、「ん??」となりました。

 メガネを手探りで探して、ふむふむ・・と見ると、その画面は、「検査結果通知書」と書いてあって、すぐ下には、娘の名前が書いてあって、実は、漢字で書かかれた娘の名前をこうして客観的に見るのは、初めてのことで、最初はなんだかピンとこない気がしたのも妙なものだ・・などと呑気に思いながら、マジマジとその書面を見ると、「検査結果・陽性」とありました。

 朝、寝起きということはあるものの、日本のこういう書類を久しぶりに見たこともあって、なんだかすぐには、ピンとこなかったものの、ようやく、「えっ??コロナに感染したの??」と気づくまでに、少し時間がかかったのもお恥ずかしいことです。

 しかし、おそらく、彼女が検査を受けたからには、なんらかの症状があったからに違いなく、感染してるけど、無症状・・というわけではないはず・・と思いいたり、すぐに電話しました。

 これまで、2年半以上、私も娘も一度も感染したことはなく、先日、彼女がパリに来いていたときには、友人の結婚式に参加したりして、かなり大勢の人にも会っていたし、日本に比べたら、マスクをしている人などほとんどいないフランスで、一応、気をつけてはいたにせよ、日本に帰国の際に検査を受けて、「これでも感染しないんだ・・」などと、本人もちょっとびっくりしていたくらいでした。

 それが、まさか、フランスよりもたくさんの人がマスクをしていて、みんなが気をつけている日本で感染するとは、彼女も思ってもみないことのようでした。

 「感染するなら、絶対にフランスで感染すると思っていた・・」と。

 数日前に、急に熱が出て、だるくなり、咳が出始めて、これはちょっとヤバいかも??と思って、検査を受けにいったところ、なんと結果は陽性で、現在、私の実家に一人暮らしの娘、とりあえず同居人はいないものの、過去数日間に会った人には、自分が感染したことを連絡し、今のところ、みんな大丈夫みたい・・と話していました。

 特に心配だったのは、隣に住んでいる高齢の私の叔母で、ちょうど、敬老の日に会ったばかり・・というので、「敬老の日」に会いに行って、感染させてしまっていたら、申し訳がたたない・・と、彼女も自分のこと以上に叔母のことを心配していました。

 かなり熱があがって、ドリプラン(フランスから持って行った鎮痛・解熱剤)を飲んでひたすら寝たら、少し楽になった・・と言っていましたが、若いからといって安心とはいえないんだから、この際、大人しく寝ていなさい・・と言って、もしも、すごく悪くなるようだったら、行くからね・・と話しました。

 遠く離れていると、やたらと心配ばかりが募ります。娘と離れて暮らすようになって、いつか、健康面で心配をかけるのは、私の方だろうと思っていたので、とてもびっくりしました。

 しかし、検査結果は検査施設から、直接、保健所には連絡がいかないようで、「日本って、おかしいよね・・」と言っていました。しかし、保健所に連絡して、サポートを申し込むと食糧などを送ってくれるらしいと、そのサイトを調べて送ったら、これまた、具合が悪いというのに、いろいろ証明書や保険証のコピーなどを添付したりしなければならなくて、年配の人はどうしているんだろう?」と素朴な疑問。

 ワクチン接種をしていてもオミクロンには感染すると言われてはいますが、考えてみれば、彼女がブースター接種をしたのは、昨年の12月、それから約9ヶ月くらい経っているので、これまで感染しなかったのは、やっぱりワクチン接種のおかげだったのかな?とも言っていました。

 私自身は、既往症もあったりして、不安だったので、今年の7月に2度目のブースター接種をしましたが、彼女は、「オミクロンは重症化しないなら、もうワクチンはいい・・」と言って、さらなるワクチン接種はしていなかったし、年齢的に該当していませんでした。

 熱が39℃近くあるということだったので、「体温計あるの?」と聞いたら、「大丈夫、料理用の体温計があるから・・」という回答。それって体温計じゃないし、「料理用の体温計」という言葉に大笑いしてしまいました。

 そもそも、我が家の体温計も電池切れのまま、ずっと放置状態・・私自身も熱があるかな?と思うことがあっても、「体温計ったところで、熱が下がるわけでもないし・・薬を飲んでひたすら寝るしかない・・」と熱を計るということを蔑ろにしてきたので、あまり偉そうなことも言えません。

 料理用の温度計をくわえて、熱を計りながら、コロナと一人戦っている娘・・やっぱり、離れていて、何もしてあげられないのは、悲しいことです。

 どうか、無事に回復してくれますように・・。

  

東京都が送ってくれたという自宅隔離用食糧


コロナウィルス感染


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2022年9月23日金曜日

フランスには王室がないのだと実感したマクロン大統領夫妻のロンドン散歩

  


 先日のエリザベス女王の国葬に参加したマクロン大統領の服装がちょっとした話題を呼んでいます。正確に言えば、国葬に参加した際の服装ではなくて、前日に前乗りでロンドンに到着したマクロン大統領夫妻がお忍びでロンドンの街を歩いていた際の服装についてです。

 これは、一瞬、デマ情報まで流れ出し、あたかもマクロン大統領夫妻がこの様相で国葬に参列したかのごとく、ネットを駆け巡りました。

 実際には、前日、ロンドン到着後にエリザベス女王の棺とウェストミンスターで対面するまでの短時間にロンドンの街をお忍びで歩いていた時の映像です。お忍びとはいえ、SPを従えて、全世界に顔を知られているマクロン大統領は、サングラスをしているとはいえ、一目瞭然のうえ、記者にマイクを向けられて、彼はイギリス国民が行列している横で、「イギリス国民の悼みを分かち合う」と答えています。


 

 しかし、フランス大統領という立場である彼のその姿は、とても悼みを分かち合っているようには映らず、このことはむしろ、黒いサングラスに流行りのスニーカーを履き、たくさんのボディーガードをお付きに歩き回る映画スターを連想させ、イギリス人の不評を買うことになりました。そして、しまいには、フランス人からもフランス人のエレガンスがまるで感じられないとフランス国民からも否定的な声があがりました。

 お忍びとはいえ、これだけ目立つ存在であるマクロン大統領は、イギリス人からは、「白熊専用のゴルフクラブに入ろうとする黒眼鏡のキリンと同じくらい、気づかれないようにする才能がある」などと皮肉を書かれています。

 口が上手くて、エリザベス女王のご逝去後にすぐに最大限の弔意を発表していたマクロン大統領でしたが、この映像には、やっぱり口だけか・・というよりも王室に対する礼節を理解していない・・と多いにがっかりさせられるものでした。

 フランスがどれだけエリザベス女王の国葬騒ぎに熱狂し、「イギリスの女王でもあり、私たちの女王でもあった」などと言いながら、やはり王室に対してのリスペクトの仕方は、この程度のもので、やはりフランスには王室がないゆえ、王室というものの品格やマナーが理解できていないんだろうな・・大統領でさえも・・と感じてしまったのです。

 国葬のための訪英をしているフランス大統領は、イギリス到着時からイギリスを発つ瞬間まで、フランスを代表している存在であるべきなのです。普段はスーツにネクタイ姿しか見せない彼が濃紺のジャケットにチャコールのパンツ、黒のトレーナーにマフラーを短く首に巻くというカジュアルな装いで街に出るというわきまえのなさ。


 これは、フランス国民には、思わぬ別の反感をも買うことにもなり、この時マクロン大統領が履いていたスニーカーは、フランスの「ウェストン」というメーカーのもので、「ウェストンのプロモーションのつもりか?」とか、「マクロンのスニーカーは570ユーロ!豊かさの終焉とは貧乏人への言葉だったのか?」などと炎上しています。

 いずれにせよ、古臭いことを言うおばちゃんみたいではありますが、前日のこととはいえ、国葬のために訪れたロンドンでのマクロン大統領の様子は、日本語で言えば、不謹慎?礼儀をわきまえない、作法を知らない・・とでもいうのでしょうか?

 やはり、日本を発たれる時には、白マスクだった日本の天皇皇后両陛下がロンドン到着時には、黒マスクに交換されているような心遣いが日本人としては、非常に好ましく、英国王室に対してのリスペクトが感じられ、それこそが王室へのリスペクト、マナーだと思うのです。


マクロン大統領夫妻トレーナーとスニーカー


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2022年9月22日木曜日

フランスのコロナウィルス第8波の始まり

  


 フランスのコロナウィルス感染者数は、夏の間は、減少を続け、むしろ、日本の方が酷いかも・・と思われる状況が続いていました。もはや、フランス人の生活は、ほぼほぼ、かつての日常に戻り、マスクをしている人も、あまり見かけなくなりました。

 先日のエリザベス女王の国葬でも参列者はノーマスクでしたが、さっそく国葬に参列したデンマーク女王がコロナウィルスに感染したというニュースも流れてきています。

 それでもその直前、WHO(世界保健機構)も「パンデミックの終焉は手の届くところにある」などと、かなり楽観的な声明を発表したりして、パンデミックもヤレヤレ・・ようやく一息つけるかと思いきや、今度はエネルギー危機とインフレで、立て続けの災難に境目がないな・・と、なんとなく、問題が別に移行しているような気にもなっていたのです。

 フランス政府は節電を呼びかけ、特に企業に関しては10%の節電の具体的な計画を検討することを提案し、企業によっては、暖房を使う部屋を減らすために、いくつかに分散されている部屋の人員を集結させて、暖房を使う部屋を減らすことで節電するなどという案なども紹介されていました。

 これまで、やたらとソーシャルディスタンスを叫んでいたのに、今度は節電のために同じ部屋に人を集めて人との間隔をつめるとは、パンデミックも完全に終結したわけでもないのに大丈夫なんだろうか?と思っていました。

 それが、新年度の開始とともに、9月6日以降、減少を続けていた感染者数が一転して上昇に転じ始め、残念ながら、ウイルスの循環が再開された兆候である1の値を超えています。

 週初めには、新たに51,816人の感染者が確認され、これは8月2日以来の記録となり、この1週間、フランスでは毎日平均28,837件の新たな感染が記録されました。これは、わずか1週間で47%の増加であり、多くの専門家は第8波の始まりであると語っています。

 今のところは、これまでに比べれば、大した数字でもありませんが、怖いのは増加率の方です。いったん、増加し始めるともう、しばらくは増加が続きます。

 フランスはここ1週間ほどで急激に気温が下がり、この気温の低下により、さらに感染症が再び増加する兆しと見られています。発生率は地域によって対照的に増加の兆候が見え始め、アルデンヌ地方では、すでに人口10万人あたり500人を超える患者さんが発生しています。

 イル・エ・ヴィレーヌ県(人口10万人あたり415人)、オート・ソーヌ県(451.98人)、ベルフォール県(458.92人)、クルース県(406.29人)、カンタル県(459.24人)の5県は、ほとんどがフランス北部に位置しており、特にフランス北部の被害が大きいことが報告されています。

 医療機関はこの2週間で入院患者数の減少がストップし、今後数日の間に再び増加することは避けられないと言われています。フランスでは、現在12,896人の患者がコロナウイルス感染が原因で入院していますが、1日平均401人が入院しており、この数字はここ数日上昇しています。

 この2年間で、コロナウイルスの季節性が明らかになり、ウィルスの循環は寒い季節の到来により活発になることは証明済であり、新しい変異種が出現せずとも、感染のリバウンドがあることは、わかっています。

 フランス政府は、まもなくオミクロン対応のワクチンが出回ることから、高齢者やリスクの高い人は、待ったなしで2回目のブースター接種を急ぐように呼びかけ始めました。

 皮肉なことに、エネルギー危機で節電を余儀なくされ、暖房も19℃までと指標が定められ、電気代、ガス代の高騰からも、思うように暖房をつけられない家庭も増える中、暖房をせずによりウィルスが循環しやすい環境を作らざるを得ない現在は、余計にややこしい第8波となるかもしれません。


フランス コロナウィルス第8波


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2022年9月21日水曜日

ストラスブール大学 節電のためにこの冬の15日間の臨時休校を決定

 


 ストラスブール大学の学長は、エネルギー価格の高騰に伴い、この冬の2週間を臨時休校とすることを発表しました。

 一昨日、ストラスブール大学学長は、エネルギー価格上昇のためのコスト削減のために、1月初旬に3週目のクリスマス休暇(通常、クリスマスの休みは2週間)、そして、さらに、2月に1週間のリモートワーク期間を設けることを説明したビデオをYouTubeで公開しました。




 「政府の発表を受けて、エコロジーへの移行において、大学もその役割を果たす必要がある」と述べ、「大学の機能をできるだけ維持しながら、エネルギー消費を10%削減する方法を模索しました」と学長はビデオの中で語り、これを正当化しようとしています。

 同大学では、エネルギーコストが爆発的に上昇しており、電気、ガス、暖房費は2021年の1000万ユーロから、補正予算で150万ユーロが追加で認められ、2022年には1300万ユーロに上昇し、2023年には、2000万ユーロの予算が計上されています。

 ちょっと一般的な家庭の金額とは規模が違うためにピンとこないのですが、大学がそもそもの本来最も優先すべきである授業を休講にしてしまうのは、ちょっと違ううえに、かなり乱暴な方法ではないかと思います。

 案の定、さっそく、これには、組合から反対の声が上がっており、組合は声明で、「行政閉鎖は公共サービスの継続性の原則に違反するものである」と述べ、「この措置により研究室へのアクセスが減少し、研究活動に支障をきたす可能性がある」

 そして、「この措置は学生や一部の職員に対する「リモートワークの押しつけ」に相当し、「雇用主が負担すべき暖房費と電気代」を学生や職員が負担することにつながる、「国が自らの雇用主の費用(暖房、(インターネット)接続、照明、ケータリングなど)を職員や学生に転嫁することは全く受け入れられない」と訴えています。

 パンデミックのために、かなり普及したリモートワーク、リモート授業の習慣ではありますが、パンデミックの場合は、感染対策のためであり、まだ合点もいく話ですが、今回のエネルギーコスト削減のための場合、リモートワークによる個々人の家庭の電力消費に負荷がかかるわけで、負担を個人に押し付ける結果になるのは納得がいきません。

 同大学組合はさっそく、「緊急の投資計画」を要求し、9月29日にストライキとデモを予定しています。また、デモです。

 中には、休みが長くなるのを喜ぶ学生もいるかもしれませんが、学生にとっての本業である講義を犠牲にしてまでの節電はお門違いで、大学側は、他の方法を模索する必要があるような気がしています。


ストラスブール大学節電のための臨時休校


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2022年9月20日火曜日

完璧だったエリザベス女王の国葬は世界中にイギリスを再評価させた

  


 エリザベス女王の国葬の日は熱狂し続けているフランスの報道も、いよいよピークを迎え、早朝6時過ぎからイギリスでの国葬の生中継が始まりました。「今世紀最大のセレモニー」と言われていたエリザベス女王の国葬は、どこを切り取っても完璧で美しい葬儀でした。

 イギリスの威厳と品格をこれでもかと感じさせるセレモニーのどの場面も、どこを切り取っても美しい素晴らしい国葬でした。


     


 そして、これを一層盛り上げたのは、数えきれないほどの一般市民で、それぞれに女王を見送る姿は、故意に演出しようとしても成し得ないものでした。

 これを相変わらず、我が国のことのように前のめりに報道し続けるフランスは、報道だけではなく、この日は、パリのメトロの駅 「George Ⅴ」駅が駅名を「ELIZABETH Ⅱ」に変更するという過熱ぶりで、ここはパリだよね・・などと思いました。




 こんなに女王の国葬に熱狂するフランスとイギリスの関係もまた、摩訶不思議な現象でもありますが、国葬当日は、さすがにフランスだけではなく、全世界40億人が見守ったと言われています。

 


 ウェストミンスター寺院での葬儀はかなり宗教色が強いもの(というよりそのもの)ではありましたが、「これがイギリスの国葬だ!」と毅然として、それを崩さない姿勢にも好感が持てました。

 全世界に流された映像は、BBCが独占で撮影したものでしたが、その場面場面、画角、演出なども、これは映画の映像かと思われるほどの質の高さで、イギリスの美しさを最高に見せつけるものでした。 

 エリザベス女王の棺は最初から最後まで、常に軍隊がガードし、葬儀終了後に棺がウィンザー城に向かう時には、棺は、海軍兵が引いていきましたが、この伝統は、ヴィクトリア女王の葬儀の際に馬に引かれていた棺が、馬がパニックになって走り出したために、倒れそうになった時、助けに来たのは英国海軍の水兵で、棺を人の背中に乗せて引っ張ったというエピソードに由来しているイギリスの伝統なのだそうです。

 


 こうした一つ一つの儀式には、伝統的な由来があり、そして、その一つ一つが美しいのですから、もう参りました・・という感じになります。

 



 極め付けの美談は、エリザベス女王は1年半彼女を待って王室保管庫に安置されていた夫のフィリップ殿下と共に、ウィンザー城のセント・ジョージ礼拝堂に埋葬されたということで、これはお二人が生前に、「どちらかが先に逝っても埋葬せずに待っている」という約束だったそうで、お見事としか言いようのない最期でした。

 女王の棺は30年前から用意されていたという噂もあり、ご高齢であっただけに、いつ何が起こってもいいように準備は万端であったであろうとはいえ、何から何まで、本当に見事でした。

 この国葬を見て、「イギリスって、やっぱりすごい!かっこいい!」と感じた人は少なくないはずで、エリザベス女王は、70年間、女王として国のために尽くし、またその死をもってしてもイギリスに大きく貢献したのです。


エリザベス女王国葬


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