2025年10月26日日曜日

RER C線の暴行男から被害者女性を救い、動画まで撮影して犯人逮捕に貢献したのは勇敢な女性

  


 友人がパリに行くという話をしたら、同僚のカナダ人から、パリは危ないから、メトロなどの公共交通機関に乗るときには、「バッグを前に抱えたりして、充分、気をつけなきゃダメだよ!」と言われたという話を聞いて、苦笑してしまい、「今は、そこまでだとは思わないけど・・、まあ、気を付けるに越したことはないけど・・」という話をしたばかりでした。

 数日前にRER C線の中でブラジル人の若い女性が車内で襲われ、暴行を受けたというニュースがSNS上で出回っていました。

 普段、私は、ほとんど郊外線に乗ることはないのですが、せいぜい、郊外線を利用するといえば、空港に行く時くらいのもの(しかもオルリー空港はメトロ14号線で行けるようになったので、シャルルドゴール空港に行くとき乗るRER B線)です。

 しかし、ふだんは、ほとんどパリ市内から出ることはない私にとって、郊外線というものは、乗るたびに、パリをちょっと出ただけで、いきなり景色が変わる・・グッと開けていない感じの空き地の多い、のどかなエリア・・つまり田舎に突入することに驚かされます。

 私は、東京で生まれ育ったので、東京都内だけでもずっと広いし、たとえ、都内を過ぎても、しばらくは、ビルが建て込んでいるエリアが続くので、すぐにのどかな景色に変わるパリ郊外というものに、驚かされるのです。

 そんな途中の駅では、ほぼほぼ降りることはないのですが、人の量も警備の人数もパリとは全然、違います。

 今回のRER C線での暴行事件は、この拡散された動画に出ている時間を見ると、夜の8時半頃でしたが、若いブラジル人の女性が暴行被害を受けているところに、近くに居合わせた乗客の女性が介入して、被害者を救い、それだけではなく、諦めて去っていく犯人を動画撮影していました。

 たまたま近くに居合わせたのが女性だったのかもしれませんが、そこが男性ではなく女性だったということにもスゴイな・・私だったら、同じようにできただろうか?と思ってしまいます。

 この勇敢な女性は、この被害者女性が被害届を出すのを手助けして、一緒に動画を警察にも渡していました。

 被害者の女性は、唇を噛まれ、引っ掻かれ、殴られ、性的暴行を受けたと被害の様子を語っています。

 そこに割って入っていくのは大変なことですが、結果的には、また別の女性がこの様子を見つけて悲鳴をあげたことで、この男は暴行を諦めて、動画をとっていることについて、脅迫しながら、逃げていきます。

 なんと勇敢な女性なんだろうか!と感服しますが、この勇敢な女性は、「何もしないで見過ごすという選択肢はなかった」とインタビューに答えています。

 なんと、この映像のおかげで、数日後、男は逮捕されました。犯人は、26歳でエジプト国籍を名乗っているということです。

 現在は、この男、警察に拘束されていますが、他にも余罪があると見られており、この人物の他の被害者についても捜査が進められているそうです。

 内務省によれば、公共交通機関における性的暴行は2016年と比較して86%増加しており、特にイル・ド・フランス地域では、性的暴行の加害者における外国人の割合が極めて高く、2024年に記録された性的暴行の62%は外国人によるものであったと言われています。

 友人に、「パリは別に、そこまで危なくないよ・・」と言った言葉、撤回しなければなりません。必ずしも、こんな勇敢な女性がどこにでもいるわけではないですから・・。


RER C線の暴行被害 救世主は女性乗客


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2025年10月25日土曜日

ガレージに5年間監禁されていた45歳の女性 加害者は・・

  


 ときに、こんなことってあり得るの?と思うような犯罪というものが起こるものですが、まさに、今回の事件は、そんな事件のひとつだったのではないか?と思います。

 事件は、サン・モルフ(ロワール・アトランティック県)で発生しており、ナント検察庁は、2名の容疑者を「拷問ならびに蛮行を伴う誘拐」の罪で起訴しました。

 被告らは、40歳の女性を自宅のガレージに監禁し、劣悪な生活環境を強いるとともに、彼女の金銭と社会保障給付金を横領したとして告発されています。

 また、さらに驚きなのは、この被告人たちが、60歳の介護士とそのパートナー(82歳)の二人という決して若くないというか男性にいたっては、はっきりいって、高齢者だということです。

 ナント地方検事局によると、被害者は、「当初は、女性とアパートで暮らしていたが、その後、庭のテントに泊められ、男性が家に住み始めた瞬間から庭のガレージに閉じ込められていた」と証言しています。

 事件現場となっていた家に住んでいた男性(容疑者の一人)は、「彼女がガレージにいるのは知っていたが、彼女とは全く話をしたことはない。今となっては、深刻な事態だったと理解している」とマスコミの取材に対して答えています。

 「今となっては・・」と、言えるのかどうか・・なんといっても被害者が監禁されていたのは、5年間という決して短くない期間です。

 彼の証言によれば、彼の同居人である女性と被害者の女性は、主従関係にあり、二人は喧嘩になり、それがエスカレートしてしまったとのこと。しかし、5年間の監禁とはやはり常軌を逸しています。

 被害者の女性は、捜査官に対し、「普段はガレージで生活し、ガレージの中にあるデッキチェアで寝て、鍋とビニール袋で排泄し、食器用洗剤が混ざったお粥のようなものを食べていた」、「時折、庭に出ることができたものの、時には、一日中、雨や寒さの中にいることもあった」、「恒久的に暴力を受けていた」と証言しています。

 時折、庭に出ることができた時以外は、ガレージのドアは外側からコンクリートブロックで塞がれていたといいます。

 裁判所は被告人2人が被害者の金銭と社会補償金を横領した疑いについても言及しています。検察の捜査によれば、2022年以降、「被害者の生活の痕跡は残されていない」とされ、彼女の銀行口座は、彼女の生活が突然、混乱したことを示しており、最後の彼女の銀行取引履歴は、被告人への送金が最後になっている事実を確認しています。

 彼女自身は特別な監視下にあったわけではなく、もはや携帯電話の契約も切れていたために、事務手続上、彼女は失踪した人物とみなされていました。

 10月半ばの夜、監禁されていた女性は、監視の隙をついて、屋外の囲いから逃げ出し、隣家の家のドアをノックして助けを求めました。その時の彼女はほとんど裸の状態で、低体温症で非常に弱った状態だったそうです。

 5年間、劣悪な環境で監禁されていた彼女は、虐待を受け続け、身体は漂白剤で洗われ、食事には、食器用洗剤や混入され、薬物を投与され、体重が50㎏も減少していたと言われています。

 隣人に助けを求めた時の彼女は、錯乱状態だったそうです。

 しかし、なぜ?こんなことが起き得るのか?監禁された当初は40歳であった女性も今では45歳。とはいえ、相手は、あまり若くない相手、体力的には、彼らよりも勝っていただろうに・・逃れるチャンスもあったのでは?とも思われますが、詳しい状況は不明です。

 異常なことに、この加害者の方は、事態の深刻性をあまり認識していなかった様子というのですから、さらに異様な話です。


ガレージに5年間監禁されていた女性


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2025年10月24日金曜日

インフルエンザワクチンとコロナワクチン あっという間に済ませました

 


 もうずいぶん前に、「インフルエンザの予防接種を受けて下さい」とご招待状のようなものを頂いていて、これまでは、かかりつけのお医者さんに相談してから、決めていたところ、もう今年は、自分の体力にまったく自身がなくなっていることもあり、考えるまでもなく、直接、薬局にそのご招待状を持っていって、ワクチンをもらってから、お医者さんへ行きました。

 私が今年は、なんとなく、ワクチン接種を急いだのは、近々、友人が日本から来ることもあって、ワクチン接種したあとは、逆に一時的に熱を出したり、体調を崩したりすることもあり得るので、その前に済ませたいということもあったのです。

 インフルエンザの予防接種をしてもらった際に、今年は、コロナのワクチン接種はどうなっているんですか?と尋ねたら、「もうやっているわよ!こっちの方も絶対にやっておいた方がいいから、予約、入れときますか?でもインフルエンザワクチンとは最低48時間あけないといけないから・・この日でどう?」と言われて、予約してありました。

 



 パリは急激に寒くなってきていることもあるのか?かかりつけのお医者さんによれば、インフルエンザの患者さんもコロナの患者さんも激増しているとのこと。「早く両方とも済ましておくに越したことはないからね・・」と言われて、素直に従いました。

 今年のコロナウィルスの新しい変異種には「フランケンシュタイン」なる名前がつけられていて、感染力も高いとは聞いていましたが、同時にそこまで重症化する確率は高くはないということでしたが、やっぱり体力的に自信がなくなっている私としては、やっておいた方が安心・・インフルエンザにしても、コロナにしても、かかって苦しい思いをしたくないという気持ちが年々強くなっています。

 フランスでは、保険証のカード(Carte VItal)を通じて、診察記録、投薬記録、また検査の記録、今回のようなワクチン接種の記録が全て残り、自分自身でもその記録がオンライン上で確認できるようになっているので、そのあたりは、助かります。

 おそらく、その情報からまだ高齢者の仲間入りはしていないと思われる私のところに日常の通院記録や投薬記録を参考に、インフルエンザの招待状が来ているのではないかと思われます。

 コロナが全盛の頃は、もうワクチン接種の予約をしてから実際にしてもらうまでも大変で、しかも、どこに行くにもワクチン証明書を持ち歩いていたことを思えば、ずいぶんと簡単になり、昨年は、それでも、ワクチンカードとかいうものをもらって、これから、毎年、これ、コロナのワクチン接種をするときは、これを持ってきてね・・と言われていたのに、今年、そのカードを出したら、「もう毎年、あたりまえのようにやるものだから、もうカードもいらないわ・・」とあっさり言われてビックリしました。

 これでとりあえず、冬に向けての準備は完了した・・そんな気持ちになっています。

 

インフルエンザワクチン コロナワクチン


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2025年10月23日木曜日

サルコジ元大統領収監の波紋 刑務所は大変そうだ・・パリ14区 ラ・サンテ刑務所

  



 とうとう元国家元首であるサルコジ元大統領がパリ14区にあるラ・サンテ刑務所(Céntre Penitentiaire de Paris La Santé)に収監されました。最後のギリギリまで、なんだかんだいって、結局、入らないんじゃないの?とも思っていたので、やっぱり衝撃的で、想像以上の大騒ぎになっています。

 なんといっても大統領だった人が刑務所に入ったのですから、その日のトップニュースは、この話題で持ち切りでした。

 彼が収監されたのは、午前10時という比較的早めの時間で、その日は、彼は16区の家を夫人と手を繋いで出てくるところから、家の近くに集まった支援者たちと短い時間を過ごした模様、そして、警察の車両に先導されて、彼の乗った車が刑務所内に入っていく様子まで報道されていました。

 彼の入った刑務所は、パリ14区の本当にふつうの住宅街のような場所にあり、高い塀(といっても、私が想像していたほどには高くはない)とその上に鉄線がはられていますが、はす向かいには、小・中・高校が一緒になったノートルダム系の私立の大きな学校があります。

 パリ市内にある刑務所はこの1ヶ所だけだそうですが、あまり広くないパリ、サルコジ氏の住む16区からは、たぶん、車で10~15分程度の距離ではないかと思われますが、ただでさえ地価が高騰しているパリで、かなりのスペースをとり、それなりのセキュリティも必要な刑務所、ここにある必要あるの?と思わずにはいられません。

 そういえば、刑務所というもの、フランスだけでなく、私は、日本でも見たことがなかったので、なんとなく、すごく特別な場所にあると思い込んでいただけに、「こんなにふつうの場所にふつうにあるものなの?」とビックリしました。

 サルコジ元大統領は、刑務所では、受刑者たちから熱烈歓迎を受けたようで、独房の部屋からは、サルコジ氏がやってくると、「ようこそ!刑務所へ!」「サルコジが来た!」とひやかしのかけ声?が上がっていたというのですから、なかなかな盛り上がりぶりです。

 おそらく退屈であろう刑務所で、サルコジ元大統領が入ってくるということは、またとないイベントだったのかもしれません。



 彼が入ってくるということで、その日の関係者や家族の面会は全てキャンセルさせられたり、彼の独房は、隣の独房を使って24時間体制で2人の看守?が彼を守るのだそうで、刑務所側の対応もなかなか大変そうです。

 その日の他の受刑者たちの面会が全てキャンセルされたにもかかわらず、24時間も経たないうちに、夫人であるカーラ・ブルーニが面会を許されたということで、これはこれで、また、「特別待遇だ!」、「受刑者間の平等な扱いについての疑問」が湧き上がっています。

 「通常、家族の面会申請には、膨大な時間がかかり、多くの障害があるもので、翌日に面会の許可が下りることなどは、絶対にない・・通常は2~3週間はかかる」という弁護士の証言もあります。

 そして、サルコジ元大統領の刑務所での最初の一夜には、刑務所内では、受刑者たちがTikTokでのライブ配信を通じて、サルコジ元大統領を侮辱、脅迫したということで、受刑者3名が拘留されたそうです。

 すでに刑務所に入っている受刑者を拘留って?妙な話ではありますが、こういうことが起こりかねないことを憂慮して24時間体制で彼だけのための看守がついていると思われるのですが・・。

 とにかく、彼の収監は、刑務所内でも大変な出来事のようです。


サルコジ元大統領の刑務所 パリ・ラ・サンテ刑務所 パリの刑務所


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2025年10月22日水曜日

日本の新首相就任に対するフランスの報道の中で気になったこと

  


 フランスは、自国の政情が不安定であることもあるのか?日本の新首相が就任したことは、そんなに大きくは、報道されてはいません。とはいえ、無視するほどでもなく、一応の報道機関では、「初の女性首相就任」とか、「保守派の高市氏が首相就任」とか、報じられていますが、そんな中に「日本における外国人弾圧」、「移民、マスツーリズムへの敵意を隠さない人物」などと報じているところもあって、ちょっとギョッとしました。

 そもそも、はっきり言って、今のフランスが日本の新政府にそこまで興味がないのは、わからないでもないのですが、そんな場合は、ざっと概要を解説する当たり障りのない感じの記事であることが多いのですが、「外国人弾圧」などという過激な言葉使いには、少々、驚かされました。

 また、「日本初の女性総理の誕生はたしかに歴史的な出来事。しかし、これは、よりフェミニスト的な政権の到来ではないことに注意しなければならない!」と述べ、「妻が夫の姓を名乗る義務を維持しようとしているし、彼女の新政権で女性閣僚はたったの2名しか任命していない」

 「彼女は筋金入りの国家主義者であり、非常に右翼的な選挙活動を経て、党首に就任した」

 「最優先事項に移民対策、管理強化を掲げている」とし、「全く異なる文化や出自を持つ人々の入国を認めている政策」を見直す意向。

 移民反対の闘いと日本人のアイデンティティ喪失への懸念は、長きにわたり世界から孤立してきた歴史を持つこの島国において、ほぼ全員が抱くもの。今日、外国人居住者の割合は、日本列島のわずか3%に過ぎず、フランスは9%です・・。

 私の印象では、フランスの外国人居住者は9%しかいないの?もっといるでしょ・・と思うのですが・・。

 また、「新首相は移民問題を批判しているだけではなく、彼女は観光客にも攻撃をしかけています」、また「新首相は中国に対して非常に敵対的であり、中国人観光客を潜在的なスパイと呼んでいます」、また、「近年、政治的に非常にデリケートである靖国神社を何度も参拝しており、明らかに中国を刺激する態度をとっています」など、明らかに危険視している指摘がなされています。

 日本が外から見て、とかく「内向きの国」として見られがちなところを、これからさらにそれが、ますます強化されていく、というか、逆戻りしていく印象を持たれてしまっているのかな?と感じました。

 私は、フランスでの報道に全て目をとおしたわけではないし、これは、特に気になったものを紹介したまでですが、こんなふうに受け取られている一面もあるのだな・・となんだか、見過ごせない気がしたのです。


高市早苗首相就任


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2025年10月21日火曜日

ルーブルだけではなかった 国立自然史博物館等 フランスの美術館・博物館での盗難事件

  


 パリ・ルーブル美術館の強盗事件がセンセーショナルに報道された後、過去、といってもそれほど昔ではないフランスの美術館での盗難事件があらためて注目を集めています。

 実はルーブル美術館強盗事件よりも1カ月ちょっと前の9月16日パリ5区にある国立自然史博物館(Musée National Histoire Naturelle)では、金塊5個が盗まれるという盗難(強盗)事件が起こっていました。

 犯人は非常口から侵入し、月曜日の閉館後も館内に潜み、深夜に鉱物展示室に入り、バーナーとアングルグラインダーを使って防護展示ケースを切断して金塊5個を強奪。

 博物館側は、セキュリティシステムは完全に機能していたとしていますが、それならなぜ?犯人はその場で捕らえられなかったのかが、疑問です。

 盗まれたものは、金塊だったこともあり、被害額も出しやすく、約60万ユーロと言われています。

 当初、捜査当局は、犯罪集団による犯行とみて捜査を開始していましたが、博物館の防犯カメラの映像を分析したところ、夜間に現場にいたのは、黒い服を着て、帽子をかぶり、ベールで顔を覆った女性1人のみでした。この女性は、金塊を盗むために木製のドアをこじあけて、強盗後に現場で発見された警備員をバーナーで襲った模様です。

 その後、この捜査は継続されていましたが、どうやらこの女性がバルセロナ空港で逮捕され、逮捕時の彼女の所持品からは969グラムの金が発見され、分析の結果、これは、パリの国立自然史博物館から盗まれた金塊の一部であることが判明しました。

 逮捕されたのは、30代の中国人女性ということですが、この人物、既に同様の状況下で窃盗を犯し、他のヨーロッパ諸国の裁判所での逮捕歴があり、この女性に対しては、欧州逮捕状が発行されています。

 真夜中の博物館でたった一人で強盗に入る女性。昔、ナイトミュージアム?(題名はよく覚えていないけど)というような映画がありましたが、まさに、この自然史博物館は、大きな動物のはく製がたくさんあって、なんだかその映画を彷彿とさせる・・真夜中には、ちょっと怖い気もしますが、その中で約6キロの金塊を盗んで逃げるというスゴイ話です。

 また、さらにその少し前の9月3日から4日にかけての夜、リモージュのアドリアン・デュブーシュ国立美術館では、国宝に指定されている磁器製の花瓶1個と皿2枚が盗難に遭っています。

 夜中の3時頃に警備員が迅速に警報を鳴らしたにもかかわらず、まんまと3点の国宝は盗まれ、この国宝3点は、推定650万ユーロと言われていますが、こちらの方は、依然として、発見されていませんし、犯人も捕まっていません。

 ここ数ヶ月の間にもう3ヶ所も盗難(強盗)被害に遭っているフランスの美術館・博物館、金塊はともかくも国宝級の美術品を一般人がそんなに簡単に捌けるものとも思えず、特別なルートを通じて、誰かの手に渡っていると考えるのがふつうです。

 しかし、ルーブルの方は、強盗事件から、一夜あけて、もうすっかりこの事件が有名になり、この強盗が侵入した窓は、観光客の撮影スポットになっているという話です。

 美術品というものは、けっこう盗難の憂き目に遭っているものだ・・モナリザだって、かつて盗まれたことがあったんだ・・などという話をテレビでしています。


フランスの美術館・博物館強盗事件


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2025年10月20日月曜日

ルーブル美術館に強盗が・・ ウソみたいなホントの話

  



 つい先日、あまりお天気が良くなかった日に、お散歩がてらに久しぶりにルーブル美術館にでも行ってみようか・・とのんきに出かけたところ、あまりの混雑ぶりに、そのまま、引き返し、チュイルリー公園を散歩して帰ってきたばかりでした。

 夏休みのバカンス期間中は予約なしには、入れないということでしたが、9月からは、予約なしでもOKということだったのですが、予約の有る無しにかかわらず、長蛇の列で、時間を決めて予約しているはずなのに、どうしてこうなってるんだろうか・・疑問に思っていたところでした。

 そんなルーブル美術館に日曜日の朝に強盗が押し入り、美術品8点が7分間の間に盗まれ、その日は一日休館になったという事件が話題になっています。

 そもそも入場するだけでも簡単ではないルーブル美術館に押し入り、あっという間に美術品を盗み出すという、まるで映画のストーリーのような話。報道の中には、「ルーブル美術館に華々しい強盗!」などと見出しをつけているものもあります。

 事件は開館直後の9時30分から40分の間に起こったそうで(ルーブル美術館は午前9時開館)、犯人はトラックに積まれたチェリーピッチャーを使って工事を装って、窓を割って外部から美術館内に侵入。工事作業員を装うために、黄色いベストを着用していた模様というのですから、念が入っています。

 強盗犯は王室の宝石コレクションと王冠ダイアモンドを収蔵するアポロンギャラリーの一室に侵入し、ナポレオンやフランス国王の展示品をターゲットとし、ティアラ、イヤリング、ネックレスなどの8点が盗まれました。

 彼らが盗んだのは、実はもう1点あったのですが、ウジェニー皇后の王冠が美術館付近で破損した状態で発見されたそうで、ルーブル美術館によれば、これは、「ナポレオン3世の妻の王冠で、皇帝の王冠の典型的なもので、1,354個のダイヤモンドと56個のエメラルドで飾られているものだとのこと」、しかし、それを逃走中に落としていってしまうなどというところまで、なんだか映画のストーリーみたいな気さえしてしまいます。

 幸いにも怪我人はなかったようですが、事件発生当時に既に入館していた来場者たちは、安全のために避難させられ、美術館はその日は終日閉館となりました。

 ルーブル美術館は、午前10時半頃に「特別な理由により休館」すると発表。来館者向けの通知には、安全上の理由とされており、当日の予約はすべて返金されるとしています。

 内務大臣は、ルーブル美術館の特別臨時休館は、捜査のための痕跡と証拠を保全があると説明し、盗賊鎮圧旅団(BRB)が文化財密売取締中央局(OCBC)と共に事件を担当すると発表。また、パリ検察庁は、「組織的窃盗」と「陰謀犯罪」の捜査を開始しています。

 現在のところ、判明しているのは、強盗犯は1~2台のTMAXスクーターに乗って現場(現在工事中の現場)に到着、その後、ナセルと呼ばれる小型の牽引車を使って窓際に陣取り、小型のチェーンソーあるいはグラインダーを使って窓を破壊して侵入したということ。

 このチームは予め綿密な偵察を行っており、非常に経験豊富でなんといっても7分間という短時間に美術品を強奪し、逃走したようで、実際に強盗に侵入したのは3~4人とみられています。

 なんといっても、よりによって世界一観光客が多いと言われるルーブル美術館に強盗が侵入し、こんなに簡単に美術品が強奪されてしまうとはフランスの恥だ!という声もあります。

 強盗事件の後には、たいていはおおよその被害額が発表されますが、ここまでの美術品となると、金額の算定が非常に困難で歴史的遺産として非常に価値の高いもの・・としか今のところは伝えられていません。

 ふだん、美術館に行くと、やたらとセキュリティーの人が多いな・・とも思うのですが、このように侵入されては、防ぎようもない気もします。なにせ、広いですから・・・。

 しかし、美術館職員によれば、このところの緊縮財政により、180~190人のセキュリティが減らされたばかり・・との話もあり、(だからといって、早朝に外から入られては無理な話)緊縮財政の煽りがこんなところにも・・と思ってしまいます。

 なにしろ、セキュリティというのは、目立たない仕事で何も起こらないのが当然で、なにか起こったときだけ注目されてしまう、なんだか損な役割なんだな~とつくづく思います。


ルーブル美術館に強盗


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