2023年8月25日金曜日

10年間で半数が退職してしまう公立病院の看護師不足

  


 公立病院の看護師としてのキャリアをスタートした人々の約半数は、10年後には退職しているという深刻な看護師不足が数字で表れている結果が発表されています。

 しかも、この数字には、コロナウィルスによるパンデミックのための退職者は含まれていないということなので、現状は、さらに酷いことになっているかもしれません。

 昔、まだ私が日本にいた頃に、3K(きつい、汚い、危険)などと言われる仕事の人出不足が叫ばれていた覚えがありますが、フランスでも、まさに看護師という仕事は、この3Kに当てはまるのではないかと思います。

 しかも、慢性的な人出不足のために、個々の仕事の負担が重くなることから、ますます、きつい仕事となり、志を持って資格まで取得して就いた仕事を続けられなくなってしまうという残念な悪循環が続いているようです。

 現在の日本の状況はよくわかりませんが、そもそも、フランス人は、というか、今の世代の人々は特に、退職や転職というものをあまり否定的にはとらえていない印象があり、その中でも、特別な資格を必要とする看護師のような職業ならば、本来ならば、退職者、転職者は他の仕事に比べて少なそうなイメージがないこともないのですが、それが、逆に他の職業よりも多いということは、やっぱり、それでもなお、耐えられない、やってられない・・と思うことが多いのかもしれません。

 そのうえ、大変な仕事のわりには、低賃金であるということが、さらに退職・転職増加に拍車をかけています。

 彼ら(彼女ら)は、同じ仕事でもフランスよりも高賃金のスイスやルクセンブルクに転職したり、医療検査機関や、高齢者施設などに転職するか?全く別の仕事に就くか、彼らにとっては、むしろ、一般の人よりも選択肢はたくさんあるのです。

 以前、医者不足のために、定年後も医者に働いてもらうためのシステムなどが、提案されていた話がありましたが、医療全般にわたって、医者も看護師も足りないという危機的状況のようです。

 この看護師不足の数字から算定すると、年間40,000人の新卒採用が必要と見られていますが、実際には、看護師を志しても、看護学生の20%は、仕事に就く前に断念しているのが現状だそうで、どうにも壁が高そうです。

 皮肉なことに、この看護師不足、学生の段階から看護師の道を断念してしまうのは、インターシップのシステムによる職業体験がひと役買っているようで、学生の立場からすれば、実際にどっぷりつかってしまう前に方向転換するならば、できるだけ早い段階の方がよいのかもしれませんが、実際の現場での職業体験で、将来の労働条件を如実に知ることになり、学業を放棄する学生の数は、10年間で3倍に増加したと言われています。

 私は、幸いなことに、自分自身は、これまでフランスの病院に入院したことはありませんが、夫や友人などが入院した際のことを思い出す限り、あまりよい印象はなく、出来ればお世話になりたくないとは思っていますが、こればかりは、もしもの時には、仕方ありません。

 しかし、一般の企業などから、考えれば、患者さん(お客さん)は溢れるほどいるのに、看護師に充分な賃金も払えず、その病院が上手く回らないというのは、やはりお金の回し方がおかしいということで、病院経営については、よくわかりませんが、単純に考えれば、こんなに次から次へとお客さんが来る仕事もないのに・・などと素人は考えてしまいます。


深刻なフランスの看護師不足


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2023年8月24日木曜日

人種差別問題はけっこう厄介

   


 人種差別というのは、非常にデリケートな話題でもあるし、色々な種類の人種差別があるので、ひとくちに語ることはできません。

 しかし、人種差別というのは、確実に存在するし、表面的には、差別などないようにふるまっている人々の中にも差別意識というのは、潜んでいる場合も多々あります。

 特にアフリカに住んでいた時などは、外地から転勤してきている人々は、ボーイさんやメイドさんなどを雇わなければならないので、自ずと現地の人との間に主従関係ができるわけですが、その現地の人々を雇用するにあたっての対応というか応対というか、その接し方があまりに露骨にかつての歴史を引きずっている感じで、我が夫も含めて、フランス人ってスゴい(あまり良い意味ではない)なぁ・・と最初はちょっと引いてしまう感じがしました。

 そこらへんは、日本人などは、妙なもんですが、ボーイさんたちにも名前にさん付けでよんでいたりする人もいたりして、これはこれで、逆に舐められ切っているのでは・・と感じないでもありませんでした。

 パリに来てからは、そこまで露骨な主従関係には、遭遇しないものの、今度は下手をすると、私とて、アジア人ということで、差別を受けかねないところもあり、まあ、私などの暮らす狭い世界では、ごくごく限られた人としか接することがないので、日本人(アジア人)だからと差別されたと感じたことはほとんどありません。

 むしろ、外国人が多すぎて、そもそも純粋なフランス人という方が少ないような気がするので、いちいち人種差別しているわけにもいかないのでしょうが、外国人として生きるには、日本にいる外国人の方が違和感にさらされているかもしれません。

 私は、ごくごく親しい人くらいしか、プライベートでは付き合いがなくて、例えば、職場などでも、仕事が終わるとすぐに子供を迎えに行って、休みの日は子供のお稽古事や買い物や家事、家族と過ごすでいっぱいいっぱいで、長い間、個人的な友達付き合いというものをする時間もなかったので、職場の同僚などとの付き合いもプライベートはほとんどしてきませんでした。

 なので、彼ら(彼女ら)とは、仕事上の付き合いのみで、分け隔てなく、どんな人種の人とも同じように接してきたつもりではありますが、その中に、ハイチ出身の女性がいて、普段、雑談をしていたりする時は、ふつうに接しているのに、何か注意されたりすると、すぐに「レイシストだ!人種差別だ!」と騒ぎだす女性がいました。

 単に正当な注意をしているだけなのに、そう言われてしまうと、「そういうことではないでしょ!単にあなたのしていることに対しての話をしているだけでしょ!」と言っても、もう彼女はかなり感情的になっていて、全く受けつけず、こちらの方が諦めるしかなく、むしろ、「なんでもそれで片付けようとする方がズルいではないか・・」などと思ったものでした。

 これだけ異様に反応するのも、これを便利な言い訳として使っているのでなければ、よほど差別に対する被害者意識が沁み込んでいるのか?と、半分は気の毒な気にもなります。

 ふだんは、彼女も一人でお嬢さんを育ててきたこともあって、一人で子育てをしていた私には、娘の話をしたり、写真を見せたりすると、娘の成長をとても喜んでくれていて、職場の人間関係としては良好な方だと思っていました。

 そうして、「レイシストだ!」などと、騒いだりしても、結局のところ、彼女もそれを引きずるわけではなく、しばらくすると、何事もなかったようにもと通りになるので、こちらも、いつの間にか忘れているのですが、たまに、彼女の口から出てくる「レイシストだ!」という言葉には、逆にモヤモヤする気持ちがするのでした。


人種差別 レイシスト


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2023年8月23日水曜日

ハードディスカウントショップ・激安店で思う子供のしつけ

  


 最近、我が家の近所のコマーシャルセンターにACTION(アクション)というハードディスカウントショップ・激安店ができて、想像以上に人気で、結構、繁盛しています。

 コマーシャルセンター自体が衰退の一途を辿っていて、どんどんテナントに入っていたお店が撤退して、どこにでもあるH&Mなどの洋服屋さんや、かなり大手のチェーン展開をしている美容院や、子供服のお店や、家電といえば、フランスでは、1強?と思われていたDARTYもなくなり、ついには、マクドナルドまでなくなり、どんどん空きスペースが増えて、「ここ、本当にどうなっちゃうんだろう?」と思っていました。

 いくら、家賃を下げてでも、スペースを空けておくよりはマシだろうとは思うのですが、チェーン展開のお店とて、店舗を開けておくことは、人件費もかかり、ストックも抱えるということで、この厳しいご時世、致し方ないことなのかもしれません。

 そんな中、このコマーシャルセンターに登場したACTION(アクション)は、ちょっと日本で初めて100均に行った時のような感動の安さで、このインフレのご時世には、ぴったり合ったお店なのかもしれません。

 このコマーシャルセンターにはカーフールも入っており、まあ、食料品やそこそこのものは、たいてい揃うので、このコマーシャルセンター=カーフール・・というような感じでもあったのですが、最近は、もしかしたら、ACTIONの方が人が入っているかも?と思うくらい人気で、ACTION目当てで、やってくる人も多い気がしています。

 この ACTION、徹底的に経費を抑えての経営でも有名で、商品は過剰在庫や倒産した会社の商品、売れ残り商品など、機会に応じた買収を優先する購買戦略や余分な店内装飾や人員も最低限に抑えていることでも有名なのですが、恐らく、この場所が選ばれたのも、そこそこの場所にこれだけ空きスペースを抱えているコマーシャルセンターの賃料も相当、値切り交渉が行われたのではないのか?と睨んでいます。

 この店舗のおかげで、結果的に集客は増えているので、また、別の空きスペースに店舗が入り始めているのも事実です。

 しかし、ハードディスカウントショップ・激安店だけに、集まってくる人の層が少々、これまでと違う客層も混ざっていることも事実で、けっこう、ヤバい感じの少年少女、小さい子供連れの親子でも、やたらと大きな声で子供を𠮟りつける光景なども、このお店の店内や周辺では見かけるようになりました。

 激安店ですから、いわゆる底辺層の人も集まってくるのは、当然の話ではありますが、彼らに共通するのは、子供にやたらと大声で急き立てたり、叱りつけたりすることで、まだ、パリに来る前に住んでいたパリ近郊の街にいた頃に娘が通っていた幼稚園には、そんな親がけっこういたことを思い出しました。

 やたらと大きな声で外で四六時中、子供を叱りつけているのが、こういう人たち(こういう人たちという言い方は失礼とは思うのですが・・)に共通するところで、子供たちが騒いで、はしゃぎまわっているとか、そういうことではないのですが、「早くしなさい!」とか、「静かにしなさい!」大したことではないことに、やたらと親が大声をあげるのです。

 はたから見ていると、「叱りつけている親の方がうるさいけど・・」などと思うのですが、そういった子供たちの反応を見る限り、もう怒鳴られても何とも思っていないようで、つまり、無限ループのようにそれが続いているようで、結局は子供たちもそれに慣れてしまっており、全くしつけになっていないのではないか?などと、思ってしまうのです。

 今の住まいに引っ越してから、娘を通わせていた学校では、とんと、この手の親子に遭遇してこなかったので、なんだか、久しぶりにこういう親子を見た気がしたのです。

 以前に、日本で水族館に行ったとき、子供が泣いたり、騒いだりしていても、親が放置していることに驚いたことがありましたが、だからといって、子供を大声で叱りつければいいというものでもないのにな・・などと、久しぶりに見かけるようになったこのような親子を見て、子育てって難しいもんだな・・この違いはどこから来るのだろうか?と思うのでした。


子供のしつけ


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2023年8月22日火曜日

パリのデパート 私はボン・マルシェを侮っていた・・

 


 私はそもそも、ショッピングというものが、あまり好きではなくて、ましてやデパートで買い物をするなどということは、まずないことで、パリでも滅多にデパートに行くことはありません。

 それでも、ごくごくたまにノエルのデコレーションを見がてらだったり、近くまで行った時にチラッと寄るのは、デパートでも食料品売り場くらいなものです。

 つまり、私がたまにふら~っと見て歩くのは、ギャラリーラファイエットのグルメ館くらいなもので、本館の方は、グルメ館に行くまでの道すがら、外ではなく、本館の中を通り、名だたるブランド物のお店が並んでいる間を横目で眺めながら、相変わらず、ルイヴィトンはすごい行列だ・・とか、セリーヌは今年、こんな感じの新作を出しているのか・・とか思いながら、本当に通り過ぎるだけです。

 パリのデパートといえば、ギャラリーラファイエット、プランタン、そして、サマリテーヌ、ボンマルシェ・・くらいでしょうか?

 中でもやはり、知名度が高く、実際に店舗も多いのはギャラリーラファイエットやプランタンですが、その両巨頭でさえも、相変わらずの人出で賑わっているのは、パリのオスマン通りにある店舗くらいなもので、地方都市にある店舗は業績不振でパンデミック後にけっこうな店舗が閉店となり、縮小されています。

 そもそもGLFのグルメ館にしても、けっこう良い(値段も品物も)ものが集まっているので、効率よく買い物ができるし、また、これまで知らなかった美味しいものを新たに発見できる場所でもあり、たまに覗いてみようと思うのですが、それも、たまたま他のデパートよりも、場所的に我が家からは行き易いというだけの話です。

 先日、たまたまボンマルシェに行く機会があり、「まあ、たまにはいいか・・」くらいの気持ちで、やはりギャラリーラファイエットに行く時のように、グルメ館に行くまでの道をデパートの中を通った方が涼しいし・・くらいの気持ちで本館の方に入ったら、思いのほか、なんとなく、ギャラリーラファイエットよりも、多少、人出が少ないこともあるのか、店内もゆったりとしていて、見やすく、デパート自体のレイアウトやデコレーションを楽しむのであれば、若干、寂しい気もしないでもありませんが、ここはここなりの美しさがあり、なんか、あらためて、「ボンマルシェも悪くないな・・」という気になったのです。



 グルメ館の方へ行くと、なんだか、今や、珍しく感じるようになった日本人観光客と数回すれ違い、「あらら、ここには、日本人がいるんだ・・」と思ったと同時に、なんだか、スターのパティシエのお店が全面に出ているギャラリーラファイエットのグルメ館よりも、スペースも広いこともあるのか、品揃えが多く、また、よりお土産に良さそうなものが多くて、なるほど、日本に住んでいる日本人の方がよくパリを知っているんだな・・と感心した次第です。


 私が、ちょっと嬉しかったのは、ギャラリーラファイエットのグルメ館からは、なぜか撤退して姿を消してしまったBellota Bellota(ベロータベロータ)の生ハムがこちらでは、まだまだ生き残って、イートインのスペースまであって存在していることでした。

 しかし、どちらにせよ、食料品とはいえ、高級品を中心に扱っているだけあって、なんだか、以前に来た時と比べると、値段の高騰がものすごい気がして、「え~?これって、こんなに高かったっけ?」とそれこそ目玉が飛び出る気がしたのでした。


オリジナルのエコバッグもけっこう可愛い


ちょっとおしゃれかも?と思ったキッチンペーパーホルダー


 それでも、食べることの大好きな私、山のような食料品を見て歩くのは、楽しいことで、見飽きることはなく、特に何を買おうというわけでもないのに、ぐるぐる歩き回り、お店を出た時には、身体が冷え切った気がしたくらいです。けっこうな時間、ぐるぐる歩いていたとはいえ、パリで身体が冷えるほどの冷房が効いている場所といのもそうそうあるわけではなく、夏の暑い間はここを散歩して歩くのも悪くないな・・などと、思ったくらいです。

 とはいえ、日常の食生活は、そんなに高級品を食べているわけでもなく、あまり縁がある場所とも思えないのではありますが、日本から友人が来ることがあったら、食料品関係のお土産を探すなら、ボンマルシェはいいかもよ・・とおススメしたい気持ちになりました。


パリのデパート ボンマルシェ


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2023年8月21日月曜日

数度にわたる殺害予告の末、逮捕・拘留も、釈放され、元パートナーを殺害した男

  


 今年の1月以来、殺害の脅迫を受けていた女性が予告どおりに殺害される痛ましい事件が起こっています。どうやら、この殺害の脅迫は、けんかや口論の末、「殺してやる!」などという軽口をたたいていたようなものではなく、本気の殺害の脅迫だったことは、脅迫を受け続けていた彼女が警察(憲兵隊)に届け出た際の証言や、彼女が周囲に助けを求めていた緊迫した状況などからも容易に想像することができます。

 彼女は5年前に配偶者とともに、パリからギャリアックス(オクシタニー地域圏)の小さな田舎町に転居していました。事件はそこで起こりました。

 今年の初めから続いていた元パートナーの殺害予告に6月半ばに彼女は警察に被害届を提出していました。捜査が進まず、なかなか対応がとられない状況に彼女は業を煮やして、再び、警察を訪れると、「事情聴取した人物がバカンス中」ということで「担当の者が戻ったら捜査を再開する」と言われます。

 このあたりは、フランスでは、さもありなんという気もします。

 その後、彼女は度重なる暴力や脅迫に怯えながら暮らしていましたが、彼が眠り込んでいる隙に、友人宅へ避難し、そこから、再び通報し、ついに彼の家は、憲兵隊によって包囲され、家からは、銃器4丁が押収され、彼は警察に拘留されました。

 この男、大変、粗暴なうえに、アルコール依存症で、精神病院に一度は強制入院させられたものの、彼は、彼女への殺害脅迫の事実を認め、11月の裁判の日程が決まると、精神科の医師の判断で、釈放されてしまいます。

 このあたりが恐ろしいところで、一旦、逮捕されても、事実を認め、裁判の日程が決まるとそれがたとえ、殺害を脅迫している人物であっても釈放されてしまうというのは、意味がわかりません。

 それからわずか、3日後、彼女は再び彼に殺害の脅迫を受けながら、彼から逃げようと足を引きずりながら走っているところを地域住民が目撃し、通報しましたが、この犯人の男は、隣人の助けを求めようとベルを鳴らしている彼女に車ごとぶつかっていき、車は一度彼女を家の門に叩きつけたのち、もう一度、車をバックさせてから、再度、彼女を押しつぶすという残酷な行為に至り、彼女を死に至らしました。

 その後、この男は、家と車に火を放ち、銃により自殺を図り、重症を負ったと言われています。しかし、皮肉なことに、この男は一命をとりとめています。

 まったく、映画やドラマにしても、これほど激しい結末は、なかなかないほどの狂暴さですが、これがひどく残念なことは、こんな結末は、対応如何によっては、避けることができたであろうことです。

 フランスの法律がよほどのことでない限り、逮捕後、長期にわたる拘留ができないのがふつうだということなのだと思いますが、それにしても、これだけ狂暴な男が、何よりも殺害の脅迫をしていた人間を解放してしまうというのは、全くもって解せない話です。

 フランスは、どうにも、釈放してはいけない人を釈放してしまい、事件に繋がる話が多い気がします。

 愛憎というのは、表裏一体と言いますが、愛情を持った相手に対しては、憎悪の気持ちも大きくなりがちなようで、どちらにしても、激しく感情が動くということです。ましてや、この男のように、精神に異常をきたしている場合は、型通りに釈放するというのは、あまりに無責任な話です。

 フランスでは、パートナー、あるいは、元パートナーによる暴力や殺人事件は、珍しくはない事件ですが、これらの事件に共通していることは、ちょっと想像を逸脱するほどの狂暴さで、執拗に追い回し続けることです。

 2022年には、フランスでは112人の女性が夫や元夫、パートナーにより殺されています。今年に入ってからは、彼女は76人目の被害者だそうです。

 彼女の家族は司法捜査の甘さを指摘しており、また、助けを求められていた友人も彼女が泣きながら、「彼は本気で私を殺そうとしている!」と訴えていた姿が忘れられないと語っており、周囲の人たちに遺恨を残しているのは、犯人の残酷な犯行だけではなく、警察の対応如何によってはこんなことにはならなかったという思いだと思うのです。


パートナーによる女性への暴力 殺人事件


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2023年8月20日日曜日

セーヌ川で泳ぐって、感覚的にちょっと勇気がいるかも・・トライアスロンテスト大会水泳中止

  


 パリの景色には、セーヌ川が映り込む映像も少なくありません。水のある景色というのは、美しいものです。歴史あるパリの建築物や街並みの中に映り込むセーヌ川は美しいパリらしい景色の一つでもあります。

 しかし、景色として美しいのと、泳げるような美しさというか、清潔な清い感じとは、また別の話で、セーヌ川で泳ぐかというと、感覚的には、ちょっと尻込みするのがふつうな印象があります。

 パリに来たばかりの頃、夏の暑い時期などだと、ところかまわず街中の噴水などでも水遊びだか水浴びだかをする人がいたりすることに、びっくりしたものですが、これと同様? いや、これ以上にセーヌ川で泳ぎ出す人がいたとすれば、「ちょっと大丈夫?」と思ってしまうと思います。

 しかし、来年のパリオリンピックのトライアスロンの水泳は、セーヌ川のアレクサンドル 3 世橋からスタートする予定になっているようで、このオリンピックに向けて、先日は、一度は、テスト大会のようなものが行われたようですが、昨日のパラリンピックのトライアスロンテスト大会は、水質に問題があるということで、土壇場になって中止になったようです。

 その2日前までに2日間にわたって行われていたテストでは、GOサインが出ていたものの、公衆衛生局は、研究所が提供した最新の水質分析結果と高周波サンプル分析装置との間に重大な矛盾があると指摘し、選手の健康と安全を危険に晒すことを避けるためにこのテスト大会は、トライアスロンの水泳部分を削除して行われました。

 パリオリンピックでは、セーヌ川で開会式の各国選手の入場行進が行われるということで、話題を集めていますが、その同じセーヌ川で泳ぐというのも、やっぱりなかなかハードルが高いのでは・・と思ってしまいます。

 パリを横断するように流れているセーヌ川は特にパリの中心部だと、ジグザグにどこを歩いていてもセーヌ川にぶち当たるような感じで、オリンピックでパリの美しい景色をアピールするのに、セーヌ川を利用するのは、とても素敵なアイディアであるとは思います。

 


 セーヌ川はパリとは、切っても切れない存在で、RATP(パリ交通公団)のマークは、グリーンのサークルに、一見、意味不明のブルーのラインがデザインされたものですが、このグリーンはパリ全体を表し、ブルーのラインはセーヌ川を表しているデザインだと言われています。

 パリの美しい景色はセーヌ川とともにあるといっても過言ではありません。

 しかし、当初、セーヌ川をトライアスロンのスタート地点として、水泳の場所に定めることで、セーヌ川の水質改善の促進を促すことにも繋がるとも考えられたとは思いますが、一時の最悪の水質状態よりは改善したとはいえ、今後1年の間に劇的に改善されるかといえば、あまり期待できるものではないし、ぶち壊すようで、申し訳ないのですが、私だったら、ちょっとセーヌ川で泳ぐのはごめん被りたい気持ちです。

 だいたい、セーヌ川は、大雨が降れば、すぐに洪水、水はけもよくないのか、水位が上がると、橋の下を通るバトームーシュなどの観光船も通行不可になり運航休止になってしまい、いい加減、この時代になぜ、いつまでも対策を講じないのか、長い間の私の疑問でもありました。

 結局、今回は、テスト大会が中止になっただけで、オリンピックでのトライアスロンのセーヌ川での水泳が中止になったというわけではありませんが、オリンピックともなれば、今回のようにドタキャンというわけにもいきません。

 この異常気象で、夏は、激しい暑さに加えて、今までは考えられなかったような激しい雨に見舞われることもあるようになったこのご時世。早いところ、別の候補地を探した方がいいような気もします。

 セーヌ川は見るだけで充分、美しいのですから・・。


セーヌ川 トライアスロン水泳テスト大会中止


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2023年8月19日土曜日

フランスの学校でのいじめ問題 被害者ではなく、加害者を転校させる法律発令

  


 8月も半ばを過ぎ、9月からの新年度に向けて、文部科学省は深刻になっているフランスの学校でのいじめ問題にメスを入れる新しい法令を発令しています。

 最近は、学校内でのいじめ問題も自殺者が出るほど深刻化しているため、今回の法令では、このいじめ問題から被害者を守る対策の一環として、いじめられている被害者ではなく、加害者の方を学校から追い出し、転校、あるいは、退学の措置をとれるようになることを法的に定めています。

 いじめの被害に遭っている子供たちが、不登校になったり、転校をせざるを得ない状況に追い詰められるということは、これまでにも多々、あったと思いますし、いじめられている子供の親にとったら、これ以上のいじめにあって苦しむくらいだったら、学校には行かなくてもいいし、転校させようか?と考えてしまうのは、あり得ることです。

 ましてや、いじめの果てに自殺してしまった子供の親にとったら、そんなに苦しんでいたのなら、もう学校なんて、辞めさせたってよかったのに・・と後悔しているに違いありません。

 しかし、これは、考えてみれば、おかしな話で、いじめられている人が学校から姿を消し、いじめている側がそのまま学校に残ることは、再び、次の標的を探すことにもなりかねないどころか、充分に考えられることで、本来、学校を去るべきなのは、加害者側の方なのです。

 今回の法令では、意図的、ならびに反復的ないじめ行為が他の生徒の安全や健康に危険を及ぼすことが証明されている生徒を別の学校に転校、あるいは退学させることが可能になります。

 学校でのいじめに対するこの措置は、被害者である生徒にこの学習環境の変更を強いることを避けるために導入されました。しかし、別の学校に移ったところで、ネットいじめの場合は、学校をまたいで継続される可能性がありますが、別の学校の生徒からのネットによるいじめの制裁は、別に検討中で、追って発表されることになっています。

 とりあえずは、去るべきなのは、いじめの加害者側という至極、まっとうなことが、今後は法律のもとに、行われることになるはずで、少なくとも、いじめられている側にとったら、少しは救われるであろうことで、また、どの学校も「いじめ行為をする生徒はいらない!」という頑とした態度をとることができるようになるのは、前進です。

 この懲戒規則は2023学年度の初め(9月)から適用され、小学生だけでなく中学生、高校生も対象となります。

 ただし、このいじめ加害者追い出しについては、あくまでも、義務教育の場合は、受け入れる学校がある場合の話で、公立学校が自治体に1校しかない場合は、他の自治体がその生徒の入学に同意するという条件でのみ転校が可能になります。

 つまり、問題児を引き受けたくない学校は当然、多いであろう中、そのような子供の「たらいまわし」が起こることになります。

 また、今の時代、携帯を持っていない、ネットを利用していない子供はいないため、学校内だけのいじめに留まらないことは、明白で、被害者に対する誹謗中傷などのいじめは、あっという間に拡散され、多くの人の間で共有されることになり、単に学校から追い出した程度では、解決にならない可能性も大きいのではないかと思います。

 SNSは、いつでも、どこでも簡単に情報を得ることができ、また、必要な情報を拡散できるという面では、大変、便利なものではありますが、悪用された場合の弊害もまた、ここのところ、かなり浮き彫りになってきているような気もするので、この利用についても指導が必要なところもあるし、また、プロバイダーもあらゆる悪用されるケースに対応したサービスを検討していくことが求められていると思います。

 フランスでは、毎年、80万人から100万人の子供たちが学校でのいじめの被害者となっていると言われています。


フランスの学校でのいじめ加害者に制裁を加える法律


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