2023年8月21日月曜日

数度にわたる殺害予告の末、逮捕・拘留も、釈放され、元パートナーを殺害した男

  


 今年の1月以来、殺害の脅迫を受けていた女性が予告どおりに殺害される痛ましい事件が起こっています。どうやら、この殺害の脅迫は、けんかや口論の末、「殺してやる!」などという軽口をたたいていたようなものではなく、本気の殺害の脅迫だったことは、脅迫を受け続けていた彼女が警察(憲兵隊)に届け出た際の証言や、彼女が周囲に助けを求めていた緊迫した状況などからも容易に想像することができます。

 彼女は5年前に配偶者とともに、パリからギャリアックス(オクシタニー地域圏)の小さな田舎町に転居していました。事件はそこで起こりました。

 今年の初めから続いていた元パートナーの殺害予告に6月半ばに彼女は警察に被害届を提出していました。捜査が進まず、なかなか対応がとられない状況に彼女は業を煮やして、再び、警察を訪れると、「事情聴取した人物がバカンス中」ということで「担当の者が戻ったら捜査を再開する」と言われます。

 このあたりは、フランスでは、さもありなんという気もします。

 その後、彼女は度重なる暴力や脅迫に怯えながら暮らしていましたが、彼が眠り込んでいる隙に、友人宅へ避難し、そこから、再び通報し、ついに彼の家は、憲兵隊によって包囲され、家からは、銃器4丁が押収され、彼は警察に拘留されました。

 この男、大変、粗暴なうえに、アルコール依存症で、精神病院に一度は強制入院させられたものの、彼は、彼女への殺害脅迫の事実を認め、11月の裁判の日程が決まると、精神科の医師の判断で、釈放されてしまいます。

 このあたりが恐ろしいところで、一旦、逮捕されても、事実を認め、裁判の日程が決まるとそれがたとえ、殺害を脅迫している人物であっても釈放されてしまうというのは、意味がわかりません。

 それからわずか、3日後、彼女は再び彼に殺害の脅迫を受けながら、彼から逃げようと足を引きずりながら走っているところを地域住民が目撃し、通報しましたが、この犯人の男は、隣人の助けを求めようとベルを鳴らしている彼女に車ごとぶつかっていき、車は一度彼女を家の門に叩きつけたのち、もう一度、車をバックさせてから、再度、彼女を押しつぶすという残酷な行為に至り、彼女を死に至らしました。

 その後、この男は、家と車に火を放ち、銃により自殺を図り、重症を負ったと言われています。しかし、皮肉なことに、この男は一命をとりとめています。

 まったく、映画やドラマにしても、これほど激しい結末は、なかなかないほどの狂暴さですが、これがひどく残念なことは、こんな結末は、対応如何によっては、避けることができたであろうことです。

 フランスの法律がよほどのことでない限り、逮捕後、長期にわたる拘留ができないのがふつうだということなのだと思いますが、それにしても、これだけ狂暴な男が、何よりも殺害の脅迫をしていた人間を解放してしまうというのは、全くもって解せない話です。

 フランスは、どうにも、釈放してはいけない人を釈放してしまい、事件に繋がる話が多い気がします。

 愛憎というのは、表裏一体と言いますが、愛情を持った相手に対しては、憎悪の気持ちも大きくなりがちなようで、どちらにしても、激しく感情が動くということです。ましてや、この男のように、精神に異常をきたしている場合は、型通りに釈放するというのは、あまりに無責任な話です。

 フランスでは、パートナー、あるいは、元パートナーによる暴力や殺人事件は、珍しくはない事件ですが、これらの事件に共通していることは、ちょっと想像を逸脱するほどの狂暴さで、執拗に追い回し続けることです。

 2022年には、フランスでは112人の女性が夫や元夫、パートナーにより殺されています。今年に入ってからは、彼女は76人目の被害者だそうです。

 彼女の家族は司法捜査の甘さを指摘しており、また、助けを求められていた友人も彼女が泣きながら、「彼は本気で私を殺そうとしている!」と訴えていた姿が忘れられないと語っており、周囲の人たちに遺恨を残しているのは、犯人の残酷な犯行だけではなく、警察の対応如何によってはこんなことにはならなかったという思いだと思うのです。


パートナーによる女性への暴力 殺人事件


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