日本が福島原発の処理水を海に放出することを発表した後に、中国がこれを強く非難し、その報復措置として、日本からの水産物全面禁輸を発表しました。日本政府は、この放射能汚染水は、安全性が保たれる希釈措置が取られているものであることを強調しているので、専門家が多くの資料や実験などで検討した結果であるだろうし、それを信頼する以外にありません。
この日本の放射能汚染水の処理について、フランスはどんなにか騒ぐだろうか?と思いきや、遠いこともあるのか、また、原子力発電を日本よりもよっぽど多く活用しているフランスは、他人様のことを言える立場でもないのかもしれないし、国際的な安全性の基準内(国際原子力機関(IAEA)も承認している)であれば、フランスはとりたてて騒ぐことでもないと考えているのかもしれませんが、現在のところは、あくまでも客観的な立場をとって、中国が日本企業などに対して電話攻勢をかけたり大騒ぎしていることを報じています。
この中国の報復措置に日本国民の一部が、過剰に反応し、ネットで、「中国人へ 当店の食材は全て福島産です」などと掲げているお店に対し、中国人排斥だと抗議しているジャーナリストがいたり、また、逆に「日本に入国する中国人全員にホタテを食わせろ!」とか、「中国人を福島の海で泳がせろ!」などと言っている元政治家たちのトーク番組の切り抜きが流れてきたり、なんだか荒れているようで、特にこの「中国人にホタテを食わせろ!」とか、「福島の海で泳がせろ!」などという元政治家には、あまりに低次元で、こんな発言が世界的には、どんな扱いを受ける、どんな風に見られるかを思うと、もう言葉もない気がします。
福島の食材を擁護しようとする?お店の気持ちはわからないではありませんし、福島の食材を忌み嫌う中国人に親切にも教えてあげているのだ・・などという意見もあるようですが、そもそも、「中国人へ」という書き方に、侮蔑の意が表れている気がします。
親切で教えてあげるというのなら、お店の側から出すべきは、せめて、「中国からのお客様」とか、なんらかのもう少しソフトな書き方があるだろうし、なにも中国人だけを取り上げることもないと思うのです。
もし、フランスでお店がこんな看板を出したら、あっという間にこのお店は中国人からだけでなく、人権擁護団体などから、袋叩きにあうか、お店を破壊されてしまうだろうと思います。フランスに差別がないとは言いませんし、むしろ、差別の歴史があるからこそ、非常にデリケートに扱われる問題なのかもしれません。なので、特定の国名を挙げてのお店の看板(プラスの印象のものは別として)などは、あり得ないことで、公人のこんな発言は絶対的なタブーです。
ましてや、元とはいえ、政治家、評論家のような立場の人がこんなことを公の場で口にするとは、なんと幼稚で国際的な感覚が欠如しているのかと情けなくなります。
フランスでも、中国人観光客があまりお行儀がよくない噂を聞かないわけではありませんが、だからといって、このような国を特定して、卑しめるような発言や表記は、あり得ないことです。
中国政府は、なにかにつけて、ケチをつける材料を探しているのであって、今回は、中国政府にとって絶好のターゲットとなっているのであって、中国人全員が意を共にしているわけでもありません。
むしろ、中国人に対する嫌がらせのような言動は、日本人の恥部を晒しているようにも感じるのです。
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