2023年8月11日金曜日

今は亡き夫の友達だったパリの動物園にいるオランウータンに会いに行った 

 


 私には、長い間、ずっと行きたかった場所がありました。パリ市内でもあるし、別に行こうと思えばいつでも行ける場所ではあるのですが、なんとなく、行きそびれているまま、もう10年以上は経ってしまっていました。

 それは、パリ5区にあるジャルダン・デ・プラント(JARDIN DES PLANTES)の中にある動物園で、よくバスで通りがかるくらいの、家からもそんなに遠くない場所にあります。

 ジャルダン・デ・プラント(JARDIN DES PLANTES)の大きな庭園(敷地)の中には、名前どおりの植物園や温室、自然史博物館や植物学の学校などに加えて動物園があります。

 ここには、これまでに2回来たことがあって、1回は家族で動物園に、そして、もう1回は、日本から家族連れで来た友人がここの自然史博物館の恐竜を見にやってきました。

 私がここにずっと来たいと思っていたのは、ここの動物園の方で、パリには、ヴァンセンヌに1つ、そして、このジャルダン・デ・プラント(JARDIN DES PLANTES)の中にもう一つの動物園があります。

 この動物園には、私たち家族にとって、特別な思い出があり、まだ、娘も小さかった頃に、ある休日の日にどこかに散歩に行こうと、最初は植物園に来たつもりが、中に動物園があることを発見し、何気なく立ち寄った場所でした。

 実際には、この動物園、ヴァンセンヌの動物園に比べて規模は小さいものの、世界で最も古い歴史を持つ動物園のひとつでもあるそうで、この植物園全体の中にもいくつもの歴史的な建造物が惜しげもなく、ポコポコ建っている感じです。

 動物園は、もうはっきりと記憶もないくらいだったのですが、さすがに10年以上経って、以前に比べると、ずいぶん整備された感じで、私は、動物園に入ると、園内の地図を片手にオランウータンを探しながら、歩き始めました。

 私がこの動物園に来たかったのは、以前、家族で訪れたときに、この中にいた一匹のWATANA(ワタナ)というオランウータンが夫のことをとても気に入ったらしく、お腹が空いただろうとでもいいたげに、なんだか、最初に小さな木のかけらを投げてよこし、口に指をあてて、これ食べない?みたいにアクションをしかけてきたのです。

 その後、自分が遊びに使っていた布切れを網の向こうから垂らして、夫とひっぱりっこをして遊び始めたのです。動物園の飼育員ならいざ知らず、見ず知らずの人間と大きなオランウータンがこんなことをして遊ぶなんて、ちょっと考えられないことで、私たちの周りには、人だかりができたほどでした。

 夫は、もう亡くなってしまいましたが、この動物園のことを思い出すたびに、WATANA(ワタナ)はどうしているだろうか? 会いたいな・・とずっと思っていたのです。オランウータンの寿命は飼育下では、50年程度ということですが、あの時、ワタナは一体、何歳だったのかもわかりません。まだ彼女は生きているのだろうか?それとも、もう亡くなってしまっているのでしょうか?

 動物園の地図には、オランウータンの場所は記載されていなくて、それでも、どこかにはいるはず・・と思いつつ、ようやくオランウータンの檻を見つけると、その檻はすっかり整備されて、網ではなく、ガラス張りになっていました。




 中にいるオランウータンの顔写真と名前が書いた看板を見ると、ワタナの名前と写真はありませんでした。実際、ワタナの顔だって、正直、私も全然、覚えていません。

 その日は、その中には3匹の親子と見られるオランウータンがいて、けっこう人気で人が集まっていました。やっぱり他の動物と比べると、人間に近いせいか、見ているとそれぞれのキャラクターがわかってきて、1日眺めていても飽きない感じもしました。

 しばらくすると、飼育員がやってきて、オランウータンについての解説を始め、オランウータンは、どこからやってきたのか?とか、その習性とか、子育てとか、飼育にあたっての健康管理についてなどの説明をしてくれました。



 他の動物についても、全部ではありませんが、こうして、頃合いを見て、飼育員が人を集めて解説していました。こんな解説などでも、フランス人はほんとうにお話が上手だな・・と感心してしまいます。

 動物園のオランウータンは、通常は、野菜しか食べさせてもらえないそうで、最近の果物は、食物繊維も減少しているうえに糖分過多なのだとか・・なんだか、自分に言われている気がしてしまったほどです。果物をあげるのは、嫌な検査をするときとか、薬を飲ませるときなどのご褒美がわりに与えているそうです。

 こうして食事をはじめとした健康管理は、ふつうの人間以上に行われているようで、健康状態には、常に気を配り、異常があった場合には、素早い対応を・・まさに早期発見、早期治療・・と人間さながらの健康管理です。

 また、メスのオランウータンの出産は、一生のうちに多くて3回程度だということで、だいたいこの辺も人間と似ているな・・などと思いながら、彼の説明を聞いていました。

 彼の説明が終わったところで、何か質問は?とみんなに質問を募っていたのですが、私が聞きたいのは、WATANAのことで、あまりに個人的?な質問ゆえ、説明大会が終了したところで、彼をつかまえて、「あの・・つかぬことをお伺いしますが、あなたは、WATANAを知っていますか?」と聞いてみたのです。

 すると、彼は、ちょっとビックリした様子で「WATANA?」と言い直してから、「知ってます!」と。でもすぐに、「Elle est parti」(彼女は旅立った)と言ったので、私は、てっきり亡くなってしまったとばかり思って、「あ~残念・・」と。

 彼の話によると、彼がここで働き始めたのは、6年前からのことで、WATANAがここにいたのは、8年くらい前までのことだそうで、それでも、WATANAの話は聞いたことがあるので知っています・・と。

 私はてっきり、ワタナは亡くなってしまったとばかり思っていたので、「ワタナは何歳まで生きていたのですか?」と聞いたら、「彼女は亡くなったわけではなくて、まだ生きていますよ!」、「今は、スペインの動物園にいるはずです・・」と。

 詳しいことはわからないけど、マッチング?が上手くいかなくて、子供がなかなかできなかったので、違う動物園に行くことになったのだとか・・。普通、他の動物園に移った動物でも、もしも、亡くなったりした場合は連絡があるはずなので、ワタナについては、そういう話を聞いていないから、まだ生きていると思うよ・・と。

 予想外のワタナの消息に、まだ、ワタナは元気で生きてるんだ!となんだか、すぐにでもスペインの動物園に飛んでいきたいような気持ちになりましたが、残念ながら、彼には、スペインのどこの動物園なのか、わからずに、私がワタナに会いに行くことはできそうにありません。

 しかし、まだ、あの彼女がスペインで生きていてくれるという話だけで、なんだか私はとっても嬉しくなり、とても満たされた気持ちで動物園を後にしたのでした。


ジャルダン・デ・プラント(JARDIN DES PLANTES)動物園 オランウータン

🌟JARDIN DES PLANTES  57 Rue Cuvier 75005 Paris


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