公立病院の看護師としてのキャリアをスタートした人々の約半数は、10年後には退職しているという深刻な看護師不足が数字で表れている結果が発表されています。
しかも、この数字には、コロナウィルスによるパンデミックのための退職者は含まれていないということなので、現状は、さらに酷いことになっているかもしれません。
昔、まだ私が日本にいた頃に、3K(きつい、汚い、危険)などと言われる仕事の人出不足が叫ばれていた覚えがありますが、フランスでも、まさに看護師という仕事は、この3Kに当てはまるのではないかと思います。
しかも、慢性的な人出不足のために、個々の仕事の負担が重くなることから、ますます、きつい仕事となり、志を持って資格まで取得して就いた仕事を続けられなくなってしまうという残念な悪循環が続いているようです。
現在の日本の状況はよくわかりませんが、そもそも、フランス人は、というか、今の世代の人々は特に、退職や転職というものをあまり否定的にはとらえていない印象があり、その中でも、特別な資格を必要とする看護師のような職業ならば、本来ならば、退職者、転職者は他の仕事に比べて少なそうなイメージがないこともないのですが、それが、逆に他の職業よりも多いということは、やっぱり、それでもなお、耐えられない、やってられない・・と思うことが多いのかもしれません。
そのうえ、大変な仕事のわりには、低賃金であるということが、さらに退職・転職増加に拍車をかけています。
彼ら(彼女ら)は、同じ仕事でもフランスよりも高賃金のスイスやルクセンブルクに転職したり、医療検査機関や、高齢者施設などに転職するか?全く別の仕事に就くか、彼らにとっては、むしろ、一般の人よりも選択肢はたくさんあるのです。
以前、医者不足のために、定年後も医者に働いてもらうためのシステムなどが、提案されていた話がありましたが、医療全般にわたって、医者も看護師も足りないという危機的状況のようです。
この看護師不足の数字から算定すると、年間40,000人の新卒採用が必要と見られていますが、実際には、看護師を志しても、看護学生の20%は、仕事に就く前に断念しているのが現状だそうで、どうにも壁が高そうです。
皮肉なことに、この看護師不足、学生の段階から看護師の道を断念してしまうのは、インターシップのシステムによる職業体験がひと役買っているようで、学生の立場からすれば、実際にどっぷりつかってしまう前に方向転換するならば、できるだけ早い段階の方がよいのかもしれませんが、実際の現場での職業体験で、将来の労働条件を如実に知ることになり、学業を放棄する学生の数は、10年間で3倍に増加したと言われています。
私は、幸いなことに、自分自身は、これまでフランスの病院に入院したことはありませんが、夫や友人などが入院した際のことを思い出す限り、あまりよい印象はなく、出来ればお世話になりたくないとは思っていますが、こればかりは、もしもの時には、仕方ありません。
しかし、一般の企業などから、考えれば、患者さん(お客さん)は溢れるほどいるのに、看護師に充分な賃金も払えず、その病院が上手く回らないというのは、やはりお金の回し方がおかしいということで、病院経営については、よくわかりませんが、単純に考えれば、こんなに次から次へとお客さんが来る仕事もないのに・・などと素人は考えてしまいます。
深刻なフランスの看護師不足
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