ロシアの大手ガスプロム社は、9月1日からフランスへのガス供給を停止すると発表しました。同社は、「エンジー(Engie)(フランスの電気・ガス供給会社)グループが7月分の請求書を支払っていない」とこのガス供給停止を正当化しています。
フランスは戦争が始まる前までは、17%のガスをロシアから輸入していましたが、現在は9%にまで落としています。最近ではフランスにガスを供給しているのは、ノルウェー(36%)や、アルジェリア、アメリカなど、供給源の多様化が進んでいます。
ウクライナ紛争が始まって以来、エンジーへのロシアからのガス供給はすでに大幅に減少しており、最近では1ヶ月あたりわずか1.5TWhにまで落ち込んでいるとエンジー社はすぐに反応しています。
つまり、契約時の量のガスが供給されていないために、エンジー社は実際に受け取っている分だけ支払いをしていると言っているのです。
ロシア ガスプロム側は、ガス供給量の減少をメンテナンスのためと説明していますが、これが(メンテナンス)本当かどうかは別問題としても、受け取っていない分を支払わないのは、至極当然の道理です。
しかし、エンジー社にとっては、これは、ある程度、予想していたことだと述べており、ガスプロムのフローが途絶えた場合でも、顧客に供給できるような対策をすでに講じているとし、逆にガスプロムに違約金を求めることを発表しています。
もともと、ロシアのウクライナへの侵攻も、まともな理屈が通らない中、ロシア側が言い出す理屈や難癖には、世界中が閉口しているところ・・。現在のロシアとの商談、約束は成り立たないと考えるのが妥当なのかもしれません。
先週の段階で、欧州のプラットフォームAgregated Gas Storage Inventory(AGSI)は、「フランスのガス在庫は冬に向けて90%の基準を超え、フランスは11月までに100%の目標を達成する見込みである」 と述べていることから、すでにロシア側がこのような難癖をつけて、武器を使わない攻撃を欧州向けに行おうとしていることを見通していたものであったと言えます。
しかし、一方で、政府スポークスマンのオリヴィエ・ベランは、報道インタビューで「夏の終わりまでに、ガスの在庫目標を達成することを確認したが、これは、ロシアがガスを切断し、その多くが消費された場合に、フランスが冬を越すのに十分なガスを蓄えたということではない」と警告しています。
それで、ここのところ、エリザベス・ボルヌ首相が国民に対してのみならず、各企業に対して具体的に10%の節電計画を10月までに作成するように呼びかけたりしていることの裏付けが表面化してきた気がしています。
エリザベス・ボルヌ首相は、エンジーの顧客を安心させるために、「フランスのガスグループは他の供給源を見つけた」と述べていますが、具体的な供給源は明示していません。(日本政府が国葬の費用を明示しないのとは、わけが違うなどとチラと頭をかすめました)
とりわけ、2021年の冬から禁止されると言われていたのに、結局は延期されていたカフェなどのテラス席の暖房は、今年こそは、本当に禁止になるかもしれません。
しかし、このような現実の報道は何よりも国民への節電への求心力になるとも考えられ、現在、ロシアから供給されているガスがすでに4%まで落ちていたとしたら、4%の節電、省エネを考えることも方策の一つなのだ・・と、これから、私も省エネに努めようと思います。
ガスプロム フランスへのガス供給停止
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