フランスは、犯罪者が多すぎて・・というわけだけでもないのでしょうが、余程のことがないと逮捕されても、投獄されるまでにはなりません。だからというのも何なんですが、刑務所にまで入るということは相当な犯罪者です。
以前、パリ市内の高級品を扱っている店が、夜中に地下道をつたって、店舗の地下部分に壁を破って押し入り、強盗を働こうとして、アラームが鳴って、慌てて逃げようとしたところが、地下から這い上がったと同時に駆けつけた警察に捕まり、逮捕されたという事件がありましたが、未遂に終わったこともあり、結局、投獄はされずに、そのまま野に放たれたという話を聞いて、強盗でも釈放??とびっくりしたことがありました。
一昨日、ボルドー近郊のメリニャック(ジロンド県)で起こった凶暴な事件の犯人は、過去7回有罪になっている凶悪犯、昨年12月に刑務所を出所したばかりの男(44歳)は、猛烈なDVを続けた挙句に投獄、出所後も執拗に元妻を追いかけ回し、何度も家を訪ねており、犯行当日には、彼女に暴行を働いた上に、家に火をつけ、家から逃げ出した被害者の女性を銃撃し、道に倒れると、可燃性の液体を彼女に吹きかけ、火をつけて焼き殺したのです。
生きているままに火炙りにあうという残酷な仕打ちをした犯人は、まるで戦争にでも行くような武装をしていて、明らかに計画的な犯行であったと思われます。
ボルドー検察庁は、犯人は、約30分後、隣接するペサックの町で逮捕され、12口径のライフル、ガスピストル、カートリッジベルトを持っていたと発表しています。
メリニャックといえば、以前、娘が通学のために一時、住んでいた地域でもあり、私も行ったことがありますが、ボルドーのすぐ近くの極めて平和そうな、私にとっては、車がやたらとゆっくり走る街という印象のおっとりとした街で、そんな凶悪な恐ろしい事件は想像もつかないごくごく普通の街です。
被害者の女性(31歳)には、3人の子供(3歳、7歳、11歳)がおり、犯行時には、幸いにも子供は家に不在であったようですが、過去のDVの様子は目撃していたであろうし、父親に母親が、かくも残酷な方法で殺されたという事実は、深い傷に残り、結果的に両親共に失ってしまったのですから、この年齢にして、背負うものの大きさは計り知れません。
犯人は、18ヶ月の禁固刑のところ、6ヶ月で出所になってしまっていたことが本当に悔やまれますし、なぜ、DV問題で禁固刑だった犯人が釈放になる際に、追跡用のブレスレットをつけられていなかったのか? しかも、被害者の女性は、彼の出所後の度重なる訪問(本来は禁止されていた)に被害を申し立てていたにもかかわらず起こってしまった事件でした。
メリニャック市長のアラン・アンジアニ氏によると、住宅街で起こったこの悲劇的なシーンを目撃した人々のトラウマをケアする心理ユニットが設置されました。
家庭内暴力の犠牲者を守るための協会によると、2021年1月以来、フランスでは、38人の女性が配偶者または元配偶者のDVを受けて死亡しています。メリニャックでのこの事件で、39人目の犠牲者が出てしまいました。
遺体の解剖結果で、彼女の咽頭は、75%押しつぶされており、銃で撃たれる前、火炙りにされる前にも相当な暴力を受けていたことがわかっています。
この犯人の残酷な犯行はもちろんのことですが、この犯人を野放しにした司法に対しても、「彼の釈放の際に犠牲者の危険は配慮されていなかったのか?」、「元妻への接近が禁止されているにもかかわらず、数度にわたり訪問していたことを被害者が通報していたにもかかわらず、なぜ放置されていたのか?」「危険人物につけられるはずのブレスレットはなぜつけられていなかったのか?」など、多くの疑問を「国家には責任がある」「正義の機能不全」として、訴える声が上がっています。
フランスには、現在、危険人物につけて、行動を監視できるブレスレットは1,000個ありますが、使用されているのは、たった61個だけなのだそうです。
フランスの格差社会の問題と片付けられる問題ではありませんが、本当にフランスは、クズ男は限りなくクズ、中でも暴力を振るうクズは、最悪です。
これは、しっかり、国家に保護してもらいたい問題の大きな一つです。
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