以前、会社で階段から落ちて、数ヶ月も仕事を休むハメになって以来、私には階段が少し怖くなって、特に階段は、気を付けて下りるようになっていました。そうでなくとも、日頃の運動不足のせいもあるのか、はたまた年齢のせいもあるのか、転んだり、怪我をすることが増えています。
何よりも痛い思いをするのは嫌なので、自分でも、ちょっとカッコ悪いな・・と思うくらい注意深くなっているのです。だからといって、動かないでいると、ますます弱っていくので、できるだけ歩くように、そして少しでも運動をして鍛えるように心がけているのですが、鍛えるつもりでやっていた縄跳びで、転んだわけでも何でもないのにもかかわらず、いつのまにか骨折していたという、目も当てられない結果を招いたこともありました。
それでも、ロックダウンを機に始めた家の中でもできる簡単なエアロビやストレッチを毎日の日課とし、週1は必ずプールで1キロ泳ぐことにしているのですが、それでも転ぶ時は転ぶのです。
先日、仕事でパリ近郊の行ったことのない場所に行かなければならず、携帯を頼りに約束の場所を探しながら歩いていた時のことです。パリを少しでも出ると駅の様子もガラッと違って、どこか広々としていて、また、行き交う人もちょっと違った感じで、ちょっとガラの悪い感じの人もいたりして、なんとなく、治安悪いのかも?・・などと、正直、ちょっと腰の引ける思いでいたのです。
何より土地勘が全くないことから、ちょっと警戒しながら、携帯を見つめて「えっ?こっちでいいのかな?」などと思いながら歩いていた時のことです。
そんな私は携帯の中の地図と、自分が今、歩いている道に気をとられて、歩道と車道の段差に気付かずに、うっかり転んでしまったのです。そんなに人通りがある道でもなかったのですが、痛~い!と思いながらも、携帯を持ったまま、あまりに無様な転び方をしたために、恥ずかしいのが先にたって、かえって平気な顔をして、立ち上がったのです。
すると、すぐに近くに止まっていた車に乗っていた男性二人が「大丈夫?」と駆け降りてきてくれて、また、ちょっと離れたところを歩いていた女性までが、「大丈夫ですか?」と走り寄ってきてくれました。
私自身は、客観的に自分の転び方を見ていないので、どの程度、派手な転び方だったかはわからないのですが、もしもこれがパリだったら、もっと人通りが多くても、わざわざ車から降りてきて声をかけてくれるなんてことはないような気がするし、あったとしても、何か盗られるんじゃないか?などと警戒してしまうような気もします。
どこかほのぼのとした空間で、ちょっと、おっとりした感じの中年の男性二人が、この会社の中で応急処置ができるから、少し休んで行ったら?などと、言って下さり、痛さと恥ずかしさで口ごもっていた私を見て、フランス語わからなかったら、英語で話そうか?などとまで言ってくれて、駅を降りてから、ちょっとガラが悪いかも・・とか、治安悪いかも・・などと思っていたことが申し訳なかったような気持ちになりました。
痛いは痛かったのですが、そこまでの怪我ではなかったし、約束の時間があったので、それに遅れてはいけないと思い、彼らに道を尋ねると、私は見当違いの方向へ歩いていたようでした。
彼らには、丁重にお礼を言って、教わった道を痛い足を引きずりながら、妙にバツの悪い思いと、「やっぱり郊外に住んでいる人って優しいんだな・・」などと思いながら歩き、幸い約束の時間に遅れることはありませんでした。
それにしても、地図に気を取られて転ぶほど道を見ていたはずなのに、GoogleMapを持ちながらも迷う私の方向音痴にもつくづく嫌になると同時に、階段ばかり気を付けて、歩道と車道の段差もこれからは気を付けなければ・・と心に誓ったのでした。
夜になると足の痛みは増してきて、慌てて湿布をしながら、痛みが出てくるのさえも鈍くなっていることが情けなくなりました。
パリ郊外
<関連記事>
「フランスの職場でのイジメと嫌がらせから、悲惨な結果になったリンダちゃんの話」
「スティーブン・スピルバーグ「ターミナル」にインスピレーションを与えた伝説のホームレスCDGで死去」