子供の教育は、もちろん、その家庭に一番の責任があることは言うまでもありませんが、子供の通う学校も大きくその子の人生に影響してきます。
どの国にも社会的格差は存在しますが、フランスはその格差がかなり大きく、子供の頃から通う学校によって、まるで世界が違います。そのどちらに行くか、人生の別れ道の違いは最初は小さいものでも、年齢を重ねるとともに大きくなっていくのが、恐ろしいほどです。
我が家の近所にも、小学校、中学校、高校ともにいくつかの公立の学校がありますが、たまに近所を走っているバスに乗ったりすると、子供たちのバスの中での立ち振る舞いや言動で、大体、どこの学校の生徒なのかが見当がつきます。
我が家は、そんなに治安の悪い地域でも貧窮層の多い地域でもないにもかかわらず、公立の学校がこのような状況であることは、信じ難いことですが、これがフランスの現実なのです。
家の近所には、私立の学校は幼稚園から高校までの一貫教育の学校が一つだけなので他に選択肢はなかったのですが、それにしても、バスの中で暴れて騒いでいる子供たちを見ると、もしも私が娘の教育について、深く考えずにこれらの公立の学校に入れていたら、娘もこの子たちの仲間入りをしていたかもしれないと思うと今さらながら、私立の学校に入れて助かった・・などと思うのです。
特に中学生・高校生くらいになると、どちら側の子供たちなのかは、一目瞭然です。
私が娘を私立の学校に入れようと思ったのは、当時の私の職場の近くに、なかなかな暴れようの公立の中学校があり、こんな家賃の高そうなパリの中心に住んでいる子供たちでも、こんなことになる・・と危機感を持ったことがきっかけでした。(学校のストライキにうんざりしていたこともあります)
私たちは、娘が小学校に入学する少し前に現在の場所に引っ越してきたので、小学校からは私立へと思って、入学の申し込みをしたのですが、すでにその時点では定員オーバーで、娘の名前はウェイティングリストに入れられ、仕方なく、その学校に入学できるまでは、公立の小学校に通うことにしていたのです。
現在はわかりませんが、当時は私立だからと言って、日本のようにお受験があるわけでもなく、子供の能力が測られることもありませんでした。しかし、なんとかして、その学校に入学させてもらえないかと、娘の成績表を送ってみたところ、夏休みの間に「面接に来てください」と学校から連絡があり、急遽、夏休みの間に娘の進学先が変更になったのでした。
その学校は、カトリック系の学校ではありましたが、宗教色はあまり強くはなく、他宗教の子供たちも多くおり、校内にチャペルはあるものの、礼拝なども強制的に参加しなければならないわけでもなく、どちらかというと、子供たちの学力向上をうたっている学校で、バカロレアの合格率100%を宣言していたので、少しでも優秀な子供を集めたいと思っていることは明白でした。
私が最初にその学校を見に行って、すぐに思ったのは、「子供たちの顔つきが全然違う」ということでした。小さい子供でもこんなに顔つきが違うものなのかと逆にそのことが空恐ろしいくらいでした。子供の顔つきがここまで違うというのは、明らかに学校の教育なのです。
バカロレアの合格率100%ということは、できない子は追い出されるということで、小学校からでもできない子は留年(これはフランスの学校では当たり前のことですが・・)、または、やんわりと他の学校への転校を勧められます。
ですから、娘が小学校、中学校、高校と進む間に、いつの間にかいなくなっていた子供たちもちらほらいました。特に中学校から高校にかけては、特に急に学力ともにその子供の様子が変わってしまうことも少なくない難しい年頃です。
しかし、厳しいのは学力だけではなく、日頃の生活態度、言葉遣いなども、成績同様に評価され、先生を睨みつけようものなら、「目を伏せろ!」などと言われるほどだったのです。
常に自由や民主主義を掲げ、言いたいことを言うフランスの文化の中でこのような教育は意外でもありましたが、このような社会にあるからこそ、ある程度の枠内で厳しい環境に身を置くことは必要なことなのかもしれません。
私立の学校だからこそ、成績や態度が悪ければ追い出すこともできるのですが、それは、そこにいる子供たちを守ってくれるということでもあります。
大人になれば、ある程度、危険な人には近づかないこともできるし、自分が身を置く環境は選ぶことができますが、学校という括りは、意外にも守られていない環境でもあるのです。特に小学校、中学校はその子の基盤ができる大切な時間です。
格差の大きい社会であるからこそ、クズは限りなくクズです。麻薬やドラッグなども年々蔓延し、低年齢化していることを考えれば、子供が1日の大半を過ごす学校環境を選んであげることは、とても重要なことに違いありません。
フランスでは、学歴云々以前に(学歴ももちろん重要ではありますが)、その子供が真っ当な人間になるかどうかがかかっているような気がするのです。
フランスの文部省は、たいそうな理想を掲げてはいますが、現場は理想どおりには行ってはいないのです。
学校によって差はあるとは思いますが、フランスは私立だからといって、極端にお金がかかるということもありません。私はフランスでは、小学校・中学校・(高校)は特に私立の学校をおススメします。
フランスの小学校・中学校・高校 私立校のススメ
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