2024年3月4日月曜日

偽配管工と偽警察官がタッグを組んだ盗難事件 急増中

 


 

 家に入り込む詐欺師や強盗事件は、以前からよく聞く話ではありましたが、最近は、偽配管工と偽警察官がタッグを組んでやってくるという事件が増加しているそうです。

 我が家にも定期的に「アパートの配管のチェック」なる人がやってきます。我が家の場合は、配管だけでなく、空調だったり、害虫駆除など色々な種類のものがありますが、賃貸であることもあり、それらのことは、全て管理人さんを通して行われるので、前もって、アパートのエントランス内側のドアに張り紙がされていて、「○○日の午前中、あるいは午後に○○のチェックの人が来ます」などと前もって予告されるので、それ以外の人が来るということはないし、来たとしても家には入れません。

 その日時指定は一方的になされるので、必ずしもその時に在宅していられるとも限らないのですが、チェックしてもらえるならば、してもらっておいた方が安心でもあるので、できるだけその時には、家にいるようにしています。

 問題なのは、待っていたのにすっぽかされることもあるのですが、それは、もう慣れたので(慣れたくもなかったけど・・)、指定どおりに来てくれたらラッキーくらいに思うようにしています。これはやたらと腹をたてることに疲れた結果の自己防衛本能です。

 それでさえ、やはり見ず知らずの人(しかもたいていは男性)を家に入れるわけですから、一応、用心して、何気なく、ついて歩いて、それとなく色々と質問したり、やたらと話しかけたりして見張っています。

 我が家など、別に高価なものがあるわけでも、大金を持っているわけではないのですが、ひょんな勘違いから目をつけられたりすることも怖いのです。

 最近、急増している手口は、まず、偽配管工が配管の状態を確認するといって、家にやってきて、一応、家中の水回りの配管をチェックする風を装って帰ります。しばらくすると、偽警察官がやってきて、「最近、偽配管工が続出しているので、配管工が何も盗んでいなかったかを確認する」と言い、この少し前に訪れた配管工が実は偽配管工であったことを暴いて見せるのです。そうすれば、彼ら(訪問を受けている人)は動揺し、ちょっとしたパニック状態になります。

 しかし、実際には、この配管工がやってきた時点で、家の中の貴重品のターゲットの場所を下見して、偽警察官に伝えたうえで、実際に貴重品を盗んでいくのは、この偽警察官なのです。さすがにプロというのもおかしな話ですが、彼らは見事に数分で家の中の宝石類や現金、貴重品を見事に盗んでいくのです。

 これは、偽配管工に限ったことではなく、電気工事業者、ネズミ駆除、害虫駆除業者など家に容易に受け入れてしまいがちな職業を選んで、偽警察官と手を組んでいます。

 工事業者はともかくも、警察官を装われて、少し前に家にやってきた工事業者の人が詐欺で泥棒であったなどと言われれば、慌てて偽警察官を家に入れてしまいがちです。

 これらの犯罪は、特に高齢者宅を狙って起こっており、警察官でさえも家にやってきたら、必ず身分証明書の提示を求めるように呼び掛けています。しかし、この警察官の証明書でさえも偽物を携帯している場合も多いので、それがホンモノであるかどうかは、日常的には、見慣れたものではないため、識別するのは難しいかもしれません。

 警察官でさえも、本物かどうか信じられなくなるとなるとは、もう救いがたいことです。

 しかし、実際に起こった事件の報道を見たりすると、棚に隠していた10万ユーロ(約1,600万円)が盗まれた・・などとあるので、事件自体もさることながら、そんな現金、家に隠してあるの?とそのこと自体に驚いたりもします。

 日本は、タンス預金が多い国でやはり高齢者には、特にそれが多いなどという話を聞いたことがありますが、フランスの高齢者にも、けっこうタンス預金があるらしいです。


偽配管工と偽警察官


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2024年3月3日日曜日

なんだかんだ言っても、日本はやっぱり治安がいいんだな・・と思った話

  


 フランスで育った娘が日本で生活を始めてから、そろそろ2年が経とうとしています。生まれた時から、日本語を一生懸命教えてきた私としては、彼女の日本での生活が、たとえ、彼女の長い人生の中では、ほんの一時期であったとしても、ちゃんと仕事もしながら、それなりに日本でも生活できていることは、苦労のかいがあったし、彼女の可能性を広げているので、とても喜ばしいこととして、受け止めています。

 この短い間に彼女は日本で転職まで経験し、現在は、日本にあるフランスの企業で働いています。彼女は、本当に忙しく働き、忙しく旅行したりして生活を楽しみながらも、私の親戚(彼女にとっても親戚)ともうまく付き合っているようで、これまで日本で生活しなければ知り得なかった日本ならではの習慣などを学びながら、生活しているようです。

 本人ともたまには、電話で話したりもしますが、それ以外の親戚などと話したりすると、親の私に向けては、悪口を言い辛いこともあるのでしょうが、親のひいき目にみれば、概ね、「おたくの娘、本当にしっかりしている!」と言われることが多いです。

 しかし、彼女は、本当にしっかりしているし、そうも見える反面、とても抜けているところもあって、忘れ物、失くしものがボケかけている私以上に多いのは、正直なところなのです。

 昨日も電話で話していたら、友人とお花見ハイキングへ行く約束をしていて、1日、日付を間違えていたのを出かけて、ある駅に着いた頃に気が付いた・・と。そして、その際に、一緒にでかける約束をしていた友人に旅先でお金を借りた借金を返さなければと、出かける前に家でお財布を探したところが、見つからない・・約束の時間が迫っていたために(本当は1日後なのに・・)、お財布からではなく、他に非常用にしまっておいたお金を持って出かけたのです。

 お財布を探していたりしていたために、電車に乗り遅れ、約束をしていた友人に「少し遅れるかも・・」とメッセージを送ったのですが、返事なし・・そりゃそうです。約束は翌日なのですから、その友人だって、少し遅れるかも・・などとメッセージを受け取っても、翌日の約束の時間に前日から少し遅れるとか言われても、返事のしようもありません。

 彼女は、途中で約束は翌日だったことに気が付いて、結局、別の場所に一人ででかけて、買い物をして(携帯で)、家に戻って、再び、お財布を探したのだそうです。

 しかし、やはり家の中には、お財布は見つからず、「はて?最後にお財布を使ったのは、いつだったか?」と記憶を辿ると、なんと4日前に近所で買い物をした時であったような気がする・・と。

 もはや絶望的な気分で、お財布の中に入っていたクレジットカードや運転免許証、マイナンバーカードを全て作り直すことを考え始めていたようです。

 その時点では、彼女も失くしたお財布がよもや出てくるとは全く思っていなかったようで、念のために最後に買い物をした場所に行って、お店の人に聞いてみると、ちゃんとお店の人が保管していてくれて、全く中身も無事だった・・とのこと。

 そもそも、普段はお財布を使わないために、彼女がお財布を失くしたことにも4日間も気付かずにいたことさえも、あっけにとられますが、それが4日経っても見つかるということが、フランスで育ってきた彼女にとっては信じられないことであり、ハタで聞いている私にとっても、「なんだかんだいっても、日本はやっぱり治安がいいんだな・・」とびっくりさせられたのでした。

 あらためて、言うまでもありませんが、フランスではあり得ない話です。


日本の治安


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2024年3月2日土曜日

続々と浮かび上がる有名人の性加害への告発 今度は、フランスのトップ精神分析医ジェラール・ミラー

  



 つい、この間もラジオ番組の人気司会者へのいくつもの性加害告発報道があったばかり、今回、告発されているのは、精神分析医というのだから、さらに始末が悪く、悪質な印象を受けてしまいます。

 この男性は、精神分析医であり、元パリ第8大学の精神分析の教授として約10年間教鞭をとり、約20冊の本を出版し、数々のドキュメンタリーフィルム等を制作し、コラムニストや司会者として数多くのメディアに登場している人物です。

 今回は、フランステレビジョンの報道によって、彼がすでに性的暴行または強姦行為の複数の告訴の対象となっていることが公になりました。

 この騒動は、1月末に「ELLE」エル誌に掲載された彼から受けた性被害の暴露記事が発端となり、彼に関わる被害者の間で#MeToo運動が爆発している感じで、今回のテレビ放送で証言した被害者は3人ですが、すでに、少なくとも約50人の女性が不適切なわいせつ行為から強姦に至るまでの行為で告発しています。

 彼は現在75歳ですが、被害を訴えている女性らが告発しているのは、20年以上も前の話から存在し、その後、長期にわたって、同じような加害行為が多数の女性に向けて行われていたことは、彼女らの証言の一致から、彼が利用していた手法にある程度の一貫性も見られることから、明らかになりつつあります。

 前回、騒動になったラジオパーソナリティーの場合もその有名人という立場を利用したものでしたが、今回のジェラール・ミラーの場合もテレビの公開番組などの場で獲物を物色しており、彼の場合は、また精神分析家という特別な立場が加わり、治療やテストなどと称して、催眠セッションなどを利用していたと被害者は証言をしています。

 これには、もう救いがたい悪質さを感じずにはいられません。

 この彼の加害スタイルは、2000年代初頭に放送されていた進行役でもあった彼が観客の中から女の子を選んで番組を進行するスタイルの番組がきっかけで、多くの被害が発生しており、被害者の女性たちは、被害当時14~15歳、あるいは、非常に若い年齢であったこともあり、彼が公人でもあり、精神分析医という立場であることから、ある程度の信頼を抱いていたと証言しており、中には、きっかけは、トークショーの後に、家族に自慢するために彼にサインをもらいに行ったことがきっかけだった・・と話している女性もいます。

 この性加害報道のフランステレビジョンの番組はこの性加害調査において、彼にかかわった一緒に仕事をしたことのある人物80人以上の証言をとり、これを報道しています。

 日本でいう文春砲のようなものですが、こちらはテレビでの報道ですので、インパクトもかなり強力です。

 ジェラール・ミラー本人は、「いつも単純な会話と楽しい瞬間だった。 プレイに同意した人は催眠術にまったくかかっておらず、意識は完全に保たれており、いつでもゲームを中断することができたはずなので、これらの出来事は全て同意のうえでのことである」と、この告発内容を否定しています。

 現在、複数の告訴状を受け、パリ検察庁は捜査を開始しています。

 これだけの被害者が同時に同様のウソの証言をする理由も必要もなく、彼の性加害行為に疑いはないと思いますが、今、必要なのは、精神分析医であったはずの彼自身の精神分析をする優秀な精神分析医かもしれません。


精神分析医の性加害告発 #MeToo


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2024年3月1日金曜日

フランス2030 フランスとカタールの戦略的投資パートナーシップ100億ユーロ

  


 マクロン大統領は、今週、フランスを訪問中のカタール国首長を国賓としてエリゼ宮に招き、「フランス2030」戦略と2030年に向けたカタール国家ビジョンの一環として、フランスとカタールは戦略的投資パートナーシップを締結し、フランスの若い革新的企業と投資ファンドに100億ユーロを投資するカタールとの協定にサインしたことを発表しました。

 両国の相互利益のために、特にエネルギー転換、半導体、航空宇宙、人工知能、デジタル、健康、ホスピタリティ、文化・芸術などの主要分野への投資を増やす意図で、フランス経済と密接に関係している分野にも投資されます。

 両国首脳は、ガザ地区における大規模な人道援助の提供と民間人の保護をはじめ、レバノンに影響を及ぼす政治的・経済的問題の解決、国際法と国連憲章に違反するロシアのウクライナ侵略戦争に対する強い非難を表明しています。

 カタール首長の15年ぶりのフランス訪問、両国首脳会談は、何よりも二国間関係の強化に焦点を当てたものであり、「これはフランスに対する栄誉であり、両国を結ぶ絆の深さを示すものである」とマクロン大統領は、強調しています。

 「両国間の強い絆」という言葉は、マクロン大統領が外交の際にやたらと口に出す(まあ外交なのであたりまえといえばあたりまえなのに、なんか、どうもしっくりこない感じも多い)少々ひっかかるところではありますが、すでにフランスはカタールに対するヨーロッパの主要投資国であり、エネルギー、航空、インフラ、観光に90億ドルを投資しており、 また、カタールからの主要な投資対象国 5 か国の 1 つでもあります。

 また、フランスとカタールは安全保障と防衛における協力、特に両国空軍間の協力の重要性を再確認しており、両国が共通の脅威に対抗するために不可欠なラファール戦闘機を保有しているという事実も確認しています。 また両首脳は、特に歩兵戦闘と両軍の相互運用性の分野において、カタールの軍事能力を強化し近代化するために協力したいという共通の願望を表明しています。

 この政治的な話し合いの後には、フランスサッカーチームPSGのスターストライカーであるキリアン・ムバッペと、パリのクラブ会長である実業家のナセル・アル・ケライフィなど関係者?を招待した晩餐会が行われました。

 ウクライナ支援に関する国際会議でマクロン大統領が欧米諸国の地上部隊をウクライナに派遣する可能性も排除しないという過激な考えを述べたことで、ドイツ、イギリス、イタリア、スペイン、ポーランド、チェコなどの欧州諸国からの大バッシングを受けて、国内でも大論争が起こり、さすがのマクロン大統領もへこんだかと思ったら、全く、そんな様子はなかったのは、これだったのか・・このカタールとの強力なタッグがその背景にはあったのか・・と、思わされたのでした。

 それにしても、先週末には、国際農業見本市で農民たちの大反発を受け、一人で農民たちとの話し合いに臨み、早朝から夜までの一日を見本市会場で過ごし、週明けには、原子力政策審議会、ウクライナ支援の国際会議から、このカタールとの首脳会談と、どこまでも強気でエネルギッシュなマクロン大統領。

 今日は、パリオリンピックのためにセーヌ川を視察し、記者に囲まれた際には、セーヌ川の安全性を保障することを豪語し、、「オリンピックの前には、セーヌ川に泳ぎに行く」と約束。

 テンション上がりっぱなしのマクロン大統領、エネルギッシュで元気だな・・と思うと同時に、ここのところ、ちょっと行き過ぎの発言も多い気がして、少々、心配でもあります。

 おかげさまでフランス、ロシアに超、睨まれてるんですけどね・・オリンピック前だというのに・・。


フランスとカタールのパートナーシップ


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2024年2月29日木曜日

パリオリンピックのセキュリティ情報が盗まれた セキュリティ情報のセキュリティ

  


 一昨日の夜、テレビのニュースを見ていたら、速報が表示され、「パリオリンピックのセキュリティ情報が盗まれた」と書いてあったので、「なんで?ハッキングにでもあったの?」と思いました。

 そのうち、詳細が報道されると思っていましたが、その日の夜は、そのニュースに関しては、それ以上は、報道されることはありませんでした。

 翌日になって、この「オリンピックのセキュリティ情報盗難」については、それがその情報が入ったパソコンと2本のUSBキー入りのバッグが盗まれたということであったということがわかりました。

 このバッグの持ち主はパリ市役所に勤める56歳のエンジニアで、彼はパリ北駅からクレイユ(オワーズ県パリ北部)行きの電車に乗りましたが、彼の乗っていた電車が遅れたために、電車を乗り換えようとした時に、車内上部の棚においていた彼のバッグが盗まれていることに気付いたと言います。要は彼は置き引きに遭ったのです。

 そもそも、そんな重要な情報が入ったものを電車の棚に置くなど、信じられないことではありますが、人間、ふと気が緩むということはあり得ることではあります。しかし、そのような重要なセキュリティ情報を外部に持ち出せるということ自体が、セキュリティの甘さのような気もします。

 私は、あまり郊外電車に乗る機会がないので、電車の棚というものは、ふつうパリのメトロ内にはないので、荷物を置いてしまう誘惑?はないし、やはり、パリで自分の手から荷物を放すということは、ちょっと怖くて想像がつきません。

 このバッグを盗んだ人が、単なる置き引きで、パソコンが入っている感じのバッグとして盗んだだけであったのか?そのような重要情報が入ったことを狙って盗んだのであるかは不明ですが、この報道がされた時点で、自分が盗んだパソコンとUSBキーには、重要な情報が入ったものであったことは、わかったはずです。

 悪く考えれば、パリオリンピックの安全を脅かそうと企てている輩には、高く売れる情報だと考えるかもしれません。

 パリオリンピックに際しては、パリ市はこのために2,000人の市警察官を動員する予定にしており、オリンピックの交通に関するセキュリティ情報が含まれていると言われています。

 翌朝、パリオリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会​​長は、これらの文書の盗難について慎重な姿勢を示し、「パリ市からの確認は得られていないので、自分の意見を表明する前にこの情報が確認されるのを待ちたい」としながらも、「情報はオリンピック期間中のパリの交通に関する注意事項であり、機密性の高いセキュリティ情報に関するものではない」としていますが、言い訳じみている気もします。

 このオリンピック組織委員会会長の「機密性の高い情報ではない」という発言に対し、サイバーセキュリティの専門家は、そのようなデータの盗難に伴うリスクを説明しています。

 「盗難の被害者になることは誰にでも起こり得ることで、その人を責めるつもりはありませんが、これは非常に深刻なことです。盗難の背後に誰がいるのかはわからないので、標的型攻撃であると言い切ることはできません。しかし、この事態に接し、私たちは、すべての計画の見直しプランを確認する必要があります」

 「このような事態には、最悪のシナリオを想定する必要があり、これを盗んだのが、犯罪ネットワークのメンバーであれば、それを売ろうとするであろうし、現在、戦争を起こしている国がオリンピック期間中に攻撃をしかけよう必死になっていることは、公然の秘密です」

  「この場合の問題は、USBキーだけでなくパソコンも盗まれたことです。 ただし、PC では、起動時から暗号化が行われることは非常にまれです。 その後、ハッカーはコンピュータ上のシステムを再構築し、何が入力されたのか、いつキーが接続されたのかを確認し、記録されたパスワードの履歴を追跡する可能性があります。すべての要素が揃っておらず、誰が誰であるかわからないため、不確実性がありますが、これをすべて入手したら、すべての計画、いずれにしても盗まれた計画を確認する必要があります。 悪意のある誰かがそれらを持っていると考えたほうがよいでしょう」と説明しています。

 この盗難事件がなかったとしても、オリンピック期間中は、常に大規模なサイバー攻撃合戦のイベントのようなもので、ハッカーフォーラムやダークウェブにおいて、この攻撃の成功は、「悪名」という点において、彼らの聖杯となるのです。

 しかし、現段階では、それがハッキングとか、そんなレベルではなく、物理的にパソコンとUSBキーを盗まれるという思いもしないレベルの問題に、なんだか、拍子抜けする気もするのです。

 パリ検察当局は、公共交通機関での盗難の捜査として、この事件は、運輸ネットワーク保安局に委託されたと発表しています。


パリオリンピック セキュリティ情報盗難


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2024年2月28日水曜日

パリのメトロは乗客に病人が出ても停車しない?

  


 イルドフランス交通の規制当局であるIDF(イルドフランス)モビリテスの社長ヴァレリー・ペクレス氏は、「今後は、地下鉄の交通を妨げないよう、今後、車内で病人が出た場合に地下鉄を停車しない」と発表し、またRATP労働組合の反発を呼んでいます。

 一瞬、ギョッとする話ではありますが、停車しないというのは、長時間停車しないという意味で、病人を最寄りの駅でおろして、駅で対応するということです。

 これまでは、例えば、車内で気を失ったりする人が出た場合のために、病人を動かすこと自体がリスクになることがあり得るために、基本、病人には、触れずに救急隊の支持を待つ間、電車を停めて、待機するという方法がとられていたそうです。

 これは、オリンピック期間中に予想される大規模な利用者増加により数多く起こると想定され、パリの公共交通機関の危機、特に地下鉄交通の異常事態に対応するためのプロトコールとして発表されています。

 これに対して、RATP労働組合は、「これは、体調が悪くなった乗客の健康に対するリスクが増大し、倫理的に問題がある」とこの決定を非難しています。「そもそも、駅の職員は、救命処置の訓練を受けていないのだ!」と。

 これがオリンピック期間限定の対応なのか?それとも、今後も継続されるものなのかは、不明ですが、病人をとりあえず、車内から降ろすことがそんなに大騒ぎになることなのか?と思わないでもありません。しかし、通常、パリのメトロのホームには、基本、駅の職員はいません。

 さすがに、ホームにはいなくても駅には職員がいるので、緊急事態が起これば、おりてきてくれるでしょうが、大きな駅ならばともかく、ふつうの駅ならば、あまり大勢の駅員はおらず、大勢のRATPの職員を見かけるのは、キセル乗車のチェックの時くらいです。

 しかし、私は、25年以上、パリのメトロを利用させていただいてきましたが、メトロ内での病人に遭遇したことはありません。むしろ、電車が停まってしまうのは、不審物発見の場合やプロブレム・テクニックなどの事情がよくわからない停車(これは決して少なくない)がほとんどです。

 ただし、オリンピック時の100万人は超えると言われている観光客を想定した場合は、病人だけでなく、怪我人、事故なども充分に考えられる事態にどう対応するか?ということへの一つの指針なのだと思いますが、通常でさえも、やたらと停車することが多いパリのメトロにそれだけの耐性があるかどうかは、甚だ疑問に思うところで、これは、メトロだけでなく、至る場面で想定できるキャパオーバーの問題です。

 さすがに、不審物発見の際には、電車は停車させると言っていますが、不審物を見極めるための約20頭の犬隊やAIを利用し、10分~15分以内に不審物の撤去に役立てるとしていますが、そもそも、パリ市内の道路でさえも、かなりの混乱が予想されるなか、この犬たちは、どうやって不審物のある駅にやってくるのでしょうか? 

 パリは小さな街なのです。全ての競技をパリで行うわけではなくとも、オリンピックの中心になるとなれば、それはそれは大変な混乱に陥ることは確実です。

 そして、以前よりはマシにはなりましたが、一般的には、フランス人はキビキビと働くことに慣れていない人々です。混乱には、すぐにパニックを起こしがちでもあります。

 でも、彼らは心優しく、転んだりすると、ちょっと恥ずかしくなるくらい、どこで見ていたのか?とビックリするほど、「大丈夫?」と駆け寄ってきてくれる人が表れたりする面もあります。

 おそらく、この期間、パリ市内は、日常のパリ市民よりも観光客が大半を占める状態になると思います。具体的な一つ一つのことは、今の段階では想像がつきにくいのですが、その一つ一つ、例えばメトロ、例えばバスなどを考えるとどう考えても異常事態に陥ることは必須です。

 パリ市内を走っているバスなどもオリンピックを見据えてのことなのか、新車に切り替わっている車体が増えているのですが、これがまた、以前よりも狭くなっているものも多く、どういう対応を考えてのことなのか?首を傾げるところでもあります。

 これから、オリンピックが終わるまで、ずっとこういう変化が続き、またその変化を素直に受け入れる国民ではないため、そのたびにストライキやデモが起こるかと思うとそれだけでもウンザリするところでもあります。


パリのメトロの病人


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2024年2月27日火曜日

マクロン大統領が農民たちに約束した農産物の「下限価格設定」に立ちはだかるもの

  


 すったもんだの挙句に開催されたパリのサロン・ド・アグリカルチャー(国際農業見本市)の初日、大反発する農民たちに一人で立ち向かって話し合いの場を設けたマクロン大統領がその場で農民たちに約束した内容の一つに「農産物の下限価格設定」があります。

 この模様は、全国放送で生中継されていたため、これは、全国民に向けて大統領が約束、公言したことになります。

 この下限価格設定の概念は、もう長い間、農業団体が要求していることで、13年間にわたり、俎上(そじょう)に上っては、却下され続けているものであるようです。

 この下限価格の設定は、農業収入を保護し、農民たちに不利益を与えずに保護するためのものであり、農業生産コストの指標に基づいてその下限価格を設定することは、当然のことだと思うのですが、それがなぜこんなに長い間、却下され続けてきたのかは、大きな社会の仕組みの問題でもあります。

 農業組合によれば、これらの指標は、ある程度、存在はしているものの、実際の生産物の商業交渉ではこれが尊重されていないのが現状であると言います。これらの下限価格は、「農民たちの収入を保証するものであり、彼らが平均生産コストを下回って販売する義務はない」とされていますが、販売する義務はないといったところで、生産物は、販売できなければ、無駄になるだけで、買い叩かれても販売せざるを得ないのが現状なのです。

 この問題に一番に名前が挙がるのは酪農農家とラクタリス(乳製品を主に扱うフランスの巨大食品メーカー)の問題です。ラクタリスは、フランスの食品メーカーとしては、首位の座を勝ち取っている大企業でありながら、非上場企業であり、また社名は製品には表示されていないため、業績や規模のわりには、一般消費者の間での認知度は比較的低い会社でもあります。

 しかし、実のところは、プレジデント(バターやチーズ、クリームなどなど)、ラクテル(ミルク)、ブリデルを始め、この会社の多岐にわたる製品を見ると、誰もが知っている、どれもあたりまえのようにフランス人の食卓に上っているものばかりです。

 ラクタリスは、この下限価格設定に最も否定的な会社の一つであると言われており、彼らの言い分によれば、「下限価格が上がれば、フランス製品は、競争力を失い、国際市場を失うことになる」と述べており、また、経済学者の見立てによれば、「大手流通業者などは、下限価格の設定があれば、それ以下の価格での海外からの物資の調達を躊躇いはしないため、意味のないことになるであろう」という見方もしています。

 しかし、ラクタリスの繁栄は、ひとえにフランスの酪農家の犠牲のうえに成り立っていると思うと、苦々しい思いしかありません。

 また、欧州委員会の一部のメンバーによれば、「この下限価格の設定は、欧州の法律や単一市場の概念とは全く相容れない、他の加盟国は望まないことだろう」との見方をしている者もいます。

 そもそも生産コストは地域、国によって大きく異なることは現実であり、ユーロという同じ通貨とはいえ、その通貨の価値(物価)は、国によって全く異なることからもその問題は明白でもあります。

 マクロン大統領があの国際農業見本市開催を盾にとられたカタチで農民たちに約束した「下限価格設定」の約束が、早くも空約束になるのではないか?との声も上がっています。


農産物の下限価格設定


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