2021年5月7日金曜日

度を超えているフランスのDV 逮捕・投獄・釈放後に元妻を焼き殺す凶暴さ


Une femme est morte à Mérignac après avoir été blessée par arme à feu puis brûlée vive par son mari dont elle était séparée. (DAVID THIERRY / MAXPPP)


 フランスは、犯罪者が多すぎて・・というわけだけでもないのでしょうが、余程のことがないと逮捕されても、投獄されるまでにはなりません。だからというのも何なんですが、刑務所にまで入るということは相当な犯罪者です。

 以前、パリ市内の高級品を扱っている店が、夜中に地下道をつたって、店舗の地下部分に壁を破って押し入り、強盗を働こうとして、アラームが鳴って、慌てて逃げようとしたところが、地下から這い上がったと同時に駆けつけた警察に捕まり、逮捕されたという事件がありましたが、未遂に終わったこともあり、結局、投獄はされずに、そのまま野に放たれたという話を聞いて、強盗でも釈放??とびっくりしたことがありました。

 一昨日、ボルドー近郊のメリニャック(ジロンド県)で起こった凶暴な事件の犯人は、過去7回有罪になっている凶悪犯、昨年12月に刑務所を出所したばかりの男(44歳)は、猛烈なDVを続けた挙句に投獄、出所後も執拗に元妻を追いかけ回し、何度も家を訪ねており、犯行当日には、彼女に暴行を働いた上に、家に火をつけ、家から逃げ出した被害者の女性を銃撃し、道に倒れると、可燃性の液体を彼女に吹きかけ、火をつけて焼き殺したのです。

 生きているままに火炙りにあうという残酷な仕打ちをした犯人は、まるで戦争にでも行くような武装をしていて、明らかに計画的な犯行であったと思われます。

 ボルドー検察庁は、犯人は、約30分後、隣接するペサックの町で逮捕され、12口径のライフル、ガスピストル、カートリッジベルトを持っていたと発表しています。

 メリニャックといえば、以前、娘が通学のために一時、住んでいた地域でもあり、私も行ったことがありますが、ボルドーのすぐ近くの極めて平和そうな、私にとっては、車がやたらとゆっくり走る街という印象のおっとりとした街で、そんな凶悪な恐ろしい事件は想像もつかないごくごく普通の街です。

 被害者の女性(31歳)には、3人の子供(3歳、7歳、11歳)がおり、犯行時には、幸いにも子供は家に不在であったようですが、過去のDVの様子は目撃していたであろうし、父親に母親が、かくも残酷な方法で殺されたという事実は、深い傷に残り、結果的に両親共に失ってしまったのですから、この年齢にして、背負うものの大きさは計り知れません。

 犯人は、18ヶ月の禁固刑のところ、6ヶ月で出所になってしまっていたことが本当に悔やまれますし、なぜ、DV問題で禁固刑だった犯人が釈放になる際に、追跡用のブレスレットをつけられていなかったのか? しかも、被害者の女性は、彼の出所後の度重なる訪問(本来は禁止されていた)に被害を申し立てていたにもかかわらず起こってしまった事件でした。

 メリニャック市長のアラン・アンジアニ氏によると、住宅街で起こったこの悲劇的なシーンを目撃した人々のトラウマをケアする心理ユニットが設置されました。

 家庭内暴力の犠牲者を守るための協会によると、2021年1月以来、フランスでは、38人の女性が配偶者または元配偶者のDVを受けて死亡しています。メリニャックでのこの事件で、39人目の犠牲者が出てしまいました。

 遺体の解剖結果で、彼女の咽頭は、75%押しつぶされており、銃で撃たれる前、火炙りにされる前にも相当な暴力を受けていたことがわかっています。

 この犯人の残酷な犯行はもちろんのことですが、この犯人を野放しにした司法に対しても、「彼の釈放の際に犠牲者の危険は配慮されていなかったのか?」、「元妻への接近が禁止されているにもかかわらず、数度にわたり訪問していたことを被害者が通報していたにもかかわらず、なぜ放置されていたのか?」「危険人物につけられるはずのブレスレットはなぜつけられていなかったのか?」など、多くの疑問を「国家には責任がある」「正義の機能不全」として、訴える声が上がっています。

 フランスには、現在、危険人物につけて、行動を監視できるブレスレットは1,000個ありますが、使用されているのは、たった61個だけなのだそうです。

 フランスの格差社会の問題と片付けられる問題ではありませんが、本当にフランスは、クズ男は限りなくクズ、中でも暴力を振るうクズは、最悪です。

 これは、しっかり、国家に保護してもらいたい問題の大きな一つです。


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2021年5月6日木曜日

いつからフランスは銃社会になったのか? アヴィニョン警察官射殺事件 


Un policier a été tué dans le centre-ville d'Avignon (Provence) le 5 mai 2021. (MAXPPP)


 一昨日、パリ19区を物々しく警戒する大勢の警察官の様子が報道されていて、何ごとかと思ったら、ここのところ、数日、麻薬・ドラッグの密売人と住民との衝突が立て続けに起こっていて、そのための警戒を行っている光景でした。

 このところ、特にパリを中心に「CRACK(クラック)」と呼ばれるコカインの一種とされるドラッグの拡大が深刻で、比較的、安価に手に入ることから「貧乏人の薬」と呼ばれて、広い範囲に急速に広まっているようです。

 このクラックを服用した人々が夜中に暴れて、街を破壊したりする行為が特にパリ環状線沿線に増加しており、この19区の警戒もこのクラック問題が絡んでいるようです。

 このパンデミックの一年ほどの間に、麻薬・ドラッグによる事件が急増している印象があります。

 また、公に上がってくる麻薬・ドラッグが関わっている事件には、銃が使われてることも多く、フランスは、アメリカのような銃社会ではなかったはずなのに・・と不安な気持ちになります。

 そして、また昨日、アヴィニョン(フランス南東部・ヴォクリューズ県)で、午後6時半頃に、麻薬・ドラッグ取引ポイントであると警戒されていたエリアに群衆が集まったために、部門介入グループの警察官3名が急遽、取締りに配置されたところ、そのうちの警察官一人が銃で胸と腹部を撃たれ、救急隊が駆けつけましたが、その場で死亡するという事件が起こりました。


 亡くなった36歳の警察官は、まだ幼い少女の父親で、彼の父親も警察官という警察一家に育った人物で、危険な職務であることを充分に承知していて、日頃から注意深く行動していたと言うのですが、何の前触れもなく、ある程度の距離から、急に銃で撃たれたのでは、ひとたまりもありません。

 アヴィニョンでは、4月中旬に麻薬密売組織の一団が逮捕されたばかりで、その際にも、約37の武器とさまざまな口径の多数の弾薬が押収されていました。

 犯人は、警察官に発砲した後、電動トロチネット(電動キックボード)で逃走し、未だ逮捕されていません。目撃証言も現在のところ、ごくごく僅かで、黒い服を着た若い男性だったという程度の証言のみです。

 ここのところの、傷害・殺人事件の逃走には、車ではなく、キックボードが使用されることが多いのも注目すべき点でもあります。

 車であると、車両ナンバーから、足がつきやすいこともあり、キックボードだと、目立ちにくく、車の入れない細い道を縫って逃走が可能です。

 ここのところ、フランスでは、環境問題やコロナ感染回避の方法として、自転車やキックボードを安易に借りることができるVelib(べリブ)(パリのレンタルサイクルシステム・キックボードバージョンもある)なども急激に増え、使用する人も急増したことから、こんな逃走手段が登場したのは、皮肉なことです。

 事件が起こったのは、市内中心部の一見、平和そうに見える地域のことで、住民にも大きな衝撃が走っています。

 しかし、なぜ?銃まで使用して、街中で警察官を銃殺しなければならなかったのか? 先月、逮捕された一団の仲間の報復であったのか? また、警察に対しての挑戦、威嚇の意味であったのか? 犯人逃走中では、わかりようもありません。

 つい先日もランブイエ(イル・ド・フランス イヴリーヌ県)警察署にテロリストが押し入り、警察官を殺害するという痛ましい事件が起こったばかりです。

 いずれにせよ、パリでも連日、麻薬・ドラッグの密売組織が暴れているし、彼らの恐怖は、薬だけではなく、銃を持っているということで、ますます治安の悪くなっているフランスを連日のように感じるのです。

 マクロン大統領は、最近、警察官をここ数年で増員していくことを発表していましたが、一体、どれだけ警察官がいれば、平和な社会になるのか?と、人数よりも別の方法が必要なのではないか?と思ってしまいます。


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2021年5月5日水曜日

ロックダウン解除と共に失業者は増えるかもしれない 友人が失業する!

  


 昨日、私の数少ないパリでの日本人の友人から久しぶりに電話をもらいました。同じパリにいながらも、それぞれ家庭を持ち、自分の生活も仕事もある中、「どうしているかな?」と思いつつ、電話も何となくしそびれていて、「今度、メールかメッセージでも送ってみよう」と思っていたところでした。

 パリに来て以来、わりとすぐに知り合ったので、彼女とは、もうかれこれ20年以上の付き合いになりますが、彼女は私より、少し年上で、子供もうちの娘よりは、少し年上で、彼女がパリでしてきた子育ての様子を聞きながら、ずいぶん、色々なことを教わってきました。

 彼女は、私よりもずっと前からパリにいて、子供が生まれて仕事は一時、中断していたものの、子供が小学校に入ってしばらくして、仕事も再開し、パリでずっと仕事を続けてきました。ですから、彼女は、もうパリで25年以上仕事をしてきたことになります。

 子育てをしながら海外で仕事を続けるのは大変なことですが、彼女は、子供の教育にもとても熱心で、子供の学校のために引っ越しをしたり、また、フランスでの子供の日本語の教育などについても、ずいぶん参考にさせてもらいました。

 お互いに子供を持ちながら、仕事をする身として、お互いの仕事のこと、家族のことなどをずっとこぼし合いながら過ごしてきました。

 仕事で色々と大変なことがあっても、パリでの職探しは容易なことではなく、条件の良い転職先が見つからない限り、腹にすえかねることがあっても、決して自分からは辞めないようにしなくては・・とお互いを励まし合ってきました。

 フランスは、日頃は、「ちょっとどうなの??この国は・・」と思うことも多いのですが、社会保障は、とてもしっかりしている国で、業績不振で社員が解雇される場合には、法律で定められたそれなりの退職金が支払われ、失業保険もきっちり支払われ、その家庭の状況などにもよりますが、住宅補償、子供の養育費の援助、生活全般にわたる援助などが支払われるので、下手をすると、ギリギリの低賃金で働き続けるよりも、様々な援助を計算すると失業した方がよかったりすることになることもあります。

 特に、自己都合ではなく、会社の都合での解雇の場合は、勤続年数や職種にもよりますが、失業保険の支給される期間も長くなり、絶対的に失業後の条件は良くなるわけです。

 そして、失業保険が支払われる期間が過ぎても、会社の都合による解雇の場合は、金額は減りますが、その後も、一定の補償金が支払われ続けるのです。

 彼女が働いている会社は、観光業界に関わる仕事で、数年前から続いているテロなどによる影響ですでに大打撃を受けていた会社、もういつダメになるか・・もうダメかも・・という状態がずっと続いてきました。

 しかし、コロナウィルスによるパンデミックにより、会社自体が営業停止になっている間は、政府から支払われる補償金で、逆にずっと生き残ってきていたのです。

 それが、5月半ばには、ロックダウンが解除されるという目前になって、彼女には、会社から「解雇に関する話し合いの呼び出し状」が届いたそうで、会社側は、これから営業が再開できるようになるとともに、政府からの補償金が差し止めになるために、会社自身が従業員の給与を支払わなければならなくなるわけで、この段になって、従業員の削減に乗り出したわけです。

 ロックダウンが解除になったからといって、すぐに観光客が以前のように戻るわけではなく、利益が上がらなくても、従業員に対しては給与を支払い続けなければならないのですから、営業再開は、喜ばしいことではありながら、会社にとっては、さらに厳しい状況に追い込まれるわけです。

 彼女は、子供たちも立派に独立し、ご主人の仕事も続いているので、彼女が仕事を辞めたところで、生活に困るわけでもなく、長年勤めた仕事を辞めるショックはあるでしょうが、どちらかといえば、この会社からの解雇を待っていたようなものです。

 しかし、この会社からの呼び出しによる話し合いによって、退職時の条件が変わり、これからの補償の内容なども変わってくるので、重大な局面に、気が重いことでもあります。この退職時の内容を不服として、以前の雇用状態なども含めて、退職後に裁判を起こしたりした人もいました。

  退職時には、会社からの解雇といっても、プロフェッショナルセキュリティ契約(CSP)(従業員の再訓練を促進することを目的とし、解雇された従業員には、支援措置と特定の報酬が提供される)やプロフェッショナルセキュリティアローワンス(ASP)など、いくつかの選択肢があり、選択肢によって、かなり条件が違ってきます。

 彼女自身は、温厚な人で、あまり争いたくはないと言っていますが、法律など様々なことが絡んでくるこの問題の上に、滞在許可証の書き換えの時期が重なり、仮の滞在許可証の期限が切れてしまったのに、新しい滞在許可証が出来上がったという通知が来ないという二重の不安で、誠に気の毒な限りです。

 私も昨年から今年にかけて、滞在許可証の更新に関しては、さんざん、すったもんだをしたばかり、その後の色々な手続きも含めて、とても他人事とは思えません。

 しかし、もうフランス生活も長い彼女。これらの件に詳しい人に相談し、言うことははっきり言って、しっかり、その後の生活を見据えた選択を賢明にしていけると思っています。

 それにしても、ロックダウンが解除して、これから経済も再開していくと見られているフランスも、実のところは、こんなに身近なところで、こんな状況。

 全ての人が仕事に復帰するどころか、ここからしばらくは、さらに失業者が増える可能性は大きく、経済が元に戻る道のりは、まだまだ長いことを実感させられたのでした。



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2021年5月4日火曜日

ワクチンが驚くほど進んでいないのにオリンピックを開催する日本 オリンピックは「やった者勝ち?行った者勝ち?」

 


 日頃は、フランスでは日本についてのニュースが流されることは、滅多にないのですが、ここのところ、オリンピック開催のこともあり、日本の状況がちょっとだけ報道されています。

 未だ感染状況は日本の何倍も深刻な状況でロックダウンを解除し始めたフランスの状況を棚に上げているのは、もちろんのことではありますが、やはり世界的なイベントを開催する国として、現在の日本の第4波を迎えている状況を懸念している内容です。 

 これまでは、フランスのような大規模なロックダウンのような外出制限をしていないのにもかかわらず、奇跡的に感染が抑えられてきた日本の、マスクが日常的に使用されてきた背景や、クラスターの徹底的な追跡やスーパースプレッダーを割り出す感染対策について参考にするべきだとする専門家の意見が取り上げられてきましたが、今回の日本の第4波については、「昨年のオリンピック延期を決めた時点以上の感染の悪化状態であるにも関わらず、今のところ、オリンピックを開催することを諦めてはいない」と伝えています。

 しかも、特に不安視されていることは、日本のワクチン接種状態が全国民の1%程度しか進んでいないことで、今年に入ってから、ワクチン接種の遅れで国民から猛バッシングを受けたフランスでさえも、それからワクチン接種には躍起になって進めており、現在では、1回でもワクチンを受けている人は、全国民の23.5%まで上がってきています。(5月1日現在)

 日本人は、秩序正しい国民で、感染が増加している・・、第3波・第4波と言っても、フランスのように酷い状況になることはないとは思います。これまでの感染状況から見ても、ワクチン接種をそれほど急いでいなかったのもわからないではありませんが、オリンピックを開催するとなると、話は別です。

 日本はようやく4月に入って、高齢者に対するワクチン接種が開始し、6月末までには、高齢者に対するワクチン接種は完了する予定と発表しているようですが、ワクチン接種は、思っている以上になかなか進まないもので、余程の思い切った対策を取らない限り、(フランスでは、医者・看護師以外に救急隊員までワクチン接種を手伝っています)2カ月間で高齢者全員にワクチン接種を完了するというのは、かなり難しい話、だいたい日本の人口の29%近くが65歳以上なのです。

 海外からの観客をシャットアウトするとはいえ、世界各国からの選手団、マスコミを加えれば、相当な外国人が日本に入国します。現在は、日本入国に際して、隔離施設での3日間の隔離を含めた2週間の隔離をして、厳しい制限を行っている日本がオリンピックのために入国する人々に同じような制限を強要できるのか? また、それにおとなしく外国人全員が従うのかは、甚だ疑問です。

 ちなみにフランス人にとっては、罰則、罰金の発生しない規則は、ないも同然です。

 その上、オリンピックを支える8万人とも言われるボランティアの感染対策に対しては、PCR検査やワクチン接種どころか、今のところは、ボランティア1人につき、手指消毒液の小さなボトル1本とマスク2枚の配布のみが現段階での決定事項だというのには、驚きです。

 日本のことなので、競技場ごとでの感染対策は、かなり厳しく行われるとは思いますが、これだけの人が世界中からの人々と行き交う約2週間は、かなりの高リスクに違いありません。

 逆に各国から集まる選手団にとっては、(例えばフランスからなどは、)日本は、感染状況もずっと良い状況で、日本へ行くことに対しては、ほとんどリスクを感じないかもしれません。終われば、すぐ帰るのですから・・。

 今の日本の感染状況は、1日の新規感染者数が5千人前後ですが、もしも、フランスでこの数字まで減少したら、フランスでは、パンデミックは終わったくらいの感覚になると思うのです。

 以前、別のブログに日本でのオリンピック開催を懸念しているという話を書いたら、「オリンピックはやった者勝ち!」というようなコメントを頂いたことがありましたが、このワクチン接種が極端に遅れている日本の無防備な状況でのオリンピックが、果たして、「やった者勝ち」になるかどうか、私は、依然として、心配でならないのです。

 例えば、オリンピック関係者が日本に大勢入国して、そこで感染が蔓延して、皆が世界各国に散らばって帰って行ったとしても、ワクチン接種が進んでいる国では、大勢に影響はないような気がしますが、ワクチン接種が進んでいない日本に残された感染は、甚大な被害になりかねません。私は、むしろ、現在の状況では、「オリンピックはやった者勝ち」ではなく、「行った者勝ち」になるような気さえしているのです。

 フランスでも、ロックダウンが解除になって、夏には、第4波が訪れるかもしれないという話もありますが、なんと言っても、ワクチン接種がどんどん進んでいるので、ワクチン接種の拡大に希望を繋げていけます。

 フランスの感染がおさまった夏以降に、今度は、オリンピックが終わった後の日本の方が感染が悪化して、まだまだ日本に行けない状態が続くのではないか? そんなことを思ったりもしています。

 今は、私の心配が杞憂に終わることをただただ祈っています。


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2021年5月3日月曜日

パスツール研究所が示すフランス第4波のシナリオ

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  フランスのパスツール研究所(INSTITUT PASTEUR)の考察によると、5月3日から4段階に分けて計画されているフランスのロックダウン解除により、フランスは、7月以降に第4波が予想されると発表しています。

 第3波のピークはどうやら過ぎたように見えるフランスの現在の感染状況ですが、2020年5月にロックダウンを解除した状況(集中治療室患者数2,600人・1日の新規感染者数平均1,500人)に比べて、遥かに深刻な状況の中で(集中治療室患者数5,585人・1日の新規感染者数平均2万5千人)、ロックダウン解除が進んでいきます。

 ロックダウン中であっても、罰金がなければ規則が規則ではないフランスで、どのように規則を掻い潜るかを常に探っている中で、実際に解除された時の状況は、想像するだけでも恐ろしいことです。

 これからは、これまでの制限から解き放たれる国民とワクチンの進行状況との戦いになるわけですが、パスツール研究所の計算によると、現在、1日あたり、約35万件のワクチン接種が進んでいるフランスのワクチン接種が1日あたり、50万に達したとしても、7月以降に第4波を迎え、再び入院患者が増加することは避けられないとしています。

 昨年の段階で、感染拡大していたウィルスよりも60%以上感染力が強いと言われているイギリス変異種を始めとして、南アフリカ、ブラジル、インド変異種の出現、そしてこれらの変異種に対するワクチンへの有効性も先行きの見通しを難しくしています。

 また、彼らの計算によれば、昨年は、影響を大きく受けたと考えられている気温の上昇も、早すぎるロックダウン解除の中で、感染を抑えるには、今年に新たに登場している変異種に対しては、充分ではないと予測しています。

 そして、ウィルスが気候の影響を受けている場合でも、夏の終わりまでには、何とか感染を最大限に抑え、ワクチン接種を最大限に拡大しない限り、また秋、冬を迎えるにあたって、波の高さは低くなるとしても、再び感染が広がることになります。

 しかも、5月3日から解除される中学・高校・大学の再開は、ワクチン接種に該当しない年齢層であり、再び感染が拡大されることが心配されています。

 マクロン大統領は、このワクチン接種拡大の最後のステージとして、6月15日以降は、全ての成人(18歳以上)がワクチン接種を受けることが可能になることを発表しています。そして、これから、しばらくは、毎年、ワクチン接種が必要になるとも話しています。

 毎年、ワクチン接種にかかる費用は、年間52億ユーロだそうで、そうは言っても、コロナウィルスが根絶する見込みがない限り、ワクチンなしで、日常に戻ることはできません。

 ロックダウンの段階的な解除が発表されただけで、心配の声も上がる中、すでに解除気分満載のフランス、夏のバカンス時期を待てずに、旅行に出る人も激増、ゆっくりとした制限解除が不可欠と警鐘を鳴らすパスツール研究所の指摘をよそに、夏のバカンス時期には、昨年以上の人々がバカンスに出ることでしょう。

 この綱渡りの状況に、相変わらず、余裕で他の国々の第4波について語っているフランスの報道の中には、第4波を迎えつつある日本についての報道も含まれています。

 AFPによると、「3月初旬以降、日本での新規症例数は着実に増加しており、1月の第3波のピークに近づいています。 4月27日の時点で、日本では、主にイギリス変異種の蔓延が原因で、4,958件の新たな感染が発生。

「クーリエ・インターナショナル」によると、政府専門家委員会の尾身茂会長は4月2日、「これが第4波の始まりと言える」と述べた。オリンピックを控えている日本が、少なくとも1回のワクチン接種を受けている日本人の1.8%だけで、開会式が7月23日に予定されているオリンピックへの脅威を心配しています。」と報道しています。

 フランスの第4波の鍵を握るのは、ほぼ日常生活が戻るとされている6月30日までに、ワクチン接種がどれだけ拡大できるかであることに違いはありませんが、これに失敗した場合は、第2波、第3波以上の入院患者の増加が心配されています。

 フランスの人たち・・お願いだから、もう少し我慢して・・。


パスツール研究所

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2021年5月2日日曜日

フランス人にとってメーデーは特別な日 2年ぶりの5月1日メーデーのデモ 


     Plus de 150.000 personnes ont manifesté en France pour le 1er-Mai, a annoncé samedi la CGT .


 毎年のことですが、5月1日のメーデーは、フランスでは祝日で、「労働者のための祭典」と呼ばれ、スズランの花を送り合う習慣があります。この日の少し前からは、スズランの花がどこでも売られていて、当日などは、街を歩けば、お花屋さんはもちろんのこと、どこから摘んでくるのか、小さなブーケにしたスズランの花を売っている人があちこちに登場します。

        

あちこちで売られている小さなスズランのブーケ


 反面、最近は、夜間外出禁止のために時短営業を強いられているために、店舗も日曜・祝日も営業しているのですが(もともと時間関係なしに営業停止になっている店舗もありますが・・)この日ばかりは、ほとんどの店舗が閉店、業種にもよりますが、もともと労働者のための祝日ということで、この日に営業した場合は、フランスでは、従業員に対して、この日の労働に対しては、2倍あるいは3倍の賃金を払わなければならないことが法律で定められています。

 可憐なスズランの花とは対照的に、この日のハイライトは、何と言っても、フランスのお家芸ともいうべく「デモ」なのです。フランスでのデモは日常のことではありますが、この日ばかりは、労働者の祭典であるだけに、ここぞとばかりに大腕を振って「デモ」が開催されます。(まあ、いつも大腕を振っているけど・・)

 昨年は、1回目の完全なロックダウン中だったので、メーデーとはいえ、さすがにデモは行われなかったのですが、今年は、すでに制限もかなり緩くなってきている中、5月1日が土曜日(日常的なデモはだいたい土曜日)に重なったこともあり、天候が悪かったにもかかわらず、パリだけでも2万5千人、フランス全土で15万人がデモに参加したと発表されています。

 私はデモに出かけたわけではありませんが、たまたま乗っていたバスの中で「これからデモに行く」と話しているかなり年配の男性に出くわして、「こんな年配の人まで出かけるのか・・」と思っていると、周りのおばあさんたちが、「ちゃんとソーシャルディスタンスをとることを忘れないで!」などと声をかけているのを側で「何か微笑ましいな・・」と思いながら、聞いていました。

 しかし、2年ぶりのメーデーのデモはいつもと同じといえば、同じなのですが、来年に大統領選挙を控えていることもあり、一部は選挙活動のような場面もあり、また、いくつかの場所では、ヒートアップして暴れ出す人が出て、また、これに紛れてここのところ、隙をついては登場するブラックブロックと呼ばれる暴力集団が暴れ出そうと、パリの数カ所で警察と衝突し、一部では、デモが中断され、ゴミ箱を燃やしたり、パリ11区では銀行の窓ガラスが割られたり、バスの停留所が壊されたりする騒ぎになりました。

 この日のデモでは、パリだけでも46名が逮捕されています。(まあ、こんな状況もフランスでは普通と言えば、普通、いつもの流れなのですが・・)

 ただでさえ、労働者の権利、労働組合の強いフランスでのメーデーのデモは、彼らにとって、ある種、お祭りのようなものでもあり、彼らなりの使命感をもった行動であることは、フランスの文化の一部であり、まったく、デモなしにフランスは語れないと言っても過言ではありません。

 彼らは、「デモで社会に訴えかけ続けること」を誇りに思っているので、社会に反抗するという意味よりも、自分たちの社会をよりよくしようと主張しているところが、彼らの行動を支えているのです。

 しかしながら、その実、自分たちに都合の良い「権利の主張」であることも少なくないのが、どうにも首を傾げたくなる場合も多いのですが・・。

 ロックダウンの段階的な解除が発表され、未だ感染拡大が心配される中、彼らが取り戻したい日常の中には、デモが心おきなく自由にできる日常でもあるのです。(まあ、コロナ渦中でもこれだけの規模でやっているので、勝手に取り戻しちゃってはいるのですが・・)

 そんなデモ騒ぎに紛れて、パリ12区のベルシー公園では、数百名にも及ぶパーティーが行われ、警察が出動する騒ぎも起こっています。


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2021年5月1日土曜日

インド変異種(デルタ株)がフランスにも上陸していた

  


 つい数日前に、オリヴィエ・ヴェラン保健相がフランスでは、まだインド変異種は発見されていないと言っていたのに、やっぱり、すでにフランスにもインド変異種は上陸していました。

 現在のところ、フランスで確認されているインド変異種の症例は、7例(うち2例は海外圏グアドループ)で、ヌーヴェル・アキテーヌ(フランス中部から南西部にかかる地域)、ブーシュ・デュ・ローヌ(プロヴァンス・アルプ・コート・ダジュール地域圏)で検出されています。

 保険当局によると、今のところ、これらの感染者は、インドに渡航歴のある人やその家族で、現在のところ重症化には至っていないということです。

 とはいえ、世界で2番目に人口の多いインドで、1日の新規感染者数が40万人を超え、1日の死者が4千人を超えるという壊滅的な状況は、フランスでも毎日のように報道されているインドでの酸素ボンベを奪い合う人々、一つのベッドに複数の人が寝かされている状況、死体が次々に火葬されている終末期的なシーンに、この変異種の脅威を感じずにはいられません。

 すでに猛威を振るっているイギリス、ブラジル、カリフォルニア、南アフリカ変異種に次ぐ新たなインド変異種は、新たな脅威的な変異種として世界に認知されるようになりました。

 インド変異種(B.1.617変異種)として認知されているこの変異種は、2020年10月にインド中部のマハラシュトラ州のガプールで最初に検出されました。この変異種の出現以来、インド国内で20万人以上の死者を出し、すべての大陸に広がっています。

 インド変異種は、 「二重変異体」として認定されており、ウイルスが私たちの侵入を可能にする鍵であるSars-CoV-2ウイルスの「スパイク」タンパク質において、2つの不穏な変異の組み合わせを特徴としています。

 このインド変異種については、まだ多くの未知の部分が残っています。症状については、頭痛、鼻づまり、喉の痛み、筋肉痛など、元のコロナウィルスとの顕著な違いはありません。

 これらの症状に加えて、多くの人が下痢の症状に苦しんでおり、今年の暑くて乾燥した気候(インド)で、咳やくしゃみが増えるために鼻や喉から出血する人もいるようです。

 これまでのコロナウィルスは、ある程度、気候の影響を受け、気温が上昇すると、ウィルスは活発化しなくなっていましたが、暑くて乾燥した気候でこれだけの感染が拡大するということは、気温の上昇に対する耐性を備えた変異種であると考えることもできます。

 このインド変異種は、気道に急速に移動する傾向があり、肺に感染すると、鼻や喉に存在しなくなり、PCR検査で検出不可能になる可能性があります。したがって、PCR検査によってこのインド変異種のウイルスを検出する可能性は、症状が現れる前、できるだけ早くに検査を行うことが必要になってくる、非常に厄介なものでもあります。時期を逸してしまった場合は、肺のX線検査が必要となります。 

 また、変異ウィルスは何重にも変異をしていて、様々な特徴を併せ持つことがあり、時にそれは、人種などによって影響が変わる可能性も指摘されています。

 WHOによると、これまでにアメリカ、カナダ、オーストラリア...すでに5つの大陸に存在するインドの変異種は、ベルギー、スイス、ギリシャ、イタリア、そしてフランスなどのヨーロッパの「少なくとも17か国」で検出されています。

 しかし、壊滅的な状況に襲われているインドの映像を見る限り、大いに衛生環境にも問題はあるように感じられ、このインド変異種が必ずしも他の国でも同じような状況を起こすかどうかは疑問ではあります。

 科学評議会によると、インド変異種に対するワクチンの有効性を決定するための確固たるデータはまだ充分ではなく、「ワクチンの有効性は維持されているが低下していると予想できまる」と科学評議会は結論付けています。

 次から次へと現れる変異種、フランスでは、現在、急ピッチでワクチン接種を進めており、少なくとも1回はワクチンを受けている人が高齢者施設の居住者の99%、70歳以上の69%、60歳以上の60%、18歳以上の30%まで数字が上がってきており、想像以上に頑張っているのに、ちょっとだけ救われる気がします。

 とりあえず、ワクチンを打てば、100%完璧ではないにしても、リスクは減少するのです。インド変異種の波が押し寄せる前に、どうにか、ワクチンを少しでも進めて欲しいと思います。何だか、波に追いかけられる波打ち際にいる気分です。


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