先週末、パリ18区で3人の警察官が発砲し、車に乗っていた4人のうち2人に重症を負わせ病院に搬送され、そのうち1名が死亡するという事件が起こっています。
警察関係者の発表によると、土曜日の午前中、パリ18区で3人の警察官が1台の乗用車を検問しようとしました。車には4人が乗っていましたが、そのうちの1人がシートベルトをしていなかったためです。警察官は車をチェックするために近づきましたが、運転手は検問を拒否して逃走しました。
しかし、車は渋滞に巻き込まれ、自転車に乗った警察官が車に追いつき、車を停車させるように再度、呼びかけると車は警察官を振り切り再び車を発進させ、自転車に乗った警察官を転倒させてしまいました。
その後、3人の警察官は車に向けて10発も発砲。現場の目撃者によると、弾丸は車のタイヤにも命中し、車は他の車に衝突しました。
PARIS - La police ouvre le feu après un refus d’obtempérer.
— Clément Lanot (@ClementLanot) June 4, 2022
2 blessés graves dont un à la tête et un au thorax : pronostic vital engagé. pic.twitter.com/sVyU0LcpeK
警察官の撃った弾丸は車のタイヤだけではなく、運転手の胴体、同乗者の一人の頭部に命中し、二人とも救急搬送されましたが、頭部を撃たれた同乗者は翌日、死亡しました。
この事件が起こったのは、モンマルトルの丘のふもと、クリニャンクール通りとカスティーヌ通りの交差点で、特別に危険な場所というわけでもありません。
情報によると、乗客の何人かは警察に知られている人物で、事件当時、アルコールや薬物を使用していたとも言われていますが、もともと、シートベルト未着用での検問からの逃走に拳銃を発砲するなど、あり得ないことです。
車を止めるために拳銃を発砲した警察官の身柄は拘束され、この事件は、国家警察総監部(IGPN)に委託され、「公権力を持つ者の自発的な故殺(故殺未遂)、武器による意図的な暴力」で捜査が開始されています。
私はフランス国内をあまり旅行することはありませんが、たまに地方に行って帰ってくると、パリには、いかに警察官が多いのかと、あらためてびっくりさせられることがあります。
それだけ人も多く、治安も悪いということなのでしょうが、パリの警察官はその職務にもよりますが、かなりイカつい重装備で練り歩いています。時に駅や人の多い場所などで見かける憲兵隊などは、ふつうの拳銃ではなく、ライフルのような長い拳銃を携帯していますが、それがけっこう、あどけない顔をしている若い子だったりするのをどこかアンバランスなような気がして、「それ・・本物なんだよね・・」と思って眺めたりすることもあります。
今回の事件は、そもそもの理由がシートベルトの未着用という到底、拳銃を発砲してまで止めなければならないこととは思えないだけに、このような警察官の行動には、空恐ろしいものを感じずにはいられません。
市民を守るためにいるはずの警察官が市民を殺してしまった事件です。
先日、サッカーのヨーロッパリーグの決勝戦の観客入場の際の混乱で、パリ警察が観客に向けて催涙ガスを容赦なく発射したことも大きな問題として周囲のヨーロッパの国々からも非難の声があがっていましたが、今回は、催涙ガスどころか拳銃・・。
公権力を持つ立場の一部の人の暴挙は、一般市民には止めようがありません。
パリ18区警察官発砲事件
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