何から何まで驚愕の突っ込みどころ満載というか、どれだけ、首を傾げても傾げきれないような事件です。
10月3日から4日の夜、マルセイユ3区でVTCの運転手である30歳の男性が首に銃撃を受けて、交通事故を起こして死亡するという事件が起こりました。現場の写真を見ると、激しく学校の門に衝突して大破した車の様子から、一見、交通事故か、あるいは、学校へのテロ攻撃?と見えないこともありませんが、この被害者は、この衝突の前に首を銃で撃たれており、救急隊が到着した時には、すでに心肺停止状態にあり、蘇生は不可能であったということです。
ところが、この事件が起こってまもなく、警察に刑務所の独房から通報があり、この通報者自らは、この事件の先導者(黒幕)と名乗り、この実行犯の少年の名前と居場所を知らせてきたということで、この先導者の情報どおりに、逮捕されたのは、14歳の少年だったという・・一体、どこでビックリしたらいいのかわからない事件です。
この14歳の少年、刑務所の独房にいる先導者(マルセイユの麻薬密売組織DZマフィアのメンバー)が、SNSで殺し屋を募集、この14歳の少年に殺害を依頼していたそうですが、この少年の仕事に落ち度があった・・彼の依頼では、殺害後に車を燃やすはずだったのに、車を燃やしていない・・つまり、不完全な仕事のために雇った殺し屋を警察に売ったと話していると言います。
この通報は、この殺し屋の仕事を請け負っている者たちへの見せしめというか、仕事をきっちりやらないとこうなるぞ・・ということを知らしめているような気もします。
まず、刑務所の独房からなぜ?自由にSNSを使ったり、電話ができたりするのか? そもそもなんで携帯もってるの? また殺し屋として14歳の少年を雇う?また14歳の少年が殺し屋の仕事を引き受ける・・全てが意味がわかりません。
この黒幕の男によると、この事件は、10月1日から2日の夜にマルセイユ3区で刺殺された暗殺事件への対応であることも示唆しており、麻薬密売組織の抗争とみられています。
マルセイユの警察当局によると、現在、マルセイユで起こっている麻薬密売に関連した事件に関係した者の35.87%は未成年者であるということで、この麻薬密売組織は、人身売買に積極的に参入しているが、この中には、殺し屋として採用される者もいるということで、若い殺し屋は犯罪組織に雇われ、スナップチャットなどのソーシャルネットワーク上で頻繁に利用されており、暗殺1件につき2万~3万ユーロ(約320万円~480万円)が支払われると言われています。
この末端の麻薬密売人は、14歳から21歳が中心ということで、今回の殺し屋が14歳であったということは、衝撃的であると同時に、この背景からは、あり得ない話ではないのかもしれません。
マルセイユ警察当局の信じられないほどの努力にもかかわらず、この4~6年間、治安の悪化は激化する一方で、この麻薬密売は巨額の金をもたらし続けているということです。
この14歳の殺し屋はニーム生まれのコモロ人で、彼のプロフィールは警察にもよく知られていたと言います。彼は重大な犯罪歴のある家族の出身で、両親は加重ポン引きで有罪判決を受けて刑務所に収監されているそうで、もうそれ自体も痛ましい生い立ちのような気がしてきます。
よく、司法制度については、日本の司法制度が人質司法などと非難されますが、これでは、なかなかなことをしないと刑務所に収監されないうえに、刑務所の独房で携帯使い放題のようなフランスの司法もどういうものか?とも思います。
もう、何から何まで問題づくめのこの事件、徹底的に追及してほしいものです。
14歳の殺し屋
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