2023年12月25日月曜日

ノエルと年末年始に警察官がまさかのストライキ

  


 パリの日常では、もうすっかり見慣れてしまって、空港などはもちろんのこと、大きな駅や街中でも、きっと、初めて見たら、ギョッとするような数のイカつい警察官や、たくさんの警察車両が並んでいたりしますが、もうそんな光景にも慣れてしまって、あらためて、驚くこともなくなっていますが、考えてみたら、パリは普段から、警戒のために巡回してくださっている警察官の数は他の都市と比べても相当数にのぼるものと思われます。

 たとえば、他の地方に行っていたりして、パリに戻ってくると、あらためて、パリは本当に警察官の多い街だなぁと思います。

 しかし、私たちが、一見、一括りに見てしまう警察も国家警察やその特殊部隊、自治体の警察、憲兵隊と様々な組織で構成されていますが、このなかの自治体警察の労働組合が26,000人(フランス全国地方自治体警察官連盟(FNPMF)によると、各自治体の市長の競争によって採用された地方公務員と自治体警察官の数は20年間で倍増し、現在では2万6000人に及んでいる)に、まさかのノエルと大晦日から元旦にかけてのストライキを呼び掛けています。

 ノエルは、どちらかといえば家族で過ごす人も多いため、そこまでの緊張状態が起こることは少ないとはいえ、祝祭の日といえば、世間は少なからず興奮状態にあり、問題も起こりやすく、ましてや、大晦日の日ともなれば、圧倒的に元気な若者たちは外に出て騒ぐ者が多く、毎年、何十台もの車が燃えることでも有名な暴動じみたことが起こる日でもあり、よりにもよって、そんな日に警察がストライキとは前代未聞のことです。

 彼らはこのストライキの要求として、「自治体警察の給料は低く、国家警察はより良い社会保障を受けている」と訴え、給与水準の引き上げを求めています。また、年金についても、35年間就労して、月額1,200~1,400ユーロのみで、同じ危険にさらされながら仕事をしているのに国家警察とはえらく違う!」と。

 ストライキを呼び掛けるからには、最も効果的な(世の中を混乱させたり、迷惑をかける)タイミングを選択しようとするのは、わからないでもありませんが、こと一般市民の安全にかかわる職業では、それってありなの?という気がしないでもありません。

 しかし、今回の彼らは、最終的にはパリオリンピックという特別な切り札も持っており、ノエル、大晦日から元旦にかけて、そして、2月3日での全国の自治体での集会を予告しており、それでも改善されない場合には、「パリオリンピックの警備には携わらない!」と警告しています。

 パリオリンピックといっても、競技はパリだけで行われるわけではなく、全国規模で展開されるもので、各自治体の警察の協力は必要不可欠です。

 日頃、私が見かけるたくさんの警察官のうち、一体、自治体警察がどれほどの割合を占めているのかはわかりませんが、オリンピックともなれば、マックスの警戒体制が敷かれる予定になっているのは、明白です。

 それが崩れることは、大変なことです。

 パリは、平常時でさえ、観光客が多い場所で、観光客だけでなく、その観光客狙いの犯罪者も周囲の国々から集まってくる場所でもあります。

 ノエルと年末年始に加えて、オリンピックまで盾にしている自治体警察は、要求を叶えられるのでしょうか? 

 しかし、今後、年明け以降、オリンピックを盾にしたストライキが他にも続々と起こる可能性があるかもしれません。


自治体警察ストライキ


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2023年12月24日日曜日

フランス人がノエルに使うお金 物価高にもかかわらず減少

  


 フランス人にとって、一年のメインイベントの大きな一つでもあるノエル、クリスマスのために使うお金は、平均 549ユーロ(約8万6千円)と、昨年よりも19ユーロ減少しているという調査報告が出ています。

 これは、昨年よりもかなり円安になっているため、円に換算すると多くなっているという円換算では妙なことになっていますが、現実には、インフレのためにほぼ全ての値段が上昇しているなか、減少しているということは、事実上、かなりの緊縮財政をとっていると言えます。

 この 549ユーロには、ノエルは主に家族と過ごすことが多いために帰省するための交通費や、食事、プレゼント、クリスマスツリーなどのデコレーションなど、全てが含まれた金額です。

 なかでも、プレゼントに関しては、年々ヒートアップしていた感があり、フランス人一人につき、用意するプレゼントの数は平均7つと言われており、この家族に愛情を示す愛情表現のひとつとして習慣となっているプレゼントはかなりのプレッシャーになっているという調査結果も発表されています。

 プレゼントの数を減らすのではなく、いかに安く抑えるかという点で悩ましく思っているということで、困っているとはいえ、ノエルの準備の買い物をしている人は、どこかワクワク楽しそうで、そんな中でも、しっかり予算を抑えているのは、やはり、このインフレがノエルにも大変な影響を与えていることがうかがえます。

 実際には、このプレゼントにかける割合が依然として大きく、このノエルのための全予算549ユーロ中、プレゼントにかける金額は平均 332ユーロと最も多く、(ちなみに食事には 120ユーロ)かなりをプレゼントにかけていることがわかります。

 この時期は、メトロに乗っても、大きなプレゼントの入った紙袋を下げている人が多く、恐らく、フランスでは、最も商品が売れる時期でもあり、今年は、クリスマスイブが日曜日にもかかわらず、多くの店舗は営業して(通常、日曜日は休業)、売り上げをあげることに努めています。

 昨年は、冬の間は電力供給が間に合わないかもしれないと言われつつ、イルミネーション点灯時間が制限されたりしていたこともありましたが、今年は、そんな様子はなく、キラキラのパリ。

 イルミネーションの準備も例年よりも早く始まっていて、このフランス人が最も消費する季節を盛り上げようとしていましたが、結果的には、前年よりも、クリスマスの消費はダウンの傾向にあるようです。

 昨年、フランス人がノエルの準備のために使った予算は前年よりも増加していましたが、今年は減額、ノエルはフランス人にとって家族とともに過ごす夢のような時間であると同時に、けっこう現実的でもあり、イルミネーションと消費は正比例しないようです。


フランス人のノエル、クリスマス予算


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2023年12月23日土曜日

俳優ジェラール・ドパルデューのレジオンドヌール勲章剥奪とマクロン大統領の発言

  


 ジェラール・ドパルデューはフランスの有名な俳優です。彼の俳優としての多くの業績とともに、様々なスキャンダルでも有名な存在でもあります。

 彼の歩んできた道は幼少期から決して平坦なものではなく、俳優として成功をおさめてからも、税金逃れのために、ベルギーに移住したり、プーチン大統領と親交が深かったり、最近では、女優のシャルロット・アルヌールからの告訴を受け、2020年から強姦罪で起訴され、その後、女優のエレーヌ・ダラスによる2007年に遡る性的暴行行為とスペイン人ジャーナリストで作家のルース・バザによる1995年に遡る強姦行為など、現在3件の性加害問題に関する告訴状が提出されています。

 まるで、フランス版 Me too 運動のように、1人が告訴を始めたことで、その後に立て続けに告訴状が提出されたカタチになっています。しかし、彼自身はこの告発を否認しており、この事件は、まだ捜査中で、有罪判決は出ていません。

 しかし、こんな状況の中で、先日、フランステレビジョンで12月7日に発売された雑誌「Complement d’investigation」でジェラール・ドパルデューを特集した一連の内容が放送され、物議を醸しました。

 内容は、北朝鮮で馬術のデモを観戦するジェラール・ドパルデューの発言などを扱っているもので、その中での彼の少女に対する発言が性的に侮蔑的で不適切であり、女性の品位を傷つけるものであると論争を巻き起こしているのです。

 同時にこれはフランステレビジョン側が故意に映像を編集して、彼を陥れようとしているとする意見があるものの、フランステレビジョン側は、「私たちのドキュメンタリーには、同じくらい深刻で衝撃的な問題のある箇所が無数にある」と、自分たちの報道は誠実なものであると反論しています。

 そして、この論争に輪をかけたのが、別のインタビュー番組でこの件について質問を受けたマクロン大統領の彼を庇っているとも思えるような発言でした。

 ジェラール・ドパルデューは、1996年シラク大統領政権下にレジオンドヌール勲章を受章していますが、このいくつもの告訴にまつわる彼の行為や今回の騒動により、文化相はレジオンドヌール勲章(フランスの軍事、社会、文化への功労者に送られる賞)の懲戒手続きの開始を発表しています。

 この件について質問されたマクロン大統領は、文化相からの申し入れがあることは認めたものの、最終的に決定するのは大統領である自分であるとし、また、自分は彼の友人でもあり、大ファンでもあることを公言し、彼はフランスの誇りであり、現段階では推定無罪であるとし、「レジオンドヌール勲章は道徳を説くためにあるのではない」と語りました。

 さすがに強姦罪で告訴されている状態は、もうすでに道徳云々の範囲を越していると思われるのに、なぜ?マクロン大統領がこれほどまでにグレーな彼を庇うような発言をするのか?大変、奇妙な気もします。

 しかし、実際に彼が有罪判決を受けた場合は、大統領が決定するということにはなっていますが、ほぼ自動的に剥奪されるようです。

 過去にもこのレジオンドヌール勲章が剥奪された例は、実はけっこうあるようなのですが、ウェブサイトでは、この措置は匿名化されているようで、官報のページでレジオンドヌール勲章のメンバーが除外されたことがわかっても、アクセスが保護されているためにそれが誰であるのかを知ることは簡単ではないようです。

 しかし、過去にこのレジオンドヌール勲章が剥奪された例の中には、外務省の現金ボーナス問題・・なんていうのもあったりで、まったく、どこの国でも同じようなことがあるんだな・・しかも、レジオンドヌール勲章叙勲者だったとは、びっくりです。


ジェラール・ドパルデュー レジオンドヌール勲章剥奪


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2023年12月22日金曜日

7年前に起こった日本人留学生殺人事件 容疑者に懲役28年求刑

  


 7年前、2016年12月にフランス東部ブザンソンに留学していた日本人女子学生(当時21歳)が殺害されたとされる事件の控訴審で元交際相手のチリ人の男性に対し、第一審と同じ懲役28年が求刑されました。

 今回の裁判は、13日間にもわたる控訴審で、裁判所は、このチリ人が新しい交際相手ができた彼女に対して強烈な嫉妬にかられてフランスに戻り、彼女を取り戻すか、それが叶わなければ殺そうとしていたとし、2016年12月4日から5日の夜に黒崎成美さんを計画的に殺害し、その後樹林帯に遺体を処分したとみなしました。

 彼は、この7年間の間、一貫して無実を訴え続けているうえに、遺体も発見されていないのですが、公判を通して、彼は、彼女との関係における彼の横暴な態度、嫉妬、脅迫ビデオ、フランシュ・コンテでの旅程、森や彼女の大学の寮周辺での夜間の行動などの目撃証言に加えて、 2016年12月4日の夕方、そして夜に聞こえたとされる叫び声など、彼に不利な数多くの証拠があがっていました。

 彼は、彼女に会うためにフランスにやってきたということと、彼女が行方不明になった前日の夜に彼女の大学の寮の部屋をノックしていたところを証人に見られたということは、認めたものの、「それでも、私は殺人者ではない」と主張し続けています。

 彼は、裁判中は、あまり感情を表に出さなかったと言われていますが、裁判に集中し、膝の上に置いたノートに必死でメモを取りながら、自分の弁護に積極的に取り組み、 特に収監中に看守に受けた暴行について言及したり、彼女を殺していないことを繰り返した挙句に泣き崩れて最後まで、「私は彼女を殺していない」と繰り返していたそうです。

 具体的な証拠については、詳細は不明ではありますが、彼が7年間、否認を続けていることや遺体を処分したとみなされている森からも遺体が発見されていないことは、冤罪の可能性もあり得るのではないか?とも思ってしまうところですが、彼には殺人罪で懲役28年という判決が下されたうえに、刑期が終了すれば、フランス領土への帰還も禁止されます。

 もっとも、もし、これが冤罪であったなら、頼まれたってフランスには二度と来たくないだろうと思いますが・・。

 また、裁判所は民事審理で損害賠償に関する判決も下しています。フランスでは、被害者の遺族が被告に対して、損害賠償を求めることができます。この事件に関しては、裁判長は、被告に対して、被害者の両親に6万ユーロ(約940万円)、被害者の姉妹に5万ユーロ(約785万円)、最後に被害者の最後の恋人に5千ユーロを支払うことを命じています。

 被害者の両親と姉妹に別々に支払ううえに、最後の恋人にまで支払いというのも、ちょっとビックリです。

 また、この控訴審では、被害者家族の悲しみにも注目されています。被害者側の弁護士は、遺族の訴えているありえない追悼や永遠の苦痛の他、自殺未遂を起こしたことや、被告の足跡をたどるためにチリを旅したことなども説明し、裁判の傍聴中、被害者の母親が何度も泣き崩れ、弁護士の弁論を中断しなければならなかったと言われています。

 被害者の遺族の感情は察するに余りあるところではありますが、被告側の弁護士は、この判決に対して、不服を申し立て、最高裁へ向かうことを発表しています。


日本人留学生殺人事件


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2023年12月21日木曜日

移民法の改正で大騒ぎのフランス

  


 フランスの移民法については、長い間、物議を醸し続けていて、以前から、移民が犯罪を犯したりするたびに、この人物は、OQTF(公序良俗を著しく脅かす異常事態に陥った外国人に対して、フランス領土を離れる命令)が発行されていたはずだった・・などという事実が浮上してきたりと、問題視されてきました。

 今回の移民法の改正も、主には「治安に対する深刻な脅威となる外国人の排除を促進することを目的」としていますが、正直なところ、私自身も「移民」であり、とばっちりを受けるのではないか?と、あまり心穏やかに聞けるニュースではありません。

 特に、今回の改正法の中の基準の一つに、社会保障などの条件についても、外国人でもEU圏内からの場合とEU圏外からの外国人とを区別して規定していたりして、どっきりさせられます。

 一方では、内容を見ると、「フランスに長期滞在している人やフランスに個人的・家族的つながりがある人であっても、特に犯罪で法的に有罪判決を受けた外国人の国外追放が認められ、少なくとも懲役10年以上、場合によっては5年の刑が科せられることになる」とか、逆に「今までは違ったの?」と驚く内容のものもあります。

 また、排除するばかりではなく、労働力不足の業界(建設や介護など)においては、1 年間の期限付きの「不足している専門職で働く」滞在許可を創設しています。

 「不法滞在しているこの業界での労働者は、正規化を要求できるようになり、 この新しいカードは、一定の条件(フランスでの滞在期間が3年以上(不法滞在が3年以上?と思うとなんか変・・)、過去24か月のうち緊張状態にある業界で8か月の経験)のもとで自動的に発行される」などという項目には、はなから不法労働者ありきの法令で、まあ現実的といえば、現実的ですが、なんか、もやもやするところでもあります。

 これに加えて、「不法就労と闘うため、非正規な状況で労働者の雇用主に対し、関係する従業員1人当たり最大4000ユーロの行政罰金(再犯の場合は2倍)を新たに課すことになる。 この罰金は既存の刑事および行政制裁に加えられることになる」という項目も付け加えられています。

 現在のところ、賛否両論、喧々囂々としているので、今後、修正が加えられるところが出てくる可能性もないではありません。

 しかし、これだけ大騒ぎになるというのは、それだけフランスには移民が多いということでもあります。

 私にとっては、個人的には、社会保障などの改正が気になるところではあり、必死になって、この法改正されている文面を追っていたのですが、色々と改正、廃止・・などと続いている最後に、「難民・滞在許可証保持者は除外」とあり、そもそも、滞在許可証を持っていない人がどうやって社会保障をこれまで受けてこられたのだろうか?と不思議に思ったりもしました。

 毎回、といっても、10年に一度ではありますが、この滞在許可証更新のたびにドキドキし、特に前回の更新の時には、ちょうどロックダウンの時期と重なってしまったために、お役所は、大混乱となり、手続きに異常に時間がかかり、実際には、滞在許可証の期限が切れてしまって、「これでは私は不法滞在者ではないか?」と泣きそうになっていたような小心者の私には、やっぱり全面的に理解することは難しいかもしれません。

 しかし、移民の一人である私が言えることではないかもしれませんが、今回の問題も移民が膨れ上がってしまった上での問題でもあり、「最近は、日本も治安が悪くなった・・」などという声もありますが、「いやいや、まだまだ・・あまいあまい・・」と思ってしまうほど、質の悪い移民は多いわけで、容易に受け入れてしまっては、フランスみたいに大変なことになります。


フランス 移民法改正


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2023年12月20日水曜日

フランス人の死に至る三大疾患

  


 今週、発表された、フランス公衆衛生局、Insermおよび保健省統計局(Drees)が実施した主な死因に関する調査によると、がん、心神経血管疾患、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)が三大死因として挙げられています。

 ただし、これは、2021年のデータをもとにしているので、パンデミックの影響を大きく受けていた年でもあるので、一般的な年とは異なる結果となっている向きもあります。

 フランスでは、年間で約66万168人が死亡していますが(2021年)、そのうちの4分の1がガン、5分の1が心神経血管疾患、そして10分の1が新型コロナウイルスによるものであったというデータが出ています。

 ガンに関しては、肺、気管支、気管の腫瘍が最も多く、次いで、結腸直腸腫瘍 (10%) が死亡率の高い腫瘍であり、次に乳癌が続き、女性の腫瘍による死亡のほぼ 17% を占めています。

 この発表ではまた、2020年以降、循環器系、内分泌疾患、栄養疾患、代謝疾患、消化器系の疾患による死亡率が増加していることも指摘しています。 

 それまで、心神経血管疾患による死亡は減少していましたが、これが増加しているという過去の傾向という変化は国際的な結果と一致しており、新型コロナウイルス感染症の流行が死亡率に直接的および間接的に及ぼす影響の可能性もあると言われています。

 フランス公衆衛生局の疫学者アンヌ・フイエ氏は、「ケアへのアクセスの困難や、社会的孤立の拡大が行動や生活環境の違いなども生命の分かれ目に影響を与えた可能性があると考えられる」とも説明しています。

 新型コロナウイルス感染症に関しては、依然として、多くの高齢者が死亡していますが(2021年)、2020年よりは減少しています。新型コロナウイルス感染症による死亡者のほぼ半数は85歳以上の人々に関係していますが、65 歳から 74 歳の割合は 11.9% から 15.8% に増加し、65 歳未満の割合は 6.2% から 8.4%とわずかに増加しているのも、ワクチン接種の年齢層別の拡大とロックダウン解除後の人との関わり方も関連しあっているとも言われています。

 また、新型コロナウイルス感染症による死亡者の10人中9人近くには、少なくとも1つの併存疾患または合併症が死亡診断書に記載されている。この後、高齢者、既往症がある人は新型コロナウィルス感染の際の重症化のリスクが高いと分類されていたことも合点がいきます。

 新型コロナウイルス感染症の流行は、原因が何であれ、自宅での死亡者数の増加も引き起こしました。 2017年から2019年にかけて、死亡の21%は自宅で発生していましたが、 この割合は、2021 年には 23% に増加しています。

 また、このデータ発表では、あらゆる原因による男性の超過死亡率も浮き彫りになっており、 具体的には、男性の死亡率は女性の1.7倍になっています。 特に 65 歳未満の超過死亡、早期死亡は 10 人に 2 人近くの死亡に相当し、女性の場合はその半分です。

 そして、もう 1 つ注目されているのは、死亡の約 6% は偶発的な転倒や交通事故などの外的原因によるものであり、自殺はこのカテゴリーに分類されており、これらの死亡のほぼ4分の1を占めています。 また、自殺による死亡の大部分は男性にというのも驚きました。 

 こうして、データを見ると、明らかに男性の方が弱い?と思わざるを得ず、それはフランスの平均寿命にも顕著にあらわれており、女性は85歳、男性は80歳となっています。

 いずれにしても、女性は強いということでしょうか?


フランス人の死因


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2023年12月19日火曜日

インフレと最低賃金(SMIC)引き上げ

  


 フランス政府はインフレに関する INSEE(国立統計経済研究所)の統計発表結果を参考に、2024年1月1日からの最低賃金(SMIC)の引き上げを発表しました。

 これにより、最低賃金は、フルタイムの場合、現在の月額1,747.20ユーロ(手取1,383.08ユーロ)から、1.13%増加の1,766.90ユーロに上昇します。時給にして、現在の11.52ユーロから11.65ユーロ、つまり0.13ユーロ(20円程度)の上昇です。

 手取り金額1,383.08ユーロは、現在のレートで換算すると、約215,000円程度になりますが、現在の円安の状況や物価の違いなどを考慮すると、これが日本に比べて、安いのか高いのかは、簡単に評価することはできません。

 フランスでは、この最低賃金(SMIC)は、物価の上昇に応じて、毎年、改定されており、一機に上昇はせずとも、長いスパンで考えると確実に上昇はしています。例えば、2012年には、最低賃金は、1,398.37ユーロであったことを考えれば、368.53ユーロも上昇しています。

 また、1月1日以外の年度中にも、インフレ率が2%を超えた場合には、再評価が行われます。なので、通常は年1回の改定ではありますが、2021年には、1月、10月の2回、2022年には、1月、5月、8月の3回、2023年は、1月、5月に見直しが行われているので、今回は2021年以来、8回目の改定となっています。

 今回の最低賃金の改定に先駆けて、労働大臣はこの点を強調して、2021年から13.5%上昇していると、なんだか、今回の上昇が今一つであることを煙に巻くような発言もしています。

 この見直しに関しては、最も所得の低い世帯の 20% に対する加重物価上昇率などが考慮して計算されています。

 また、法令により、このように、少なくても確実には上昇している最低賃金のようには、ギリギリ、それ以上を稼いでいる人々の賃金は、必ずしも上昇するわけではないという現実もあり、働けど、働けど、どんどん最低賃金に近づいていくようなことも起こっているわけです。実際に、この最低賃金で働いている人々は、全体の17.3%と言われていますが、1年前の14.5%に比べると増加しています。

 そして、物価の上昇が考慮されたものではあるにせよ、実際の現実の物価の上昇に追いつくものではないため、必ずしもありがたいものとは限らない皮肉な結果を生んでしまうこともあるようです。

 たとえば、家族などの同一世帯などの場合、社会保障などの援助の枠から、わずかな昇給のために援助対象から外れてしまって、援助金が削られてしまったりして、実質はマイナスなどということも起こり得ると訴える人もいたりで、そんなに簡単な話ではありません。

 どんな対応をしても黙って受け入れはしないフランスの労働組合(CGT)は、プレスリリースの中で、「最低賃金とすべての賃金の大幅な引き上げ」の緊急性を強調し、最低賃金総額2,000ユーロに引き上げを要求しています。

 しかし、一方では、これを支払う雇用者側にとっても、全てが値上がりする中、従業員に支払う最低賃金額も政府が一方的に決めていくわけですから、これもキツい話ではないか?とも思うのです。


フランス最低賃金 SMIC


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