フランス政府はインフレに関する INSEE(国立統計経済研究所)の統計発表結果を参考に、2024年1月1日からの最低賃金(SMIC)の引き上げを発表しました。
これにより、最低賃金は、フルタイムの場合、現在の月額1,747.20ユーロ(手取1,383.08ユーロ)から、1.13%増加の1,766.90ユーロに上昇します。時給にして、現在の11.52ユーロから11.65ユーロ、つまり0.13ユーロ(20円程度)の上昇です。
手取り金額1,383.08ユーロは、現在のレートで換算すると、約215,000円程度になりますが、現在の円安の状況や物価の違いなどを考慮すると、これが日本に比べて、安いのか高いのかは、簡単に評価することはできません。
フランスでは、この最低賃金(SMIC)は、物価の上昇に応じて、毎年、改定されており、一機に上昇はせずとも、長いスパンで考えると確実に上昇はしています。例えば、2012年には、最低賃金は、1,398.37ユーロであったことを考えれば、368.53ユーロも上昇しています。
また、1月1日以外の年度中にも、インフレ率が2%を超えた場合には、再評価が行われます。なので、通常は年1回の改定ではありますが、2021年には、1月、10月の2回、2022年には、1月、5月、8月の3回、2023年は、1月、5月に見直しが行われているので、今回は2021年以来、8回目の改定となっています。
今回の最低賃金の改定に先駆けて、労働大臣はこの点を強調して、2021年から13.5%上昇していると、なんだか、今回の上昇が今一つであることを煙に巻くような発言もしています。
この見直しに関しては、最も所得の低い世帯の 20% に対する加重物価上昇率などが考慮して計算されています。
また、法令により、このように、少なくても確実には上昇している最低賃金のようには、ギリギリ、それ以上を稼いでいる人々の賃金は、必ずしも上昇するわけではないという現実もあり、働けど、働けど、どんどん最低賃金に近づいていくようなことも起こっているわけです。実際に、この最低賃金で働いている人々は、全体の17.3%と言われていますが、1年前の14.5%に比べると増加しています。
そして、物価の上昇が考慮されたものではあるにせよ、実際の現実の物価の上昇に追いつくものではないため、必ずしもありがたいものとは限らない皮肉な結果を生んでしまうこともあるようです。
たとえば、家族などの同一世帯などの場合、社会保障などの援助の枠から、わずかな昇給のために援助対象から外れてしまって、援助金が削られてしまったりして、実質はマイナスなどということも起こり得ると訴える人もいたりで、そんなに簡単な話ではありません。
どんな対応をしても黙って受け入れはしないフランスの労働組合(CGT)は、プレスリリースの中で、「最低賃金とすべての賃金の大幅な引き上げ」の緊急性を強調し、最低賃金総額2,000ユーロに引き上げを要求しています。
しかし、一方では、これを支払う雇用者側にとっても、全てが値上がりする中、従業員に支払う最低賃金額も政府が一方的に決めていくわけですから、これもキツい話ではないか?とも思うのです。
フランス最低賃金 SMIC
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