2023年7月9日日曜日

フランス国家安全保障名目でTikTok停止の危機 6ヶ月間の最後通告

  


 「フランスでTikTok廃止?」というニュースを聞いて、ようやくおさまりつつある今回の暴動劇にもTikTokが利用されていたせいなのか? それにしても、リアクションが早いな・・と思っていたら、この話は、もっと前から調査が続けられていたものでした。

 フランス上院調査委員会は、4ヶ月間にわたる調査と専門家、研究者、学者、政治指導者、TikTok側のフランスの代表らとの約30回の公聴会を経て、ソーシャルネットワークの利用と個人データの利用に関する報告書の結論を発表しました。

 この報告書によると、現在、フランスでのTikTokのユーザーは特に低年齢層に爆発的に浸透しており、11歳~13歳の45%がTikTokに登録していると言われています。SNSは大変、便利なツールであると同時に、多くの時間を人々から奪います。

 「なかでもTikTokは、非常に中毒性が高いアルゴリズムを有しており、ユーザー、主に子供や十代の若者たちを何時間も画面上に留めておく」と報告されています。

 また、中国で誕生したこのサービスは、中国当局との強力な連携の上に成り立つものであり、ユーザーに関する情報がアルゴリズムファイリングを通じて全て中国当局に収集されていることに対する懸念も報告されています。

 もう 1 つの非常に懸念すべき観察結果は、危険なコンテンツや過度に性的なコンテンツが強調されていることです。 TikTokのアルゴリズムは、ユーザーを時には危険なフィルターバブルに閉じ込めることにつながると調査委員会は警告しています。 

 デジタルヘイト対策センターによる2022年12月の調査によると、このアプリケーションは「弱い立場にある人々により危険なコンテンツを提供する傾向があり、標準的なプロフィールと比較して、メンタルヘルス問題に関心を示しているユーザーには12倍の自殺関連動画が提供される」と報告されています。

 個人的には、今の時代、携帯なしというものは、考えられないのも事実ではあり、全面的に否定するつもりはありませんが、特に低年齢の子供には、せめて時間制限があってよいと思っています。1日24時間をSNSにその大半を侵略されて過ごすのは、その年齢にしかできない体験が削られるということで、心身ともに不健康だと思うのです。

 このフランス上院調査委員会は、これまでTikTokに対して、年齢制限、時間制限、危険なコンテンツについて扱いなどについて、少なくとも21項目に関して、再三、要請を行ってきましたが、回答があったのは、その20%ほどで、残りの80%に対しては、なんら対策がとられていない状態ということで、今回は、6か月間の猶予期間を設け、2024年1月までに、これが改善されない場合は停止措置をとると発表しています。

 また、1500万人以上のフランス人が利用するサービスの停止の可能性は、欧州の新たな規制であるデジタルサービス法(DSA)に基づき、引き続き政府、さらには欧州委員会の主導で行われることになります。

 フランス政府の要請に対して、80%が無回答というのは、あまりに不透明で、反論するよりもたちが悪く、フランス側にしてみれば、今回の暴動などのツールとしても使用されていたことがわかっていることから、「弱い立場にある人々により危険なコンテンツを提供する傾向がある」などという調査結果が上がってきている、ということもあり、もう待ったなしの状態に来ているのかもしれません。

 SNSを利用しているつもりが、これに支配され、先導されかねない状況、そのうえ、情報までが吸い取られているとなれば、それこそ国家安全保障に関わる大問題です。

 これをTikTok側が海外の声をどこまで受け入れるか? 一部ではTikTokはファーウェイの二の舞になるのではないか?との声も上がり始めています。いずれにしても、ものすごい速さで浸透していくSNSの世界、野放しにしているわけにはいかない時が来ています。


TikTok フランス国家安全保障名目で停止の危機


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2023年7月8日土曜日

ノートルダム大聖堂の今 工事中でも、とにかく見せる姿勢

  


 パリのノートルダム大聖堂が炎に包まれたのは、2019年4月のことでした。考えてみれば、あれはまだ、パンデミックの前のことでしたが、突如、火に包まれて建物の尖塔と身廊、聖歌隊席、翼廊を覆う屋根全体が焼失する前代未聞の大火災でした。

 この大火災は、当時、ノートルダム大聖堂着工850周年のプロジェクトの一環として行われていた改修工事中のことで、その日は夕方、ノートルダムが火災!というニュースにテレビは生中継でその姿を映し出し、炎はすぐにおさまると思いきや、一向に火の勢いはおさまることはなく、ついには、尖塔部分が崩れ落ちる光景は、充分に衝撃的で、また、近隣の住民や信者さんたちが大聖堂から少し離れた裾野にひざまづいて祈る姿は、ノートルダム大聖堂の悲惨な姿とは対照的に、人々が真に祈る姿というものは美しいな・・などと不謹慎なことを思ったりしました。

 ノートルダム大聖堂はパリのというよりもフランスの歴史的な文化遺産の一つで、12世紀から13世紀にかけて造られた建築物で、世界遺産にも登録されており、世界中から寄付を募って、復興工事が始まりましたが、焼け残った部分の安全性を確認しながら、一部は、外したりしながらの修復工事のために、大変な時間と労力がかかっています。

 幸か不幸か、パンデミックのために、観光客は一時、ストップしたものの、工事自体もストップした期間があり、なかなか大変な道のりを歩んでいます。

 しかし、現在のパリはすっかり観光客も戻り、場所によってはものすごい人でもあり、パリの一大観光地であるノートルダム大聖堂も工事中でも観光客を迎え入れる準備が整いつつあり、現に、中には入れないにもかかわらず、大勢の観光客が訪れています。

 もう、かなり前からですが、工事中のノートルダム大聖堂には、囲いができており、もちろん中には入ることはできませんが、その囲いの壁面には工事の様子をパネルにしたものと説明書きがフランス語と英語で書かれています。そのパネルだけでも、けっこう別の意味で見応えのあるものでもあり、こんな状態でも「見せる」姿勢を崩すことはありません。







 つまり、現在は残された原形とともに、工事そのものを見せるように工夫がされています。また、これはわりと最近だと思いますが、大聖堂の正面には、大きな階段のようなものが設置されていて、そこには大勢の観光客が座って、工事中の大聖堂を眺められるようになっています。

 

 ノートルダム大聖堂の周囲を一周すると、裏側は、足場が組まれ、網がはられているため、全くの工事中で中はほとんど見えませんが、周囲には、こんなにあったのか?とおもわれるほどの、いわゆるお土産屋さん、観光客目当てのレストランなどは、全てオープンしています。




 中が一般公開されるのは、2024年の予定、できればパリオリンピックに間に合うようにということだったので、あと1年あまりですが、「間に合うんだろうか?」と思っていたところに、今回の暴動で、フランスには、他にも修復しなければならない場所が増えてしまいました。でも、考えようによっては、工事中のいつもとは違うノートルダム界隈の景色は、今しか見られない景色でもあり、また充分に鑑賞に堪えられるようにきれいにカッコよく整えられています。

 

ノートルダム大聖堂 パリ


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2023年7月7日金曜日

フランスのガン患者 約30年で2倍に増加

  


 フランス公衆衛生局、国立がん研究所の調査によると、1990年から2023年の間にフランスにおけるガン症例数が2倍に増加した(男性は98%増、女性は104%増)と発表しています。

 2023年は、まだ約半年しか過ぎていないというのに、すでに43万人以上の人が新たにガンと診断されています。

 これは、フランスの人口動態の進化(人口の増加と高齢化)や、ライフスタイルに関連したリスクの増加が関連していると言われていますが、特に生活習慣、タバコ、アルコール、偏った食事、運動不足、紫外線なども、大きな原因だと見られています。

 男性に多いのは、前立腺ガン、肺ガン、結腸直腸ガン、女性では、乳ガン、結腸直腸ガン、肺ガンの順に続いています。

 ガンは男性の死亡原因の1位、女性の死亡原因の2位(1位は循環器系疾患)、ガンによる死亡年齢の平均は男性73歳、女性75歳です。

 一方では、早期発見と治療の技術の進歩により、死亡率は減少しているとのことで、前立腺ガンの5年生存率は、93%、乳ガンは88%まで上昇しています。(ただし、肺、肝臓、食道、すい臓のガンに関しては20%以下と言われています)

 行動やライフスタイルを変えることでガンのほぼ、半数を回避できるとする学者もいます。

 フランスはかなり、力を入れて、この早期発見、早期治療を促進しようとしているようで、ここ数年、私自身の個人的な印象によれば、年齢を重ねていることもあるのでしょうが、以前よりも、多くの種類のガン検診の通知を受け取るようになった気がします。

 しかし、一般的なフランス人のガン罹患のケースとは異なるかもしれませんが、これまで数少ない私の在仏の日本人の知り合いで亡くなった人々は、全てガンが原因だったのも事実で、彼らはそれほど、高齢でもなく、やはり、海外生活はストレスも多いからかなぁ?などと、漠然と思ったりしていました。

 その中でも、最も私の身近にいた人は、大腸ガンでしたが、最初のガンが発見された時には、彼女がミューチュエル(国民健康保険をカバーする保険)に入っていないという話を聞いて、「えっ??どうするの?」と病気そのものだけでなく、治療費の心配をしたのですが、幸か不幸か?フランスではガン治療は基本的には無料(というか国が負担してくれる)とのことで、びっくりした覚えがあります。

 しかし、手術をして、5年経つか経たないかのギリギリのタイミングで再発してしまい、それからの治療は、トラブルも重なり、本当に悲惨なもので、彼女自身も、手術後にどのような状態になるのかを具体的に把握していなかったこともあり、また、結果的にとことん、ガンと闘うという治療法を選択したために、最後の最後には、この状態でよく生きている・・とお医者さんに言われる状態でも、意識ははっきりしていて、最後にお見舞いに行った時も、(たまたま彼女のお誕生日だった・・)「気分が悪いのに、食事にステーキとかが出てくるのよ・・」などと話していたのを覚えています。

 彼女が亡くなったのは、それから1~2週間後のことでした。

 日本人に多いと言われる胃ガンが男女ともにトップ3に入っていなかったりするのも、食習慣の違いも体質の違いもあるのでしょうが、日本とて、4人に1人とか6人に1人はガンに罹ると言われている今、フランス人とて、例外ではないということなのかもしれません。

 しかし、まあ、ものすごく楽観的に考えれば、検査数が増えているのも、この数字が増加している理由かもしれないし、今まで発見されなかったガンが発見されるようになり、治る可能性が高まったということかもしれません。

 私など、検査というものがものすごく億劫で敬遠しがちなのですが、進行して手が付けられない状態になることを考えれば、せっかく無料でやってくれる検査・・ちゃんとやろうかな・・と思い始めています。


フランス ガン患者数30年で2倍に増加


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2023年7月6日木曜日

暴動後、略奪品が転売サイトへ 流出  売る人はもちろん、買う人にも刑罰

  


 警察官の未成年射殺事件から1週間が過ぎて、ものすごい暴動で、一時は、どうなることかと思いましたが、どうにか、沈静化の兆しが見えてきて、マクロン大統領も「暴動のピークは過ぎたのではないか?」などと発言したものの、まだまだ、安心はできないという感じは残っていて、「そんなこと言って大丈夫かな?」とまだ心配な日が続いています。

 しかし、この全国規模に及んだ大規模な暴動による甚大な被害は、(破壊されたり、燃やされたり、略奪されたりした被害)は少なく見積もっても、2億ユーロ(約312億円)を超えるだろうと言われています。

 そんな中で、まあ、あり得るとは思っていたものの、さっそく、略奪された商品がLeboncoin(ルボンカン)や Vinted(ヴィンテッド)などの転売サイトに登場しはじめています。

 一見、やたらめったら、とにかく破壊しているようにも思えていましたが、彼らはしっかり、後に捌きやすい、儲かりそうなものを選んで略奪していたふしもあり、携帯電話、洋服、バッグ、スニーカー、アクセサリーなどなどは、さっそくこの手のサイトに登場しているのです。

 私も日頃から、これらのサイトは利用しているのですが(もっぱら、買ったまま、結局、使っていないバッグや洋服、子供の服や靴などなど、もっぱら断捨離したものを売る方ですが・・)、日々、便利に変化して、ちょっとしたお小遣い稼ぎになっています。

 これらのサイトの運営側は、盗品の販売には、常日頃から目を光らせているとしており、「不審はユーザーの行動が制限されるように構成されている」「日常の数倍も警戒を強めている」と回答しています。

 暴動後、明らかに目に見えて増えた全くの新品、未開封の商品、急いで雑な感じで同じ写真で、ろくな商品の説明もなく、同一人物からなど微塵も感じられることがないように、「明日はみなさんをルボンカンにご招待します!楽しみにしていてください!」などと、ツイートしていたり、「暴動のおかげで、半年間欲しかったバッグを破格の値段で手に入れました!」などというのもあったりで、暴動のおかげって? もう、この子たちは、どうなっちゃってるの?」と思ってしまいます。

 私はどちらかと言えば、ヴィンテッドを利用することの方が多いのですが、毎回の取り引きには、評価がつけられるようになっており、コメントも入るようになっていて、この取り引き相手がどの程度、信頼できる相手であるかの判断基準の一つになっています。

 ですから、この盗品転売のために新しくアカウントを作成した場合は、その評価が全くない状態であるはずなので、「これは!」というものを見つけても、それが盗品であったりする場合もあり得るかな?と警戒すると思うのですが、そもそも、「暴動のおかげで、欲しかったものが安く手に入った!」などといわれてみれば、ハナから、盗品を買うことに全く躊躇いがないということで、これに対しては、買い手側も盗品であることを受け入れて・・というよりも、むしろ喜んでいるため、よい評価をつけてしまうということなので、このサイトの評価の信頼性も低下することになりかねません。

 しかし、サイト運営側には、盗品を販売している疑いがある場合に通報する権限があり、 アカウントの停止やブロックも可能になっているし、事実上、プラットフォームはユーザーに対して不審なオブジェクトを報告します。

 これらのプラットフォームはこの問題を真剣に受け止めており、チームを結集しているとし、 盗品の可能性に関する情報を要求する際には「警察と緊密に連携」していると説明している。 盗品の売買(売った場合も買った場合も)には、5年の懲役と37万5,000ユーロの罰金が科せられる可能性があります。 

 ですから、しばらくの間は、これらのサイトでは、それが盗品であるかどうか、よく検討する必要があるということなのです。

 ただでさえ、ネット販売に顧客を奪われている商店は、破壊、略奪行為にあったうえ、奪われた商品が破格で出回ることで、さらに、営業妨害を被ることになっています。

 フランスでお店をやるのは、つくづくリスクが大きいと思ってしまいます。


盗品 転売サイト Vinted Leboncoin


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2023年7月5日水曜日

未成年を射殺した警察官の家族へのクラウドファンディングに150万ユーロ

  


 今回のフランスでの暴動の引き金を引いた結果となった検問拒否による警察官の未成年射殺事件の家族を支援するためのクラウドファンディングを募っているというので、私はてっきり、被害者の少年の家族へのクラウドファンディングだとばかり思っていました。

 しかし、それは、加害者となった警察官の家族を支援するクラウドファンディングで、しかも、7万5千人の寄付者を集め、しかも、それが150万ユーロにも達したというので、2度びっくりしました。

 たしかに、加害者となり、起訴された警察官の家族は、それこそ、事件以来、生きた心地がしないほどに苦しんでいるであろうし、その家族に罪はありませんが、一瞬、「えっ?そっち?」と思ってしまったことも事実です。

 また、150万ユーロという金額も、まったく普段、縁のない金額なので、まるで子供の金銭感覚と一緒で、漠然と「たくさんだな・・」と思うだけで、正直、あまりピンと来なかったのですが、日本円に換算すると、約2億3575万円にもなります。

 一方、亡くなった少年の遺族へのクラウドファンディングも存在していますが、こちらは、17万ユーロ(約2670万円)で、この金額とも比較されています。

 このクラウドファンディング(警察官の家族のための)を立ち上げたのは極右の立場をとる人物で、「任務を遂行し、高い代償を払った警察官の家族のために」と説明しています。

 その家族のために・・という意味ではわからないこともないとはいえ、コトはそんなに単純な話でもないようで、「これを支援することで、警察の連帯を示し、これだけの結果を得たということは、フランス人が警察を支持しているということである!」と警察の力を誇示し、イデオロギーの勝利のような意味の解釈に利用しているような気もします。

 このクラウドファンディングを立ち上げて以来、極右はそのアカウントを使って中継を行い、これだけの金額を集めることで、意図的殺人の罪で起訴されている警察官を「任務を遂行した(だけ)」と正当化している気がしてなりません。

 同時にこのクラウドファンディングに関しては、Twitter上で、論争が拡大しており、数万人が「#GofundmeComplice」というハッシュタグを使ってこのプラットフォームの閉鎖を呼び掛けています。

 当のプラットフォーム側は、この資金は直接、家族へと直接支払われるため、この取り組みは、利用条件に準拠していると回答していますが、同時に権力乱用とみなされる行為を扇動または助長するコンテンツを禁止するという規定もありますがこれには該当しないのでしょうか?

 しかし、被害者の家族や、被害者側の立場に立っている人々にとっては、加害者である警察官を擁護するような盛り上がりは許しがたいこと、一部の政治家たちからは、暴徒の怒りをさらに煽る行為、暴動の残り火に向かって息を吹きかけ、さらに炎の勢いを増す行為であると非難の声が上がっています。

 実際に、被害者家族の弁護士は、このクラウドファンディングを立ち上げた人物を告訴したと発表しています。


フランスの暴動とクラウドファンディング


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「子育ての恐ろしさ やっぱり親の責任は大きい」




 

2023年7月4日火曜日

子育ての恐ろしさ やっぱり親の責任は大きい

  


 このところのフランスの若者たちの暴動を見ていると、あらためて、子育ての恐ろしさと親の責任の重さを感じています。

 私はそんなに強い志を持って、子供を持ったわけではなく、漠然と、「やっぱり一度くらいは、自分の子供というものがほしいし、子育てというものをしてみたい・・」と思っていただけなのです。

 ただ、私の場合の子育ては、結果的には、さんざん自分のやりたいことをやってからのことになったので、もう、しばらくの間は子供に縛られる生活になっても、やりたいことをやってきたので、まあ、子育て期間は子供中心の生活でもいいかな?という、ある程度の覚悟はありました。

 ただ、娘が生まれた瞬間に、実際の子供をて最初に思ったのは、「これは大変なことをしてしまった!」「この子がどうにか、まともに育てるというのは大変な責任だ!」ということでした。

 もちろん、その子どもの性格や素質などもあるでしょうが、親の育て方、どんな環境で育てるかによって、その子は大きく変わっていくわけで、優秀な子供に・・とかいう以前に、「ひと様に迷惑をかけたり、犯罪者になってしまったら、大変なことだ・・」と思ったのです。

 その当時、日本でも金属バット事件とか、少年犯罪も増えている時期でもあったので、親戚の教育に携わる仕事をしている叔母などに「どうしたら、そういうことを避けられる?」などと相談してみたこともあり、その時は、「とにかく、身体を動かすこと、スポーツなどをさせて、発散させることよ!・・」などと言われて、常に娘にはスポーツをする習慣をつけさせたりもしました。

 今、フランスで起こっている若者による非道極まりない暴力、破壊、略奪、放火などの暴動を見ていると、やっぱりこの子たちの親は何をしているんだろう?と思ってしまいます。

 実際に破壊・略奪・放火などが行われている時間帯が夜中の2時3時だったり、そんな状況の中、最も被害の大きい地域などは、夜間〇〇時以降は外出禁止・・特に未成年は・・などというのも、考えてみればおかしな話だとも思うのです。

 そんなこと、別に市町村に決められるまでもなく、子供がそんな時間に出歩くことを放置しているというのも、正直言って、私には意味のわからない話。でも、子供が勝手に夜中に出歩くことが、その子たち(や家族)の間では、不思議なことではない生活をしているのかもしれません。

 フランスで子育てを始めたばかりの頃、周囲にいた先輩ママさんたちから、「フランスは、クズは限りなくクズ・・学校はちゃんと選ばなければダメよ! そういう仲間ができたらおしまいよ!」、「朱に交われば赤くなる・・」、とか、「水は低い方に流れる・・」などと、さんざん、脅かされ、事実、職場の近くにあった学校のどうしようもない生徒たちの行動を見ていると、うなずけることも多く、娘は小学校から私立の学校に入れたのでした。

 子供たち同志の関係、またその学校の教育方針、しいては、その家族の子供に対する向き合い方で、なにが、あたりまえなのか?ということは、自然と身についていくもので、また、娘が通っていた学校(小学校から高校まで)というのが、「これ?フランス?」と思うくらい、なかなか厳しい学校で、学業はもちろんのこと、言葉遣いから、先生に対する態度、目上の人に対する態度など、特に小・中学校はかなり厳しかったような気がします。

 しかし、実際には、この「自由」と「権利」をやたらと主張する国で、かなり厳しめに正しいことを教えようとする姿勢は大切なことだと思ったのも事実です。

 でも、そんなことを思ったのは、娘を学校に入れて、しばらくの間だけのことで、そんな学校が私たちにとっては、「あたりまえのこと」になってしまっていて、そのあとは、それこそ、「こんなにしっかりした教育をしているのにフランスってどうしてこうなんだろう?」と思ってしまったりもしたのですが、どちらかと言えば、娘の通っていた学校の方が例外的で、ごくごく一般的な公立の学校は全く違うのだということに気が付いた瞬間もありました。

 どんな環境にあっても、頑張れる子はいるのでしょうが、その環境によって、流されてしまうことは多いのです。結局は、ここでも分断とか、格差とかいう話になってしまうのですが、フランスの場合、私立といえども、そこまで極端にお金がかかるわけでもなく、我が家とて、それほど余裕のある家庭でもなかったので、親が子供をどのような環境におくのか? 親がどのように子供を見守るのか?ということを考えれば、さほど無理難題でもないような気もするのです。

 今回の暴動を起こしている子供たち、若者たちの詳しい背景は知りませんが、親、保護者の責任は大きいと思います。若者ゆえ、暴走することもあるとはいえ、今、彼らがやっていることは、立派な犯罪です。やってよいことと悪いことの区別もつかないように育てたのは、社会というよりも、親なのです。

 これまでも、私はかなりしつこく書いてきましたが、娘に関しては、本当に学校に助けられてきたし、あの学校に入れたことは、彼女にとって、大きな人生の分岐点だったような気がしています。

 こんなことが起こる国で、一歩、間違っていたら、もしかしたら、こんなことをする子になってしまったかもしれないと思うと、今になってから、よくも無事に育ってくれた・・と、今さらのようにヒヤヒヤする思いがしているのです。


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2023年7月3日月曜日

暴動はもう別次元に発展 標的にされ始めた市長たち

  


 今回の暴動は、警察官による未成年射殺事件がきっかけで、当初はその事件に関する怒りが沸騰していましたが、もはやその怒りは、社会へのフラストレーションをぶつける行為に変化しつつあります。

 ここ数日は、毎晩のように警察官・憲兵隊が4万5千人動員され、普通は出動することのない RAID(Recherche Assistance Intervention Dissasion)や GIGN(Groupe d’Intervention de la Gendermerie Nationale)などの警察・憲兵隊の特殊部隊まで出動し、ヘリコプターまで飛ばしながら、監視、警戒を続けています。

 結果、暴力行為は若干、減少し始めたともいわれていますが、それとて一昨日の夜には逮捕者が719人に減ったというだけで、まったく安心できる状況ではありません。

 むしろ、この怒りが当初の原因を離れて、社会への不満の鬱憤晴らしになりつつあり、標的が一部の市町村の市役所や市長たちに向けられている地域も出はじめ、これはこれで、また、さらに、すぐに、簡単には根本的な解決の糸口がみつからない問題です。

 結局のところ、いつも行きつく先は、格差社会、分断された社会が問題になるのですが、今回ばかりは、この暴動を起こしている年齢層が低く、未成年も多いところが、さらに問題を厄介にしています。

 実際に、毎日のように1,000人近く逮捕されている若者たちの正確なプロフィールは分析されていませんが、未成年の場合は、逮捕されたところで、未成年ということで、一応、調書を取られる程度で、警察の要注意人物のリストにのるくらいで、早々に帰される人がほとんどでもあるし、そもそも彼らは警察を怖がるどころか、警察車両と見れば攻撃したりするわけで、また、できれば捕まりたくないとは思ってはいても、前科がつく(警察のリストに載る)ことなど、大して気にしておらず、「どうせ、失うものなど大してないんだ・・」と思っているとしか思えないきらいがあります。

 そもそも、この未成年の、本来は「人生はこれから・・」という将来が待っているはずの、この若い暴徒たちが、こんなに若い段階で「失うものなど何もない・・」と思ってしまう社会には、たしかに問題があるのだと思いますが、だからといって、彼らの行動を正当化するものは何もありません。

 これを移民問題と片付けるのは、また別の話で、暴動を起こしている若者たちは、かつて移民としてやってきていた人々の2世、3世で、フランスで生まれ、フランスで教育を受けて育ってきたフランス人が多数なのです。なので、その分だけ、もっと問題の根は深いのです。


 しかし、社会への不満が爆発している状況で、いくつかの市庁舎や市長に対する個人攻撃も始まっているのには、本当に言葉がありません。中でも、レ・レ・ローズ(ヴァル・ド・マルヌ県)(パリ近郊)の市長は、暴動が始まって以来、市庁舎に滞在していたために、彼自身は襲撃にあうことはありませんでしたが、(この市庁舎はすでに有刺鉄線でバリケードが張られています)、自宅が襲撃され、妻と幼い子供2人が眠っている家に放火され、家が全焼してしまいました。

 また、ポントワーズ市長(ヴァル=ドワーズ)も車で移動中に襲撃を受け、火傷を負い、その他、襲撃に遭っている市長のリストは長くなるばかりです。

 マクロン大統領は、ドイツ訪問の予定をキャンセルし、この暴動に対する対策会議を招集し、対応に追われています。

 今回の暴動のきっかけは、たしかに警察官の暴挙ではありましたが、この事件が、日頃から社会から虐げられていると感じている若者たち、フランスの底辺に潜む怒りを呼び起こしてしまいました。しかし、今から考えれば、これは、いつ爆発してもおかしくなかった問題でもあったような気もしています。

 ネットをあけても、テレビをつけても陰惨な光景ばかり・・しかし、気晴らしに日曜日の午後、パリの街を歩いて、シャンゼリゼまで足をのばしたら、あの悲惨な光景とは想像もつかない平和な光景で、まるで何事もなかったように、にぎやかに「トロピカル・カーニバル」をやっていて、それこそ、違う世界みたいで、ちょっとホッとしました。



 しかし、この落差こそがフランスなのだ、同時に複雑な気もするのでした。


フランス暴動 市長襲撃


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