2022年6月23日木曜日

国民議会選挙後初のマクロン大統領の8分間の演説

 


 

 国民議会選挙でマクロン大統領率いる右派連合「アンサンブル」が過半数を獲得できなかったことから、大きな波紋を呼んでいる中、夜8時からマクロン大統領の演説が行われるというので、注目していました。

 マクロン大統領は、前日から、約2日間かけて、それぞれの政党のリーダーたちと個々に会談の時間を設け、今後の政権運営のためのヒヤリングと意見交換を重ねていました。

 これまでの例を見ても、大方、どこか、違う場所での会合などでの演説ででもない限り、大抵は前もって録画されたものが、夜8時に放送されますが、今回ばかりは、その録画が行われたのが、放送15分前というギリギリのタイミングだったそうで、演説が始まる前から、「マクロン大統領が話す内容」について、ああでもない・・こうでもない・・と、予想されているところ、今、少し前に録画が始まったのだから、8時の放送に変更がないということは、演説は10分以内の短いものであろう・・などと、テレビ的な推測をされていました。

 そこまで時間が押しながらも、生放送に切り替えずに録画にこだわり、結局、今回の彼の演説は8分間の短いものでした。

 彼はこの演説で、国民議会選挙の結果を受け止めていることを示し、まず第一にこの選挙の棄権率の高さを指摘し、投票は、民主主義をより明確にするためのもので、国の大きな選択のために不可欠なものであるにも関わらず、このことが全ての人に実感されていないことが問題であると語っています。 

ー以下演説の内容ー

 そのうえで、「私は我が国に起こっている大きな亀裂や深い分裂を無視することはできず、その現実が今回の審議会の構成にも反映されていると思っています。彼らは、村のような労働者階級が住む地域の多くで、人生が閉ざされ、展望が開けないという懸念を表明しています。」 

 「多くの西欧民主主義国家と同様に、今日、いかなる政治勢力も単独で法律を制定することはできません。したがって、今後は、連合契約を構築するか、議題ごとにマジョリティを構築することによって、拡大することが必要になります。」

 「国民と国家の利益のために行動するために、私たちはこれまでと異なる統治と立法を学ばなければなりません。私たちは、新しい議会を構成する政治グループと、対話、傾聴、尊重を基本に、新たな妥協点を築かなければなりません。これは国民が望んでいたことであるということに留意しています。それは、対話、尊重、要求を通じて、時間をかけて合意することを覚悟しなければならないということを意味しています。」

 「私は、この国が明確に表明した変革への願いを聞き、それを担当することを決意しています。昨日、今日と、国会で会派を組むことができるすべての政治団体のリーダーと交流しています。私は、まず、彼らが皆、わが国の制度を尊重し、わが国のために行き詰まりを回避したいという気持ちを表明したことを強調し、会談の内容を正確に記録しています。」

 「私がこの2日間で会談した指導者のほとんどは、国民統合政府という仮説を否定しており、それは現時点では正当化されないと私は考えています。また、多くの人が、購買力、仕事、完全雇用の達成手段、エコロジーへの移行、安全保障など、皆さんの日常生活に関わる主要かつ緊急な問題について前進する意志を表明しています。したがって、この重要な時期に、より広範で明確な多数派の行動を見出すことが可能であると私は考えています。」

 「この方法は、論争や政治的な姿勢から脱却し、対話、妥協、共同作業を通じて築き上げるという、多くの皆さんの願望に応えるものであることを理解しています。したがって、私は、今後数週間のうちに、この政治的克服が明瞭かつ責任を持って継続されることを望んでいます。」 

 「まず、問題を明瞭に解決していくことが必要で、つまり、昨年の4月に選んだプロジェクトの一貫性を決して失わないということです。それは、私たちの国、フランス、そしてヨーロッパにおける独立のプロジェクトであり、強力で野心的な防衛、優れた研究、将来への投資によるより強力な産業と農業を通じて、より強くしていかなければなりません。」

 「そのためには、この夏、国や皆さんの暮らしに必要な緊急対策を講じなければならないこともわかっています。購買力のための法律、より良い報酬を得るための仕事、完全雇用に向けた最初の決断、エネルギーと気候に関する強い選択、私たちの病院やパンデミックなど、私たちの健康のための緊急措置などです。」

 そして、これらの対策のために増税、負債を負わないことを約束しています。

 具体的な解決策を示すことができる段階ではないため、いつもは力強く、口の上手いマクロン大統領にしては、表情も硬く、説得力に欠ける演説でしたが、国民の混乱を避けるために、とにかく、今の段階で一度、意志を表明しておくことが不可欠だと考えての演説だったと思います。

 しかし、世論調査によると、フランス国民の71%が国民議会に絶対多数派が存在しないことに満足しているといいます。議会にはいろいろな意見の人が集まって、話し合いをする・・これは、極めて民主主義的なことで、健全であるとも言えます。

 逆にこれまで、マクロン政権がかなり強引にことを進めてきたことに対する軌道修正に繋がるかもしれません。ただし、これまでのようなスピード感はなくなります。

 一部から格好の攻撃のターゲットにされていたエリザベット・ボルヌ首相の辞任問題については、今回の演説では、全く触れることはありませんでした。本質の問題は、そこではないのです。

 これまでマクロン大統領が1期目就任以来、黄色いベスト運動、テロ、パンデミック、戦争といくつもの困難が襲ってきましたが、今回のものは、これまでとはまた違う根本的な国の統治の方法を覆される場面、災い転じて福となすといくと良いのですが・・。


マクロン大統領国民議会選挙結果後の演説


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2022年6月22日水曜日

ウクライナ戦争の話題も吹っ飛ぶフランス国民議会選挙の波紋

   


 先週末に行われたフランスの国民議会選挙の決選投票で、マクロン大統領率いる右派連合「アンサンブル」が245議席を獲得し、多数派になったものの、過半数の289議席には届かなかったことから、今後のマクロン大統領の新体制に暗雲が立ち込め始めています。

 これまで、フランスでは、今回のような過半数の議席を持たずに政権を運営するのは、非常に難しいとされてきており、ミッテラン政権(1988〜1991年)以来のことです。

 この緊急事態に、これまで毎日のように報道されていたウクライナ戦争の報道が吹っ飛び、この選挙の波紋について、フランスでは大騒ぎして報道しています。

 この選挙結果を受けて、5月半ばに就任したエリザベット・ボルヌ首相は、「今回の結果が生み出す政治状況は国際的な課題や国内のエネルギー問題や物価高騰問題に直面するフランスにとって大きなリスクになる」と認めつつも、「安定を確保しつつ改革を実現するために必要な多数派の確保に努めること」を宣言し、物価高騰に対応したフードバウチャーなどの家計支援措置や完全雇用、環境問題、教育、医療、産業、エネルギー、農業など、それぞれの安全保障などの分野で多数派を結集することは可能である」と述べていました。

 しかし、今回の選挙で躍進を遂げた野党の勢いは止まらず、選挙から2日後、エリザベット・ボルヌ首相がマクロン大統領に辞表を提出したものの、マクロン大統領に却下されたというニュースで、さらに混乱が広がりました。

 マクロン大統領が再選されたのが、4月末のこと、それから数週間おいて、発表された新内閣が誕生したのは、5月半ばで、マクロン大統領は多くの国民(国民の74%と言われていました)が望む女性の首相を指名し、史上2人目の女性首相として、期待されていました。

 正直、私はそれまで、あまり彼女のことは知りませんでしたが、新旧首相交代の挨拶の際に、カステックス前首相が彼女について、「この2年間、一緒に仕事をしてきた中で、彼女の高潔さ、誠実さ、有能さ、自発性という計り知れない資質を確認している」、「彼女は信頼できる人物であると伝えたい」と語っていましたし、恐らく、それは間違ってはいないことだったと思います。

 しかし、新内閣が組閣されて以来、一新した新しいマクロン政権の様子を見ると、首相にしても、政府スポークスマンにしても、インパクトが薄く、国民に訴えかけ、説得する迫力が失われたような印象を受けていました。

 正直、マクロン大統領は、この新内閣発足以来、ルーマニアやモルドバ、ウクライナを訪問したり、国外向けの対応に追われていて、少々、今回の選挙を甘く見て、新内閣の結束を強固にすることを疎かにしていた感が否めません。

 マクロン大統領にとって、今回の選挙の敗北?とともに、このボルヌ首相の辞任騒ぎは大きな痛手、指名した首相が辞表を提出して却下するなどというマイナスな報道が流れるなど、選挙結果に追い討ちをかけるようなもの。辞表を提出する前に、なぜ大統領と首相は話し合いができなかったのでしょうか? 辞意を示していたとしても、これは決して報道されてはいけないことだったに違いありません。

 彼女が誠実であるがゆえに、提出した辞表だとも思われますが、対立する左派連合「環境・社会 新人民連合(NUPES)」を率いるジャン・リュック・メランション氏などは、ここぞとばかりに「彼女に正当性はない!彼女が辞任するまで時間を無駄にするだけだ!」などの暴言を吐いて攻撃しています。

 いみじくも、新旧首相交代の時に、カステックス前首相が「フランス人は要求の多い国民で、額面通りには受け取らない」「また、マティニョン(首相官邸)の住人に批判が集まるのは必至だ」と彼女に警告していました。

 今後、彼女が首相を続行するのかどうかはわかりませんが、彼女の高潔さ、誠実さ、有能さは貴重ではあるものの、もっとわかりやすい人を惹きつけるようなインパクトや力強さがフランスという国には必要なのかもしれないとも思うのです。


フランス国民議会選挙 ボルヌ首相辞表提出却下


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2022年6月21日火曜日

やっぱりマスクは侮れない フランスのコロナウィルス感染リバウンド

   


 ここ1週間ほどで、フランスは、1日の新規感染者数が2万人台から5万人台へと激増しています。

 今さらではありますが、公共交通機関でのマスク着用義務化が撤廃されて、しかもフランス全土を襲った猛暑で40℃近い気温を記録したり、マスクは、日々、減っていっているような気がします。

 4月に久しぶりの日本に行って、その日本のマスク率にあらためて驚いてきましたが、いい加減、あまりに厳しい空気(普段、ゆるゆるのフランスの生活に慣れてしまっているため)に、正直、日本もそこまでキチキチにしなくてもいいのに・・と思っていました。

 私は、今でも公共交通機関の中ではマスクをするようにしていますが、屋外ではマスクを外しているために、メトロやバスに乗る時には、しばらくしてから、「あっ!そういえば、マスクしてなかった・・」などと思い出して慌ててマスクをすることもあって、自分でも気が緩んでいるな・・と思います。

 これまでいくつもの波を繰り返してきたので、感染は増加に転じ始めると、倍々に増えていくわけで、しかも、これまでと違うことは、周囲の人々がほとんどマスクをしていないので、考えてみたら、これまでよりも感染のリスクはずっと高くなっているわけで、これまで以上に気をつけなければならないということです。

 みんながマスクをしていないから、私もしなくていいのではなく、みんながマスクをしなくなったから、私はしなくてはならない・・という認識に変えなければならないのです。

 1日の新規感染者の数字というのは、意外と身近なところにも表れてくるもので、日本行きの前にテストしたら、まさかの陽性だった・・とか、家族が感染したから、検査したら、陽性だった・・とか、実はすでに感染していて、味覚障害・・とかいう話をポロポロ聞くようになってきました。

 私は幸か不幸か、このクソ暑い中、風邪をひいて、ここ数日、体調がすぐれず、辛いのですが、コロナ感染ではなくとも、インフルエンザ等の病気もマスクによって防げていたのだな・・と感じています。

 あらためて、これまでのコロナウィルスによる被害を見ると、日本はOECD(経済協力開発機構)加盟国(欧米を中心とする先進国)38カ国の中でも、格段に致死率が低く、マスク率は他とは比較にならないほどです。

 ちなみに、これまでのコロナウィルス感染による死者数は、フランスはほぼ15万人、日本は約3万人です。しかも、日本はフランスなどのような、圧倒的なロックダウンは全くやってこなかったのです。

 これまでの実績?を見れば、日本のマスク率の高さはやはり、再注目に値するものであることを見直さなければならないかもしれません。

 一時は、日本ももういい加減、そんなに厳しくマスクしていなくてもいいんじゃないの?と思いかけてはいましたが、やはり、こんな結果を見ると、マスクの効果は侮れないと、このマスクが消えていくフランスで、やっぱりマスクはしなければ・・と決意を新たにしています。

 また、6月に入っての感染の激増の要因の一つは、流行しているウィルスがこれまでのBA2からBA5に置き換わってきていることでもあると言われています。(BA5はBA2よりも8〜12%感染率が高い)

 そして、気になる症状に関しては、一般的な症状に関しては、疲労、咳、発熱、頭痛、鼻水と言われていますが、BA5はBA2よりも嗅覚障害、味覚障害、吐き気、嘔吐、下痢の可能性が高いようです。

 ウクライナ戦争やインフレ、異常気象などでコロナウィルス感染への注意がまぎれ散ってしまっていますが、コロナウィルスは消滅するどころか、また増加しているわけで、戦争もまだまだ続きそうではありますが、コロナウィルス感染もまだまだ続きそうなのです。

 なんと、1日の新規感染者数が2万人台から5万人台に増加したと驚いていたら、翌日には、今度は一気に95,217人を記録して、なんと9万人超えというかもう10万人まで到達しそうな勢い・・本格的なバカンスシーズンを前にして、何も対策を取らないのは、危険かもしれません。やっぱり、マスクはなにがなんでもしなくては・・・。


フランスコロナ感染リバウンド マスクの効用


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2022年6月20日月曜日

最近、猛暑時に必ず起こるストリートプーリング

   


 ここのところ毎年、ちょっと耐え難い猛暑がやってくるたびに、一部の地域では、消火栓を開けてダイナミックに「噴水」を作り涼をとり楽しむ人々が登場します。これを「ストリートプーリング」と呼んでいるようです。

 特に40℃を超えるような暑さともなれば、このような噴水があったら、どんなに涼しいだろうかと思わないこともありませんが、違法であり、危険でもあります。

 パリ北部郊外のセーヌ・サン・ドニなどでは、これが頻繁に起こり、パリ消防局・警察は、「ストリートプールは違法行為、感電、断水、消防隊員の介入妨害などのリスクもあり、最高5年の禁固刑、または75,000ユーロの罰金に課せられる可能性があります」と呼びかけています。

 そもそも、私が最初にヨーロッパに来た時に、夏、暑くなると、街中の噴水などをプール代わりのように使って、涼んでいる人々がいることにびっくりした覚えがあります。

 子供が水のあるところでついついはしゃぐくらいなら理解ができるのですが、大の大人が臆面もなく、街中の噴水に浸かったりするのですから、なんと、野蛮な人たちなんだ・・と思っていました。

 まあ、ちょっと暑くなり始めると、目立ちたがりで頭がおかしい人が現れるんだな・・くらいに思っていたのですが、今から考えてみれば、今、問題になっているストリートプールに比べれば、あらかじめ用意されている噴水に入っていくことくらい、まだ全然マシだったわけです。

 しかし、この噴水などに入って水浴びをしたり、水遊びしたりする人は以前よりも格段に増え、(私自身がそんな光景に慣れてしまって、あまり驚かなくなって感覚が麻痺してきたこともあるかもしれない)、暑さが異常になってきたこともあると思いますが、これが容易に許容されるというか、珍しくない感じになってきていることを感じます。



 もちろん、消火栓は緊急時の消火用のため、いざという時のためで、消火栓自体が破壊されてしまうこともあるので、消防隊だけでなく警察が介入しての衝突が起こります。そもそもフランスでの消火活動といえば、不用意に起こる火事だけでなく、車が燃やされたり、デモが暴徒化してゴミ箱や建物が故意に燃やされたりすることが少なくないので、想像以上に実際に必要なケースは多いのです。

 一見、涼しげで楽しそうに見えてしまうこの光景も一旦、消火栓が開けられると、消防隊が介入するまでの間、数百リットルの水が流れ出し、水道供給のネットワークの圧力が低下してしまい、最悪、飲料水の停止にまで繋がってしまいます。

 また、放出されたジェット水流は数メートルの高さに達するために感電しの危険性を伴う電気配線に到達する可能性があるのです。

 ただでさえ、この猛暑で枯渇する貯水、大量の飲料水の損失も引き起こします。

 最近、サン・ドニで消火栓の解放により6歳の子供が空中に投げ出され、危篤状態に陥ったことがありました。

 なにか、野蛮な事件が起こるといえば、「また、サン・ドニ(パリ北部に隣接した地域)か・・と思ってしまうのですが、残念ながら、この地域はロクなことが起こりません。

 野蛮なタイプの若者の悪ふざけのお遊びのような感じでもありますが、最高5年の禁固刑または、最高75,000ユーロの罰金、75,000ユーロといえば、日本円にして、軽く1千万円超えの大金です。

 悪ふざけの水遊びにしては、かなり高くつきます。


ストリートプーリング


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2022年6月19日日曜日

フランスの猛暑というより40℃超えの酷暑とシャトールーの水道水に大腸菌で水道一時停止

     


 ここ数年、40℃を超える夏の酷暑は、もう年中行事のようになっているので、もはやエアコンのない我が家でも、もう対処方法は慣れたもので、朝早い時間に部屋の空気の入れ替えをして、ベランダの植物にたっぷり水をやり、シャッターのある部屋は薄明かりだけ入るスペースを残して閉めてしまいます。

 ジワジワと暑くなっていく外の気配を家の中で、じっと身を潜めているのです。毛皮に覆われたネコも辛そうで、顎をのばして寝ていて、しかし、このクソ暑い中、わざわざ隣にべったりと座り込んでいるので、シャワーを浴びさせて、洗ってあげました。

 こんな日は、すぐに乾いてしまうので、ネコのシャンプーには最適で、いつもは、ものすごく嫌がって、大騒ぎするのに、今日は、珍しくおとなしくしていました。

 とても、他人に見せられない姿ですが、タオル3本を用意して、水に濡らして1本はねじりハチマキにして頭に巻き、一本は首に巻き、もう1本は肩からかけ、体温が上がらないようにします。これで、ずいぶんと楽になります。タオルが温まってきたら、また、タオルを濡らし直します。

 あとは、扇風機があれば、なんとか40℃も凌げます。とはいえ、暑いというだけで、かなり体力を消耗します。

 ここまでの気温になれば、これ以上、部屋の温度を上げたくないので、とてもお料理などする気にならないので、前日から夏野菜を蒸して、出汁につけてあり、かろうじておそうめんを茹でただけです。

 前日の天気予報では、パリの気温は日陰でも40℃という恐ろしい予報が出ていましたから、万全の体制で備えたわけです。

 予想に反してというほどではありませんが、パリの気温は39℃まで、しかし、ビアリッツ42℃、バイヨンヌ43℃、ボルドー40℃と多くの地域で40℃を突破しました。

 夏の猛暑・・というより、酷暑は毎年のことになっていますが、今年さらにパワーアップしているのは、今がまだ6月だということです。フランスは5月の段階ですでに30℃を超える5月の気温の歴史的記録を塗り替えていますが、どうやら、6月の記録も塗り替えたようです。

 この猛暑は、地域により若干の差はあるものの、フランスのほぼ全体(ヨーロッパ)を襲っているものです。

 この猛暑の中で、フランス中央部のシャトールーという都市では、水道水に大腸菌が発生し、一部、水道水の供給がストップするという恐ろしい事故が起こりました。25,000人の住民が水道水を奪われた状態になり、12万5000本のペットボトルの水が配布されたようです。

 この大腸菌の混入は、水中の塩素拡散システムの故障によるもので、警報が鳴らず、発見までに時間がかかり、結局、未処理の水が配られ、細菌が増殖してしまったそうです。

 この暑さの中で水の供給は命に関わるライフライン、異常な気温の上昇の際には、水の汲み置き、また、水の買い置きも必要だと、この私の猛暑対策のリストに水の確保という項目が追加されました。

 しかし、年々、身をもって感じるこの気候の変化に、ふだん、エコロジーとか、交通規制とか、電気自動車へ移行などの長期的な取り組みが発表される様子を見ていますが、そんなに悠長にしているわけにはいかないのではないか?と肌で感じる今日この頃です。


フランスの記録的な6月の猛暑 40℃


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2022年6月18日土曜日

パリのバス停で・・喋る喋るフランスのおばちゃん

  


 今週のパリ(フランス全土)は、まだ6月だというのに凄く暑くて、身体がキツいです。なによりも、ついちょっと前までは、朝晩は肌寒いほどだったのに、急激に暑くなるものだから、身体の方もついていかないのです。

 そんなこともあってなのか、久しぶりに風邪をひいて、気温だけでなく、体温も上がってしんどい思いをしています。そんな時に限って、用事が立て込んで、忙しく出歩かなければならないと、いつもは、これくらいの距離だったら歩くか・・と思う距離でもバスに乗ろうとしてしまいます。

 そんな時に限って、バスはなかなか来なくて、ここ数日、バス停でバスを待っていると、知らないおばちゃんから、やたらと話しかけられます。どういうわけか、私はなぜか、パリでは知らない人に話しかけられることが多いのですが、ここ数日のおばちゃんたちは、暑いこともあってか、そのおしゃべりには、ものすごい勢いがあって、とても知らない人と話すテンションではありません。

 パリのバス停はたいてい、次のバスとその次のバスが何分後に来るかが表示されているのですが(壊れていることも多いけど)、いつもなら、あまりに時間があくようだったら、これは、歩いた方が早いかな?と思って歩くのですが、今回は体調もよくなくて、歩く元気がなく、ベンチに腰掛けていたのです。

 そこに一人のおばさんがやってきて、その電光掲示板を見て、「えっ??あと30分??」と声を上げたので、私もビックリして掲示板を覗き込むとほんとに30分、「さっき、ほんの1分前に見た時は、10分だったのに・・」とうっかり言ってしまうと、そのおばさんはバスを待つかどうかについて、延々と話し始め、挙句の果てに「夫に調べてもらう」と夫に電話し始めたところで、「えっ??わざわざ電話して調べてもらうの?」と私がびっくりしていると、「夫はね・・」と始まったところで、バスが来ました。

 次の日は、扇風機を買ってきたおばちゃんが、「ちょっと隣に座らせて・・」、とベンチの隣にやってきて、「暑くて耐えられないから買ってきたのよ・・」と始まり、私もつい、うっかり「本当に暑いですね・・」と言ってしまったものだから、もうそのおばちゃん、堰を切ったように話し始め、「だいたい、以前はこんなに暑くなかったし、以前は私も若かったから、こんなに苦しくなかった・・」、「夏には、いつもはバカンスに行くんだけど、今年は何もかも値上げしているから、私たちは行かないの・・」「でも、子供たちはだけは行かせてあげるつもり・・」「しかし、この扇風機を買ったお店、すごく店員さんが感じ良かった・・領収書を頼んだけど、なにもかもきっちりしていて・・もっとも、お店が空いてたこともあるんだろうけど・・」「市役所から、SMSでメッセージがきて、「お水をしっかり飲むようにって・・」「でも、こういう注意喚起は大切よね・・私には必要ないけど、お年寄りは暑さに気がつかない場合もあるし・・」「きっと、市役所には、こういう場合にメッセージを送るリストがあるんだわ・・」などなど、もの凄い勢いで、これまたバスが来るまで話し続けるのでした。

 別にバスを待っている間、おしゃべりしているのは、退屈凌ぎでいいのですが、日本人の私からしたら、とても知らない人と話すテンションではないもの凄い勢いで話し続けるおばちゃんたちにちょっとビックリすることもあるのです。

 フランスに住む前、観光でパリに来たことはあったのですが、その時は、フランス人って(特にパリの人)どちらかというとツンとしていて、感じ悪いな・・と思うことが多かったのに、実際に生活してみると、結構、おしゃべりで、下町のおばちゃんみたいな人も多いのだな・・と思うのです。

 しかし、娘などは、知らない人から話しかけられることはまずないと言うので、私がおしゃべりおばちゃんを呼び寄せるオーラを放っているのかもしれません。でも、日本では私とて、決して知らない人から話しかけられることはないので、やっぱりフランスならではないかと思っています。


フランス人のおばちゃんはおしゃべり


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2022年6月17日金曜日

マクロン大統領ドイツ首相とイタリア首相とともにキエフへ

  


 ウクライナでの戦争が始まって以来、ウクライナのゼレンスキー大統領とは、おそらく誰よりも頻繁に連絡取り続けてきたマクロン大統領がついにウクライナ・キエフを訪問しました。

 マクロン大統領は、ルーマニアとモルドバを公式訪問中で、数日前から、この後、彼がウクライナを訪問するのではないか?という噂が飛び交っていました。

 これまで再度にわたるゼレンスキー大統領から「キエフに来て!」というラブコール?にもかかわらず、比較的、つれない態度で「必要と判断できたら、行く」と言い続けてきたマクロン大統領でしたが、ようやくキエフ訪問に踏み切ったようです。

 しかも、一人ではなく、ドイツのショルツ首相とイタリアのドラギ首相とともにという変化球バージョンで・・。

 この戦時下で、3カ国の首脳が一緒にキエフを訪問するということは、前もってかなり準備された日程であったことは明白ですが、セキュリティー上、彼らのウクライナ訪問は伏せられ、綿密な準備が進められていました。

 ウクライナ領空は閉鎖されているために飛行機という選択肢はなく、マクロン大統領は水曜日の夜にドイツ、イタリアの首相とともにウクライナ鉄道の寝台列車に乗車。国境から約100キロ離れたポーランドの都市ルツェズフを深夜に出発し、午前8時半にウクライナの首都に到着しました。

  


 列車は夜間に走行し、橋や駅に沿って警備隊を配置して保護され、車両に危険物や盗聴器等がないかなどが厳密にチェックされていました。

 列車を降りた欧州の3首脳は、イルピンに向かい、別行動をしていたルーマニアのクラウス・イオハニス大統領と合流しました。朽ち果てた建物や弾丸で破壊された車を目の当たりにして、彼らはこの戦争犯罪の「野蛮さ」を完全に把握したのです。



 ショルツ首相は、「イルピンはブチャと同様、ロシア戦争の想像を絶する残酷さの象徴となった」と言い、マクロンはイルピンを「戦争犯罪の野蛮さが際立つ英雄的都市」と表現し、ドラギ首相は「すべてを再建する」と約束しました。

 これらの訪問や会見の様子は、フランスやウクライナの大統領に敵対する軍事集団が、爆撃の可能性がある国家元首の位置を明確に特定することはできないようにするため、どれも生放送ではなく、数十分程度の少し遅れたバージョンで放送されていました。

 マクロン大統領は、ここに立ち会った4カ国(フランス、ドイツ、イタリア、ルーマニア)はウクライナのEU加盟の「即時」公式候補資格の付与を支持すると発表しています。

 これまで、ウクライナ訪問のタイミングを測っていたマクロン大統領ですが、キエフを訪問するかぎり、手ぶらというわけにはいかないのだろうと思っていましたが、フランスは、ウクライナに「シーザー」兵器システム6台を追加納入(すでに納入した12台は納入済み)すると発表しました。この自走砲は精度と機動性に優れていることで知られています。そして、この兵器供与とともに6月23〜24日に行われる欧州サミットを前に、欧州の連帯を示す強力で明確なメッセージとして、ドイツやイタリア、ルーマニアとともにキエフを訪れ、この訪問にさらなるインパクトを与えたのです。

 折しも、アメリカが、ウクライナの黒海沿岸の防衛のために、榴弾砲18基とその輸送車、砲弾3万6000発、ハープーン対艦ミサイルランチャー2基など10億ドルの援助を発表したばかり、ヨーロッパの結束をアピールするためには、欧州サミットの1週間前という日程が選ばれたのです。

 フランス国内では、このマクロン大統領のキエフ訪問について、訪問そのものは肯定しているものの、なぜ、このタイミングだったのか?(現在、議会選挙の最終投票を控えている)というこのタイミングを非難する声も上がっていますが、このキエフ訪問をより効果的にするためには、ドイツやイタリアの首脳とともに欧州サミットの直前に訪問することで、兵器だけでなく、別のものをウクライナに送ることができると考えたに違いありません。


 それにしても、マクロン大統領とゼレンスキー大統領の再会の際の笑みや抱擁、硬く手を握り合う様子はロマンチックだなどと描写するジャーナリストもいて、兄弟のような熱い絆が感じられるのでした。


マクロン大統領キエフ訪問


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