国民議会選挙でマクロン大統領率いる右派連合「アンサンブル」が過半数を獲得できなかったことから、大きな波紋を呼んでいる中、夜8時からマクロン大統領の演説が行われるというので、注目していました。
マクロン大統領は、前日から、約2日間かけて、それぞれの政党のリーダーたちと個々に会談の時間を設け、今後の政権運営のためのヒヤリングと意見交換を重ねていました。
これまでの例を見ても、大方、どこか、違う場所での会合などでの演説ででもない限り、大抵は前もって録画されたものが、夜8時に放送されますが、今回ばかりは、その録画が行われたのが、放送15分前というギリギリのタイミングだったそうで、演説が始まる前から、「マクロン大統領が話す内容」について、ああでもない・・こうでもない・・と、予想されているところ、今、少し前に録画が始まったのだから、8時の放送に変更がないということは、演説は10分以内の短いものであろう・・などと、テレビ的な推測をされていました。
そこまで時間が押しながらも、生放送に切り替えずに録画にこだわり、結局、今回の彼の演説は8分間の短いものでした。
彼はこの演説で、国民議会選挙の結果を受け止めていることを示し、まず第一にこの選挙の棄権率の高さを指摘し、投票は、民主主義をより明確にするためのもので、国の大きな選択のために不可欠なものであるにも関わらず、このことが全ての人に実感されていないことが問題であると語っています。
ー以下演説の内容ー
そのうえで、「私は我が国に起こっている大きな亀裂や深い分裂を無視することはできず、その現実が今回の審議会の構成にも反映されていると思っています。彼らは、村のような労働者階級が住む地域の多くで、人生が閉ざされ、展望が開けないという懸念を表明しています。」
「多くの西欧民主主義国家と同様に、今日、いかなる政治勢力も単独で法律を制定することはできません。したがって、今後は、連合契約を構築するか、議題ごとにマジョリティを構築することによって、拡大することが必要になります。」
「国民と国家の利益のために行動するために、私たちはこれまでと異なる統治と立法を学ばなければなりません。私たちは、新しい議会を構成する政治グループと、対話、傾聴、尊重を基本に、新たな妥協点を築かなければなりません。これは国民が望んでいたことであるということに留意しています。それは、対話、尊重、要求を通じて、時間をかけて合意することを覚悟しなければならないということを意味しています。」
「私は、この国が明確に表明した変革への願いを聞き、それを担当することを決意しています。昨日、今日と、国会で会派を組むことができるすべての政治団体のリーダーと交流しています。私は、まず、彼らが皆、わが国の制度を尊重し、わが国のために行き詰まりを回避したいという気持ちを表明したことを強調し、会談の内容を正確に記録しています。」
「私がこの2日間で会談した指導者のほとんどは、国民統合政府という仮説を否定しており、それは現時点では正当化されないと私は考えています。また、多くの人が、購買力、仕事、完全雇用の達成手段、エコロジーへの移行、安全保障など、皆さんの日常生活に関わる主要かつ緊急な問題について前進する意志を表明しています。したがって、この重要な時期に、より広範で明確な多数派の行動を見出すことが可能であると私は考えています。」
「この方法は、論争や政治的な姿勢から脱却し、対話、妥協、共同作業を通じて築き上げるという、多くの皆さんの願望に応えるものであることを理解しています。したがって、私は、今後数週間のうちに、この政治的克服が明瞭かつ責任を持って継続されることを望んでいます。」
「まず、問題を明瞭に解決していくことが必要で、つまり、昨年の4月に選んだプロジェクトの一貫性を決して失わないということです。それは、私たちの国、フランス、そしてヨーロッパにおける独立のプロジェクトであり、強力で野心的な防衛、優れた研究、将来への投資によるより強力な産業と農業を通じて、より強くしていかなければなりません。」
「そのためには、この夏、国や皆さんの暮らしに必要な緊急対策を講じなければならないこともわかっています。購買力のための法律、より良い報酬を得るための仕事、完全雇用に向けた最初の決断、エネルギーと気候に関する強い選択、私たちの病院やパンデミックなど、私たちの健康のための緊急措置などです。」
そして、これらの対策のために増税、負債を負わないことを約束しています。
具体的な解決策を示すことができる段階ではないため、いつもは力強く、口の上手いマクロン大統領にしては、表情も硬く、説得力に欠ける演説でしたが、国民の混乱を避けるために、とにかく、今の段階で一度、意志を表明しておくことが不可欠だと考えての演説だったと思います。
しかし、世論調査によると、フランス国民の71%が国民議会に絶対多数派が存在しないことに満足しているといいます。議会にはいろいろな意見の人が集まって、話し合いをする・・これは、極めて民主主義的なことで、健全であるとも言えます。
逆にこれまで、マクロン政権がかなり強引にことを進めてきたことに対する軌道修正に繋がるかもしれません。ただし、これまでのようなスピード感はなくなります。
一部から格好の攻撃のターゲットにされていたエリザベット・ボルヌ首相の辞任問題については、今回の演説では、全く触れることはありませんでした。本質の問題は、そこではないのです。
これまでマクロン大統領が1期目就任以来、黄色いベスト運動、テロ、パンデミック、戦争といくつもの困難が襲ってきましたが、今回のものは、これまでとはまた違う根本的な国の統治の方法を覆される場面、災い転じて福となすといくと良いのですが・・。
マクロン大統領国民議会選挙結果後の演説
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