2021年5月9日日曜日

猫もコロナウィルスに感染する危険があるという説

                                        

   Selon l'étude, les propriétaires des chats ont développé des symptômes du Covid-19 avant que les félins ne tombent malades. | Mel Elías via Unsplash


 我が家に子猫がやってきてから、もう10年以上が経ちます。娘がその頃はやっていた映画から、名前をポニョとつけました。我が家はアパート住まいなので、猫が自由に家の外を出歩くことはなく、ポニョはほとんど、家の中だけで育ちました。

 以前は、ベランダからひょいっと隣人のアパートに勝手に出入りして、まるで自分の別荘のように、ちゃっかり隣の家に上がり込んで隣のおばさんに可愛がってもらったりしていたのですが、隣のおばさんが引退して、田舎に引っ越してしまって、違う人が引っ越してきてからは、ピタリと別荘にも行かなくなり、ベランダにもほとんど出なくなってしまいました。

 人の好き嫌いが激しいのは、飼い主にとてもよく似ているのですが、人間である私たちには、ある程度は、浮世の付き合いがあるので、ポニョのようにあからさまに顔に出すわけには行かないのですが、ポニョときたら、歳をとるとともに、年々、嫌いな人に対しては、気性が荒くなり、これまでは、嫌いな人だと、す〜っと家のどこかに隠れてしまって出て来なくなるくらいだったのに、最近は、嫌いな人が来ると「カ〜ッ!!」と唸るようにまでなってしまっているのです。

 数日前に、「人間はコロナウィルスを猫に感染させる可能性がある」というニュースを聞いて、ほとんど外に出ないポニョは、リスクは低いな・・とは思ったものの、ポニョに感染させるとしたら、家族である私たちからということになります。

 コロナウイルスが人間から動物に、またはその逆に感染する可能性についての科学的研究は、現在、かなり注目されているようで、グラスゴー大学(スコットランド)の研究チームは、猫が飼い主に感染したとされる2つのケースを特定したと発表しています。

 グラスゴー大学の獣医学部の獣医診断サービスと共同で実施された研究によると(医学雑誌VeterinaryRecordに掲載)、別々の家に住んでいる異なる品種の猫に軽度から重度の呼吸障害が発見されました。彼らの飼い主は、動物が病気になる前にコロナウィルスの症状を発症していました。

 最初のケースは生後4ヶ月のメスのラグドールの子猫でした。彼の主人は2020年3月末にウイルス感染に対応する症状を発症しましたが、検査されたことはありませんでした。呼吸困難に続いて、猫は獣医に連れて行かれましたが、残念ながら、猫の状態は悪化し、安楽死させなければなりませんでした。肺のサンプルは死後に採取され、ウイルス性肺炎によって引き起こされた可能性のある損傷と、コロナウィルス感染が明らかになりました。

 2匹目の猫は6歳のシャムの女性で、飼い主の1人がコロナウイルスの検査で陽性だった家庭で飼われていた猫でした。猫の症状は鼻水と結膜炎という軽度のままでしたが、 コロナウィルス感染は、2020年3月から7月の間に獣医診断サービスに提出された綿棒の検査で確認されました。

 当初は、動物には感染しないと言われていたコロナウィルスですが、現在、動物から人間へのウイルスの感染は公衆衛生へのリスクが比較的低いが、科学者はペットが「ウイルスの貯蔵庫」として機能し、感染につながる可能性があると述べています。

「人間の症例が減少するにつれて、動物から動物への感染の見通しは、コロナウィルスの人間への再導入の潜在的な源としてますます重要になります」と、この研究のリーダー・マーガレット・ホージー教授は警告しています。

 科学者たちは現在、動物用のワクチンを開発を進めており、ロシアではすでに最初の注射を開発し、3月31日に登録を済ませています。 

 ヨーロッパでは、コロナウィルスワクチン接種キャンペーンは実際に軌道に乗せるのに苦労していますが、ペットのための注射をすでに考えている人もいます。パンデミックが始まって以来、多くの専門家がコロナウイルスの動物への影響について懸念を表明しています。

 ペットといえども、大切な家族の一人。もはや、人間年齢に換算したら、家族の中では最年長のポニョです。私も娘も既に一回ずつのワクチン接種は済ませていますが、まだまだ安心はできない上にポニョにまで感染させたら、大変です。

 ポニョは、まだ小さい頃に一度だけ、病気になり、みるみるぐったりしてしまい、娘と二人で半べそをかきながら、夜中に獣医さんに連れていって、1日だけ、獣医さんに入院したことがあり、とても心配して眠れない夜を過ごし、翌日、面会に行ったら、点滴ですっかり回復し、唸りながら獣医さんに噛み付かんばかりの怒りようで、獣医さんの方から、「ポニョは、すごく怒っているから・・もう連れて帰って・・」と言われたほどの病院嫌いです。

 そんなことにならないように、私たちもポニョのためにも、まだまだ気をつけた生活を続けなければ・・と、このニュースを見て、あらためて思ったのでした。


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2021年5月8日土曜日

ロックダウン解除第一段階で、もう夏には、屋外でのマスク義務化撤廃の話題

 


 フランスは、今週に入って、ロックダウン解除の第一段階が始まったばかり、中学生・高校生が学校に戻り、10㎞以内の移動制限も撤廃されました。

 ここ数日、新規感染者数も2万人台までに下がり、集中治療室の患者も一時は、6千人を突破していたものの、現在は、5,106人にまで減少し、全体的にも減少傾向にあります。

 そんなフランスは、早くもロックダウン解除モードに一気にアクセルがかかり、早くもバカンスに出かける人や、バカンスの予約をする人も急増し、日常モードに一直線に突き進んでいる感じがします。

 今週の初めにインタビューに臨んだオリヴィエ・ヴェラン保健相は、「コロナウィルスの制御は慎重に加速していますが、油断してはいけません。この意味でも、制限解除のスケジュールは非常に良いスケジュールです」と述べています。

 そして、「ワクチン接種は深刻な状況から保護することは確実であり、ウイルスの拡散のリスクから十分に保護すると信じています。充分な数のフランス人がワクチン接種を受けた場合は、警戒を弱めることを検討できます」と続け、「この6月末までのロックダウン解除のシナリオの続きは、何ですか?」と尋ねられた彼は、「屋外でのマスク着用の義務化が夏には撤廃することができるようになることを望んでいます」と答えました。

 もともとマスクが大嫌いなフランス人(誰でも好きではないと思うけど・・)にとって、この保健相の「夏には、屋外のマスク義務化撤廃」の発言が、その他の様々な彼の発言をすっ飛ばして、広がる結果になり、次々と屋外でのマスクなしでの感染のリスクについて、語られ始めました。

 感染のリスクに関しては、ますます多くの専門家が屋外には存在しないことに発言し始めています。いくつかの研究では、外部の汚染はすべてのケースの0.5〜5%に相当するため、非常に低いことが示されています。したがって、一部のウイルス学者は、屋外でのマスク義務化を撤廃することを要求し始めています。

 しかし、保健相が言う、この次のステップ(屋外でのマスク義務化撤廃)は主にワクチン接種の進捗に依存していることは言うまでもありません。

 一方、パスツール研究所(Institut Pasteur)(パリにある生物学・医学研究を行う非営利民間研究機関)の生物学的緊急対応ユニットを担当するジャン・クロード・マヌゲラ氏は、感染のリスクが「屋外で低い場合でも、それはまだ存在している。外では、誰かがくしゃみをしてマスクを着用していなければ、充分に感染の危険はあります。従って、外部環境では、必然的に換気が良くなり、したがって非常に大きな希釈効果がある場合でも、エアロゾルによる感染が発生する可能性があります。」と警鐘を鳴らしています。

 フランスの公衆衛生局も屋外でのマスク義務化撤廃は、ワクチン接種が国民の60%以上に達しない限り危険であるとしています。

 屋内・屋外でもマスクを外せるようになるのは、ワクチン接種率90%以上に達した場合であるとパスツール研究所も発表しています。

 現在のフランスのワクチン接種は、25.62%(2回接種した人は11.68%)(5月6日現在)のみ、オリヴィエ・ヴェラン保健相が夏には、屋外でマスクを外せる時が来ることを望んでいると発言すると言うことは、夏までには、国民の60%までのワクチン接種が拡大することをひとまずの目標としているということです。

 現在、フランスでは、ワクチン接種拡大の大キャンペーン中。来週の火曜日の夜には、オリヴィエ・ヴェラン保健相自ら、白衣を着てワクチン接種に参加することを(彼はもともと神経内科医)発表しています。

 おそらく彼が言いたかったのは、「夏には、外ではマスクが外せるようになるから、それまでは、我慢して!」ということだったと思いますが、思いの外、注目されたのは、肝心な「だから今は我慢して!」ではなく、「夏には外でマスクを外せる!」の方であったことはいかにもフランスな結果です。

 昨年、屋外でマスクが義務化されたのが、感染が一時、減少したにもかかわらず、人々がバカンスで感染を撒き散らした結果が出始めた8月のことでした。

 今年は、ワクチンという強い味方がつきましたが、その進捗状況によっては、また同じ悲劇が起こらないとも限りません。

 どちらにしても変わらないのは、フランス人は、今年の夏も絶対にバカンスに出るということだけです。


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2021年5月7日金曜日

度を超えているフランスのDV 逮捕・投獄・釈放後に元妻を焼き殺す凶暴さ


Une femme est morte à Mérignac après avoir été blessée par arme à feu puis brûlée vive par son mari dont elle était séparée. (DAVID THIERRY / MAXPPP)


 フランスは、犯罪者が多すぎて・・というわけだけでもないのでしょうが、余程のことがないと逮捕されても、投獄されるまでにはなりません。だからというのも何なんですが、刑務所にまで入るということは相当な犯罪者です。

 以前、パリ市内の高級品を扱っている店が、夜中に地下道をつたって、店舗の地下部分に壁を破って押し入り、強盗を働こうとして、アラームが鳴って、慌てて逃げようとしたところが、地下から這い上がったと同時に駆けつけた警察に捕まり、逮捕されたという事件がありましたが、未遂に終わったこともあり、結局、投獄はされずに、そのまま野に放たれたという話を聞いて、強盗でも釈放??とびっくりしたことがありました。

 一昨日、ボルドー近郊のメリニャック(ジロンド県)で起こった凶暴な事件の犯人は、過去7回有罪になっている凶悪犯、昨年12月に刑務所を出所したばかりの男(44歳)は、猛烈なDVを続けた挙句に投獄、出所後も執拗に元妻を追いかけ回し、何度も家を訪ねており、犯行当日には、彼女に暴行を働いた上に、家に火をつけ、家から逃げ出した被害者の女性を銃撃し、道に倒れると、可燃性の液体を彼女に吹きかけ、火をつけて焼き殺したのです。

 生きているままに火炙りにあうという残酷な仕打ちをした犯人は、まるで戦争にでも行くような武装をしていて、明らかに計画的な犯行であったと思われます。

 ボルドー検察庁は、犯人は、約30分後、隣接するペサックの町で逮捕され、12口径のライフル、ガスピストル、カートリッジベルトを持っていたと発表しています。

 メリニャックといえば、以前、娘が通学のために一時、住んでいた地域でもあり、私も行ったことがありますが、ボルドーのすぐ近くの極めて平和そうな、私にとっては、車がやたらとゆっくり走る街という印象のおっとりとした街で、そんな凶悪な恐ろしい事件は想像もつかないごくごく普通の街です。

 被害者の女性(31歳)には、3人の子供(3歳、7歳、11歳)がおり、犯行時には、幸いにも子供は家に不在であったようですが、過去のDVの様子は目撃していたであろうし、父親に母親が、かくも残酷な方法で殺されたという事実は、深い傷に残り、結果的に両親共に失ってしまったのですから、この年齢にして、背負うものの大きさは計り知れません。

 犯人は、18ヶ月の禁固刑のところ、6ヶ月で出所になってしまっていたことが本当に悔やまれますし、なぜ、DV問題で禁固刑だった犯人が釈放になる際に、追跡用のブレスレットをつけられていなかったのか? しかも、被害者の女性は、彼の出所後の度重なる訪問(本来は禁止されていた)に被害を申し立てていたにもかかわらず起こってしまった事件でした。

 メリニャック市長のアラン・アンジアニ氏によると、住宅街で起こったこの悲劇的なシーンを目撃した人々のトラウマをケアする心理ユニットが設置されました。

 家庭内暴力の犠牲者を守るための協会によると、2021年1月以来、フランスでは、38人の女性が配偶者または元配偶者のDVを受けて死亡しています。メリニャックでのこの事件で、39人目の犠牲者が出てしまいました。

 遺体の解剖結果で、彼女の咽頭は、75%押しつぶされており、銃で撃たれる前、火炙りにされる前にも相当な暴力を受けていたことがわかっています。

 この犯人の残酷な犯行はもちろんのことですが、この犯人を野放しにした司法に対しても、「彼の釈放の際に犠牲者の危険は配慮されていなかったのか?」、「元妻への接近が禁止されているにもかかわらず、数度にわたり訪問していたことを被害者が通報していたにもかかわらず、なぜ放置されていたのか?」「危険人物につけられるはずのブレスレットはなぜつけられていなかったのか?」など、多くの疑問を「国家には責任がある」「正義の機能不全」として、訴える声が上がっています。

 フランスには、現在、危険人物につけて、行動を監視できるブレスレットは1,000個ありますが、使用されているのは、たった61個だけなのだそうです。

 フランスの格差社会の問題と片付けられる問題ではありませんが、本当にフランスは、クズ男は限りなくクズ、中でも暴力を振るうクズは、最悪です。

 これは、しっかり、国家に保護してもらいたい問題の大きな一つです。


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2021年5月6日木曜日

いつからフランスは銃社会になったのか? アヴィニョン警察官射殺事件 


Un policier a été tué dans le centre-ville d'Avignon (Provence) le 5 mai 2021. (MAXPPP)


 一昨日、パリ19区を物々しく警戒する大勢の警察官の様子が報道されていて、何ごとかと思ったら、ここのところ、数日、麻薬・ドラッグの密売人と住民との衝突が立て続けに起こっていて、そのための警戒を行っている光景でした。

 このところ、特にパリを中心に「CRACK(クラック)」と呼ばれるコカインの一種とされるドラッグの拡大が深刻で、比較的、安価に手に入ることから「貧乏人の薬」と呼ばれて、広い範囲に急速に広まっているようです。

 このクラックを服用した人々が夜中に暴れて、街を破壊したりする行為が特にパリ環状線沿線に増加しており、この19区の警戒もこのクラック問題が絡んでいるようです。

 このパンデミックの一年ほどの間に、麻薬・ドラッグによる事件が急増している印象があります。

 また、公に上がってくる麻薬・ドラッグが関わっている事件には、銃が使われてることも多く、フランスは、アメリカのような銃社会ではなかったはずなのに・・と不安な気持ちになります。

 そして、また昨日、アヴィニョン(フランス南東部・ヴォクリューズ県)で、午後6時半頃に、麻薬・ドラッグ取引ポイントであると警戒されていたエリアに群衆が集まったために、部門介入グループの警察官3名が急遽、取締りに配置されたところ、そのうちの警察官一人が銃で胸と腹部を撃たれ、救急隊が駆けつけましたが、その場で死亡するという事件が起こりました。


 亡くなった36歳の警察官は、まだ幼い少女の父親で、彼の父親も警察官という警察一家に育った人物で、危険な職務であることを充分に承知していて、日頃から注意深く行動していたと言うのですが、何の前触れもなく、ある程度の距離から、急に銃で撃たれたのでは、ひとたまりもありません。

 アヴィニョンでは、4月中旬に麻薬密売組織の一団が逮捕されたばかりで、その際にも、約37の武器とさまざまな口径の多数の弾薬が押収されていました。

 犯人は、警察官に発砲した後、電動トロチネット(電動キックボード)で逃走し、未だ逮捕されていません。目撃証言も現在のところ、ごくごく僅かで、黒い服を着た若い男性だったという程度の証言のみです。

 ここのところの、傷害・殺人事件の逃走には、車ではなく、キックボードが使用されることが多いのも注目すべき点でもあります。

 車であると、車両ナンバーから、足がつきやすいこともあり、キックボードだと、目立ちにくく、車の入れない細い道を縫って逃走が可能です。

 ここのところ、フランスでは、環境問題やコロナ感染回避の方法として、自転車やキックボードを安易に借りることができるVelib(べリブ)(パリのレンタルサイクルシステム・キックボードバージョンもある)なども急激に増え、使用する人も急増したことから、こんな逃走手段が登場したのは、皮肉なことです。

 事件が起こったのは、市内中心部の一見、平和そうに見える地域のことで、住民にも大きな衝撃が走っています。

 しかし、なぜ?銃まで使用して、街中で警察官を銃殺しなければならなかったのか? 先月、逮捕された一団の仲間の報復であったのか? また、警察に対しての挑戦、威嚇の意味であったのか? 犯人逃走中では、わかりようもありません。

 つい先日もランブイエ(イル・ド・フランス イヴリーヌ県)警察署にテロリストが押し入り、警察官を殺害するという痛ましい事件が起こったばかりです。

 いずれにせよ、パリでも連日、麻薬・ドラッグの密売組織が暴れているし、彼らの恐怖は、薬だけではなく、銃を持っているということで、ますます治安の悪くなっているフランスを連日のように感じるのです。

 マクロン大統領は、最近、警察官をここ数年で増員していくことを発表していましたが、一体、どれだけ警察官がいれば、平和な社会になるのか?と、人数よりも別の方法が必要なのではないか?と思ってしまいます。


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2021年5月5日水曜日

ロックダウン解除と共に失業者は増えるかもしれない 友人が失業する!

  


 昨日、私の数少ないパリでの日本人の友人から久しぶりに電話をもらいました。同じパリにいながらも、それぞれ家庭を持ち、自分の生活も仕事もある中、「どうしているかな?」と思いつつ、電話も何となくしそびれていて、「今度、メールかメッセージでも送ってみよう」と思っていたところでした。

 パリに来て以来、わりとすぐに知り合ったので、彼女とは、もうかれこれ20年以上の付き合いになりますが、彼女は私より、少し年上で、子供もうちの娘よりは、少し年上で、彼女がパリでしてきた子育ての様子を聞きながら、ずいぶん、色々なことを教わってきました。

 彼女は、私よりもずっと前からパリにいて、子供が生まれて仕事は一時、中断していたものの、子供が小学校に入ってしばらくして、仕事も再開し、パリでずっと仕事を続けてきました。ですから、彼女は、もうパリで25年以上仕事をしてきたことになります。

 子育てをしながら海外で仕事を続けるのは大変なことですが、彼女は、子供の教育にもとても熱心で、子供の学校のために引っ越しをしたり、また、フランスでの子供の日本語の教育などについても、ずいぶん参考にさせてもらいました。

 お互いに子供を持ちながら、仕事をする身として、お互いの仕事のこと、家族のことなどをずっとこぼし合いながら過ごしてきました。

 仕事で色々と大変なことがあっても、パリでの職探しは容易なことではなく、条件の良い転職先が見つからない限り、腹にすえかねることがあっても、決して自分からは辞めないようにしなくては・・とお互いを励まし合ってきました。

 フランスは、日頃は、「ちょっとどうなの??この国は・・」と思うことも多いのですが、社会保障は、とてもしっかりしている国で、業績不振で社員が解雇される場合には、法律で定められたそれなりの退職金が支払われ、失業保険もきっちり支払われ、その家庭の状況などにもよりますが、住宅補償、子供の養育費の援助、生活全般にわたる援助などが支払われるので、下手をすると、ギリギリの低賃金で働き続けるよりも、様々な援助を計算すると失業した方がよかったりすることになることもあります。

 特に、自己都合ではなく、会社の都合での解雇の場合は、勤続年数や職種にもよりますが、失業保険の支給される期間も長くなり、絶対的に失業後の条件は良くなるわけです。

 そして、失業保険が支払われる期間が過ぎても、会社の都合による解雇の場合は、金額は減りますが、その後も、一定の補償金が支払われ続けるのです。

 彼女が働いている会社は、観光業界に関わる仕事で、数年前から続いているテロなどによる影響ですでに大打撃を受けていた会社、もういつダメになるか・・もうダメかも・・という状態がずっと続いてきました。

 しかし、コロナウィルスによるパンデミックにより、会社自体が営業停止になっている間は、政府から支払われる補償金で、逆にずっと生き残ってきていたのです。

 それが、5月半ばには、ロックダウンが解除されるという目前になって、彼女には、会社から「解雇に関する話し合いの呼び出し状」が届いたそうで、会社側は、これから営業が再開できるようになるとともに、政府からの補償金が差し止めになるために、会社自身が従業員の給与を支払わなければならなくなるわけで、この段になって、従業員の削減に乗り出したわけです。

 ロックダウンが解除になったからといって、すぐに観光客が以前のように戻るわけではなく、利益が上がらなくても、従業員に対しては給与を支払い続けなければならないのですから、営業再開は、喜ばしいことではありながら、会社にとっては、さらに厳しい状況に追い込まれるわけです。

 彼女は、子供たちも立派に独立し、ご主人の仕事も続いているので、彼女が仕事を辞めたところで、生活に困るわけでもなく、長年勤めた仕事を辞めるショックはあるでしょうが、どちらかといえば、この会社からの解雇を待っていたようなものです。

 しかし、この会社からの呼び出しによる話し合いによって、退職時の条件が変わり、これからの補償の内容なども変わってくるので、重大な局面に、気が重いことでもあります。この退職時の内容を不服として、以前の雇用状態なども含めて、退職後に裁判を起こしたりした人もいました。

  退職時には、会社からの解雇といっても、プロフェッショナルセキュリティ契約(CSP)(従業員の再訓練を促進することを目的とし、解雇された従業員には、支援措置と特定の報酬が提供される)やプロフェッショナルセキュリティアローワンス(ASP)など、いくつかの選択肢があり、選択肢によって、かなり条件が違ってきます。

 彼女自身は、温厚な人で、あまり争いたくはないと言っていますが、法律など様々なことが絡んでくるこの問題の上に、滞在許可証の書き換えの時期が重なり、仮の滞在許可証の期限が切れてしまったのに、新しい滞在許可証が出来上がったという通知が来ないという二重の不安で、誠に気の毒な限りです。

 私も昨年から今年にかけて、滞在許可証の更新に関しては、さんざん、すったもんだをしたばかり、その後の色々な手続きも含めて、とても他人事とは思えません。

 しかし、もうフランス生活も長い彼女。これらの件に詳しい人に相談し、言うことははっきり言って、しっかり、その後の生活を見据えた選択を賢明にしていけると思っています。

 それにしても、ロックダウンが解除して、これから経済も再開していくと見られているフランスも、実のところは、こんなに身近なところで、こんな状況。

 全ての人が仕事に復帰するどころか、ここからしばらくは、さらに失業者が増える可能性は大きく、経済が元に戻る道のりは、まだまだ長いことを実感させられたのでした。



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2021年5月4日火曜日

ワクチンが驚くほど進んでいないのにオリンピックを開催する日本 オリンピックは「やった者勝ち?行った者勝ち?」

 


 日頃は、フランスでは日本についてのニュースが流されることは、滅多にないのですが、ここのところ、オリンピック開催のこともあり、日本の状況がちょっとだけ報道されています。

 未だ感染状況は日本の何倍も深刻な状況でロックダウンを解除し始めたフランスの状況を棚に上げているのは、もちろんのことではありますが、やはり世界的なイベントを開催する国として、現在の日本の第4波を迎えている状況を懸念している内容です。 

 これまでは、フランスのような大規模なロックダウンのような外出制限をしていないのにもかかわらず、奇跡的に感染が抑えられてきた日本の、マスクが日常的に使用されてきた背景や、クラスターの徹底的な追跡やスーパースプレッダーを割り出す感染対策について参考にするべきだとする専門家の意見が取り上げられてきましたが、今回の日本の第4波については、「昨年のオリンピック延期を決めた時点以上の感染の悪化状態であるにも関わらず、今のところ、オリンピックを開催することを諦めてはいない」と伝えています。

 しかも、特に不安視されていることは、日本のワクチン接種状態が全国民の1%程度しか進んでいないことで、今年に入ってから、ワクチン接種の遅れで国民から猛バッシングを受けたフランスでさえも、それからワクチン接種には躍起になって進めており、現在では、1回でもワクチンを受けている人は、全国民の23.5%まで上がってきています。(5月1日現在)

 日本人は、秩序正しい国民で、感染が増加している・・、第3波・第4波と言っても、フランスのように酷い状況になることはないとは思います。これまでの感染状況から見ても、ワクチン接種をそれほど急いでいなかったのもわからないではありませんが、オリンピックを開催するとなると、話は別です。

 日本はようやく4月に入って、高齢者に対するワクチン接種が開始し、6月末までには、高齢者に対するワクチン接種は完了する予定と発表しているようですが、ワクチン接種は、思っている以上になかなか進まないもので、余程の思い切った対策を取らない限り、(フランスでは、医者・看護師以外に救急隊員までワクチン接種を手伝っています)2カ月間で高齢者全員にワクチン接種を完了するというのは、かなり難しい話、だいたい日本の人口の29%近くが65歳以上なのです。

 海外からの観客をシャットアウトするとはいえ、世界各国からの選手団、マスコミを加えれば、相当な外国人が日本に入国します。現在は、日本入国に際して、隔離施設での3日間の隔離を含めた2週間の隔離をして、厳しい制限を行っている日本がオリンピックのために入国する人々に同じような制限を強要できるのか? また、それにおとなしく外国人全員が従うのかは、甚だ疑問です。

 ちなみにフランス人にとっては、罰則、罰金の発生しない規則は、ないも同然です。

 その上、オリンピックを支える8万人とも言われるボランティアの感染対策に対しては、PCR検査やワクチン接種どころか、今のところは、ボランティア1人につき、手指消毒液の小さなボトル1本とマスク2枚の配布のみが現段階での決定事項だというのには、驚きです。

 日本のことなので、競技場ごとでの感染対策は、かなり厳しく行われるとは思いますが、これだけの人が世界中からの人々と行き交う約2週間は、かなりの高リスクに違いありません。

 逆に各国から集まる選手団にとっては、(例えばフランスからなどは、)日本は、感染状況もずっと良い状況で、日本へ行くことに対しては、ほとんどリスクを感じないかもしれません。終われば、すぐ帰るのですから・・。

 今の日本の感染状況は、1日の新規感染者数が5千人前後ですが、もしも、フランスでこの数字まで減少したら、フランスでは、パンデミックは終わったくらいの感覚になると思うのです。

 以前、別のブログに日本でのオリンピック開催を懸念しているという話を書いたら、「オリンピックはやった者勝ち!」というようなコメントを頂いたことがありましたが、このワクチン接種が極端に遅れている日本の無防備な状況でのオリンピックが、果たして、「やった者勝ち」になるかどうか、私は、依然として、心配でならないのです。

 例えば、オリンピック関係者が日本に大勢入国して、そこで感染が蔓延して、皆が世界各国に散らばって帰って行ったとしても、ワクチン接種が進んでいる国では、大勢に影響はないような気がしますが、ワクチン接種が進んでいない日本に残された感染は、甚大な被害になりかねません。私は、むしろ、現在の状況では、「オリンピックはやった者勝ち」ではなく、「行った者勝ち」になるような気さえしているのです。

 フランスでも、ロックダウンが解除になって、夏には、第4波が訪れるかもしれないという話もありますが、なんと言っても、ワクチン接種がどんどん進んでいるので、ワクチン接種の拡大に希望を繋げていけます。

 フランスの感染がおさまった夏以降に、今度は、オリンピックが終わった後の日本の方が感染が悪化して、まだまだ日本に行けない状態が続くのではないか? そんなことを思ったりもしています。

 今は、私の心配が杞憂に終わることをただただ祈っています。


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2021年5月3日月曜日

パスツール研究所が示すフランス第4波のシナリオ

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  フランスのパスツール研究所(INSTITUT PASTEUR)の考察によると、5月3日から4段階に分けて計画されているフランスのロックダウン解除により、フランスは、7月以降に第4波が予想されると発表しています。

 第3波のピークはどうやら過ぎたように見えるフランスの現在の感染状況ですが、2020年5月にロックダウンを解除した状況(集中治療室患者数2,600人・1日の新規感染者数平均1,500人)に比べて、遥かに深刻な状況の中で(集中治療室患者数5,585人・1日の新規感染者数平均2万5千人)、ロックダウン解除が進んでいきます。

 ロックダウン中であっても、罰金がなければ規則が規則ではないフランスで、どのように規則を掻い潜るかを常に探っている中で、実際に解除された時の状況は、想像するだけでも恐ろしいことです。

 これからは、これまでの制限から解き放たれる国民とワクチンの進行状況との戦いになるわけですが、パスツール研究所の計算によると、現在、1日あたり、約35万件のワクチン接種が進んでいるフランスのワクチン接種が1日あたり、50万に達したとしても、7月以降に第4波を迎え、再び入院患者が増加することは避けられないとしています。

 昨年の段階で、感染拡大していたウィルスよりも60%以上感染力が強いと言われているイギリス変異種を始めとして、南アフリカ、ブラジル、インド変異種の出現、そしてこれらの変異種に対するワクチンへの有効性も先行きの見通しを難しくしています。

 また、彼らの計算によれば、昨年は、影響を大きく受けたと考えられている気温の上昇も、早すぎるロックダウン解除の中で、感染を抑えるには、今年に新たに登場している変異種に対しては、充分ではないと予測しています。

 そして、ウィルスが気候の影響を受けている場合でも、夏の終わりまでには、何とか感染を最大限に抑え、ワクチン接種を最大限に拡大しない限り、また秋、冬を迎えるにあたって、波の高さは低くなるとしても、再び感染が広がることになります。

 しかも、5月3日から解除される中学・高校・大学の再開は、ワクチン接種に該当しない年齢層であり、再び感染が拡大されることが心配されています。

 マクロン大統領は、このワクチン接種拡大の最後のステージとして、6月15日以降は、全ての成人(18歳以上)がワクチン接種を受けることが可能になることを発表しています。そして、これから、しばらくは、毎年、ワクチン接種が必要になるとも話しています。

 毎年、ワクチン接種にかかる費用は、年間52億ユーロだそうで、そうは言っても、コロナウィルスが根絶する見込みがない限り、ワクチンなしで、日常に戻ることはできません。

 ロックダウンの段階的な解除が発表されただけで、心配の声も上がる中、すでに解除気分満載のフランス、夏のバカンス時期を待てずに、旅行に出る人も激増、ゆっくりとした制限解除が不可欠と警鐘を鳴らすパスツール研究所の指摘をよそに、夏のバカンス時期には、昨年以上の人々がバカンスに出ることでしょう。

 この綱渡りの状況に、相変わらず、余裕で他の国々の第4波について語っているフランスの報道の中には、第4波を迎えつつある日本についての報道も含まれています。

 AFPによると、「3月初旬以降、日本での新規症例数は着実に増加しており、1月の第3波のピークに近づいています。 4月27日の時点で、日本では、主にイギリス変異種の蔓延が原因で、4,958件の新たな感染が発生。

「クーリエ・インターナショナル」によると、政府専門家委員会の尾身茂会長は4月2日、「これが第4波の始まりと言える」と述べた。オリンピックを控えている日本が、少なくとも1回のワクチン接種を受けている日本人の1.8%だけで、開会式が7月23日に予定されているオリンピックへの脅威を心配しています。」と報道しています。

 フランスの第4波の鍵を握るのは、ほぼ日常生活が戻るとされている6月30日までに、ワクチン接種がどれだけ拡大できるかであることに違いはありませんが、これに失敗した場合は、第2波、第3波以上の入院患者の増加が心配されています。

 フランスの人たち・・お願いだから、もう少し我慢して・・。


パスツール研究所

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