2025年6月20日金曜日

6月の異様な暑さと食中毒 溶血性尿毒症

  


 今週のパリは晴天は嬉しいながら、30℃を超える暑さが続いていて、正直、バテ気味です。

 雨ばかり降っている日が続くと、もう多少、暑くてもいいから、とにかく晴れてほしいなどと思うのに、いざ本当にピーカンの晴天で30℃超えとなると、またぶつくさ言い出すのは、勝手な話ですが、正直、へばっています。

 それでも、街路樹のある場所などは、街路樹のおかげで大きな日陰になってくれるので、本当に助かるのですが、それもまるでない街中に出ると、もうグッタリです。

 30℃くらい・・と思われるかもしれませんが、パリは日本と違って、どこもかしこも冷房が完備しているわけではありません。それでも、店舗や商業施設などは、さすがに冷房のないところは、ほとんどなくなりましたが、公共交通機関、特にバスは、悲惨で、ここ数日、私は毎日バスに乗っていますが、一度も冷房車にあたっていません。

 オリンピック前は、あんなにきれいなバスが増えていたのに、どうなっちゃったの?と思うのですが、この暑さで冷房なし、時には、車内のパネルが外れていて、エンジンの熱風が車内に入ってきていたりすることもあったので、これはもう地獄・・狭い空間に人は密集しているし、冷房のないバスの車内は、外よりも気温が高いのではないかと思います。

 暑さのせいかどうかは、わかりませんが、エーヌ県(オー・ド・フランス地域圏)のサン・カンタンでは、子どもの食中毒が多発し、12歳の少女が死亡しています。

 これは、同地域で同症状を呈する1歳から12歳までの8人の子どもが重度の消化器症状を訴えて入院、粘液性下痢と血清下痢の治療を受けています。

 このうち5人の子どもは、「急性腎不全を特徴とする合併症である溶血性尿毒症候群(HUS)」と診断されています。この溶血性尿毒症・・といえば、たしか、ブイトーニの冷凍ピザの食中毒事件のときと同じ病名です。

 フランス公衆衛生局とオー・ド・フランス県農業研究局は、汚染源を特定するために調査を開始していますが、現在のところ、原因は究明されていません。

 今回の食中毒にかかった子どもたちには、同地域に住んでいるというだけで、共通項が少なく、同じ学校に通っているわけでもなく、よって同じキャンティーンで食事をしているわけでもなく、中には学校に行っていない小さい子どももいるのです。

 また、彼らの両親も同じ店で買い物をしていません。

 水道水やプールの水の検査も行っていますが、異常は認められていません。

 この溶血性尿毒症(HUS)は、まれな感染症で、ほとんどが食品媒介性なので、原因は特定しやすいかとも思えるのですが、まだ特定されていない分だけ不気味です。

 しかも、まあ食中毒くらい・・と比較的軽く見る向きもなきにしもあらずのところ、子どもの場合は命に関わることもあり、実際に1名が死亡してしまったとなると大騒ぎです。

 実は、私も昨夜、なんか、胃が痛くて重くて、気分が悪くて、早めに寝たら、夜中に吐き気がして目が覚めてしまい、トイレに駆け込み嘔吐してしまいました。

 ただし、私の場合は、下痢などの症状はなく、そのあと、寝たら、スッキリ治ってしまったので、大したことはありません。しかし、夜中に吐き気で目が覚めるなどということは初めてだったので、ちょっと焦りました。

 暑くて体力が落ちているところをなんらかの食中毒に感染したら、特に子どもは、一気にやられてしまうこともあり得るのです。

 この重篤な中毒は、「極度の疲労、顔色の蒼白、排尿量の大幅な減少、尿の色の濃さなどの症状」として現れるそうなので、兆候が見られる方は充分に注意してください。


食中毒 溶血性尿毒症(HUS)


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2025年6月19日木曜日

フランスは再び世界で3番目に億万長者の多い国になった

  


 億万長者・・とは、なんとも、もうちょっと他に言いようはないのか?と感じる言葉ではありますが、とにかく超お金持ち・・超富裕層とでも言ったらいいでしょうか?

 スイスの銀行UBSの最新の世界富裕層レポートによると、「フランスは日本、ドイツ、イギリスを上回り、フランスは世界で3番目に億万長者の多い国となった」のだそうです。

 まったくこういう人々とは縁のない私には、「えっ?どこどこ?そんな人、一体、どこにいるの?」と思ってしまうのですが、いるところにはいるのでしょう。

 フランスの億万長者の数は289万人強だそうで、昨年に比べて2万人ほど増加したようです。

 もっとも世界の億万長者は、6,000万人と言われており、そのうちの40%はアメリカなんだそうで、アメリカに次ぐのは中国(630万人)、そしてフランスがトップ3とのこと。

 この上位3つの国でもそれぞれ、かなりの差があります。

 不景気な話ばかり流れてくる日本は、それでも4位(270万人)なのだそうで、5位はドイツ(260万人)です。

 もっとも、日本やドイツなどは、4位、5位の座を保ちつつも、それぞれー1.5%、ー0.5%この億万長者の数は減少しているのだそうです。

 一方、この数が上昇している国も見られ、なかでもトルコは8.4%増、アラブ首長国連邦5.8%増、インド4.4%増と現在の絶対数は多くないながらも、これだけ増加しているというだけでも、明るい見通しな気がします。

 とはいえ、社会全体を見れば、億万長者が増えているとはいえ、あまり豊かになっている気がしないのが現実です。

 これが、フランスに関して言えば、一人あたりの平均資産額となると、ベスト5どころか、16位まで転落してしまいます。ということは、億万長者はいても、国全体の経済状態が良いということにはならないということになります。

 一人あたりの平均資産額のトップはスイスだそうで、次いでアメリカ、香港、ルクセンブルクが続きます。

 しかし、私などが言うと、負け惜しみでしかないかもしれませんが、お金は困らない程度にそこそこあれば充分で、お金では買えない幸せが何より・・などと思っているのです。


フランス億万長者数 世界第3位


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2025年6月18日水曜日

また起こってしまったタカタのエアバッグの死亡事故

 


 マルヌ県ランスでシトロエンC3のタカタ製のエアバッグが爆発し、37歳の母親が死亡、同乗していた13歳の少女が負傷しました。

 タカタのエアバッグについては、もうここ数年、その欠陥が指摘され、リコール対象となっており、シトロエンだけでなく、多くの自動車メーカーは車種により、エアバッグ交換や運転停止などの通知をしてきたはずでしたが、このシトロエンに関しては、ただちに運転を中止するように勧告されていたのは、2008年から2013年に登録された旧型車までで、今回のエアバッグの死亡事故が起こったのは、2014年の車であったそうで、2014年から2019年の間の対象車両所有者には、一応の連絡はしていたと言われていますが、運転中止義務とはされていなかったそうで、しかも、今回の犠牲者には、この通知(シトロエンC3のエアバッグを交換するよう通知する手紙)でさえも届いていなかったそうで、不運が重なった感じもあります。

 この女性は、ランスの高速道路を運転中、大型貨物車に追突され、車はコンクリートの壁に衝突し、道路の反対側で停止。その際にエアバッグが作動し、女性は車の外に放り出され、道路上で発見されたといいます。

 彼女は病院に搬送されましたが、その後、死亡。被害者の咽頭部から金属片が見つかり、原因はエアバッグであったことが確定したと発表されています。

 これまでのこのエアバッグの事故から、このエアバッグは、時間の経過、湿度、熱によって劣化するガスによって、爆発することがわかっていましたが、これまでは、そのとおりに高温多湿の地域での事故の発生がほとんどで、今回のようにフランス北部での事故というのは、初めてのことなのだそうです。

 とはいえ、最近は、南部・北部関係なしに温暖化の影響で、今月もパリでさえも、まだ6月だというのに30℃超えの日が続いており、北部でさえも気温が低いとは限らなくなっています。

 しかし、フランスでの、このタカタのエアバッグの欠陥問題、リコールについては、もう数年にわたり、騒動になっているというのに、まだ知らない人がいたのかと思うと、シトロエンは、とりあえず、この危険の通知が充分に出来ていなかったという面においては、罪深いことです。

 今回の事故を受けて、運輸相は、該当車であるシトロエンC3とDS3の稼働停止を求めています。また、これまの2008年から2013年に登録された旧型車という限定であったものをシトロエンC3とDS3の全車両に拡大しています。

 しかし、当のタカタ社に関しては、すでに倒産してしまっているので、もうこれ以上、タカタに責任追及はできないことと思いますが、もうすでにこのエアバッグに問題があることは、確定しているので、それを搭載している車を販売している自動車メーカーは、少なくとも徹底して該当車を所有しているユーザーに通知する義務があります。

 車の追突事故などの際の衝撃から運転手を守るはずのエアバッグが衝撃により、爆発して運転手が車から放り出されて死亡してしまうとは、恐ろしいばかり。

 そもそも大型車に追突された時点で不運としかいいようがありませんが、それに加えてエアバッグが爆発するとは、もう目も当てられない事態。同乗していた娘の命は助かったとはいえ、この事故により、自分の目の前で母親を失ってしまったのですから、大変にショッキングなことであったに違いありません。

 

タカタ エアバッグ死亡事故


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2025年6月17日火曜日

コマーシャルセンター内の公衆トイレで・・

  


 パリのトイレ事情は、日本に比べると恵まれているとはいえない状態なので、できるだけ外でトイレに行かなくても済むようにしているのですが、時折、やむを得ない状況に追い込まれた時には、仕方なく公衆トイレに駆け込むこともあります。

 日本では信じられないことかもしれませんが、公衆トイレの場合などは、便座がついていないトイレもけっこうあるので、潔癖症の方には(そうでなくても)、かなり厳しいかもしれないので、覚悟が必用かもしれません。

 とはいえ、外出中のトイレ問題は差し迫った状況下になれば、もうそんなことも言っていられず、もう頭が真っ白の状態になって、トイレを探し回ることになります。あの緊迫感たるや、ちょっと、なかなか他にはない独特な瞬間です。

 よく出かける場所ならば、このあたりなら、ここのトイレ・・と、だいたいのトイレの場所はチェックしてあります。

 その点、コマーシャルセンターなどは、まあまあ、センター内にトイレは数ヶ所あることが多いので、そんなに心配はありません。

 先日、あるコマーシャルセンターに買物に行った際、そこのトイレは、まあまあ許容範囲内に入る程度のトイレなのは知っていたので、あまり躊躇なしにトイレに行ったのですが、そこで繰り広げられていた光景には、ちょっとショックを受けました。

 なんだか、荷物の多い小さな子ども2人を連れたオリエンタルな容貌の女性がいたのですが、いくつかトイレが並ぶ中の車椅子が入れる少し大きめのトイレを占領していて、ドアは開け放ったままなのですが、その中に全裸の少女(3~4歳くらい)が二人。暑いので、薄着とかいうレベルではなく、一糸まとわぬ姿・・扉も閉めない状態で真っ裸の子どもとおかあさん。

 さすがにトイレとはいえ、真っ裸の子どもがいたら、ちょっとギョッとします。どうやら、おかあさんは、子どもに行水?させていたというか?子どもの身体を洗っていたみたいなのですが、なかなか衝撃的な光景。しかも、その子どもたちの表情がなんとも言えない顔つきをしていて、とても複雑な気持ちになりました。

 なんというか、悲しそうでもあり、無表情でもあるような・・独特の顔つきでした。

 子どもを連れたホームレスなのか?難民なのか?わかりませんが、あまり、そういう人々がいる地域でもなく、ここには、時々、行くことがありますが、こんな光景に遭遇したのは初めてでした。

 平日の午後の時間で、その年ごろの子どもはふつうなら学校に行っている時間。こんな生活をしている子どもは、どんな人に育つのだろうか?と、ものすごくモヤモヤした気持ちになりました。

 蛇足になりますが、パリでトイレを探す場合、比較的大きな良いホテルのラウンジに近いトイレなら間違いないし、カフェや飲食店などにあるトイレは、まあまあ大丈夫なことが多いです。

 先日、サンラザール駅にある有料トイレに入ったら、カードでピッと払えて(1ユーロ)便利で、わりかしきれいでした。


パリの公衆トイレ


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2025年6月16日月曜日

ナイフに関する恐るべき数字 ナイフ襲撃事件は年間1万回以上も起こっている

  


 先週にオート・マルヌ県ノジャンの中学校で起こった中学生のナイフによる学校監督職員刺殺という衝撃的なニュース以来、ナイフに関する報道が散見されます。

 私は、まず、なぜナイフなんか持ってるの?しかも中学生が学校に行くのに・・と思ったのですが、これはなにも中学校に限ったことではないらしく、中には、小学校でさえも、ナイフによる事件は起こっているようで、本当に驚愕させられます。

 ということは、これが子どもに限ったことでなければ、もっともっと多いわけで、なんと2024年には、フランス国内ではナイフによる襲撃事件が10,397件も起こっていたそうで、これは1日あたり、28件のナイフ襲撃事件が起こっている計算になります。

 2024年、パリだけで学校内でのナイフによる襲撃事件が130件も起こっており、うちわけは、中学校で74件、高校で38件、小学校で18件となっています。

 中学校での事件が高校での事件の倍以上であることや、小学校でさえも事件は起こっているということには、本当に驚くばかりです。なんだかこのような狂暴な事件は、年齢が上がるとともに増加していくようなイメージがあったので、高校よりも中学校の方が事件が多いということは、このような犯罪が低年齢化しているということなのでしょうか?

 これらの事件は、今回のノジャンのケースのように極端に残忍だったりする場合を除き、ほとんど報道されてはいませんが、1日あたり28件もナイフ襲撃事件が起こっていれば、もういちいち報道してもいられないのかもしれません。

 特に学校内に持ち込むケースに関しては、今回のノジャンのように荷物検査を行い、憲兵または、警察によって荷物がチェックされているようですが(不定期抜き打ち検査)、ナイフを所持していた生徒は全員、規則に従って懲戒聴聞会の対象となることになっています。

 しかし、これは、あまり抑止力にはなっていないようです。

 一般社会においては、それ以上に荷物検査などということは不可能に近いので、ナイフ所持の数などは、計れないのが現実ですが、これだけ事件が起こっているとなると、相当数の人がナイフを持っているのではないか?と思ってしまいます。

 よく護身用などと聞くこともありますが、たとえ護身用ナイフを持っていたとしても、私のようなへなちょこでは、早々にナイフを取りあげられて、逆に敵に武器を与えることにもなりかねないし、人にナイフを向ける勇気もないので、そんなものは持っていない方がマシかも・・と思っています。

 しかし、思い出してみれば、亡き夫もそういえば、なんだか、いかついナイフを得意そうに買ってきたことがありました。「何に使うの?」と聞いたら、「コレクションみたいなもの、かっこいいでしょ・・」という答えが返ってきました。

 コレクションと言ったわりには、扱いはぞんざいで、その後、ずっと道具箱のようなものの中に放置されたままで、今でも道具箱を覗いたら、まだあるんじゃないかと思います。

 私は、「こういうもの、男の人って好きなんだな・・」と、なんとなくぼんやりとその時は思っていましたが、あれは、なんだったんだろうか?と今になって思います。

 しかし、事はもっと深刻で、それを持ち歩いて人を刺してしまうという事態が年間1万件以上も起こっているなんて、武器を持ち歩く勇気もない私は、もういかに、狙われないようにするか?くらいしか、対処方法はありません。


ナイフ襲撃事件


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2025年6月15日日曜日

アンチファストファッション法 ファストファッションと超ファストファッション

  


 今年の4月の段階ですでに発表されていたSHEIN,  TEMU,  Ali Express などの中国からの小包に課税するという話は、「アンチ・ファストファッション法」として、より広範囲に具体的に、また強力なカタチになりつつあります。

 4月の段階では、年間8億個以上の中国からのこれらのネットショッピングによる小包が到着しており、これが少額のために関税がかからずにフランスに入ってきており、この少額だが莫大な数のネットショッピングがフランスの繊維業界・服職業界を脅かしているというもので、これは、航空便という輸送に関してのみならず、低価格のために、結局はすぐに廃棄されてしまう、いわば使い捨てファッションという面からも環境問題にそぐわない見過ごせない状況であるとしています。

 今回、フランス上院に提出され、可決した「アンチファストファッション法」は、単なるアンチファストファッションというよりも、ターゲットを中国のネットショッピングプラットフォームであるSHEIN,  TEMUに絞ったものになっているのが現状で、ファストファッションとして知られているZaraやH&MやKiabiなどのブランドは、超ファストファッションブランドではないとし、すでにフランスで長く価値を見出しているとして、このアンチファストファッションのリストからは除外されています。

 フランスの中規模程度、小規模の服飾業界が不振でここ数年で倒産した企業が相次いでいます。多くの人々が特にパンデミックを境に大きくネットショッピングに傾き、需要の構図が一気に変わり、これに早く対応できなかったフランスに根付いていたはずの服飾ブランドがあっという間に本当に見事なほどにバタバタと倒れています。

 そもそもはファッション業界というものは、流行というものがあり、時代に乗っていなければ、また、それを牽引していくくらいでないと、生き残れない業界でもあります。

 昨今の若者たちは、偽ブランドも隠さず、それで構わないと堂々と偽物をいとわず持って歩く(身に着けて歩く)人が増えたそうで、そこそこ可愛ければ、品質は二の次でも、とにかく低価格のものに手がのびる世代が登場してきています。

 半面、シャネルやディオール、ルイヴィトンなどのハイブランドの価格は天井知らずという値段をつけても、やはりそれを買いたい人は後をたたず、超ハイブランドか超低価格のものが人気で、その中間に位置するこれまでの、そこそこ手が届く範囲の中途半端な位置にあったブランドは、一番生き残りが難しいのです。

 その中間あたりで、大成功しているユニクロは、本当にスゴイと思います。フランスでのユニクロは、日本のユニクロのイメージよりももう少し高級感があり、また、絶対的な品質の良さには定評があり、ネットショッピングはもちろんのこと、パリの大きなコマーシャルセンターには、たいていユニクロの店舗が入っているようになったくらいです。

 本当は、資本主義の社会では、仕方のない話で、これらの中堅どころのブランドもそのどちらにも該当しないながらも、何等かの押しを開発して、生き残らなければならないところ、フランスは、これを環境問題という大義名分を用いて、法律で超ファストファッションの勢いを止める手立てを打とうとしているのです。

 フランス環境庁によれば、フランスでは毎秒35着の衣類が廃棄されているといいます。たしかに環境問題的には、よいことではないとはいえ、本音を言えば、欧州企業やフランスの企業を保護するための法律といっても過言ではありません。

 この法案は、排出量、資源利用、リサイクルの可能性などファストファッション企業が販売する製品の環境への影響を評価するエコスコアシステムを導入し、最も低いスコアを獲得したブランドには、2025年から商品1点あたり最大5ユーロの税金が課せられ、2030年には、10ユーロに増額される可能性があります。ただし、税金は商品の小売価格の50%を超えることはないことになっています。

 また、この法には、超ファストファッションの広告禁止やオンラインで宣伝するインフルエンサーへの制裁も含まれているそうです。

 しかし、この法がターゲットにしているのは、主に2つのブランド(SHEIN,  TEMU)であり、フランス国内で生産・販売されている、衣料品の少なくとも90%を占めるブランドは除外されています。

 この法案はまだ上院で可決しただけで、まだ完全に施行されることが決定されたわけではありませんが、なんらかのかたちでこの中国のファストファッションに制裁を加えることはほぼ確実です。


アンチファストファッション法


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2025年6月14日土曜日

フランスでも報道し始めた日本の米騒動について

  


 日本で、お米の価格が上昇したり、スーパーマーケットの棚から消えている・・などという米騒動はネット等の報道で見ていました。

 海外生活を送っていると日本のお米というものは、本当に貴重なもので、日本に一時帰国した際には、日本のお米を必ず買ってきています。パリでもお米は買えますが、本当の日本米というものは、ないことはないのですが、高価で、日本米といっても日本の品種のイタリア産のお米・・とかいう場合が多いのです。

 ふつう、国民の主食となる食品については、あまり価格が高騰しすぎないようにある程度政府が介入して調整したりするものだと思っていましたが、そのあたりが上手く機能していないのだと思っていました。

 今回、こちら(フランス)の報道で見かけたのは、「日本は米の価格が高騰しているため、そして、選挙が近付いているために、3兆円もの費用を費やして全国民に140ユーロを支給する」というものでした。

 「4月に日本の店舗で売られる米は前年比で2倍に値上がりしたが、政府はここ数ヶ月、国の備蓄米を放出することで、この高騰を食い止めようとしていた」。「過去1年間の価格の上昇については、複数の要因が挙げられており、1つ目は記録的な猛暑のために供給量が減少したこと、2つ目は、2024年8月に巨大地震警報が発せられたためのパニック買いが起こったこと、そして記録的な観光客の流入が消費のさらなる増加につながったこと・・などとしています」

 しかし、そのどれもが要因の一端を担っていたとしても、それくらいで、お米が日常の供給に事欠くようになるのは、おかしな話です。

 ましてや、国民の税金で蓄えていたお米をまた国民に売りつけて、恩着せがましい感じのことを言っているし、さらには選挙前だからといって、ここぞとばかりに、その高騰しているお米のためにといって、国民にお金をばらまくというのはみえみえなやり口。

 そもそもは減反政策が度が過ぎていたのだろうと思いますが、なぜ、日本の美味しいお米の生産を減らすようなことをするのか?本当に疑問です。

 海外では、空前の日本食ブームを迎えて久しく、今やパリでもお寿司やおにぎりを売っていないスーパーを探す方が難しいくらいにお米は海外でも食べられています。

 おそらく、スーパーマーケットで売っているお寿司やおにぎりに使われているお米が日本製のお米とは思いませんが、日本のお米でもないおにぎり1個がいくらで売られているかご存知でしょうか?だいたい、安くて3ユーロ・・高いと5ユーロ近い(約500円~800円)のです。

 たいして美味しくもない外米のおにぎりでこの値段なのです。

 フランス人は、欧州の中でもかなり日本贔屓の人が多い国のような気がしていますが、同時に「ホンモノ」などへのこだわりを追求するというか、ウンチクを語る人が多いのです。

 これだけフランスでも浸透したおにぎりの元祖は日本、そして、本来使われるべき日本のお米で作られているおにぎりとなったら、多少、高くても彼らは喜んで買うのです。

 減反政策などせずに、日本の美味しいお米をたくさん作って海外にもっと売ればよいのに・・と本当に思います。海外では高くても売れるのですよ・・。

 農協の仕組みについては、よく知らないのですが、お米の生産・出荷を取り仕切っているのが農協ならば、農協は海外への輸出をもっと模索するべきだと思います。


日本の米騒動


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