2025年4月25日金曜日

15歳の高校生が授業中にナイフで生徒を襲撃 女子高生1名死亡、3名負傷

  


 ナント(フランス西部ロワール河畔地域)にある高校で生徒によるナイフ襲撃事件が発生し、女子高校生1名が死亡、3名が負傷(うち1名重傷)するという大惨事が起こっています。

 これが、ちょっと危険な地域の公立校だったり、ちょっとドロップアウトしかけた生徒だったり、壮絶ないじめのうえの仕返し行動だったりするのではなく、この学校がいわゆる県下でもまあまあレベルの高い私立のカトリックの学校であり、この犯行に及んだ生徒も警察にマークされていたり、学校内でも問題視されているわけではなかった生徒の突然の凶行であったために、さらにショッキングな社会現象として受け取られています。

 私自身もなんとなく、この学校が私立のカトリックのそこそこレベルの高いと言われている学校だったということで、なんとなく、娘が小学校から高校まで通っていた学校とダブって考えさせられるところがあり、これまで私立なら、ある程度、安心と思っていたのが、こんなこともあり得るのか?と愕然とさせられました。

 事件は、木曜日の昼頃、12時30分頃に授業中に起こったそうで、加害者の少年が当日、同じクラスで授業を受けていたのかどうかは、わかりませんが、一人目の少女を刺してから、別の教室を襲って、さらに3人を刺したと言われています。

 おそらく、最初に刺された少女が死亡したものと思われますが、その後、別の教室に向かって3人を刺したところで、教師が介入して、取り押さえられ、駆け付けた警察官にそのまま身柄を拘束された模様です。

 この最初の少女との間には、なにかしらの口論があったと見られていますが、とはいえ、これが怒りによる興奮からの突発的な犯行ではなく、犯行の15分前に彼は全校生徒に向けて、13ページにも及ぶ「免疫行動」と題された論文のような内容の文書を送信していました。

 この少年は、論文の中で、グローバリゼーションを攻撃し、人間を分解する機械と化した非常に暗い社会を描写しています。また、同時に彼は、「この13ページの文書は、いかなる行為を正当化するものではなく、単に事実を述べているものである」とし、「地球規模の環境破壊:最初の攻撃」、「組織的暴力と社会的疎外:第二の攻撃」、「全体主義的な社会条件付け:第三の攻撃」と3つの部分によって構成されており、ピーテル・ブリューゲルの「人間嫌い」の挿絵も添えられています。

 彼がこの文書とともに「この文書によって書かれている内容はいかなる行為も正当化するものではない」と説明しているように、この文書の内容とクラスメイトを刺すこととは、どういう関係があったのかは、全くわかっていません。

 しかし、彼の犯行が計画的であったことは、ほぼ明らかで、彼はハンティングナイフを含む2本のナイフを所持していたということで、一部の友人には、一週間まえに「さようなら。良い人生を送れるように祈っている。またすぐお会いできるでしょうが、今度はテレビで・・」と意味深な言い方をしていました。

 しかし、教室に居合わせた生徒たちはもちろんのこと、学校内の生徒にとっては相当なショッキングな出来事で、彼らは、事件発生直後から、4時間近く、学校内の体育館に避難させられ、午後4時半過ぎから少しずつ解放されたようです。

 とはいえ、相当にショックを受け、泣き出してしまう生徒たちもいて、すぐに学校の施設の周囲には大規模な警察官が配置され、警察官だけでなくライフルを持った憲兵隊までがずらりとならび、また校内には緊急心理医療ユニットが設置され、これまでに99名がとりあえずの心理的ケアを受けたそうです。

 それはもっともなことで、ふつうの人は人が刺される現場に遭遇することなどないにもかかわらず、白昼堂々・・というか、しかもそれが、学校内、授業中に起こったのですから、その衝撃は計りしれません。

 特に犠牲となった女子高校生の家族にとっては、いつもと同じように学校に行ったと思ったら、学校で刺されて死んでしまうなど、どう考えても受け入れられるものではありません。

 この加害者の少年について、同級生は、「彼は落ち着いた人で、少し内気で控え目な人だった」と見ていましたが、時折、冗談めいて、ナチスやヒトラーなどのイデオロギーや革命について語ることもあったと語っています。

 しかし、一方、スナップチャットのグループでは、過激派や政治家、ナチスなどを説明する動画をたくさん送りつけてくることもあったそうで、そのうち、周囲がついていけなくなった・・と語っている人もいるようです。

 彼は鬱状態であったとの報道もありますが、このような人物(学生)の犯行の場合、日常的には、目立った問題行動は見当たらず、おとなしく、ある程度以上の学力もあったりする場合、問題が思想的なものであったりしても、それを学校側がチェックしてスクリーニングするのは至難の業です。

 娘の通っていた学校は今回の事件が起こった学校と似た感じの私立のカトリックの学校でしたが、非常に厳しい学校で、言動を含む行動などに問題があった場合は、何回かの注意勧告(たしか3回)のあとは、やんわりと転校、退学を促されるような感じだったので、問題のある生徒は学校にはとどまれないようになっていたので、ああいう学校だったら、安心・・と勝手に思っていましたが、今回のような場合、果たして学校は、彼の危険なシグナルに気付くことができたか?と考えると疑問でもあります。

 また、夏のコロニー合宿に行った際には、ディレクトリスから、「あなたのお嬢さんが刺されそうになりました」と電話をもらって、相当驚いた覚えがありました。このとき、娘は小学校高学年くらいでしたが、娘自身は、大してショックを受けておらず、夜、部屋の電気を消すかつけたままにするかで部屋の中の数人でケンカになった末に、当事者の女の子がナイフを持ち出しただけ・・ということで、怪我も何もなく済んだそうですが、子どもから先に連絡が入って親が騒ぎ出すのを恐れて、ディレクトリスの方から先んじて連絡をくれたようです。

 だいたい、小学生の女の子がなんでナイフなんて持ってきてるの?それだけでもおかしいでしょ!と思いましたが、同時に娘には、「学校と違って、色々な人がいるんだから、あまりおかしな子は刺激しないようにした方がいいよ・・」と諭した覚えがあります。

 実際に、私はあの学校なら大丈夫・・と思っていたのです。

 それが、今回のような事件が起こったということは、より難しいことが山積し、複雑な時代になったということでしょうか?


高校生授業中ナイフ襲撃 女子高生死亡


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