2025年4月20日日曜日

オリンピックの影に泣いた人々への補償は置き去りのまま・・

  


 パリオリンピックが終わって、早や8ヶ月以上が経過し、華やかにオリンピック仕様に飾られていたパリの街にオリンピックの痕跡はほぼほぼ残っていません。ついこの間、まだ、フリージュ(パリオリンピックのマスコット)がペイントされたゴミ収集車を見かけて、「あれ!まだ、あったんだ・・」と思ったくらいです。

 本当にパリは、このオリンピックのために長いことメトロの工事をしたり、オリンピック会場になるスタジアム近辺の駅を改装したりと準備をしていました。しかし、依然として14号線の拡張工事が続いているのを知って、必ずしもオリンピックのためだけでもなかったんだな・・とも思いましたが・・。

 オリンピックともなれば、大変な観光客が舞い込んでくると誰もが思っていましたし、私自身も、近所にわりと大きめなホテルがあるために、「このホテルもオリンピックのときには、満員になるんだろうな・・」となると、近所のバス停などは、えらいことになるだろう・・どうしよう?などと思っていました。

 このオリンピックで大混雑になるパリを見込んで、パリおよびパリ近郊のホテルは1年前からオリンピック期間中の値段を爆上げし、結果、蓋をあけてみれば、予約が埋まらない状態になりました。

 また、このホテル価格の爆上げに加えて、セーヌ川でのオリンピック開会式に向けてのパリ市内、広範囲にわたる通行止め(歩行者も含めて)状態にオリンピック開会式前後などは、前代未聞のガラ空きのパリ・・こんな空いているパリ、滅多にない・・状態でした。

 私などは、いつもは混雑している場所を軒並み渡り歩いて空いているパリを満喫しましたが、オリンピックの観光客で売上げ倍増!と目論んでいたパリの商店・レストラン(特に通行禁止に指定された地域の商店・レストラン)は、軒並み閑古鳥が鳴く状態になりました。

 つまり、この地域の商店・レストランなどの経営者は、特にオリンピック開会式の前後、1ヶ月近くは売上げが激減し、補償を求める声が強く上がっていました。

 この声が大きくなることを恐れた政府は、オリンピック開会式直後、2024年8月1日付で、経済産業省が補償についての説明の書簡を出しています。

 「2024年パリオリンピック・パラリンピックをフランスで開催することは、我が国にとって大きなチャンスであると同時に行政機関にとって大きな挑戦でもあります。すべてがスムーズに進み、全ての人の安全が保証されるためには、特定の場所、エリア、ルートへのアクセスを制限または禁止する必要がありました。このエリアには、経済的な損失を被るケースが生じる場合は、補償が可能となります。ただし、補償の対象となるのは、政府が行った制限的な決定に関連する経済的損失に限られます」

 おそらく、欲張って価格を高騰させた結果に顧客に逃げられたホテルなどは、補償の対象にはならないということだと思いますが、とにかく、少なくとも、この通行止めのエリアの商店やレストランに関しては、彼ら自身には、何の咎もなく、本当に遠くから眺めるにも、お気の毒な気がしたものです。

 ところが、この補償、オリンピックが終わって8ヶ月以上が経過したというのに、まだ支払われていないどころか、補償委員会さえも設立させていないそうで、さすがに「ふざけんな!」との声が上がり始めているようです。

 2024年を通しての売上げがすでに出ている中、これに該当するエリアの店舗は、年間売上げが10%~12%減少しています。

 個人的には、ノートルダム大聖堂近辺の商店などは、2019年の大聖堂の火災以来、まさに踏んだり蹴ったりだったと思います。

 当然、火災により、ノートルダム大聖堂への観光客は長期間にわたり激減、それでも、さすがにノートルダムだけあって、焼けた跡でさえも、観光客の足が全く途絶えることはなかったとはいえ、さすがに修復中の間は観光客は少ないことはたしか。

 せめて、オリンピック期間には!と観光客を期待していたところが、まさかの通行止めに・・。

 オリンピックが済んでしまえば、オリンピックのことは、もうすっかり忘れて・・となりがちなところに、この補償問題は置き去りにされてきたようです。

 奇しくも、フランスは、オリンピック後に政権が2度も変わったこともあったりして、終わったことに関しては、置き去りにされてしまったのもわからないでもないのですが、当事者にとっては、死活問題です。

 税金などは、滞納したりすれば、追徴金が加算されたりもしかねないわけですから、この補償に関しても、速やかに対応すべきだったと思います・・が、補償委員会も設立されていないというのですから、払う気がないと思われても仕方ありません。

 「いいかげんにしろ!」と声をあげ始めた約100人の店主は、被害者委員会を設置しました。

 これに対し、パリ警察署長とイル・ド・フランス(パリ近郊)地域圏知事は、ようやく4月末までにこの補償委員会を設立することを確約しました。

 ここで、ようやく補償に向けての動きがスタートする兆しが見え始めたところです。

 取り立てるときは、強引なのに、支払う段になると、ものすごく時間も手間もかかるのは、世の常とはいえ、あまりに気の毒な話です。


オリンピック被害の補償


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