17歳の少年が18歳の誕生日を迎える3日前に自らの命を絶ってしまったのは、投獄されていた彼を襲った性加害者が懲役5年のところを減刑されて、わずか2年4ヶ月の服役ののち、釈放され、よりにもよって、彼の住まいから3キロほどしか離れていない場所に戻ってきてしまったことにあるとし、彼の両親は、司法は被害者に対する配慮が欠けていると訴えています。
この惨劇には、いくつもの悲劇が重なっていたように思いますが、過去にフランスで起こっている性加害暴力事件などを見ても、性加害を訴えて、犯人を逮捕、拘留、投獄するまでは行っても、その後、この加害者たちの釈放後の措置、また、被害者への配慮は明らかに欠けているように思えてなりません。
そもそも、この少年が性加害を受けていたのは、彼が12歳のときからのことで、この加害者は、少年を含む家族のかつての隣人であり、家族ぐるみで良好な関係の間柄の人物で、しかも加害者は50歳(当時)の男性。彼はこの事実を両親に打ち明けるまでに時間を要したうえに、さらに性的虐待を受けた児童を支援する団体に通報するまでに3年もかかり、加害者が有罪判決を受けるまでにまたさらに1年がかかっています。
また、この男、なんとこれが初めてのことではなく、2007年と2014年にも同様の行為ですでに有罪判決を受けており、再犯を重ねている人物。しかも懲役5年の判決を受けながら、模範囚であったとかで、なんと本来の半分以下の刑期である2年4ヶ月で釈放。
そのうえ、被害者宅からさほど離れていない場所で再び生活を始めるという被害者家族にとったら、信じられない状況です。これを司法が放置しているのは、許せないと両親は激しい怒りをあらわにしています。
彼の両親は、少なくとも検察側は、加害者が釈放される場合は、前もって、被害者に警告する措置をとってほしいと訴えています。これに対して、検察側は、加害者の釈放は、事前に被害者家族に通知の手紙を送っていたと主張していますが、被害者家族はそんな手紙は受け取っておらず、彼の釈放は知人から偶然聞いて知ったと告白しています。
現在の司法では、検察は、被害者に対して加害者の釈放を告知する義務はないそうで、検察側は、手紙を送ったとするも、これを公開する義務はないと主張しています。
この被害者の少年は、この加害者の釈放を知ってから、Instagramで、彼が釈放されたことに対する自らの恐怖との闘いをつづっており、また、彼の死後、自身の携帯電話から、「自殺願望書・最終版」と銘打った別れの手紙が発見され、そこには、彼が自ら命を絶つことの一番の動機は、加害者の釈放であると明記されています。
当時12歳だった少年がどれほど心と身体に深い傷を負っていたかと思うと、なんとかならなかったのか?と憤りが湧いてきます。
検察側は、加害者は釈放したとはいえ、電子ブレスレットを装着し、被害者および被害者家族に接触することは禁止されていることを強調しています。
さらなる悲劇は、この亡くなった息子の誕生日に彼の両親は彼の棺を選びに行ったという何よりもやるせない日になったことです。
性加害という犯罪は、最も再犯率が高いといわれる犯罪であるにもかかわらず、この犯罪者の釈放に関して、最も慎重に行わなければならないはずだと思うのです。
性加害を受けていた少年 自らの命を絶つ
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