2025年5月5日月曜日

仮想通貨会社の社長の父親誘拐・監禁 指切断画像の脅迫

  


 5月1日午前10時半頃、パリ14区でフードをかぶった男たちが一人の男性を誘拐しました。この誘拐の様子は、かなり派手に行われたようで、この男性が配達用のバンで連れ去られるところを多くの人々が目撃しています。

 この男性は、莫大な資産を築いた仮想通貨会社の社長、いわゆるデジタル億万長者の父親で、誘拐されるとまもなく、この社長は身代金数百万ユーロ(500万~700万ユーロと言われている)が要求されました。

 そして、この誘拐犯たちは、身代金の要求にプレッシャーをかけるため、この父親の指を切断した画像を送っていました。

 この父親が誘拐された時点では、この社長はマルタにいたものの、この身代金要求を受けるとただちに警察に通報し、自分もパリに戻って、捜査官とともに警察に詰めており、父親の切断された指の画像を受け取ったときに、彼はすでに警察とともに、その脅迫状を見ていました。

 この捜査には、特別捜査隊が設けられ、この父親の捜索には、BRI(Brigarde de Recherche et d'Intervention)が介入し、誘拐から約60時間後にパレゾー(エッソンヌ県・イルドフランス地域圏)に監禁されているところを救助されました。

 誘拐された父親の年齢が50歳だった(若い)というのにも驚いたのですが、父親が50歳ということは、この億万長者の社長は何歳だったのでしょうか? そして、今回の事件で逮捕された7人の男たちも、1998年から2005年生まれの20歳から27歳の若者たち?ということで、その年齢層での集団誘拐・・恐ろしい話です。

 今回は、特別捜査のおかげで、監禁場所の特定ができ、比較的早くに救出することに成功しましたが、誘拐犯たちは、他にも、銃器、刃物、鈍器などを所持していたことがわかっており、これがさらに時間が経過していれば、指だけでは済まなかったかもしれない・・とも言われています。

 ここ数年にわたって、急速に拡大したこの仮想通貨システムにより、莫大な資産を築いた新たな富裕層が生まれ、彼らは非常に有名で、羨望の的となっていることから、この財産を狙った今回のような極めて暴力的な手段でそれを奪おうとする犯罪が増加しているようです。

 この社長は、脅迫を受けたのは今回が初めてでなかったようですが、誘拐(父親)、身代金要求を受けたのは、初めてのことで、彼の父親は身の安全を脅かされ、指を失っています。

 それでも、彼は身代金は全く支払わずに、父親を救出できたそうですが、仮想通貨で身代金が支払われた場合には、その後、仮想通貨の追跡が難しく、痕跡が残りづらいために、このような犯罪を企てるのではないか?とも言われています。

 巨額の富を得て、幸せだと思いきや、自らの、またその家族の安全な生活が脅かされるという恐ろしい事態。いったい、巨額の富は幸せなのか?と考えてしまいます。


仮想通貨会社社長の父親誘拐 指切断


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2025年5月4日日曜日

大きな雹(ひょう)が降る5月のパリ

  


 ここ数日、パリは30℃超えの暑い日が続いていて、それでも、比較的、湿度は低いので、木陰や日陰などに入れば、ホッとすっきりするのも助かるな・・と思いつつ、お天気が良いのはよいけれど、さすがに数日、この気温が続いていくと、もう締め切った空気でさえも、だんだんとどんよりしてきて、ちょっと身体がだるく感じるようになっていました。

 土曜日の午前中は、また晴天でしたが、それでも、昨日までほどの気温の上昇はないものの、お天気で、そこそこの気温でした。ところが、夕方になるにつれて、午後4時頃に急速に雲行きが怪しくなってきて、もしかして、雨が降るかも??と思っていました。

 その日、私は、家の中で掃除をして、ちょっといつのまにか溜まっていた雑誌などを山積みにしたりしながら、紙ってやたら重いものだな・・と思いながら、このゴミを捨てるのは明日でいいか・・と、玄関の扉の前に袋詰めにしたところでした。



 急にものすごい風・・というか、もう嵐のような突風が吹き始め、暴風雨??いやいや急いで、開いている窓を閉めなきゃ・・とキッチンの窓を閉めに行きました。

 ところが、これが、単なる暴風雨ではなく、この嵐には、大粒(粒とはいえないピンポン玉?ゴルフボール?くらい)の大きさの雹(ひょう)で窓ガラスに飛んでくる雹がパチパチというよりもカチカチ・・こつんこつんという感じに窓に吹き付けていました。

 また、風速もけっこうな強さのために、この大きさの物体が、頭や顔にあたったら、ちょっと痛そうかも?と怖くなるくらいのちょっと暴力的な感じの雹で、とりあえず、窓を閉めるのが大変なくらいの風速でした。(窓は引き戸ではなく、上の部分を手前に開閉するタイプの窓なために、外から吹き込んでくる風が強いと、全力で窓を支えても、完全に窓を閉めるのは、なかなか大変です。

 さすがに、これが長時間続くことはないだろうと思っていたら、案の定、これは、せいぜい15分~20分程度のことでしたが、ちょっと焦りました。しかし、家の中にいて、幸いでした。

 しかし、この突然の暴風雨と雹に、パリ市内は少々、混乱したようで、この異常気象に洪水のためにパリ市内の2・3・6・7・9号線のメトロの駅が閉鎖。


 パリのメトロの駅は、その駅にもよるのですが、その駅の出入り口は階段で少し降りていく程度の駅もけっこうあるのですが、(これが上がってくるときには、メトロの階段からパリの街の緑や青空が見える景色がきれい)このような突然の大雨などの被害には、めっぽう弱いつくりになっています。

 これまでも、パリに雹が降ったことはありましたが、今回のような、ちょっと危険を感じるような大きな雹を見たのは初めてのこと。

 この雹のために、パリの気温は数分で27℃から15℃まで下がったようです。

 これは、気をつけないと体調崩しそうです。


パリ 雹 ひょう


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2025年5月3日土曜日

仏大手製薬会社サノフィ 子会社オペラ(ドリプラン)の株式の50%を正式に売却

  


 昨年の10月に発表されたとおり、仏大手製薬会社サノフィは、子会社オペラの株式の50%をアメリカのファンドCD&Rに売却することを正式に決定しました。

 この発表がなされた当初は、今や子会社化しているとはいえ、サノフィの看板商品?とも言える「ドリプラン」の部門でもあり、この「ドリプラン」はおそらくフランスで最も有名な薬(鎮痛・解熱剤 パラセタモール)、フランスで最も売れている薬でもあり、毎年3億箱が販売されており、「フランス人の魂を売り払うのか?」というほどの勢いの世間からの反発、いわばフランスの国民的な薬の会社なのです。

 また、このドリプラン製造部門の工場がフランスから消えてしまうのではないか? それに伴い、この従業員の雇用問題は? などなど・・物議を醸していました。

 とにかく、フランスでは何でもかんでも、病気になれば、「とにかく、とりあえず、ドリプランでも飲んどけば・・」と言うほどの、とても身近な薬でもあり、実際にパンデミックの際もコロナウィルス感染しても、特効の治療薬はなかったために、この「とりあえず、ドリプランを飲んで様子をみてください」が横行していました。

 パンデミックの際は、多くの流通が世界的にもストップしたこともあり、このドリプラン(現在は海外で製造している分が多い)が不足する事態が起こり、大変なパニック状態に陥り、マクロン大統領までが出てきて、「これからは、非常時に備えてドリプランをできるだけ国内で生産するようにしていくようにする・・」などと発言していました。

 しかし、パンデミックがどうにか終息したかと思ったら、まさかのドリプランがアメリカのものになる?フランスから消える?などという話になり、余計に大騒ぎになったのです。

 実際のところ株式の50%はアメリカのファンドCD&Rが所有し、サノフィが株式の48.2%を所有し続け、残りの1.8%は、政府が絡んでBpi france(フランス公的投資銀行)が取得し、アメリカの言うがままにはさせない姿勢を保とうとしています。

 この子会社の株式50%売却により、サノフィは100億ユーロを得る見込みで、同社はこれを今後、免疫学のリーダーとなり、AIを原動力としてグループの成長に繋がる糧とするとしています。

 サノフィが具体的にどのような開発に取り組んでいるかは、わからないものの、ちょうど昨年の今ごろ、2024年5月にサノフィは、米国ノババックス社とライセンス契約を締結したことを発表しています。

 これは、新型コロナウィルス感染症ワクチンの販売とインフルエンザ及び新型コロナウィルス感染症ワクチンの開発に関するもので、アストラゼネカが新型コロナウィルス感染症ワクチンからの撤退を発表するなか、正反対の方向に進み始めたことでも注目を集めていました。

 そもそもこの新型コロナウィルス感染症ワクチンの開発については、サノフィは多額の研究費を投入しながら、実際にパンデミックの最中には完全に出遅れてしまった経緯がある中、今度は、たんぱく質ベースの非mRNAアジュバントワクチンへのアクセスとともに、同社のインフルエンザワクチンの混合ワクチンへの可能性も見込み、2025年からの販売を計画していました。

 サノフィがドリプラン売却を代償にして得る新しい開発は別にもあると思われますが、この100億ユーロが吉と出るか?凶と出るかは、まだまだ先にならないとわかりません。


サノフィ ドリプラン


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2025年5月2日金曜日

5月1日は労働者を働かせることが禁止されている

  


 5月1日は日本では、メーデーとされながらも、特に祭日でもないと思いますが、フランスの5月1日は、祭日であるだけでなく、法律上、労働者を働かせることを禁止しています。もちろん、病院や公共交通機関、ホテルなど、公共性、継続性?のある仕事に関しては、例外が認められていますが、この日に従業員を働かせる場合は、2倍あるいは、3倍の給与を支払わなければなりません。

 もっとも、基本的には、禁止されているわけですから、もしも、これに違反して、従業員を働かせた場合は、一人あたり750ユーロ(未成年は1,500ユーロ)の罰金を課せられることになります。

 今年は、やけにこの5月1日になる前に、パン屋は5月1日に営業するか?しないか?ということを扱っている報道が多いと思ったら、現行のこの5月1日に従業員を働かせてはならないという法律を改正してほしいという声をパン屋さん業界が求める声をあげ、国会でもこの5月1日の労働禁止措置緩和の法案が提出されたりもしています。

 もちろん、パン屋さんといえども、従業員は使わずに家族だけで営業することは可能ではあります。

 このパン屋さんに加えてお花屋さん業界もこの5月1日の労働禁止措置緩和を求めているようです。

 最近は、日曜日といえども、営業するお店は増えましたが、以前は日曜日というのは、ほぼほぼ全てのお店が閉まっていて、日曜日でも営業しているのはパン屋さんとお花屋さんくらいのものでした。

 そんな感じでパン屋さんとお花屋さんはセットというか、日常生活に欠かせないものとしての認識があるのだとは思います。

 一般的な日曜、祝祭日に関しては、場所によっても違いますが、営業許可をとっていれば、営業できる場所もあれば、それも叶わない場所もあります。しかし、5月1日は労働者の祭典だけあって、労働者ファーストの日とされているために、労働者を働かせてはいけないということになっており、また、働かせていることが見つかれば、罰金が課せられることもあり、さすがにだいたいのお店は閉店しています。

 お店の規模にもよるのでしょうが、従業員一人あたりの罰金を考えた場合、現在の法律によれば、せっかく働いても一人当たり750ユーロの赤字になるわけで、オープンするのは、かなりリスキーな話なのかもしれません。

 ただし、これは、嫌な言い方ですが、見つかってしまえば・・の話で、実際のところは、けっこうオープンしていたパン屋さんはあったようです。

 せめて、働きたい従業員には、働かせてほしい・・という声もあるそうですが、この「働きたい」というのが、本当に働きたいのか?それとも圧力をかけられているのか?判断しづらいところも出てくるとは思うので、年に1日くらいこのような日があっても良いではないか?とも思うのです。

 だいたい、夏のバカンスの際などは、パン屋さんといえども、平気で1ヶ月くらい休むのですから、この日、一日くらいは、1年の間に調整は効きそうな気がするのです。

 今や、フランス人といえども、毎日パン屋さんに通ってパンを買っている人が一体どのくらいいるのかわかりませんが、やはり病院や公共交通機関とは違うと思うのです。

 

5月1日 メーデー パン屋


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2025年5月1日木曜日

児童養護施設における子どもの売春 被害者家族が告訴

 


 児童養護施設に預けられている子どもが売春斡旋業者のターゲットになっており、正確な数字は把握されていないものの、全国規模では、児童養護施設に収容(保護)?されている子ども15,000人が売春に関与していると見られています。

 今回のこの騒動は、この被害者(売春に関与していた子ども)の親3人がこの保護責任のある児童養護施設の責任者を告訴したことから、児童保護施設と売春の現状についてが公にされたものです。

 そもそもの話は家庭環境に問題があり、子どもを養育できない親から保護している児童養護施設が現実には子どもを保護できていないということで、しかも、この児童養護施設の子どもは、その多くは親元から離れているために、苦情を申し立てる可能性が極めて低いうえに、児童養護施設に入っているという時点で、もう子どもたちは、保護されている状況であるとみなされてしまうために、被害申告や調査の対象にもなりにくいというところに落とし穴があります。

 児童養護施設でしっかり子どもを保護してくれていれば、良いのですが、これが杜撰なために、逆に児童養護施設は売春斡旋業者のターゲットにされているようです。

 この売春の罠に陥る子どものプロフィールは似通っており、そもそもが家庭内の暴力や性的暴力の被害者であり、そのような子どもたちが児童養護施設に保護されたかと思いきや、そこは、売春斡旋業者がターゲットとして狙う場所で、酷い場合は、Airbnbで監禁され、コカインなどを摂取させられ、売春を強要させられる地獄が待っています。

 今回の告訴の1人である母親は娘からのSOSの電話で事態を知り、警察に通報し、娘は緊急避難所に収容されたと言います。

 この売春斡旋業者の多くは麻薬密売グループと繋がっていて、麻薬を売るように少女たちを売っているのだそうで、少女一人で月1万5,000ユーロ程度の売上げになるのだとか。そもそもその生い立ちからして、辛い思いをしてきた子どもたちにとっては、まさに地獄です。

 この児童保護施設については、このようなDVや性暴力などで保護されている子どもが多いようではありますが、なにかと理由をつけて、子どもを連れていかれてしまうケースも聞いたことがあります。

 私は夫が急逝したあと、誰が通報したのか、家庭裁判所からの呼び出しを受けたことがあり、要は子どもを一人で育てていけるのかを審査される場だったのですが、私の場合は、仕事もしていたし、夫の同僚だった女性が裁判所での面談についていって、説明してくれたために、事なきを得ましたが、仕事の関係で付き合いのあった男性で、奥様が精神的な病気にかかってしまい子ども3人を抱えて、それでも彼は賢明に子育てをしていましたが、この児童保護担当に狙われ、弁護士と相談しながら、それを何とか回避するために、とりあえず、妻と子どもたちは、日本の両親のもとに避難させるしかなかった・・という話を聞いたことがあり、彼によれば、児童を保護することで一人あたり当時で2,000ユーロのプリム(報奨金のようなもの)がその保護担当者に出るのだとかで、躍起になる悪質な人もいるのだそう。

 とにかく子どもを保護するという大義名分と法律を振りかざしているのですから、立場は強く、こういう時には外国人であるということもハンディキャップになり、そうでなくとも苦労しながら、頑張って子育てしている人間にとったら、それこそ酷い仕打ちです。

 私もこの話を聞いて以来、彼から紹介してもらった児童保護問題に強いという弁護士さんの電話番号を握りしめながら、娘が成人になるまではドキドキで過ごしました。

 少々、話はズレてしまいましたが、この何かと問題のありそうな児童養護施設で児童を保護できていないという致命的な問題。これは本当に早急に改革してほしい問題です。

 そして、このような子どもの売春問題に関して、いつも思うのですが、これが商売として成り立つということは、それだけのお客がいるということで、そっちの方は何も手つかずというのも片手落ちだなと思うのです。


児童養護施設と子どもの売春


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2025年4月30日水曜日

SHEIN, TEMU, Ali Express 中国からの小包に課税 2026年からの予定

 


 エリック・ロンバール経済相は、中国からの荷物の流入の急増に直面し、「倫理、地球、公共財政」を尊重することを求め、中国からの小包(ネットショッピングによる買い物)に対して、これまで免税されていた150ユーロ以下の荷物に対して課税することを発表しました。

 これは、SHEIN, TEMU, Ali Expressなどのネット販売の大躍進によるもので、2024年、フランスには、年間8億個以上の150ユーロ以下のこのネットショッピングの荷物が到着しているそうで、これは、2023年の2倍になっています。

 欧州委員会もこの現実に注目し、2028年に同様の措置をとることを検討していますが、フランスは、これに先立ち、来年から実施する見込みと発表しています。

 この課税について、フランス環境移行機構(ADEME)などのデータを引用し、飛行機で輸送される荷物(中国からの荷物は特にこのケース)は、船で輸送される場合よりも100倍多くの二酸化炭素を排出していることなど、環境面からのアプローチも理由付けにされていますが、正直なところは、これらのSHEIN, TEMUなどのネットショッピングの低価格、幅広い選択肢、積極的なマーケティングにおされて、多くのフランス企業がその居場所を奪われていることが大きな理由でもあります。

 これまで、私は、これらのネットショッピングをしたことがなく、というよりも、できるだけ、買わない・・物はできるだけ減らしていくつもりでいるので、あまりこのようなサイトさえも覗かないのですが、今回、この話を見て、どれどれ??とサイトを覗いてみたところ、まあ、安いこと!10ユーロ以下のものがたくさん!しかも、見たところ、そんなに悪くなさそう・・これなら、使い捨てでもいい値段・・などと思ってしまいました。

 ちょっと日本で100均で買い物する感覚と似ているかもしれません。これが実際に買いものに行かずとも、クリックするだけで、家に届くのですから、これはショッピングが好きな人にとっては、ついついお買物をしてしまいそうです。

 ここ数年でフランスの中堅どころの服飾品メーカーが軒並み倒産に追い込まれていますが、これは、このネットショッピングが大きな原因のひとつになっているような気がします。(そんな中で大成功しているユニクロは凄いと思いますが・・)

 この価格帯ならば、150ユーロ以上の買い物をすることはむしろ大変で、そこに8億個分の小包に税金をかければ、税収が見込めるだけでなく、この荷物の流入に少しはストップをかけられ、フランスの企業を救うことに繋がるのでは・・という算段です。

 それならば、飛行機での荷物の配送は二酸化炭素を100倍排出するなどというきれいごと(そのこと自体は事実だとは思いますが、消費者には響かないと思う)を言っていないで、要はフランスにそのような魅力的な価格の商品やより魅力的な商品を提供できる商売を構築していけばよいのに、なんだか、あまりに中国が勝ちすぎているから、税金をかけるとは、ある程度はありと思わないではないですが、根本的なフランスの産業回復とは違うんじゃないか?これではトランプ大統領と同じではないか?と思うところもあります。

 実際にフランスで2026年から開始、欧州では2028年からとなれば、とりあえずは、欧州内の他の国に配達してから、フランスへ・・などといった税金回避の方法を考えるだろうし、この2年間の間にまた別の方法を考え出すに違いありません。


SHEIN,  TEMU,  Ali Express 中国からの小包に課税


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2025年4月29日火曜日

日本入国のためのオンライン事前申告渡航認証システム JESTA 前倒しで2028年度に導入

 


 ついこの間、イギリスでのETA(電子渡航認証)が始まって、すでにアメリカ、カナダ、オーストラリア、韓国などにも導入されているという事前申告渡航認証システムは、日本では、当初、2030年までに年間6,000万人の観光客を目指すとともに、このシステムを2030年までに導入すると発表していました。

 しかし、すでに続々と世界の国々がこのシステム導入に踏み切っており、欧州では、欧州30ヶ国への渡航システム「Etias」(欧州渡航情報・認証システム)を2026年にスタートすることを発表しています。

 この世界的な潮流に、日本は2030年導入の予定を2028年度に前倒しすることを決定したようです。

 この日本の新しいシステムを私はフランスのニュースで知ったのですが、「日本は外国人観光客の急増を受け、政府はJESTA制度の導入を前倒しすることを決定した」というもので、米国のESTAや英国のETAなどのモデルにヒントを得たこのシステムはビザが免除される旅行者を評価することを可能にする」のだそうで、約71ヵ国の外国人日本入国者はこの電子認証を取得するために、個人情報と滞在期間中の予定を申告しなければならないと説明されています。

 このアプローチは、何よりもまず、国境管理を強化しながら到着者の管理の改善することを目指しています。

 このJESTAシステムは、通常90日までの短期の観光または商用滞在のビザ免除旅行者を対象としており、旅行者は出発前に訪問理由や宿泊先の住所などをオンラインフォームに登録する必要があるそうです。

 日本政府は「管理を強化し、入国審査を円滑にするためにも、このシステムを早急に稼働する必要がある」としています。

 旅行者は出発前にJESTAを取得しておく必要があり、この申請が拒否された場合は、日本行きの飛行機に搭乗できなくなります。

 これにより、最初からリスクプロファイルを特定することができ、不正な滞在を防ぐことが可能になるそうです。とはいえ、不正に滞在しようとしている人々は、正面から、正規の方法では入国しないのでは?などと思ってしまいます。

 とりあえずは、このシステム導入は良いことだとは思いますが、その後のこの情報をどのように管理できるのかも疑問が残るところでもあります。

 もっとも、このJESTAに関しては、日本人には必要ないものなのですが、今後、多くの国では、同様のシステムが日本よりも早くに導入されるので、行く先々で、その国の渡航認証システムを取得する必要が出てくる・・そんな時代になりました。

 もうパスポートだけじゃ旅行できなくなるのね・・。


JESTA オンライン事前申告渡航認証システム


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