2024年10月15日火曜日

サノフィ・ドリプラン等の一般消費者向け薬品部門売却に見る企業の収益性と国の関係

  

 サノフィはフランス最大手の製薬会社・多国籍企業で、フランス人なら知らない人はいない「ドリプラン」の会社です。サノフィという名前は知らなくとも「ドリプラン」を知らないフランス人はいないといっても過言ではないほどのフランス人にとっては国民的な薬を作っている会社です。

 ドリプランはいわゆるパラセタモール・鎮痛・解熱剤です。

 具合が悪ければ、「とりあえず、ドリプラン飲んどけ!」というほど・・ドリプランは有名な薬で、ドリプランを置いていない薬局は恐らくフランスには存在しないと思います。

 コロナウィルスが大流行した時も、医者にかかっても、特定の治療薬はなかったため、結局、「ドリプラン飲んどけ!」で終わりだった・・と嘆いている人は多く、また、この時期、ドリプランが国内で品不足になり、政府も「今後は、必要最低限の薬品、パラセタモール等は、国内生産を増やすようにする」と宣言していました。

 それが、サノフィが消費者向け薬品部門(ドリプラン等)をアメリカのファンドCD&Rに売却する意向を発表し、ドリプランが消える??とアメリカに買われる?と大騒ぎになっています。

 フランス国内にあるサノフィのいくつかの工場の従業員は、ストライキを起こして騒ぎはじめ、経済産業大臣はノルマンディーにある工場を訪問し、ドリプランは引き続きフランスで製造すると約束して従業員をなだめましたが、会社側が買収交渉を行っている中、政府がこの約束をできるというのが、理解できません。

 このサノフィの一般消費者向けの薬品部門は、それなりに収益があるとはいえ、サノフィCEOの「より収益性の高い医薬品に注力したい(同社の主力分野である免疫学での治療法の開発を優先したい)」という方針により、同部門の売却が進められていると言われています。(ただし、売却といっても、50%を売却ということらしい)

 国民の公衆衛生の使命を伴う根本的な産業であるだけに政府が口を出そうとするのは、当然のことではありながら、結論としては、国にはそれを止める権利はなく、現在の法律で決められている範囲内で、とりあえず、従業員の補償を確保することは可能で、フランスでの雇用と生産を維持するために 3 年から5 年の補償と猶予期間が設けられるであろうことは、予想できますが、そもそも会社がこの部門を切り捨てようとしているのは、フランス国内で低コストの製品を生産するほどの利益は出ていないからこそ売却に踏み切ったわけで、政府が口をはさめることではありません。

 買収する側の会社からしても、収益性が低いからと売却されたものをこのままの形にとどめておくことは考えにくいのは、当然のことです。

 そもそも、すでにサノフィは約100ヵ国で10万人以上の従業員を抱える多国籍企業で、もはやフランスを含む欧州以外からの売り上げが70%以上を占める巨大な企業。さらなる収益性を追求していくために、収益性の低い部門を切り捨てるのは、企業としての今後の展開を考える方針は理解できないではありません。

 規模は違いますが、先日、起こったラクタリス(乳製品製造企業)のフランス国内での牛乳回収削減とも類似性がある問題で、国内の酪農業を守ろうとする国と企業、そして、今回のサノフィの企業の収益性を追求するためのアクションと国民の公衆衛生を守ろうとする国の立場、収益性を追求しつづける企業と国の産業や国民の安全を守ろうとする立場は、相容れないのでしょうが、今後、政府はどう対応していくのでしょうか?


ドリプラン サノフィ


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