2024年2月25日日曜日

サロン・ド・アグリカルチャー(国際農業見本市)の開催初日は大混乱 歴史的見本市

  


 普段は、日中はテレビはつけないことにしているのですが、前日のパリの街中でのトラクターの行進がなんとなく気になっていて、テレビをつけてみると、なんと、マクロン大統領が農民たちに囲まれるカタチで、議論をしているところでした。

 日本語で言う「膝と膝を突き合わせて・・」という表現には、ちょっと甘い感じ・・皆、立っているので、図式だけ見たら、大統領を農民たちが取り囲んで吊るし上げているように見えなくもありません。

 マクロン大統領が当初、この日に予定していた農民たちとの大討論会は、環境保護団体や大量流通団体をも巻き込んだことから、農民たちの大反発をくらい、大討論会は、立ち消えになっていたところ、結果的にこのような農民たちとだけの討論になったのには、当日、朝からの見本市会場での一般公開前の会場での農民たちの抗議デモ行動が起こったことも大きく影響しています。

 当然のことながら、この見本市の行われている会場は、民間のセキュリティ会社の警備に加えて、警察や憲兵隊によって、厳重に警備されていましたが、それにもかかわらず、この警備の隙をついて、農民たちが警備を突破して、会場に押し入り、「マクロン辞めろ!」の大合唱。

 午前8時には、会場に到着していたマクロン大統領も大混乱の中、平穏にこの見本市を開催するために彼らとの対話の場を設けたのです。

 怒って興奮気味のこれだけの人々相手に議論をするという勇気だけでも、相当なもの、「私はいかなる質問もはぐらかさない!」(この言葉、日本の政治家にも言ってほしい)と断言して、マクロン大統領はこの農民たちとの議論に臨みました。

 この農民たちの抗議運動当初から、彼らが要求している内容は数えきれないくらいありますが、この時も彼らの言っていることの大枠は同じ。しかし、中には、「あなたは、ウクライナには、大金をはたいて援助しているのに、私たちには、パンくずだけだ!」と怒りをぶつける人もいました。

 農民たちが、それぞれにマクロン大統領に訴えかけ、時には、興奮状態になり、逆にマクロン大統領自身がキレかかるような場面もあり、この討論は、2時間以上も続き、いったい、どうやって収拾がつくのだろうか? 農民たちの中には、「1日中でも話し続ける!」などと言いだす人もいました。

 マクロン大統領は、「すでに、政府は動き始めている・・」と説明するのですが、彼らは納得せず、「私たちはもう限界なんだ!時間がかかり過ぎだ!早くしろ!」と訴えます。

 マクロン大統領は、「農業は国家にとって不可欠な要素であり、とても誇りに思っている産業である」と述べたうえで、「しかしながら、その構造には、問題があり、改革の必要がある」ことを認め、「欧州レベルで生産の責任を負うために、私は資本削減と闘いたい」と語り、「最低価格、下限価格、加工業者がそれ以下では購入できない価格を設定すること」を約束。

 話しの合間合間に「私を信じてください!」と訴えるマクロン大統領に、これまで30年間虐げられ続けてきた農民たちがあっさりと信じられないのも当然のことです。

 ついには、マクロン大統領は期限を区切り、「3週間以内に、私はすべての労働組合とすべての組織を集めて、何が行われたのか、あるいは行われていないのかを評価し、農業保護計画を立てること」を約束し、月曜日から突貫でそれに取り組むと宣言しました。

 このあたりで、ようやく農民たちがマクロン大統領を解放してくれる感じになっていたのですが、この農民たちとの討論は2時間以上も続いていたのです。

 SPや警備がついていたとはいえ、大統領がこの至近距離で彼らと直に話すということも、ちょっとなかなかないことで、「ヤレヤレ・・すごいな・・」と思いましたが、同時に「日本の首相にはできないんだろうな・・」と思うのでした。

 長時間にわたるこの討論会に見入って、見ているだけでもようやく終わってヤレヤレ・・というところで、テレビを消して、外出したのですが、それから夕方になって帰宅して、夜、テレビをつけたら、まだ、この見本市のニュースをやっていて、マクロン大統領が映っていました。

 「今日は、一日、この話題で持ち切りだったんだな・・」と思って、よく見てみると、画面の左上には、「DIRECT(生中継)」の文字が・・!「えっ??マクロン大統領、まだいるの?」とびっくり!

 なんと、この日、マクロン大統領は、あの討論会の直後に予定よりも4時間遅れの開会式でテープカットをした後、13時間以上もこの見本市の会場で、ブースを廻り、多くの団体と話し合い、また、それぞれのブースに控える農民たちと話し、時には動物と触れ合い、時には試食しながら、長い一日を過ごしたのでした。

 事の成り行きとはいえ、忙しいスケジュールの中、13時間をこの見本市に費やしていたことには驚きだし、今、ここをおろそかにはできないということだったのでしょう。

 とにもかくにも、毎年、何かしらの衝突や問題があるこの見本市も今年は記念すべき60周年。こんなに混乱している農業見本市は、初めてのことで、「歴史的な国際農業見本市」と評されています。

 問題は、未だ山積みのうえ、フランス国内だけの問題ではないため、ハードルも高いと思われますが、決して、マクロン大統領は最高!というわけではありませんが、こうして、大統領が面と向かって話しをしてくれるだけでも、日本人としては、羨ましい気持ちがあり、少なくとも、国の長として、日本のそれと比べて、全く同じ職業とは思えないことに、複雑な思いがあるのです。

 

国際農業見本市 歴史的な見本市


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2024年2月24日土曜日

農民たちの怒りにマクロン大統領が再び火をつけた

  


 毎年、年に一度、パリで行われるサロン・ド・アグリカルチャー(国際農業見本市)の開催が近付いてきて、農民たちの怒りの火がまだくすぶり続けているどころか、あちこちで、未だ火が燃え続けているというのに、今年のサロン・ド・アグリカルチャーは、どんな顔をして開催するのだろうか?とずっと思っていました。

 この見本市は、サロン・ド・ショコラなどが開催されるのと同じポルト・ド・ヴェルサイユ・エクスポ(パリ15区)で行われ、フランス各地から、牛や豚などから、多くの野菜やチーズ、ワインなど数多くの農業製品が集結するフランス人なら知らない人はいないほどの有名な催し物です。

 当然、数々の展示物(動物も含めて)と、それらを展示販売するために多くの農業、農業製品・そしてその製造に携わる人もやってきているわけです。

 毎年、この催事中、そこそこの問題は起こっているのですが、今年は、数ヶ月前から農民たちの怒りの激しい抗議運動が起こっており、そして、それが収束していないなか、無事に済むはずはありませんでした。

 そもそも、農民たちが抗議運動の動きを一時、弱めていたのも、このサロン・ド・アグリカルチャーを再抗議のタイミング、きっかけと考えてタイミングを定めていたことも想像に難くありません。

 そんな農民たちの動きを考えてのことなのか? 政府は、この農業見本市の開催当日の朝に、FNSEA(全国農業経営者組合連合会)との討論会の場を設けることを発表していました。

 しかし、政府は、この討論会に、環境保護団体「レ・スールヴェモン・ドゥ・ラ・テール」や大量流通団体を招待したことが、農民たちをさらに怒らせる結果となり、肝心のFNSEA(全国農業経営者組合連合会)は、「政府は農民たちを挑発した!」とこの討論会への参加を拒否。

 農民たちをなだめるつもりが、逆に丸め込もうとしていると受け取られてしまったのです。実際に、今回の問題の図式を考える限り、農民たちが訴える問題は、環境問題対応のために農民たちに課せられている厳しい規制や、その規制を守らない海外からの輸入品を大量流通団体が販売することで、価格破壊が起こり、フランスの農家が生産しているものが正当な値段で売られていないことが問題なわけで、政府は、農家が反発を感じている人々(つまりは、農家にとって敵のような人々)で取り囲み、まさに丸め込もうとしている感じが透けて見えるメンバーの集め方でもあります。


 この農業見本市の前日には、いつの間にやってきたのやら、パリの街なみを農業用のトラクターなどが行進する異様な光景が広がり、農民たちは、この見本市の会場に集結しています。

 FNSEA(全国農業経営者組合連合会)の討論会不参加とさらなる怒りを前にして、マクロン大統領は、環境保護団体のこの討論会への招待を取り下げましたが、時すでに遅しで、農民たちの怒りには火がついてしまいました。

 環境問題に配慮しなければならないことは、必要なことではあるものの、農民ばかりにその対応を押し付けている現実に政府は、やっぱりわかっていなかった・・ということが表面化してしまったカタチになりました。

 昔、日本でヒットした映画のせりふのように「事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!」というのがありましたが、まさに、そんな感じがします。

 マクロン大統領は、こうして時々、反発を買うであろうことをやらかして、地雷を踏むことがあり、これまでも、「よくも、こんなに国民に嫌われて平気なんだな・・よっぽどハートが強い人なんだな・・」と感心するのですが、どんなに嫌われても、やっぱり平静な顔をして、見本市にやってくるのです。

 農民たちの怒りはもっともで、彼らの現状には、心が痛むところではありますが、それでも、一縷の光というか、なぐさめられることは、こうした抗議行動の間も、ただただ怒っているだけではなく、音楽をかけたり、ダンスをしたり、楽しんでもいるようなところも垣間見える場面があることで、そんな場面では、彼らの中のラテンの血を感じます。


FNSEA(全国農業経営者組合連合会)と環境保護団体と政府の討論会


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2024年2月23日金曜日

ほのぼのする光景 パピー・マミー(祖父母)と孫の時間

  


 現在、フランスでは、子供の冬休みのバカンス期間のためか、街に出ると、孫らしき小さな子供を連れたおじいちゃん・おばあちゃんの姿を見かけることが多いです。

 この間、市営プールに行ったら、孫を連れてきていると思われるおじいちゃん、おばあちゃんたちがけっこうたくさんいて、「あら~こんなにたくさん孫連れの人たちがいるのを初めてみたな・・」とちょっとびっくりしました。

 フランスの学校は、ついこの間、ノエル(クリスマス)のバカンスが終わったばかりというのに、1ヶ月後には冬休みのバカンス、そして、またその1ヶ月後には、パック(イースター)の休みのバカンスがそれぞれ2週間ずつ、そして、ちょっとするともう夏休み(2ヶ月くらい)と、とにかく休みが多いので、共働きの多いフランス人家庭は、自分たちの職場でとれるバカンスでは、カバーできない期間は、子供たちを、パピーとマミー(おじいちゃん・おばあちゃん)のところへ預けちゃう!・・という家庭は多いのです。

 もちろん、それができない子もいるので、また別に、市が運営しているバカンス期間のレクリエーション施設のようなものがあるのですが、そこには預けずに敢えて、実家に子供を預ける人も多いのです。

 孫の世話ができる期間というのも、限られていて、おじいちゃん・おばあちゃんの健康状態にも限界があるだろうし、子供は子供の方で大きくなれば、それぞれの世界を持っていくので、考えてみれば、そんな長い期間ではありません。

 でも、そんな光景を見かけると、なぜだか、微笑ましい、とってもほのぼのとした温かい気持ちになります。私自身がとてもおばあちゃん子だったからかもしれません。

 私自身が子供の頃は、父方の祖母は隣の家に住んでいて、よく花札(シブいでしょ!)をして、遊んでもらいましたが、それは、日常の少しの時間に、遊んでもらうという程度で、私の母は家で仕事をしていたので、祖父母に預けられたという記憶はありません。

 しかし、私は父方の祖母も母型の祖母も大好きで、なんなら、誰よりも好きくらいに大好きだったので、私にとって、祖母の死はものすごく悲しくショッキングなことでした。

 また、私の娘に関しては、夫の両親はすでに他界していたため、フランスには、パピーもマミー(おじいちゃんもおばあちゃん)もおらず、私の実家は日本なので、そうそう休みのたびに子供を預けるというわけにもいきませんでした。

 一年に一度、一時帰国をしていた際にも両親が揃っていた時でさえも、母は、心臓病で、寝たり起きたりの生活が多かったので、私が日本で外出する時でさえ、子供を両親に預けて、一人で出かけるということもせず、どこへ行くのにも娘を連れて出かけていたので、あまり、実家に預かってもらったという感覚はありません。

 こうして、孫とおじいちゃん・おばあちゃんだけでプールに来ていたり、お出かけしている様子を見ていると、こういう経験を娘にさせてあげられなかったことは、残念だったなぁ~と思いますが、仕方ありません。

 それでも私の父にとっても母にとっても、本当に「目の中に入れても痛くない」とはこういうことを言うんだろうな・・と思うほど娘のことを愛し、可愛がってくれていたので、それはそれで、できる限りの彼らなりの孫との時間を過ごせたのではないか?と思っています。

 特に父は、気難しく、厄介な人でしたが、娘とだけは、やたら仲良かったのは、孫というものの特別な存在が父の厄介な性格を和らげてくれた魔法のような時間だったように思います。

 核家族化が当然のようになり、祖父母との繋がりも薄くなり、さらに親戚付き合いはほとんどない・・という人も多いように思いますが、おじいちゃんと孫、おばあちゃんと孫というのも、双方にとってかけがえのない繋がりです。

 たとえ、孫の側からしたら、後々、大した記憶に残っていないとしても、心のどこかに暖かい炎をともしてくれる大切な時間なのではないか?と思うのです。


おじいちゃん・おばあちゃんと孫


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2024年2月22日木曜日

オリジン・フランス フランス産のラベルには注意しなければならない

 


 先月からのフランスの農民たちの大規模な抗議運動は、一時ほどの騒ぎではなくなったとはいえ、未だに続いています。

 農民たちが高速道路を数週間にわたりブロックし、一時は、食料品等の配送が滞り、スーパーマーケットに空の棚ができるような事態にまで発展。農民たちがテレビのニュース討論番組などに登場して、農家の厳しい状況、惨状、数々の不均衡で不平等な流通や特にフランス国内農家に課せられている厳しい規制に比べて、輸入品に対する規制があまく、ゆるゆるで、汚い覆面を覆って、彼らの農業製品の占める場所を侵食している状況などを語っていました。

 これまで、そんな話は、全く知らなかったので、私もそんな現状を聞きながら、そんなことになっていたのか?それは酷い・・と感じ、多くの国民も彼らの激しい抗議運動には、どこか寛容な目で、「なにかがおかしい・・」と彼らに共感を寄せ、彼らの行動を容認するような目で見ていたような気がします。

 政府は農民たちの悲痛な叫びに耳を傾け、彼らの要求にこたえる回答をいくつか提案し、彼らの抗議運動は、少し縮小したものの、到底、それが彼らにとって充分に納得いくものではなく、未だ、彼らの怒りの炎はくすぶり続け、あちこちで、抗議運動は続いています。

 そんなことがあってか、私も最近は、買い物に行くと、心の中に、「やっぱり、フランスに住んでいる限り、フランスの農業製品を買うべきだな・・」などという気持ちが芽生えているせいか、やたらと、トリコロールのマークがついたものが目に付くようになり、実際にこのマークのついた製品が増えたようにもなり、野菜や果物でも産地をよく見るようになり、消費者にもそういう人が増えた気がします。

 しかし、この農民たちに指摘された一部である輸入品への規制に関して、政府が食料品の原産地などに関するチェックが開始され、・政府は約1,000の商業施設に調査に入ったところ、このトリコロールのついた「Origine France オリジン・フランス」のラベルが必ずしも確かではなかった・・・このうち372の施設がオリジン・フランスの基準を満たしていなかったことを公表しました。政府はこれに対する、取り締まり、罰則の強化を近々、発表するとしています。

 フランス産のものだと思って購入していたものが、実は、そうではなかった・・騙されていた可能性があるということです。

 だいたい、「オリジン・フランスの基準」というところで、「???」となるのですが、これは、必ずしもオリジン・フランスはフランス産ではない場合もあるということで、なんだか、都合のよい抜け道に使われそうな言葉でもあります。

 食料品には、原産地を記載することが義務付けられていますが、それさえも偽られている場合は、もうどうにもなりませんが、実は巧に原産地は、わかりにくいところに記載されていて、パッケージングだけフランスで行っているためにフランス産を名乗っているようなケースもあるのだということなのです。

 正直、私は、そこまで注意して、買い物をしていなかったため、トリコロールのマークがついていれば、単純にフランスのものだと思い込んでいたし、だいたい、原産地でさえも、そこまで注意してはいませんでした。

 ただ、フランスで売っている「WAGYU」を見て、「おっ!和牛だ!」と勇んで買ったことがあり、「これ?ほんとに和牛?日本で食べる和牛と全然、違うんですけど・・」と思ったことはありました。オリジン・フランスとは関係ない話ですが・・。

 まったく、ごくごく身近でささやかな買い物をする中には、たくさんの詐欺まがいのものがあることには、「いちいち、そんなに注意して表示を見なければならないのか?」と不信感が募るのでした。


オリジンフランス フランス産


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2024年2月21日水曜日

フランスの公立校の制服導入は、難航の兆し

  


 フランスの公立校(小・中・高校)で制服を導入するため、まずは、2024年度の新学期から試験的導入を開始すると発表され、思っていたよりも、この制服導入について、早く動き出そうとしていることに驚いていました。

 なぜならば、これまで四半世紀以上もフランスで生活してきて、およそフランスの学校には、制服のイメージが結びつかないものだったからです。

 それが、2年くらい前に、なぜかブリジット・マクロン(マクロン大統領夫人)が「フランスの学校にも制服があったらいい・・私の学生時代には・・」なんていうことを語ったというようなことが、話題にのぼり、「おいおい・・失礼ですけど、いつの話ですか?」なんていうことを思ったのですが、まさか、そんな話が本格的に制服導入という方向に進んでいくとは、その時には、微塵も思っていませんでした。

 このブリジット・マクロンの政府内の影の力というか、発言の威力、影響力というのも見過ごせない気もしています。

 フランスの学生は、学校にもよるのでしょうが、概して、みんなラフで自由な服装で、かといって、そんなに奇抜だったり、派手だったりすることもなく、また、学校自体も日本のような始業式とか終業式はもちろんのこと、入学式とか卒業式もなく、いつのまにか、始まって、いつのまにか終わっているという味気ないというか、よく言えばさっぱりしています。

 そんな中、制服導入の話が昨年あたりから、急激に具体的に進みだし、政府は、まずテストケースとして、100校を集めるとし、このうち87校がこのテストケースに参加することになっていると発表しましたが、内情は、このテストケースでさえも、集めるのに苦労しているようで、このテストケース参加募集の期限が2月15日だったものを結局のところ6月末まで期間を延長しています。

 つまり、期限内に試験的でさえ制服を導入してみるという学校が100校も集まらなかったということなのです。

 そもそも、これが実験段階とはいえ、「理事会と学校評議会の同意、そしてもちろん地方自治体の同意が必要で、それらのハードルを越えられない学校が多い=つまり、反対意見が多いということなのです。

 だいたい、この制服導入には、「格差社会の差別を抑制し、帰属意識を高めることを目的」としていますが、「制服で差別が解消されるわけではない」ということをみんながわかっているわけで、それ以上に自由な服装を縛られることを嫌っている・・「そんなことで差別が解消されると思うなよ!」というような気持ちが表れているような気がします。

 現在、進められようとして提案されている制服は、制服といっても、いわゆる日本にある制服ではなく、ポロシャツ、セーター、ズボンといったごくごくシンプルなもので、よく言えば活動的ではあるのですが、あまり、若い子たちが着てみたいと思いそうなものではありません。

 そもそも、みんなが同じでなくてよい、違った個性を認め合うところが、フランスの良さのような気が私はしているのですが、そこそこの国費を投じて制服?というのが、そこにお金使うの?という気もします。

 そして、個人的には、この制服導入に際して、学校側の仕事が増えることも、学校側が受け入れない理由の一つではないか?とも思っています。とにかく、フランスの公立校の教師は、少しでも余計な仕事が増えることを拒否する傾向があり、新年度が始まる前にそれぞれの生徒が買い集めなければならない文房具やノートやファイルなどのリストが配られて、それぞれが用意するのですが、こんなにまとまった量であれば、学校側が注文して揃えて、後からお金を徴収すればいいのにと思うのですが、そんなことですら、学校側はやらない・・余計な仕事を増やしたくないのです。

 フランス人お得意の「それは私の仕事ではない」というやつです。

 制服が導入されれば、それぞれの生徒のサイズに合わせて、注文をとり、服が小さくなったとか、破れたとかいうたびに、学校側が対応しなければなりません。

 それを「格差による差別の抑圧」など、もっともらしいことを言われても、私たちの仕事には、制服の管理などという仕事は入っていない・・と、さも言い出しそうなことのような気がします。

 まあ、とりあえず、やってみるのは、よいかもしれませんが、このテストケースにさえも学校が集まらないというのは、そこのところは置いておいて、集まった学校での結果をもとに、強行的に制服が導入されるのか?

 一部では、国歌を歌うことを推奨するとか、入学式とか卒業式を取り入れようとか、どちらかというと、引き締めにかかっているような感じのするフランスの学校教育。

 とりあえず、何かを変えるということには、大変な国民の圧力が存在するフランスで、政府が思っていたようには制服は簡単には受け入れられそうもない感じです。


フランス公立校の制服導入


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2024年2月20日火曜日

ストライキラッシュ 今度はエッフェル塔がストライキ

  


 ストライキは、フランスのお家芸のようなものとはいえ、ここ最近のあちこちでのストライキには、「どうなっちゃってるの?」と思わずにはいられません。

 まあストライキがあることが通常運転のようなところはあるものの、年明けからのRATP(パリ交通公団)、SNCF(フランス国鉄)、学校、農民たちの抗議運動などなど、大げさながら、もう黙っているのは損とばかりにストライキのお知らせが後を絶たないのは、ちょっといつにないストライキラッシュのように感じています。

 子供の冬休みのバカンス期間をめがけてSNCFが行った大規模なストライキのために、少なくとも15万人に被害が及んだという騒ぎのあと、ようやくまともにTGVが動き出すらしいという話を聞いたと思ったら、今度はエッフェル塔がストライキ。

 まあ、エッフェル塔に関しては、一般市民というか、住民の日常生活に影響はあまりないものの、やはり、依然として子供の冬休みのバカンス期間中なことに代わりはなく、国内の観光客もいるわけです。

 なんだかこのストライキが目白押しの中、なんだか、エッフェル塔はパリ(フランス)の象徴的存在なだけに、そのストライキもシンボリックな気がしてなりません。

 観光客の数もパンデミック前の状態に戻るどころか、それを越す勢いだったはずなのに、エッフェル塔がなぜ?ストライキをしなければならない状況に陥っているかは、その運営に何やら、問題がありそうです。

 エッフェル塔の職員CGT(労働組合)は、このストライキを「記念碑の維持管理上の問題と、市会計が認めていないにもかかわらず自治体が徴収する手数料の増額」、「エレベーターの近代化、通常、定期的に行われるはずの修繕工事や塗装工事ができていない」、「30年以上も放置されている床やエレベーターの改修は、絶対的に不可欠なことであることにもかかわらず、 これらすべてのことは市庁舎(パリ市)が5000万ユーロを受け取ることを可能にするために脇に置かれている」など、運営管理上の不均衡を訴えています。

 必要不可欠の工事をないがしろにして、なぜか大金が注がれる記念碑の存在も疑問を抱くところでもあり、「それ、他のものを差し置いてまで必要?」というところなような気がするし、エッフェル塔は、パリ市と密接な関係であるとはいえ、別会社。にもかかわらず、その謎の手数料の増額。

 つまり、お金が使われるべきところに使われずに、そこにそんなにお金を持っていかれる?という歪な運営状態。

 インフレや何やら、色々と抑圧される部分が多いなか、このようなお金の流れが一層、注目され、表沙汰になっているのが今の状態なのかもしれません。

 エッフェル塔にしても、交通機関にしても、料金は着々と値上げされて収益は下がってはいないはずなのに、それが正当に使われていないのは、ままあることで、こういうことを見るたびに、運営のための資金が不足しているとかいう前に、「おこづかい帳」つけてる?と何にお金を使っているか?無駄なことに使っていないか?それを見直せば、ずいぶんと削れるところがあることに気付くのではないか?と思うのです。

 余談になりますが、私は、娘にお金の使い方を教えるために、必要なものは、全て親が買っているし、小学生は、自分一人で外出さえさせられなかったために、自分でお金を使うこともないので、おこづかいも必要ないだろうけど、お金の管理を教えるために、少額ですが、おこづかいを渡して、おこづかい帳をつけるように教えていました。

 まあ、それが功を奏したか、生まれ持っての性分だったのか?娘は、ほんとうにお金にきっちり、シビアで、逆に本当に私の娘なのか?と思うほどに、しっかり倹約家になりました。無駄なことには、まずお金を使わず、その徹底ぶりには驚かされるばかりで、時には、私の大雑把な買い物に「ママ、調子にのりすぎ・・」などと、おしかりを受けるようになりました。

 話は脱線しましたが、公的なお金となるとやたらと気前がよくなる公の機関、基本的にフランス人には倹約家が多い中、自分のお財布だと思って、お金は必要なところに使ってもらいたいものです。

 ついでに、付け加えさせていただくならば、今、日本で騒いでいる、政治家の裏金、脱税問題が公になる中、国民には、確定申告で納税を呼び掛けるハタから見ていても、腹立たしい光景に、フランスだったら、こんな事実が明らかになったら、ストライキどころではすまずに、国中が燃える暴動になるだろうな・・と思っているのです。


エッフェル塔ストライキ


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2024年2月19日月曜日

ミスターフランス2024 今のフランスのイケメンはこういう感じ

  


 ミスフランスに比べると、注目度は低いものの、ミスターフランスというコンテスト?は、1993年から行われています。

 ミスフランスとは、独立したものであるとしつつも、このコンテストの審査委員長は、元ミス・フランス大会の看板人物であったジュヌヴィエーヴ・ド・フォントネー(帽子を被った女性といえば、彼女の姿が思い浮かぶ人も多いだろうと思われる)の息子、ザビエル・ド・フォントネーが務めているので、あまり説得力がない説明でもあります。

 今回、ミスターフランス2024に選ばれた男性は、ミスター・ローヌ・アルプのシャルル・スタンパー氏が優勝しました。

 国際ビジネスの修士号を取得したばかりの青年は23歳で、身長1.79メートル、体重74キロで、現在は、自動車メーカーの営業担当として働いています。

 仕事以外の時間には、フィットネスジムに通い、スキーもたしなむスポーツマンとのことで、スポーツに取り組むことにより、学生時代に受けたいじめ被害から抜け出したことを告白しています。

 また、彼は動物愛好家でもあり、ボランティア活動にも参加しており、この「ミスターフランス」のタイトルを動物愛護家としての活動にも利用したいと述べています。

 

 正直、フランス人の評価する「美」の基準というものは、よくわからないところもあるのですが、現在のフランス人の「イケメン」、「ハンサム」とされる人は、こういう感じなのか?と、傍観者的に眺め、「は~~こういう人がカッコいい人なのね・・」と思うのでした。

 一応、ミスターフランスの応募基準は、「フランス国籍」であり、年齢が18歳から30歳まで、身長が1.75メートル以上、独身で子供のいない人という括りがあります。

 彼は1年間、ミスターフランスとして、フランス全土及び、海外を渡り歩くことになり、モデル事務所に所属し、ファッションショーに参加するだけでなく、有名ブランドの顔になるチャンスにも恵まれることになります。

 個人的には、いま一つインパクトに欠ける感じで、いつか、どこかのハイブランドの香水などの広告に彼が登場したとしても、あの時のミスターフランスの人?とは、気が付かなそうな感じもしてしまいます。

 まあ、逆に考えれば、それだけ、彼はその手の類の広告に登場しそうな感じである「美」なのかもしれません。


ミスターフランス2024


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